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IDFでフォーカス範囲・位置を後からコントロールできるソフトウェア技術が披露


Light Field Photographyと通常の写真の違い
【お詫びと訂正】当初掲載した記事には誤りが含まれていました。この記事はコンピュータ技術者向け会議だったため、光学仕様に関してのアナウンスがなく、EOS DIGITALとEFレンズで撮影していました。しかし読者の指摘を受けて調査したところ、このEOS DIGITALのボディとレンズの間には特殊なマイクロレンズが挿入されているようです。お詫びして訂正をいたします。(2008年4月4日0時25分)

 PC向けプロセッサベンダーの米Intelが中国・上海で開催している開発者向け会議「Spring Intel Developers Forum 2008」の基調講演で、デジタルカメラユーザーにも興味深い技術がデモンストレーションされた。「Wavelet Relighting」という技術を用い、ボケた写真から本来のディテールを作り出すという技術である。

 デモを行なったのは米Refocus Imaging創業者で中国人のRen Ng氏。Reforcus ImagingのWebサイトに中国のインターネット網からアクセスできないため、同社の詳細は判らないが、スタンフォード大学で研究していた成果を元に北米で起業したという。

 Light Field Photographyと名付けられた技術は、写真データから光跡を追い、本来、そこにある被写体の姿を演算で求めるというもの。光学的なボケは、我々の目には単なるボケた情報のない映像にしか見えないが、実際には周囲の光と混ざり合っているだけで、完全に情報が失われているわけではない。複数の微妙に違う視点からの像から分析処理を行うことで、復元が可能だという。Refocus Imagingの技術では、レンズの光学特性や画角、ピント位置などから光跡を追いかけ、微妙に異なる視線からの映像を比較することで後処理で自在にピントの合う範囲を変更することができる。

 デモではキヤノン製とみられるデジタル一眼レフカメラを用い、モデルを距離の異なる3カ所に配置。撮影後に写真を取り込み、30~40秒後には解析を終え、ソフトウェアの操作で任意のモデルのピントを合わせたり、あるいは画面内のすべてにフォーカスを合わせるといった様子が、リアルタイムで変化するところを見せた。


被写体からの光を逆方向に追跡することで、本来のディテールを復元する

本来は真ん中の女性にピントが合っている写真だが、ここでは奥の女性にピントを合わせた こちらは全女性にピントを合わせたところ。解析後は瞬間的に映像が切り替わる

 1画素を決定するために多数の光跡を追跡しなければならない重い処理でも、最新の8コアプロセッサシステムならば、実用的な速度で動作するというデモ。もちろん、将来的には普通のPCでも処理可能になっていくだろう。

 デモやその後の質疑応答では触れられていなかったが、この技術を使うためには、レンズとセンサーの間に専用のマイクロレンズアレイを挟む必要がある。マイクロレンズアレイを用いることで、隣接する画素に届く光跡の平行さの度合いを検出可能にすることで、カメラの被写界深度を拡げるという。

 取材現場では基調講演でのデモ以外にRefocus imagingの出展はなく、マイクロレンズの仕様や細かな理論については現時点では判らない。

 これまでは絞りを変えることで被写界深度をコントロールしていたが、この技術が一般化すれば、後処理でフォーカス位置や被写界深度を自由に変更可能になる。処理画質に関する評価なども今後は必要だろうが、写真撮影の手法を大きく変える可能性がある。同技術はもちろん、被写界深度を浅くする方向にも利用できる。不必要に明るいレンズでボケを稼ぐことも、暗い場所で被写界深度を確保するために三脚を使ってスローシャッターを切る必要もなくなり、撮影者はシャッターチャンスに集中できるようになる。

 さらにデジタルカメラにこうした技術が搭載されるようになれば、ピンボケによる失敗写真を自動補正することも可能になるはずだ

 加えて興味深いことに、この技術を用いると正確に被写体までの距離を計測できるため、1ショットの写真から3Dモデルを製作することが可能になるという。この技術を用いれば、3Dカメラを用いなくとも、正確な3D映画を制作できるほか、既存映画の3D変換にも応用できるだろう。


別の例では橋の上に並ぶ観光客の写真でフォーカス位置を変えて見せていた 手前の女性から奥の女性にフォーカスを変えたところ


URL
  Refocus Imaging
  http://www.refocusimaging.com/about/
  Intel
  http://www.intel.com/
  IDF
  http://www.intel.com/idf/

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( 本田 雅一 )
2008/04/03 16:00
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