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イメージングシステム事業部 事業部長 鳥越興氏
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K100Dのヒット、それにK10Dの前評判の高さ、それにコンパクトデジタルカメラのラインナップ整理が進み、すっかり元気を取り戻した感のあるペンタックス。すでにイベント会場での取材ではお馴染みのイメージングシステム事業部・事業部長の鳥越興氏に、デジタルカメラ事業の近況についてきいた。
-- 何度もPhotokinaには足を運ばれているでしょうが、今年のPhotokinaはどんな点が特徴でしょう?
「感材系メーカーのブースがずいぶんと小さくなりました。アグファがなくなり、コダックも以前の1館すべてを埋め尽くす巨大ブースが見られません。それに対抗していた富士フイルムも一般的なブース面積となり、一方でカメラメーカー各社のブースが大きくなっています。こうした点が、すでに大きな状況の変化を示しています」。
-- ペンタックス自身の変化についてはいかがでしょう?
「前回のPhotokinaでの反省材料は、積極的に何を訴えたいのかわからないブース作りだったことです。なぜか? それは製品に問題があったからですよ。自分たちの製品に圧倒的な自信がない。だから、Photokinaで明確なメッセージを出し、何を訴求するのかを、自分たちで見つけることができていなかった。その点を、今回のPhotokinaでは大きく変えるように舵を取ったつもりです」。
-- ということは、今回は提案性だけでなく、そもそもの商品力に自信アリということでしょうか?
「もちろん。だからこそ、自分たちの自信を明確に来場者に感じてもらえるような、訴求点を明確にしたブース作りをしました。今までは商談用スペースばかりを重視し、そこを覆い隠すような構成だったブースを、もっと開放的にした上で、来場者に積極的に製品に触れ、感じてもらえるよう配慮しています」。
-- 具体的に、どのような点を見て欲しいのでしょう?
「モチベーションとカメラに対する取り組みの気持ちです。方針とは、一眼レフカメラの良さ、魅力を多くの方に知ってもらうことです。デジタルカメラはコンパクトタイプから始まり、やっと一眼レフが一般化しました。やっとここで大きく花開く時代に入りました。そうした中で、遅ればせながらではありますが、やっとペンタックスならではの、ペンタックスらしい製品が実を結んで来ています」。
■ Kマウントのハイエンド機も投入する
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K10D
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-- 具体的ににはKデジタルシリーズですね。
「K100D、K10Dの2製品は、まさに一眼レフカメラにこだわり続けてきたペンタックスのビジョンを具現化した製品です。今回はたまたまですが、Photokinaの開催される年の7月にエントリークラスのK100D、そして秋にはハイアマチュアクラスのK10Dを発売することができました。しかし、これで終わりではありません。エントリークラスから順にハイエンドへと、新しい製品を投入していくシナリオを描いています」。
-- ここでいうハイエンドとは、中判デジタルカメラのことでしょうか?
「いえ違います。Kマウントを採用するカメラとして、ハイエンド製品を投入します。先に申し上げておきますが、ハイエンドだからフルサイズということではありませんよ。名実ともにフラッグシップと言える機能と性能を有するカメラを投入するという意味です」。。
-- 順番から言えばK1Dになるのでしょうか?
「Kシリーズであることは確かです。もちろん、K1Dという名前も選択肢のひとつですが、K20DもあればK30Dも開発するでしょう。名前については憶測を呼ぶでしょうから、ここでは言及しませんが、ユーザーがエントリー機から順にステップアップしていけるよう、きちんとトップエンドのモデルを用意するということです」。
-- 2月のPMA 2006では、後のK10Dとなる製品のモックアップは展示されていましたが、しかし全体としてはやや積極性に欠ける面が感じられました。あれからたった7カ月で、ずいぶんと勢いに変化が出たように感じます。何が変わったのでしょう?
「2月の時点では、質問されるまでもなくペンタックスの事業全体に不安感がありました。それは外部だけでなく、内部的にも不安感があったのです。しかし良い製品が投入でき、それが市場で受け入れられたことで、社員のモチベーションが上がってきました。PMAからたった7カ月ですが、しかし社内の士気は全く違います。若い開発者たちは、次はどんなものを作ろうかと、活き活きと目を輝かせている」。
「社内的にも開発者が、新しい製品へとチャレンジできる環境ができてきました。Kシリーズのコンセプト、目指すところといった軸をぶらさず、みんなが同じ価値観を共有しながら、非常にエネルギッシュに製品開発に取り組んでいます。近年ではもっとも充実した時期だと思います」。
■ レンズ開発もスピードアップ、2007年中に10本投入
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DA 21mm Limitedを装着したK100D。個性的なレンズもペンタックスの魅力
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-- Kデジタルシリーズが受け入れられた要因は何でしょう。
「一眼レフカメラのプラットフォームはペンタックスだけでどうこうするものではなく、顧客とともに育てていくものだと思います。顧客とのコミュニケーションの中で、新しいニーズが生まれ、顧客も我々も成長することで上位の製品が生まれてくる。K100もまさにそうしたコミュニケーションから生まれたものです。本当にユーザーフレンドリーな、誰もが一眼レフカメラを楽しめる製品とはどのようなものなのか。小型軽量、必要最小限なものを外せない。防振はレンズではなく従来資産を活かせるボディ内など。その判断はメーカー側の視点で独断的に行なうものではなく、ユーザーとともに最適な判断をしていく。こうした我々の姿勢がユーザーに受け入れられたのだと思います」。
-- K100Dはヒット商品になりましたが、一方で新規ユーザーが急増しているにもかかわらず、非常に多くのレンズがディスコンで入手不可能になってきています。レンズの非鉛化が遅れたことが原因だと思いますが、なぜこのような結果が生まれてしまったのでしょう?
「それは本当に頭の痛いところです。事業として苦しかった時期が続いたことで、本来ならば少しづつリフレッシュしながら非鉛化を進めなければならないにもかかわらず、手つかずのまま有鉛時代のレンズが残っていました。状況を打破するためにも、レンズの開発パワーを再検証する必要があります」。
-- 具体的に手は打っているのでしょうか?
「現在、ロードマップには10本のレンズがあります。もちろん、これらは2007年中には発売していきますが、それだけでは少なすぎると考えています。従来のペンタックスのレンズ開発ペースからすると、遙かに多い本数のレンズを揃えていきます」。
「我々の原点は光学メーカーであることです。レンズはペンタックスという企業の命。強い決意を持って、レンズ開発のスピードアップに取り組んでいます。もっともっと、顧客が必要としているレンズは数多くあるのですから、それに応えられる体制を整えているところです」。
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トキナーと共同開発したレンズ「smc PENTAX-DA FISH-EYE 10-17mm」
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-- 具体的な数字として、社内の目標はあるのでしょうか?
「ソニーがαレンズを21本開発すると話しています。これも大変な数ですが、私個人の気持ちとしては、もっとたくさん出したい。具体的な数は言えませんが、そうした意気込みはあるということです。さらにもう一度、構造改革を実施して、レンズ開発の体制を強化します」。
-- トキナーとの共同開発も、さらに推し進めるのでしょうか?
「トキナーとは、レンズの共同開発を今よりもさらに密にしていきます。言い換えれば、他社との協業にしても、積極的な製品開発にしても、製品が売れて事業が好転しているからこそできることです。それほど我々の状況は明るくなってきました。レンズで夢を語れるようになった。そんな会社に生き返ったのです」。
「これは我々経営側が喜んでいるだけではありません。トップダウンで開発の加速を押し付けているわけでもない。社員自らが盛り上がっているんです」。
■ 選ばれた側として、きちんと応えていく
-- 今回のPhotokinaでの展示は大成功のようですが、次のPhotokinaに向けてペンタックスはどのようなことに取り組んでいく必要があるとお考えでしょう。
「まずは、エントリーユーザーに対して適切な製品を整備していくことです。エントリーユーザーが、いつかはハイアマチュアユーザーになってくれるよう、メーカーとしても消費者とコミュニケーションしていきたい。また、次のPhotokinaまでにはレンズラインナップも再度、完成させる必要があります。ボディ、レンズ、アクセサリ。この3要素は一眼レフカメラ事業を行なう上で、絶対に外せない要素です。ペンタックスを選んでくれる顧客がいる。選ばれた側として、きちんとそれに応えていくこと。これが次の事業プランです」。
「さらに顧客とのリレーションシップを深めるため、フォトセミナーを積極的にやっていきたい。従来は、これからユーザーになってくれるお客様に対し、セミナーなどの投資を行なうばかりでした。しかし、購入していただいたお客様に対して、より写真を好きになり、さらに上達したいと考えるようなセミナーを無償で提供していきます。女性ユーザー、かつてカメラの使いこなしを諦めたお年寄りの再挑戦ユーザーなど、さまざまなユーザーが写真をライフスタイルの一部として楽しめるようにしていく。そうした事業もきちんと行なっていきます」。
■ URL
Photokina 2006
http://www.koelnmesse.jp/photokina/
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・ 【インタビュー】デジタル一眼に必要な要素のすべてに取り組む(2006/02/27)
( 本田 雅一 )
2006/09/28 01:38
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