現在、シンセン工場では、デジタル一眼レフ専用のスタンダードレンズが製造されている。それらは「Zuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6」、「Zuiko Digital ED 40-150mm F4-5.6」、「Zuiko Digital ED 17.5-45mm F3.5-5.6(現在は海外専用モデル)」、「Zuiko Digital 35mm Macro」の4本だ。E-410の売れ行きが予想以上に好調なため、レンズキットに同梱されるZuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6 とZuiko Digital ED 40-150mm F4-5.6の2本のレンズは増産がかかっている。特にZuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6 は大増産中で、5月末現在は製造ラインが通常の2倍に増やされている。
デジタル一眼レフ用交換レンズは最高レベルのクリーンルーム内で組み立てる
レンズユニット製造では、レンズの研磨から組み立てまで一貫した生産が行なわれている。研磨機械は日本製で、モールド成形用ペレットや研磨剤などの消耗品の一部は日本と同じ機能をもつ中国製を使用し、従業員はすべて中国人。まさに日本と中国の合作である。実際、レンズの鏡枠などの開発・設計は日本側の責任で行なわれるが、射出成形される製品の金型は設計から製造まですべて中国側の責任で行なわれている。
シンセン工場は、現在のところ「Zuiko Digital ED 300mm F2.8」のようなスーパーハイグレードレンズやハイグレードレンズの製造は担当していないが、それは研磨技術や作業精度だけの問題ではない。同レンズ群は耐久性を出すために多くの金属パーツを採用している。そこで、中国はスタンダードレンズという大量生産に向いたレンズを製造して、日本では少量生産レンズを製造するという役割分担ができあがっている。
「Zuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6の製造を準備し始めた頃はデジタル一眼レフ用交換レンズの製造というプレッシャーから、少し心配もありました。しかし。実際に製造を開始してみると組み立て不良もなく、予想を遙かに超え得る成果を喜びました。ただ、検査工程の授業員たちの目が良すぎることから、基準値を遙かに下回る小さな問題まで発見してしまうので、気を付けないと過剰品質となってしまうという、まったく予想しなかった問題が発生したのには驚きました。せっかく約1万人以上の従業員がいるのだから、彼らの智恵を活用しないのはもったいない。苦労したが今では従業員たちのモチベーションも高く、年間生産台数100万台も決して得難しい目標ではありません」。
マイスターとは、オリンパス社内で特級クラスの研磨技術をもつと認められたごく一部の従業員に与えられる称号で、具体的には受注生産レンズの中でも最高のテクニックが要求されるZuiko Digital ED 300mm F2.8の前玉レンズを研磨することが許された、選ばれた者達のことだ。このレンズの前玉は、東京ドームほどの大きさに拡大したとしても、研磨誤差は髪の毛1本以下という精度が達成されているという。