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エプソン、新社長にピエゾヘッド生みの親の碓井常務

~2007年度は減収増益

新社長の碓井稔常務取締役(左)と花岡清二社長
 セイコーエプソン株式会社は30日、新社長に碓井稔常務取締役が就任する社長人事を発表した。6月25日に開催される定時株主総会、取締役会を経て、代表取締役社長に就任することになる。

 花岡清二社長は、代表取締役会長に就任する。また、代表取締役会長の草間三郎氏は、取締役を退任し、相談役に退く。

 都内のホテルで行なわれた会見で花岡社長は「3年前に社長に就任し、デバイス事業と完成品事業が両輪となることを目標に取り組んできた。だが、2005年度にはその両輪が、いきなり変調を来したことを昨日のように思い出す。中期経営計画を立てて、今日に至るまで取り組んできた。情報機器事業では、コンシューマ向けインクジェットプリンタ事業が安定したものになり、ビジネス、産業といったインクジェット事業における新たな事業領域も開拓してきた。インクジェットプリンタの方向感が見えてきた段階にある。また、デバイス事業は半導体、液晶ディスプレイともに、構造改革を進めてきた。この点ではまだ道半ばだが、大きな意味で方向感が見えてきた。企業経営は終わりのない駅伝レースのようなもので、次の走者に、どのタイミングで、どのフェーズで、どういう風にバトンタッチをするかが鍵になる。2008年度は、中期経営計画の最終年度となるが、エンジンを全開にして事業展開を進めていく年ともいえる。また、2009年度、2010年度には、21世紀を生き抜く基盤づくりが求められ、今後、エプソンを安定成長させるための新たな事業領域を開拓する製品、技術を育てることが急務となっている。21世紀のエプソンの姿を確固たるものにするには、ここでバトンタッチするのが最適だと考えた」と語る。


花岡清二社長
 碓井氏を次期社長に指名したのは「ピエゾヘッドは、次代を切り開いていくという観点で最も重要な技術。ピエゾヘッドの生みの親である碓井さんは、最も適任。製品、技術を語らせたら、エプソンの中で右に出るものはいない」とした。

 花岡社長からは7歳の若返りとなり、セイコーエプソンとしては歴代最年少での社長就任となる。「年齢ということはとくに気にしていない。これからのエプソンを考えたときに、適任者は誰か、ということで選んだ。昨年12月頃から、次のフェーズをどうするかということを考えはじめた結果、碓井さんに新たなリーダーとしてエプソンを引っ張ってもらうのがいいという結論に至った」と花岡社長は語る。

 一方、新社長に就任する碓井常務取締役は、1955年3月、長野県出身の53歳。1979年に東京大学工学部を卒業後、半年間、別会社に勤務したのち、同年11月、信州精機(現・セイコーエプソン)に入社。ピエゾヘッドの開発などに従事する。2002年に取締役に就任。その間、情報画像事業本部副本部長、生産技術開発本部長、研究開発本部長を歴任。2007年10月、常務取締役に就任。現在では、研究開発本部長および生産技術開発本部長を兼務している。


碓井稔常務取締役
 社長就任を打診されたのは、1カ月半前、長野県諏訪市にあるセイコーエプソン本社の社長室で。「打診を受けたときには、青天の霹靂で、言葉を失った。まだ53歳なので、もう少し、研究開発本部や生産技術開発本部で、いろいろなことをやらなくてはいけないと思っていた。だが花岡社長から、“エプソンは、新しい商品を出す新たなフェーズに入っている。その先頭に立ってくれ”と言われた。ここ数年、花岡社長が、構造改革に取り組み、新たな事業領域に対する舵取りをしてきた。それをベースに、新たなフェーズでの成長に、社員全員で取り組んでいく。エプソンは、これまでにも独創の技術、独創のものづくりによって、成長してきた会社。自ら考え、人真似ではない技術で世の中に貢献してきた。インクジェット技術、プロジェクター技術、水晶振動子、有機EL、精密加工技術などは、すべてエプソン固有の技術であり、これらの独創的な技術を、人にとって価値のある形に変えて、世の中に貢献するのが私の役割。また、現場の強さもエプソンの特徴。私自身も、マイクロピエゾヘッドの開発では、熟練の技能者の助けを得るとともに、販売現場の絶え間ない努力にも助けられた。独りよがりではない技術に徹し、自由闊達な社風を生かし、総合力を生かした一体感のある会社にしていきたい」と抱負を述べた。

 碓井氏の座右の銘は、「究めて、極める」という自身の言葉。「究極」という熟語にもなる。「ターゲットを絞って、そこに徹底的に取り組む、必ずやり遂げるという意味。ピエゾヘッドの開発も、この気持ちで取り組んできた」として、今後の経営に、この考え方を取り入れる姿勢を示した。

 なお、セイコーエプソンでは、今回の社長交代の理由を、プレスリリースで次のようにしている。「2008年度を最終年度とする中期経営計画である創造と挑戦1000に基づき、事業および商品ポートフォリオの変革やデバイス事業構造改革などの諸施策を展開し、業績の回復に取り組んできた結果、情報関連機器事業はマイクロピエゾ技術を核にビジネス・産業分野への事業拡大の足がかりを築き、電子デバイス事業は今後の事業展開の方向性を定めたことなど、一定の方向付けができたことを示し、改革の成果をより盤石なものにするために、将来の新規事業領域の開拓や、新商品創出に向けた中長期基本構想を新たな視座でまとめ、新社長のリーダーシップによる、その実現を図るための社長交代である」。


2007年度決算は減収増益に

久保田健二常務取締役
 一方、同社は、2007年度連結決算を発表した。

 売上高は前年比4.8%減の1兆3,478億円、営業利益は14.4%増の575億円、経常利益は28.9%増の632億円、当期純利益は前年のマイナス70億円の赤字から、190億円の黒字に転換した。

 インクジェットプリンタを含む情報関連機器事業セグメントの売上高は、前期比1.5%減の9,029億円、営業利益は1.1%減の832億円。

 同社経営管理本部長の久保田健二常務取締役は、「インクジェットプリンタは、マルチファンクションプリンタの数量増加や円安効果があったが、低価格機種の増加による影響を受け、情報関連機器事業セグメントは減益になった」とした。

 プリンタ事業の売上高は、2.6%減の7,612億円となった。2007年度のインクジェットプリンタの出荷台数は約1,500万台、2008年度は1,600万台を目指すという。

 電子デバイス事業セグメントの売上高は、前年比11.1%減の3,951億円、営業利益はマイナス171億円。精密機器事業セグメントは、売上高は前年比4.4%減の839億円、営業利益は23.6%減の27億円となった。


2008年度中にも新中期経営計画を発表へ

 また、2008年度の業績見通しは、売上高は前年比3.5%減の1兆3,000億円、営業利益は5.9%増の610億円、経常利益は0.4%減の630億円、当期純利益は62.4%増の310億円とした。

 情報関連機器事業セグメントの売上高は前期比3.2%減の8,740億円。そのうち、プリンタ事業の売上高は4.4%減の7,280億円。

 電子デバイス事業セグメントの売上高は前年比6.4%減の3,700億円。精密機器事業セグメントは、売上高は前年比4.9%減の880億円とした。

 また、同社では、現在、中期経営計画「創造と挑戦1000」に取り組んでいるが、「2008年度中にも、新たな中期経営計画を発表する予定」(久保田常務取締役)とした。



URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  IR情報
  http://www.epson.jp/IR/
  ニュースリリース(社長交代)
  http://www.epson.jp/osirase/2008/080430_2.htm

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セイコーエプソン、構造改革費用の影響で2期連続の最終赤字(2007/04/26)


( 大河原 克行 )
2008/04/30 19:45
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