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【インタビュー@Photokina 2006】
階調表現が写真の表現力を決める

〜富士フイルムのデジタルカメラ事業について聞く

 デジタルカメラのカテゴリでは、顔認識機能と高感度を前面に押し出した展示を行なった富士フィルム。日本では未発表の顔認識機能付きFinePix F30ともいえるFinePix F31fdは、日本の消費者にとっても注目の製品となるだろう。加えてセンサーを最新の技術で再設計し、D200と共通性が高いと見られるボディに身を包んだFinePix S5 Proもアナウンスされた。

 前回のPhotokinaに比べ、感材メーカーの存在感が薄くなった今回のPhotokinaにおいても、前回同様に幅広い展示を行なった富士フイルムのデジタルカメラ事業について、電子映像事業部 生産部長兼商品部部長の守内篤氏、電子映像事業部 営業部担当課長の岩田治人氏に話を聞いた。


守内篤氏(右)と岩田治人氏
−− エンドユーザー向けのカメラから業務用機材まで、幅広い展示を行っている富士フイルムですが、その中から日本のカメラユーザーに紹介したいポイントを絞ると、どのあたりになるでしょう。

 「我々が是非とも伝えたいのは、センサーと独自映像プロセッサを組み合わせて実現している“高感度”を、きちんとユーザーのベネフィットに転換して提案していること。それに専用プロセッサを用いた高速の顔認識と、それを基礎に富士フイルムならではの露出制御を行なっていること。さらに、これらの機能を搭載したコンパクト機とネオ一眼の使い勝手を、是非とも伝えたい。もちろん、新型一眼レフカメラのFinePix S5 Proにも自信を持っています」。

−− PMAでのお話では、日本では比較的高感度の魅力が拡がってきているが、米国ではこれから認知を広げたいと話していました。欧州ではいかがでしょう?

 「我々が手ブレ補正機能ではなく、高感度化技術に特化して技術開発を行なっているのは、高感度こそが写真撮影の幅を広げると考えているからです。フィルム時代にも、高感度時の画質を向上させることで、一般消費者に様々な提案を行なってきました。日本では、そのイメージがいち早く浸透しましたが、もともと海外では時間がかかるだろうと思っていました。しかし継続的に高感度の優位性を訴えてきたことで、かなり手応えを感じはじめています」。

−− 高感度というと、日本でも手ブレを防ぐため、暗いところでも撮影しやすいといった表面的な部分での認知が、まだまだ強いように思います。実際にはナチュラルフォトモードに見られるように、自然光を活かした撮影やスローシンクロの使いやすさなど、まさらに撮影の幅が拡がるところが高感度の本質的なメリットですよね。その点はエンドユーザーやディーラーにも伝わっていると思いますか?

 「確かに高感度を起点にした、撮影時の様々なメリットに関しては、言葉だけではなかなか伝わらないところもあります。そこで営業の現場では、実際の撮影シーンを想定した比較事例などを多数用意し、我々の考えを浸透させようと努力しているところです。実際の利用シーンに沿って説明することで、欧米のディーラーにも高感度の本質的なメリットを理解していただけるようになりました」。

−− 実際にF30などに触れてみると、やはりナチュラルフォトモードやiFlashなど、実際に使ってみて便利な機能が多いのはわかりますが、初級者までには伝わりにくいところもありますよね。

 「コンパクトデジタルカメラは買い増し、買い換えのバイヤーが5割以上を占めます。そうしたユーザーがこれまでに経験している撮影時の不満や、上手に撮影できるだろうかといった不安を解消していくことで、少しづつ根付いていけばと思っています。顔認識機能に関しても、やはり実質的な撮影結果の改善を目標にしており、認識することそのものが凄いんだよというわけではありませんから、こちらも粘り強くやっていく必要があるでしょうね」。


FinePix F31fd
−− 顔認識機能を専用LSIとして実装しているのは、今のところ富士フイルムだけです。LSI化まで必要かな? という疑問もありますが……。

 「我々はDPE業者向けのラボ機材を以前から提供してきました。その中にイメージインテリジェンスという技術を組み込んでいたのですが、顔認識はその技術を応用しています。ソフトウェアで処理を行なうことも可能ですが、その場合は認識速度や追従性などに問題が出るでしょう。高速かつ高精度に、実用に耐えうる機能として実現するには、LSI化が必要不可欠だったのです。フォーカスの中抜けや適切なストロボ調光など、ユーザーに負担をかけずにフルオートで好ましい仕上がりを得ていただくには、業務用ラボ機並の機能と精度が必要です」。

−− 実際にその動作を見ると、認識の速さと追従性の良さに驚きます。シャッターを半押しにしなくとも、ライブビューにリアルタイムで顔認識フレームが表示され、そのまま人を追いかけていく。これだけの顔認識機能を、どのように活用しているのでしょう。

 「映像をキャプチャしてから最大10人の顔を0.05秒で認識完了します。シャッターの半押しという操作方法になじんでいないユーザーにも、きちんと使いこなしていただくために、アニメーションで常に追従するようにしています」。

 「具体的な活用ですが、基本的にはAFと自動露出制御への活用です。これまでの顔認識機能付きカメラは、ほとんどAFにしか用いていませんでした。しかし、フォーカスが合っても逆光などで顔に露出が合わなければ意味がありません。顔を検出し、正しくAFし、正しい露出で撮影できる。ここまできて、初めて顔認識が活きてきます。最終的に得たいのは良い写真ですから、顔認識は単なる技術への入り口です。顔を認識し、高感度やiFlashと組み合わせて最良の絵を出す。高感度やiFlashと、今回の顔認識は切り離せるものではなく、理想を追いかける上での一連の技術的な流れのひとつということです」。

−− ここまで顔検出速度が向上してくると、将来はさらに進んだことができそうな気がします。たとえば目つむりを検出して警告を出すとか、複数枚を撮影して全員の目が開いているものを選んでくれるなど、様々な応用例がありませんか?

 「将来は顔検出ではなく、顔認識まで発展させようとしています。さらに顔を中心にホワイトバランスを合わせるAWB、AF追従、赤目の自動補正、さらに顔のみを抽出してディスプレイするなどのアイディアを実装していきたいと思います」。

−− 高感度やこれら撮影の幅を広げる機能に加え、さらにメカニカルな手ブレ補正もあれば、競争力はさらに高まると思いますが、その点はいかがでしょう?

 「我々も研究開発を行なっていないわけではなく、ノウハウも社内には蓄積しています。しかし現時点では、メカニカルな手ブレ補正機能の搭載は検討していません。さらに高感度時のノイズを抑えることに注力していきます」。


FinePix S5 Pro
−− 今回、展示されたS5Proの試作機ですが、これまでになくカメラ部とデジタル部が融合し、完全に1台のカメラになったという印象です。デザインがD200によく似ているのですが、これはD200を基礎にデジタル部を富士フイルム独自のものに置き換えたと考えていいのでしょうか?

 「確かに外装は近いのですが、中身は全く異なります。また、S3 Proと同じ画素数についても指摘されることが多いのですが、CCDは新開発のものです。CCDの設計も、それを処理するプロセッサも、すべて新しいものになり、ノイズ感やモアレ、肌色の階調など、これまでも高評価をいただいていた部分がさらに大きく改善されました。ISO感度は3200まで使えます」。

 「特に階調性の改善は大きなものです。肌のトーンが滑らかに描かれるのはもちろんですが、水平線から空に向けてのグラデーションなど、階調のジャンプが起きやすい部分でも、S5 Proは自然な階調を出せます。ネガフィルムの広いラティチュードを活かし、印画紙に滑らかな階調を描くように、スーパーCCDハニカムSR Proの広いダイナミックレンジを活かした絵の作り方をさせました」。

 「さらに顔認識LSIも搭載しています。これは撮影した人物写真の表情やピントなどを素早く確認するためのものです。顔をクローズアップさせるボタンを押すと、トグルで表示している画像の顔部分を適切なサイズで自動表示します」。

−− S3 Proはその絵には大きな魅力があったのですが、しかしあまりエンドユーザーには広くプロモーションを展開していない印象もありました。今回のモデルはカメラ部のメカ性能が大幅に向上していることもあり、もう少し幅広いユーザーに向けてもプロモートしようとは思いませんか?

 「今までも写真スタジオだけでなく、アドバンストアマチュアや広告写真の世界にも提案はしてきたつもりです。アマチュアカメラマンに対しても、解像度だけでなく階調表現の大切さをアピールしていきたいですね。階調表現こそ、写真の表現力を決める大きな要素だと考えています」。



URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.jp/
  Photokina 2006
  http://www.koelnmesse.jp/photokina/

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( 本田 雅一 )
2006/10/01 01:26
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