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キヤノン、大型CMOSセンサー技術セミナーを開催
キヤノンは7日、同社のデジタル一眼レフカメラに搭載される大型CMOSセンサーについてのマスコミ向け技術セミナーを開催した。
キヤノンが同社製品で採用されている技術について、セミナーを開催するのは3回目。今回は、同社の主力一眼レフ製品に搭載される大型CMOSセンサーについて、その開発経緯やCCDセンサーに対する優位性などを説明した。
講師を務めたのは、キヤノン株式会社カメラ開発センター副部長の原田義仁氏。
同社のデジタル一眼レフには現在、EOS Kiss Digital NやEOS 20Dなどに採用されているAPS-Cサイズ、EOS-1D Mark II Nに採用されているAPS-Hサイズ、EOS-1Ds Mark II、EOS-5Dに採用されている35mmフルサイズの3種類のCMOSセンサーがある。
【お詫びと訂正】記事初出時、「EOS-1Ds Mark II」とすべきところを「EOS-1D Mark II」と記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。
APS-Cサイズやコンパクトデジカメなどに搭載される小型のセンサーは、ステッパーによる1回の露光で製造可能なのに対して、APS-H以上のサイズでは2回以上の露光が必要になり量産効率が落ちる。このため、普及機ではAPS-Cサイズが採用されているという。
キヤノン株式会社カメラ開発センター副部長 原田義仁氏
CMOSセンサーのラインナップ
センサーの大型化によるメリットについては、高いS/Nやダイナミックレンジの広さなどによる豊かな階調性、被写界深度幅の大きさによる奥行き表現を挙げた。
感度の高さについては、画素ピッチが大きいほうが、同一時間、同一の光量を得る場合、より多くの光を集めることが可能で、感度は上がる。また、同一時間で光を大量に集めることが可能になればなるほど、ノイズ以外の情報が多く蓄積されてノイズ成分が目立たなくなり、結果、S/Nは向上するという。
ダイナミックレンジについても同様で、画素が大きいセンサーのほうが、光を蓄積するキャパシティが大きいということになり、小さな画素のセンサーよりも情報量が増すことになる。このため、同じピクセル数の大型センサーのほうが、明暗部の表現がより豊かになる。
被写界深度の違いについては、チェスボードを俯瞰で撮影した写真で例を示しながら説明。1/1.8型センサーを搭載したデジカメでは、一番遠くのコマまでクッキリ見えるのに対して、同一絞りで撮影した大型センサー機では、サイズが大きくなるほど被写界深度が浅く、遠くのコマがボケて表現される様子を示した。
CCDとCMOSの比較
CCDセンサーとCMOSセンサーの違いについては、もっとも多くの時間が割かれて説明された。
CCDは、非増幅センサーと呼ばれ、垂直CCDに入射した光電荷を電荷のまま水平CCDに送り、出力アンプまで転送、そこで電圧に変換される。メリットとしては、従来から高画質なイメージセンサーとして使用されてきたため、技術蓄積が豊富であることや、ノイズが小さくS/N比が高いことが挙げられる。反面、電荷の変換を最後に一括して行なうため、瞬間最大電力が大きい。出力の並列処理も難しく、高速化が困難という。また、周辺回路のオンチップ化も難しいとした。
対してCMOSは増幅型センサーと呼ばれ、入射した光電荷は画素1つ1つに搭載されるアンプ部で電圧に変換され、順次出力される。このため、ピークの消費電力は低く、並列での出力に向き、高速化に対応しやすいという。また、周辺回路のオンチップ化も容易だという。
高速化については、CMOSセンサー最大の優位点として挙げ、CCDとの比較を提示。CCDでは、水平CCDによって一括して電荷が出力されるため、CCDセンサーを搭載していたEOS-1Dでは、水平CCDを左右に2分割して2ch出力することで高速化を実現していた。また、水平CCDを縦に2つ搭載して2ch出力を実現したビデオカメラ「MV1」などもあったが、いずれも量産が難しく、MV1型では水平CCDの歩留まりが低いなど問題をかかえ、転送効率にも限界があったという。
これに対して、画素ごとに電荷を電圧に変換して出力するCMOSでは、複数chによる同時出力に対応しやすいとしており、EOS-1Ds Mark IIなど、同社ハイエンド製品では8chの出力が可能になっている。また、将来的に16ch出力やそれ以上の分割出力数も視野に入れて開発を続けているとしている。
CCDとCMOSの出力方法の違い
キヤノン歴代デジタル一眼レフカメラの速度性能比較
CMOSセンサーのデメリットとしては、画素ごとのばらつきが大きく、ランダムノイズも発生しやすいことが挙げられるという。このため、高画質が要求される製品向けのイメージセンサーとしてはあまり採用されてこなかった。同社はこれを「オンチップノイズ除去技術」によって改善。固定パターンノイズ(FPN)とランダムノイズ(RN)を同時に除去することが可能になり、CCDと比較しても遜色ない画質を実現した。これにより、EOS D30以来、高画質が要求されるデジタルカメラのイメージセンサーとして採用が可能になったという。
オンチップノイズ除去技術の仕組み
埋め込みフォトダイオードによる暗電流対策
また、暗電流に対する対策もとられた。暗電流は、CMOS上の微小な結晶欠陥や、リーク電流から発生するもので、長時間露光時など、電荷の蓄積時間が長い場合や、CMOSの温度が上昇しやすい場合に発生し、ノイズを発生させる。これに対しては、製造プロセスの管理強化によって欠陥率を下げたほか、「埋め込みフォトダイオード」構造を採用することでノイズを軽減している。
埋め込みフォトダイオードは、CMOS底部に位置するシリコン部分にダイオードを埋め込む方法。暗電流はシリコン表面に発生するもので、従来の安価なCMOSセンサーでは、フォトダイオードがシリコンの上に配置されるため、暗電流の影響を受けやすかった。この方法によって暗電流の影響を大幅に低減できた。CCDでは昔から実装されている方式で、CMOSセンサーとしてはキヤノンが初めて採用したという。
今後は、ユーザーニーズに合わせたセンサーサイズの開発や、画素性能向上のための微細化技術、CMOSセンサーでも実用できる電子シャッターの開発などを課題とした。
キヤノンセンサー開発の歴史
CMOSセンサー搭載機とCCDセンサー搭載機
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URL
キヤノン
http://canon.jp
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( 本誌:清宮 信志 )
2005/12/07 19:17
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