ソニーは6日、デジタル一眼レフカメラ「α700」の発表会を東京銀座のソニービルで開催した。
α700は、2006年6月発売のエントリー向けモデル「α100」に続く、ソニーブランドとしてのデジタル一眼レフカメラの第2弾。「中級機」を標榜し、PMA07やフォトイメージングエキスポ2007で展示していた2機種のうち、ミドルクラスと表現していたモックアップの製品化となる。
同社初の中級機とあって、発表会ではラインナップ戦略の重要性や、ハイアマチュアを意識した発言が数多く飛び出した。キーワードは「α第2章」、「伝統と挑戦」。また、同社の薄型テレビ「BRAVIA」との連携を強くアピール。新しいデジタル一眼レフカメラの楽しみ方を打ち出すという。
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左からデジタルイメージング事業本部AMC事業部の石塚啓一副事業部長、ソニーマーケティング取締役執行役員常務の鹿野清氏
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キーワードは「伝統と挑戦」。α700の投入をソニーαの第2章と位置づけた
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α700をかまえる会場のモデル
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DT 16-105mm F3.5-5.6を装着したα700
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■ 「撮る」と「観る」、両方にミドルクラスらしいこだわり
デジタルイメージング事業本部AMC事業部の石塚啓一副事業部長は、α700のコンセプトを「“撮る”こだわり」と「“観る”こだわり」にわけて紹介。“撮る”には、新開発の1,224万画素CMOSセンサー「Exmor」など、撮影にまつわる強化点が含まれる。“観る”には、HDMIを介したBRAVIAでの高画質表示がメインとなる。
Exmorは、センサー上の垂直列方向すべての画素にAD変換機を搭載、さらにAD変換後にもノイズキャンセラーを置くなど、「限りなくノイズがない」(ソニーセミコンダクタ)という。画像処理エンジンの「BIONZ」も新開発のものに代わり、RAWでのノイズリダクションを行なうなど、高感度撮影を強化した。今後、ソニーのCMOSとしてExmorをブランド化し、放送分野を皮切りに普及を進めるという。
なお、新BIONZの採用にあたり、α100の特徴であったDレンジオプティマイザーも強化された。最大5段階の「アドバンスレベル」を設定可能になったほか、効果を変えた3枚を同時に記録する「アドバンスブラケット」での撮影が行なえる。RAWへの適用も可能になった。
α100で一度アルゴリズムを見直したボディ内手ブレ補正機構についても、ユニットを新開発することで、補正効果を最大4段までに高めたという。具体的には、ジャイロ出力フィルターの最適化や、高周波の小さな振幅に対する追随性能を向上させている。
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ソニー製CMOSセンサーのExmor。生産はソニーセミコンダクタ九州の熊本TEC
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手ブレ補正の補正効果が最大4段分に拡大
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縦位置グリップ「VG-C70AM」を装着
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背面。縦位置グリップには数多くのボタンを装備
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ファインダーにはペンタブリズムを採用し、倍率は0.9倍。ペンタミラー式のα100と差別化を図っている。スクリーンには引き続きスフェリカルアキュートマットを使用。AFセンサーも新開発となり、中央デュアルクロスセンサーの11点測距となった。ファインダー内LED表示の手ブレインジケーターも継承している。
なお、α700のファインダー視野の四隅に入っている横線は、16:9での撮影時にガイドとして利用するもの。16:9記録が可能なデジタル一眼レフカメラは初めてという。もちろん16:9はBRAVIAでの表示を意識したモードで、BRAVIAとは本体内蔵のHDMI端子で接続。端子はType Cと呼ばれるモバイル向けの小型タイプとなっている。
8月29日発表の40~72型のBRAVIAの場合、α700を接続すると自動的に静止画専用画質の「フォト」モードに切り替わる。これが石塚氏のいう「“観る”こだわり」のひとつで、フォトモードの色調はソニー製デジタルカメラを規準にしているという。輪郭処理、色再現などを写真表現に最適化するモードで、既存の動画用モードと異なり、「高精細で微妙な質感を表現できる」(石塚氏)のが特徴。表示はフルHD(1080i)で行なう。こうしたカメラとテレビの連携を「BRAVIAプレミアム・フォト」として打ち出し、普及が進むHD環境への対応を、カメラ側からも対応させる考え。石塚氏は「フォトグラファーのための新しい鑑賞スタイル」とアピールした。
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ペンタプリズムを採用
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AFセンサーも一新。四隅の線は16:9のガイド
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Dレンジオプティマイザ―も進化。写真は「アドバンスブラケット」
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連写は5枚/秒を実現
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BRAVIAと連携する「プレミアム・フォト」を訴求
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会場でもBRAVIAでの表示を行なっていた
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さらに石塚氏は、α700の92.1万画素・3型液晶モニターを“観る”こだわりのひとつに挙げている。高精細なだけでなく、α100の2.8倍にコントラスト高めたこともあり、石塚氏は「撮ったその場で写真プリントを見ているかのような画像を提供する」とアピールした。なお、主要設定を液晶モニタ―にまとめて表示する機能もα100から継承。液晶モニターが大きくなったため、より見やすくなっている。カメラの縦横にあわせて回転するのも従来通り。また、今回からFnボタンを押すと、液晶モニター上のパラメーターを直接ジョイスティックで選べるようになった。その後、ダイヤルなどで設定を変更できるもので、同社では「クイックナビゲーション」と呼んでいる。
ミドルクラスらしく、α700ではシャッター音にもこだわったという。これまでのαデジタルに見られなかった「ジャキン」という鋭い音で、同社のオーディオ事業部とのコラボレーションで開発。シャッター音だけでなく、液晶モニター、リチウムイオン充電池もソニーグループが生産する。石塚氏は「自社の技術を融合して誕生したのがα700」と、総合AVメーカーの強みを強調、プレゼンテーションを「伝統と挑戦をキーワードに、αならではの世界を提供したい」と締めくくった。
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背面液晶モニターから、各設定を変更可能になった
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従来と同じく縦表示にも対応
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再生表示の例
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多彩なインデックス再生が可能
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4分割での表示例
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5×5分割で表示
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■ フラッグシップは「鋭意開発中」
α700のマーケティング展開については、ソニーマーケティングの取締役執行役員常務、鹿野清氏が解説した。2006年から現在までのデジタル一眼レフ市場は順調で、「ひょっとすると、2008年には100万台の大台に乗るほど好調な市場」と期待を込める。その中でソニーは、2006年6月にα100を投入、ブランドの定着を図ってきた。「新しい需要を拡大したいという理由から市場に参入、その後カメラグランプリ審査員特別賞の受賞まで、この1年は基盤づくりだった」とし、「店頭での認知も進み、目標の10%は達成した。国内デジタル一眼レフ業界の仲間入りができた」と述べた。
第2章にあたる今回のα700では、毎年、中上位機種の需要が拡大する冬商戦に向けたもの。夏商戦は4分の1にとどまる中上位機が、冬商戦では4割まで達するという。そのため専門店での販売比率が高まることから、新しい施策として「α700トラックキャラバン」を実施する。特約店の勉強会とユーザーミニ体験会を兼ねたイベントで、3台のトラックが全国を行脚。また、22日の東京会場を皮切りに、全国8会場で体験会を行なう。動員目標は5,000人。
また、BRAVIAプレミアム・フォトについても、積極的な展開を行なう方針。「カメラ店に32型のテレビを持ち込む、逆にテレビ売り場にカメラを置く。まずは試していただくことが重要」とした。
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3台のαトラックが全国をまわる
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体験イベントも8都市で開催
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質疑応答では、「なぜライブビューを搭載しなかったのか」という質問が出た。石塚氏は、「ソニーとしてのライブビューがどうあるべきかは、かなり前から検討を進めている。それに向かって開発も進めている。今回は大きさなどにこだわったため、カメラとしてまとめて行く結果として採用しなかった。開発はしているので、期待していただきたい」と答えた。
また、中級機ではなく、エントリーモデルを2機種目に選ばなかった理由については、「旧αユーザーを始め、中級機を望む声が多かった。ブランドを認知していただくには、価値あるものを出す必要がある。今回の製品になったことをご理解いただきたい」と回答。さらに「エントリーについても考えは持っている」と加えた。
なお、α700とともに各所でモックアップを展示したフラッグシップモデルの発売時期については、「鋭意開発中。もともと来年度以降としていたので、順調に進んでいる」と報告した。
■ 発表会で撮影したα700など新製品
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α700
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CFとメモリースティックデュオのデュアルスロットを採用。デュオHGにも対応する。RAWとJPEGの記録分けは不可能
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バッテリーはα100とは別のもの。ただし充電器は共用で、このバッテリーをα100で使用することは可能
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モードダイヤルには絵文字モードも。「MR」はユーザーカスタマイズを呼び出すモード
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MRで登録を呼び出したところ。計3つまで設定を登録できる
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シャッターボタン後の上面に、DRIVE、WB、ISOのダイレクトボタンを装備
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AFモードの切替はレンズの右下。反対側にはプレビューボタンを備える
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内蔵ストロボをポップアップさせたところ
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「α」エンブレムがメタリック調になった
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背面の「C」ボタンを押すと、「クリエイティブスタイル」が選べる。各スタイルを微調整可能
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ボディと同時に4本のレンズも発表した。左からDT 16-105mm F3.5-5.6、DT 18-250mm F3.5-6.3、DT 55-200mm F4-5.6、70-300mm F4.5-5.6 G SSM
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70-300mm F4.5-5.6 G(モックアップ)
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オートクラッチボタン、フォーカスリミッター、距離指標窓などを装備
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超高倍率ズームのDT 18-250mm F3.5-6.3
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DT 55-200mm F4-5.6
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新ストラップも展示。ネオプレーン製(左)は既存品より短く、肘に引っ掛けて使うことも視野に入れたという
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世界初の製品化となるカールツァイス銘のフィルターも展示の目玉。PL、ND、MCとも製造国は日本
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■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
製品情報
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200709/07-0906/
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( 本誌:折本幸治 )
2007/09/06 20:09
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