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キヤノン社長にカメラ開発出身の内田恒二氏

~御手洗氏は会長専任に

御手洗会長(右)と内田社長
 キヤノンは11日、都内で記者会見を開催し、内田恒二 代表取締役副社長が23日付けで、代表取締役社長に就任すると発表した。御手洗冨士夫 代表取締役会長兼社長は代表取締役会長専任となり、24日付けで就任する経団連会長職に注力する。

 内田氏は1941年生まれ、京都大学工学部精密工学科卒。キヤノン入社は1965年。カメラ開発センター所長、宇都宮工場長、レンズ事業部長、カメラ事業本部長などを歴任し、2001年にイメージコミュニケーション事業本部長、2006年3月に代表取締役副社長に就任した。銀塩一眼レフカメラ「AE-1」の開発や、IXY DIGITAL、EOS Digitalなどのデジタルカメラ事業に携わってきた。

 趣味は「ドライブと運動だったが、最近はあまりできない」と述べ、「週末はゴルフの練習をしている。読書は“ストーンヘンジ”とか“失われた文明”のような、古代の歴史の本が好き」としている。


「技術の目利き」が必要とされるフェーズに

 御手洗氏は、内田氏を「かつては社内売上シェア8%まで落ち込んだカメラを25%まで持ち上げ、キヤノンの伝統あるカメラディビジョンを復活させた」、「遅れていたキヤノンのデジタルカメラディビジョンを見事に復活させた」と紹介。

 そして、内田氏を後継とした理由を3つ上げた。1つめは御手洗氏が「会社の拡大期には技術屋さんにまかせたいと考えていた」こと。

 御手洗氏は1995年からの「グローバル優良企業構想」フェーズ1を財政状況の改善、事業の選択と集中などによりキヤノングループの体制を整えた「整備期」、2001年からのフェーズ2を、選択した事業のそれぞれを世界No.1にする「充実期」と定義。2006年からのフェーズ3は「2010年以降にキヤノンが携わる新しい事業ドメインの探索」、「No.1になってない事業をNo.1にし、No.1の事業はダントツにする」、「新規事業の開発」をテーマにした「拡大期」と捉える。

 御手洗氏は「キヤノンはカメラのメカと光学技術の会社として出発したが、60年代にはエレクトロニクスを加えて電卓を、化学を加えてコピー機を、通信技術を加えてFAXを、さらに光学を加えてステッパーを、といったように、時代にあった新しい技術を取り入れて、その上に複合技術で新しい事業を組み立ててきた」とし、こうしたやり方には「技術の目利きが必要。既成の会社をM&Aで買ってきて売上を伸ばすのは、事務屋でもできる」と、内田氏の技術者としての経験を必要とした理由を述べた。

 2つめは「(キヤノンは)労使協調、経営も1枚岩でやってきた。新しいトップは会社全体のコンセンサスを得られ、多くの人をなるほどといわせる納得性がなければならない」とし、内田氏の「リーダーシップと事業経営の腕を高く評価している」から。

 3つめは「社長は私心のない人がなるべき。権力は私利私欲のために使われてはいけないと叫び続けてきた。仕事のモチベーションを私心でなく、使命感にして仕事に携わる人が必要だった」こと。

 内田氏に期待することとして御手洗氏は「5カ年計画を完成して、主な経営指標が世界の企業のトップ100に入ること。また企業理念である“世界人類との共生”に沿い、世界のどこに行っても尊敬され、歓迎される企業にすること」とした。


コンセンサス重視の内田氏

 内田氏は就任後について「御手洗氏は24日に経団連会長として日本産業界の舵取りを担う大役をおおせつかる。出身母体であるキヤノンも安定的な成長をし、経団連の仕事を安定して進められるようにする」と意気込みを語り、「まずはグローバル優良企業グループ構想フェーズ3にのっとり、2010年の目標達成をめざす」、「今期、対前年増収増益を達成するのが最低の条件。現業の事業の進行をさらに深め、新規事業の発掘、立ち上げを達成し、キヤノンの今後の発展に貢献したい」と述べた。

 「現業の事業の進行」については「6事業それぞれがNo.1という目標を掲げて日夜励んでいるが、まだNo.1でない事業があるので、No.1を達成する。No.1を達成している事業も、これから大きな競争の時代なので、うっかりしていると抜かれる」とし、具体例にデジカメやプリンタをあげて「絶対に負けない強固な体制作りが大切」と、既存事業への取り組みを語った。

 内田氏がカメラ事業を復活させたことに絡み、「出遅れていた事業を復活させる際の秘訣、必要なものは何か?」という質問を受けた際には、AE-1によるカメラ事業の再生、EOSによるAF一眼レフでの巻き返し、デジタルカメラ事業の立て直しといった事例に触れながら、そのいずれでも「全社の協力を得て、いろいろな技術を注ぎ込んだ。社内的なコンセンサスを得ながら勧めるということがいちばんのポイントではないか」と手堅い姿勢を見せたが、一方で同氏にはSEDなどの新規事業への期待もかかる。

 これについては「ディスプレイ事業は着実に製品化を目指す。ブロードバンド時代には、家庭内にプリンタ以外の出力手段がほしくなる。高画質イメージに耐えるテレビが必要」と述べるにとどまったが、御手洗氏が「内田氏はSEDの事業推進のヘッドをはじめからやってきている。SED事業は引き続きやることになるので、新たに取り組むということではない」とフォローした。


御手洗氏は今後もキヤノンに関わる

 24日の経団連会長就任以降の業務について御手洗氏は「朝7時頃に会社に行くことが習慣になっていて、これはこれからも変わらない。経団連は9時半始業なので、朝、会社で1時間半から2時間仕事をしてから経団連に出勤する」、「(内田氏は)開発、生産、販売についてはベテランだが、管理部門についてはこれから勉強することが多々あると思う。部屋は隣だから、社長の相談にのったり、注文をつけたりといったコミュニケーションも取れる」と、キヤノンの経営にも引き続き関わる姿勢を明らかにした。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  ニュースリリース
  http://web.canon.jp/pressrelease/2006/ceo2006.html

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( 本誌:田中 真一郎 )
2006/05/11 19:51
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