私はこれを買いました!

どこまでも豊かな階調に惚れる

FUJIFILM GFX50S II(宮澤孝周)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2021年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

繊細さの中に不思議な立体感が宿る

いつかはと思っていた時が想像以上に早く訪れることになりました。ふだんはXシリーズをメインシステムとして使用している筆者ですが、想定していた以上のバリュープライスで登場したGFX50S IIに気がつけば手を出していました。

APS-CのXシリーズを愛用する中で気になっていたのが、ハイライト側の階調の伸びでした。より大きくダイナミックレンジ特性に優れるセンサー採用機としてGFXシリーズのことを調べていた矢先での製品発表。しかも旧モデルからセンサーに改良が加えられてより描写特性が向上しているとの報に引き寄せられるようにして手にしていました。

決め手となったのはGFX100Sと同等のボディを採用し、操作系などのデザイン・UIまわりの使い勝手が継承されていたこと。またバッテリーもX-T4などと同じ新型を採用していて(GFX100Sも同じバッテリー)、稼働時間面の懸念もクリアしていたことでした。

この2点が揃った時点で購入することは確定したようなものだったのですが、それに加えて価格面もがんばれば手が届く範囲だったことが大きな理由となりました。もちろんかなり無理はしています。

Gレンズシリーズは描写性能が高い反面で価格面もはXシリーズとは比較にならないほど高額なので、そう本数を揃えることはできていませんが、キットレンズの「GF35-70mmF4.5-5.6 WR」もGレンズシリーズの一員として期待を裏切らない描写力だと感じています。

沈胴機構の採用を当初はどうなのだろうと思っていましたが、コンパクトなサイズと重量を感じるにつれ、大きな魅力になっていることを実感。動作感もキッチリと精度が確保されていることが、沈胴操作時の空気が抜ける音から感じ取れます。レンズ側の質量は約390gですから、GFX50S II(バッテリー・メモリーカード込みの単体質量は約900g)と組み合わせた時の重量は1,290g。1kgは少し超えますが、ボディ側のグリップが良くレンズヘビーにならない重量バランスのためストラップなしでも安定して撮り歩くことができます。やはり大型センサー機をハンドリングよく運用できるというのは本気の醍醐味だと感じています。使うにつれ富士フイルムが本機で目指そうとしているところが見えてくるように感じています。

肝心の画質に関しては画作りや色の傾向はXシリーズそのもの。絞り開放でこそ甘めの描写ではありますが、シャドー側の粘りに強いという印象のあったXシリーズと同じく暗部がどこまでも粘っていく印象で、階調の幅が格段にひろがっていると実感されました。情報量や密度感は約50MPのため、かなり精細な記録となっていることがわかります。それでいて大型センサーらしい広いダイナミックレンジ特性からハイエストライトとシャドーが高いバランスで両立。ヌケや解像性能にレンズ側もついてこられているということもあると思いますが、写真らしい柔らかさを感じさせながらもシャープネスを含めた再現性も高いという、GFXシリーズらしい不思議な立体感が宿ります。

正直なところ、あとは明るめの単焦点レンズが1本あれば、それでふだん撮っている内容は十分にカバーできるように感じています。Gシリーズレンズの中でも少し甘めの描写が逆に立体感や空気感を上手く引き出してくれる場面もあるように感じています。そうした意味でもレンズ単体で購入しても満足度の高い1本ではないでしょうか。どうしてもレンズ側が重くなってしまいがちなGシリーズレンズの中にあって、軽快な撮影体験をもたらしてくれるところも魅力です。

昨年の「これ買いました」でお伝えしていたX-Pro3で撮影したカットと同じ場所・時間帯で撮影。時期的にも同じくらいの冬の光線状態であわせています。ある意味で筆者にとって定点観測ポイントのひとつとなっています。
GFX50S II / GF35-70mmF4.5-5.6 WR(44.1mm:35mm相当) / 絞り優先AE(F5.6・1/240秒・+0.7EV) / ISO 100 / PRO Neg.Hi

近況報告

テレワーク主体の勤務が続くことになった本年。折りにつけ身体を動かすようにしていましたが、育児対応もありすっかり在宅で完結する日々が習慣になりました。良い面も悪い面も様々にあることに気づかされましたが、一番の問題は体力が落ちたことのように思います。あるいは子どもに生気を吸い取られているのかも。来年は落ちた体力を取り戻すべく走り込みを計画しています。肩こりとかも良くなる方法があると尚良いのですが……。

本誌:宮澤孝周