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GFX50S IIの優位性とXマウントレンズ設計の現在とは? X Summit PRIME 2021で見えてきたこと

富士フイルムは9月2日、YouTubeを通じて「X Summit PRIME 2021」を配信した。GFXシリーズの最新モデルGFX50S IIや、これにあわせて設計したというGマウントシリーズ初の沈胴ズームレンズ、またXマウント用レンズなど数多くの新製品がアナウンスされた。配信中で語られた各製品の特徴や注目点を、あらためてお伝えしていきたい。

広い画素ピッチが豊富な情報量を支える

既報のとおり「GFX50S II」では、2017年にGFXシリーズのファーストモデルとして登場した「GFX 50S」と同じく、有効約5,140万画素のベイヤータイプCMOSセンサーが搭載された。

画素数こそ50MPに留められていることから、昨今の35mm判センサーで60MPクラスのセンサーが搭載されてきている状況からみると、ともすると物足りなく感じられる部分かもしれない。が、同配信では43.8×32.9mmのセンサーサイズからくる特性があらためて説明された。

まず、1画素の大きさが5.3μmであること。これは同じ画素数を持つ35mm判センサーにおける1画素の大きさ(3.76μm)と比べて、大きなアドバンテージのひとつとなっていることが説明された。この特性により、解像性能のほか豊かなダイナミックレンジが得られ、かつS/N比にも優れると説明。輝度差の大きなシーンでの撮影例から、ともすれば白トビ・黒ツブレしているかに見えそうなシーンでも破綻のない描写が得られているとして、実例をもってその特性が提示された。

また、センサーの分解能を支えている工夫として各画素上に配されたマイクロレンズについても言及し、その形状を工夫することで受光性能を引き上げていることが、解像性能を底上げしている要因のひとつであることが説明された。

同じ感度設定でも35mm判センサーに対して解像性能に優れるという

IBISとX-Processor 4搭載でAF性能が向上

GFX50S IIはセンサー自体は従来の50MPタイプを踏襲しているため、GFX100やGFX100Sの有効約1億200万画素センサー(裏面照射型構造を採用し位相差画素が配されている)とは異なり、AFがコントラスト式となる。

今回GFX50S IIでは画像処理エンジンにX-Processor 4が採用されたことに伴い、アルゴリズムも調整が施されており、パフォーマンスレベルが向上。ボディ内手ブレ補正機構(IBIS)の搭載に伴うAFの安定性向上とともに、GFX100・同100Sと遜色のない次元まで動作速度が向上しているという。

また、ボディ内手ブレ補正機構の補正効果段数もGFX100Sの6段から6.5段に進化している。この手ブレ補正機構により安定した映像情報の取得が可能になったことが、AF動作にも効果的に寄与しているのだそうだ。

他に、ボディ内手ブレ補正機構の搭載は、これまで同社ではGFX100および同100Sの専売特許となっていたピクセルシフトマルチショット機能をGFX50S IIでも可能にしている。

同機能は、イメージセンサーを1画素ずつシフトさせて4カットを撮影し、RGB各色の正確な色情報を取得。さらにこの動作を0.5画素ずつシフトさせながら4回繰り返すことで、画素を微細化し4倍の解像度を実現するというもの。つまり、1回のレリーズで16枚の画像を取得(4カット×4動作)することで、偽色の発生を抑制し、かつ4倍の画像データの生成を可能にしている機能だ。GFX100およびGFX100Sでは約4億画素相当の画像を生成できるが、GFX50S IIも約2億画素相当の画像が生成できるという。

GFX100Sのインターフェースや機能を凝縮

GFX50S IIでは、筐体デザインのほか、ボタン類を含めたUIが、ほぼGFX100Sそのものといった内容で凝縮されている。サイズおよび質量は、W150.0×H104.2×D87.2mm(最薄部44.0mm)・約900g(バッテリー・SDカード込み)となっており、GFX100S(W150.0×H104.2×D87.2mm・最薄部44.0mm、バッテリーおよびSDカード込みの質量は約900g)と全く同じ数値となっている。

バッテリーが高容量タイプの「NP-W235」タイプ(GFX100SやX-T4と同じ)に変更されたところも大きなポイントとなっている。

このほかGFX100Sで初めて搭載されたフィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ」も利用が可能となっているなど、「ラージフォーマットを身近にするカメラ」だとする同社プレゼン内容を、その価格とともに強く押し出したモデルということになるだろう。

Gマウントシリーズ初の沈胴レンズ

大型センサー機をより身近なものとすることを念頭に開発されたという「GFX50S II」。大型センサー機ならではの豊かな情報量を引き出すことができ、かつ価格面や携行性に配慮して設計されたのが、「GF35-70mmF4.5-5.6 WR」(35mm判換算28-55mm相当)だ。

レンズ単体での価格は税込で14万6,300円だが、GFX50S IIのレンズキットとして購入する場合、かなりのバーゲンプライスという意欲的な組み合わせで販売されることになる。GFX50S IIのボディ単体の価格は税込で49万5,000円前後、レンズキットの場合、税込54万8,900円前後となっていることを考えると、同社がGFX50S IIで大型センサー機のさらなる普及に向けて、かなりの意気込みであることが伝わってくる。

そうした大型センサー機の魅力を伝えるという使命を担っているだけあり、本レンズは価格はもとより、重量やサイズなどの画質と相反する要素のバランスに、かなりの配慮がなされていたようだ。

レンズ構成は非球面レンズ1枚とEDレンズ2枚を含む9群11枚となっているが、各レンズを絞りを中心に前後でバランスよく配置し、対称型にすることで収差等を抑制。また第2群に非球面レンズ1枚とEDレンズ2枚を配置することで、“理想的な光線”を導く設計となっているという。

第3群はフォーカス部となっており、近接撮影のための移動量を確保することで、最短撮影距離35cmを実現。その焦点距離やコンパクトなサイズ感(最大径84.9×沈胴時全長73.9mm・質量約390g)とともに、幅広く活用できる1本に仕上げられている。

GFX50S IIと組み合わせた場合の質量は、バッテリーとメモリーカードを装着した状態のボディが900gなので、合計で1,290gとなる。

約4,500万画素の35mm判フルサイズセンサーを搭載するEOS R5の場合、ボディ約738gに標準ズームレンズRF24-105mm F4 L IS USM(約700g)を組み合わせた場合、質量は合計で約1,438gとなる。

同じように有効約6,100万画素の同じく35mm判フルサイズセンサーを搭載するα7R IVの質量は約665gで、F4通しの標準ズームレンズFE 24-105mm F4 G OSS(約663g)を組み合わせた場合、その質量は約1,328gとなる。直接比較できるものではないけれども、汎用的によく用いられるレンズの組み合わせという視点から考えていくと、重量の面からくる大型センサー機のデメリットを、かなり克服する組み合わせを提示してくれているということが見えてくる。

このほか、Gマウントレンズのロードマップも更新。新たにGF20-35mm、GF55mmF1.7、ティルトシフトレンズの3本の開発が報じられた。いずれも2022年から2023年にかけて投入を予定しているという。

GF20-35mmを手に。製品はモックアッップながら、このサイズ感を目指して開発が進められているという

これからのXシステムレンズのデザインの行方は

配信されたプレゼンテーションでは、Xシステム用の2本の製品が発売となることがアナウンスされた。1本は35mm判換算50mm相当の「XF33mmF1.4 R LM WR」。2本目はXF23mm F1.4の第2世代モデル「XF23mmF1.4 R LM WR」だ。

両レンズは、5月に発売された「XF18mmF1.4 R LM WR」とともに、Xシステムの新たなスタンダードを築くレンズとして位置づけられており、今後登場するであろうより高画素のカメラにも対応できる解像性能を追求して開発されているのだという。そのテーマはシャープネスの追求も含まれているのだということが語られた。

また、デザイン上のポイントも語られた。重要視しているポイントは2点。ボディに装着した際のトータルバランスと、快適な操作性が確保されていることにあるのだという。

発表では、近年のXシリーズのカメラは“シャープでソリッドな装いへと変化”してきたとして、新たな3本のレンズでは、こうしたボディとの調和や絞りリングのレイアウト等に配慮しながら品位の向上に注力してデザインを進めていったのだと明かされた。

デザインポイントはフォーカスリングなどのローレット形状の見直しも含まれており、指がかりの良さや、汚れが付着した際の清掃性の両立といった実用面と、見た目の美しさを追求しているのだという。

Gマウントレンズ同様の絞りリング上に配された「A(オート)ポジション」の新設など、使い勝手の改善もまた、そうした思想に基づいたアプローチなのだろう。18mm F1.4と33mm F1.4、第2世代23mm F1.4の3本を以って“これからのX交換レンズデザインの基準”としていきたいのだということが語られた。

このほかXマウントシリーズのレンズロードマップも更新。「XF150-600mm」(35mm判換算229-914mm相当)と、「XF18-120mm」(35mm判換算27-183mm相当)の2本を2022年に向けて開発していくことが明らかにされた。

Xシステムの次期フラッグシップモデルに積層型のX-Trans CMOSセンサー搭載が予告されるなど、GFXシリーズはもとより、Xシリーズの今後を予見させる大きな動きがみられた「X Summit PRIME 2021」。今後の続報が、さらに楽しみになる展開を見せている。

本誌:宮澤孝周