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【インタビュー】コーレルブランドになった「Paint Shop Pro X」

~変わったことと変わらなかったこと

 カナダのコーレルと言えば、Windows黎明期から高機能なドローイングソフト「Corel Draw」を開発し、一躍Windowsの標準ドローソフトとして定着。その後は企業買収を通じ、さまざまなアプリケーションを自社のラインナップに収めてきた。デザイナーにはおなじみのPainterも、現在はコーレルが販売する重要なペイントツールとして独自の座を確保している。

 そのコーレルが低価格かつ高機能なフォトレタッチソフト「Paint Shop Pro」(PSP)を開発するJASCを買収したのは昨年10月の事。PSPの前バージョンが発売された直後の事だ。先日発表された「Paint Shop Pro X」および「Photo Album 6」は、いずれもコーレルがJASCを買収して初めてのリリースとなる。

 同社国際マーケティング部ディレクターのダン・ワイズベック氏と、プロダクトマネジメント部デジタルイメージング ディレクターのマイケル・グリーンハル氏に、コーレルでの新しいPSPの出発と新バージョンについて話を伺った。

【お詫びと訂正】記事初出時、Paint Shop Pro XとPhoto Album 6の製品名を誤って記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。


ダン・ワイズベック氏
マイケル・グリーンハル氏

--- コーレルはグラフィック系アプリケーションの老舗として知られていますが、今回はPSPを擁するJASCを買収し、自社の製品ラインにおさめました。なぜコーレルはJASCを選んだのでしょう?

「ご存知のように我々はPainterという強力なソフトを持っています。しかし、PainterにはPSPのような強力な写真の管理機能やフォトレタッチといった機能はありません。そこでPainterに対して補完的な機能を持った製品を加え、そこにシナジー効果を生みたいと考えました。その目的のためにPSPはうってつけの製品だったのです」。


Paint Shop Pro X
--- コーレルはさまざまなユーザー層に製品を提供していますが、Painterはプロフェッショナルなデザイナー向けツールと言えるでしょう。しかしPSPは低価格という事もあり、エントリーユーザー向けというイメージが強い。今後はどのユーザー層に提供していきたいと考えているのでしょう?

「PSPは確かに低価格ですが、エントリーユーザー向けアプリケーションというわけではありません。エントリーユーザー、プロシューマ、趣味として写真を扱う人たち、そしてプロフェッショナルと、幅広いユーザー層をカバーできる適応範囲の広い製品です」。

「確かに他社のハイエンドプロダクトはもっと高価ですね。彼らはプロフェッショナルに特化した開発を行なっています。しかしコーレルはあらゆるユーザー層に製品を提供してきました。PSPに関して言えば、ビギナーにとっても使いやすく、プロフェッショナルにとってはパワフルな製品に仕上がりました。つまり、誰が使っても優れた製品ということです」。

--- JASCはシェアウェアであったPSPの開発で始まったコンパクトな企業でした。コーレルという大企業に買収された事で、組織として変化した要素はありますか?

「いえ、基本的な面では全く変化していません。相変わらずミネソタのオフィスにほとんどの開発スタッフがいますし、そもそも開発を担当しているメンバーは全く変わりません。商品の企画も同じです。しかし、会社の中の雰囲気が少し変わったとは言えると思います。コーレルは大企業で、JASCよりも遙かに大きな投資を行なえます。従来よりも予算が増えたことで開発の規模も拡大することができました。またさまざまな製品へのバンドルビジネスの可能性が増しました」。

--- 先日発表した新バージョンはコーレルのブランドで販売される最初のPSPとなります。どのような点をユーザーに評価して欲しいですか?

「ポイントは2つ。スピードとパワフルさです」。

「スピードに関しては、まずプログラムの起動が高速化された点を見て欲しいですね。新しいPSPは高機能なプログラムですが、ノートPCでも素早く起動できる軽さがあります。プログラムの起動シーケンスや構造を変更することで達成しました。もう1つ、作業が素早く行なえるという意味でもスピーディーな製品です。1度に行なう処理を1つの操作パネルにまとめるなど、操作ステップやワークフローの改善を行なっています」。

「もう1つのパワフルさ。PSPが持つ多機能さはそのままに、各機能やフィルタの実行速度は上がっています。さらにほとんどのフィルタが16bit色深度の画像モードで動作しますし、作業用カラースペースを選択したり、ICCプロファイルへの対応といったカラーマッチングへの対応も行なわれています」。


RAW画像を読み込むと、スマート修正が自動的に起動して、現像する画像を調整することができる
PSP Xではカラーマッチングに対応した

--- RAWファイルの現像機能はどうでしょう。デジタル一眼レフカメラの普及により、趣味でRAW現像に挑戦するユーザーも増えてきました。PSPのRAW現像機能の特徴は何ですか?

「PSPは多くのRAWフォーマットに対応していますから、どのカメラの写真でも透過的に扱うことが可能です。RAWというのは撮像素子が吐き出す生のデータで、そのままでは内容を確認することもできません。どのRAWファイルでも等価に扱える点はひじょうに便利でしょう。また現像速度も高速です」。

--- ライバルのアドビシステムズは、プロフェッショナル向けのRAW現像エンジンを普及価格帯の製品でも(パラメータはやや異なるが)利用しています。機能面でも一部には純正現像ツールを上回る面もあります。PSPのRAW現像機能はライバルと比較してどのような点が優位でしょう?

「RAW現像という作業は、実際にやってみるとマニアックなものです。しかし、カメラのユーザーが画像処理のエキスパートというわけではありません。我々は試行錯誤で良い絵を探すために多くの機能を提供するのではなく、望みの現像結果を誰もが得られるように、スマートでインテリジェンスな画像処理を目指しています。自動的に良い現像が得られるように、という方向で開発を進めています」。


--- つまり初級者に対して手厚くサポートする製品という色が濃い、高機能だがライトウェイトのフォトレタッチソフトということでしょうか?

「ライトウェイトというわけではありません。PSPはとても機能的で、ユーザーの幅はとても広い。現在、我々がターゲットとしているのは、初級から上級に至るまで、あらゆるデジタルカメラユーザーです。カラーマッチングへの対応などに見られるように、中級者や上級者にも対応できる多機能さを持っている上、初級者にも優しいというアプローチです」。

--- 具体的にはどのようなアプローチで、それを達成しているのでしょう?

「ユーザーはソフトウェアを使いこなす事が目的ではなく、何らかの画像処理が目的です。目的が決まっているならば、初級か上級かといった習熟度のレベルに関係なく、最も適した道筋で機能を使えるようにすればいい。PSPは目的に応じた処理の道筋が見える作りにしました。またラーニングセンターというインターネット上のユーザーガイドコンテンツと連携しますから、初級者が学習しながらフォトレタッチに対する知識を深めていけます。ユーザーに道筋を示しながら操作してもらう機能は、ユーザービリティテストを徹底的に行なった結果生まれたものです」。

--- 前回、インタビューした際にもユーザービリティテストの話が出ていましたが、そのときには日本ではテストを行なっていないということでした。日本人の考え方に合った製品を作るには日本でのテストも必要ではありませんか?

「確かに現時点ではミネソタの本社でしかユーザービリティテストを行なっていませんが、我々は日本が特別な市場であると認識しています。デジタルイメージングに関して、トレンドの最先端を進んでいるからです。コーレルの日本法人が誕生した事で、以前から望んでいた日本でのユーザービリティテストも行なうようになるでしょう」。

--- PSPにはシェアウェア時代からの長い歴史があります。当初は画面キャプチャや簡単なビットマップ操作のツールでしたが、現在はデジタルカメラユーザーの道具へと変化してきました。今後、PSPはどのように進化していくのでしょう。

「それはユーザー次第です。我々はユーザーの声をよく聴きながら、現在の製品を形にしてきました。これからもユーザーからの声をよく聴き、それらを反映した製品にしていきたいと考えています。コーレルはこれまでも、ユーザーの声を最重要視してきました。そして、それはこれからも同じです」。



URL
  コーレル
  http://www.corel.jp/
  ニュースリリース
  https://www.corel.jp/pressroom/pr20050831.html
  製品情報
  http://www.corel.jp/product/paintshoppro/

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( 本田 雅一 )
2005/09/08 01:02
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