デジカメ Watch
最新ニュース
【 2016/01/26 】
【 2016/01/25 】
【 2016/01/22 】
【 2016/01/21 】
【 2016/01/20 】

エプソン、2005年度は最終赤字に

~今年度はインクジェットプリンタの体力を整える年に

久保田健二常務取締役経営管理本部長
 セイコーエプソン株式会社は、2006年3月期連結決算および2007年3月期の業績予想を発表した。

 これによると、2006年3月期の連結売上高は、前年比4.7%増の1兆5,495億円、営業利益は71.7%減の257億円、経常利益は67.2%減の279億円、当期純利益はマイナス179億円の最終赤字となった。

 情報関連機器事業においては、同社の主柱事業と位置づけられるインクジェットプリンタが、価格低下とシングルファンクションプリンタの数量減少の影響を受けたものの、複合機やレーザープリンタの数量増加、さらにビジネス向け液晶プロジェクターの数量増加がプラスに影響。同事業の売上高は、前年比3.2%増の9,726億円と増収となった。しかし、インクジェットプリンタの価格低下の影響が大きく響き、営業利益は前年比26.9%減の450億円と減益になった。

 電子デバイス事業は、アモルファスシリコンTFT液晶ディスプレイと、低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイが大幅な数量増加となり、ディスプレイ分野で増収。さらに水晶デバイス事業における東洋通信機との事業統合の影響もあり、売上高は9.2%増の5,269億円と大幅な増収となった。しかし、液晶プロジェクター用の高温ポリシリコンTFT液晶パネルの減収や、携帯電話向けカラーSTN液晶ディスプレイ、システムLSIおよびLCDドライバの減収によって、営業損失はマイナス97億円の赤字となった。

 なお、精密機器事業は、売上高が前年比5.7%増の857億円、営業利益は3.5%減の23億円となった。

 花岡清二社長体制での1年目は、厳しい業績になったといえよう。


今年は増収増益を予想

セイコーエプソン ブランド・コミュニケーション推進部の花岡敏雄部長
 一方、同社では、2007年3月期の業績予想として、売上高で前年比0.4%増となる1兆5,550億円、営業利益で55.3%増となる400億円、経常利益は42.9%増の400億円、当期純利益は黒字転換の140億円の計画を掲げた。

 増益の要素としては、中国市場向けのドットマトリクスプリンタの販売拡大、プロジェクターの販売施策の強化による売り上げ拡大をあげている。

 事業セグメント別では、情報関連機器事業の売上高が前年比3%減の9,480億円、営業利益が16%増の520億円。電子デバイス事業の売上高が4%増の5,500億円、営業利益は黒字化して10億円。精密機器事業の売上高が5%増の900億円、営業利益は74%増の40億円としている。

 注目されるのは、同社の主柱事業とされているインクジェットプリンタ事業への取り組みである。

 久保田健二常務取締役経営管理本部長は、「2006年は、インクジェットプリンタの体力を整える年」と位置づけ、「数量の絞り込みなどを行なうことで、損益は前年並みを予定している。情報関連事業の増益は、レーザープリンタ、ヒジネスシステム、映像関連といったインクジェットプリンタ以外の事業が貢献することになる」と語る。

 実際、インクジェットプリンタの全世界向けの出荷計画は、「2005年度実績の1,690万台に対して、約10%減で想定している」(セイコーエプソン ブランド・コミュニケーション推進部の花岡敏雄部長)とマイナス成長を予定。また、インクカートリッジの出荷本数も、2005年度実績の前年比13%増という伸び率に対して、「2006年度は、前年比8%増程度を見込んでいる」(久保田常務取締役)と伸び率が鈍化すると予想している。

 プリンタ本体の機種の絞り込みについては、「製品戦略に関わることであり、明確にはできない」としたものの、「低付加価値の製品は絞り込んでいくことになるだろう。ただし、欧米では戦略的な絞り込みを行なうが、日本での製品の絞り込みについては慎重に対応していきたい」とも語った。

 インクカートリッジの伸び率の鈍化については、非純正インクが欧州市場やアジア市場で広がっている影響が見逃せない。

 「知財戦略や技術的優位性を訴えることで対抗する」(久保田常務取締役)とするものの、非純正インクの世界的な拡大は、同社の2006年度事業計画にも何らかの影響があるとして、盛り込まざるを得ない状況にあるのも事実だ。収益性の高い分野だけに、純正比率をいかに高く保つことができるかが鍵といえよう。

 さらに、久保田常務取締役は、「プリンタ本体の固定費が重たくなっていることや、機種の横展開を行なう際に設計面での課題もいくつかある。プリンタ本体をこの1年で大幅に採算性を改善することは難しい。だが、2006年度は本体および消耗品をあわせて採算がとれると判断している。インクジェットプリンタは、あくまでも売り上げ、利益の源泉であり、ビジネスモデルを見直すことで、中期経営計画終了時点では、しっかりとした事業構造に生まれ変わることを目指したい」とした。



URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  決算短信
  http://www.epson.jp/osirase/2006/060425_3.htm
  決算資料
  http://www.epson.jp/IR/settlement/index.html

関連記事
エプソン、2005年度第3四半期は55%以上の減益(2006/01/27)


( 大河原 克行 )
2006/04/25 20:33
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.