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エプソン、2005年度第3四半期は55%以上の減益

~通期業績予想を下方修正、改革プランを提示

 セイコーエプソンは、2005年度第3四半期の連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比5.9%増の4,551億円、営業利益は44.7%減の171億円、経常利益は35.8%減の179億円、当期純利益は55.6%減の90億円と、増収減益となった。

 木村登志男副社長は「10月26日に発表した修正値から見ても、第3四半期の実績は不本意な結果」とコメント。業績の悪化ぶりを示した。

 第3四半期には、特別利益として、エプソントヨコムの持分変動利益122億円を含む130億円の効果があったものの、事業構造改革再編費用で172億円をはじめとする特別損失を187億円計上した。172億円の構造改革再編費用のうち、101億円が半導体事業の生産拠点およびライン再編、71億円が半導体生産技術導入費用の一括償却によるもの。


花岡清二社長
第3四半期業績

複合機は増加も計画未達

 事業セグメント別では、情報関連機器は、売上高が前年同期比6.3%増の2,970億円、営業利益が26.1%減の151億円。

 主力となるインクジェットプリンタ事業において、マルチファンクションプリンタが前年を上回る実績を達成したものの、同社が当初見込んだ計画値に対しては未達の状況。また、シングルファンクションプリンタの減少や、互換インクカートリッジの登場によって純正使用率が下がったことも収益の悪化に影響を及ぼした。

 「マルチファンクションプリンタの機能追加による原価上昇の一方で、販売単価が下落したことも収益悪化の要素のひとつ。レーザープリンタの消耗品やビジネスシステムの貢献、プロジェクター事業のプラス要素もあったが、カバーできなかった」(木村副社長)とした。マルチファンクションプリンタの価格下落は前年に比べて、10%~15%に達したという。


セグメント別売上高
セグメント別営業利益
木村登志男副社長

 電子デバイスの売上高は前年同期比6.6%増の1,470億円、営業利益が76.2%減の32億円。水晶デバイス事業での数量増加、事業統合の影響で増収となったほか、ディスプレイ事業においてアモルファスTFT液晶、低温ポリシリコンTFTの事業開始に売上げ増に貢献したものの、半導体事業において、LCDドライバが数量、平均単価ともに下落したのに加え、ディスプレイ事業においてカラーSTN、携帯電話向けのディスプレイの平均単価の下落、高温ポリシリコンTFTの数量減少などが響いた。

 「電子デバイスは赤字を想定していたが、これが黒字で終わったのはいい材料」(木村副社長)としている。なお、精密機器が売上高が12.2%増の229億円、営業利益が309.3%増の13億円となった。


通期予想を下方修正、100億円の構造改革費も検討

 今回の業績を受けて、同社では、2005年度通期の業績予想を下方修正した。

 10月時点の予想に比べて、売上高は650億円減の1兆5,530億円、営業利益は200億円減の240億円、経常利益は190億円減の260億円、当期純利益は220億円の黒字予想から、マイナス140億円の赤字へと下方修正した。

 第4四半期に、電子デバイスの固定費構造改革費用として215億円、訴訟関連費用引当として72億円など311億円の特別損失を見込む。

 そのほか、「今回の業績予想のなかには折り込んでいないが、100億円程度の構造改革費用を別途盛り込む方向で検討しており、その分、業績の影響はある」(セイコーエプソン 花岡清二社長)とした。

 同社では、3月16日に中期経営計画について明らかにする予定であり、そのなかで、追加の100億円の構造改革費用の内容については明らかにするとして、今回は明言を避けた。


2005年度通期業績予想
2005年度通期セグメント別売上予想
2005年度通期セグメント別営業利益予想

生産拠点の再編、人員削減も

 一方、同社では、今回の業績悪化を背景に収益力回復プランを策定、その内容についても公表した。

 花岡清二社長は、「今回で3回に渡る修正を行なう結果となり、資本市場からは信頼を損なうことになっている。また、エプソンの強みが生かし切れていないこと、ビジネス環境への対応力が不十分であること、さらに、コスト作り込み力不足や短期投資回収力不足といった収益力にも課題がある。これが収益性の大幅な低下をもたらし、計画の未達を繰り返すという結果になっている。物づくり企業として、収益を回復すること、中長期の成長を描く体質へと転換することが必要」として、今回の収益力回復プランを発表した。

 同プランは、(1)中期事業・商品ポートフォリオの明確化および強化、(2)全体ガバナンス体系の変革、(3)グループ全体が「創造と挑戦」に向かう企業風土、意識改革の推進--の3つから構成されており、3月16日に発表する予定の中期経営計画のベースプランといえるものになる。

 収益力強化プランとしては、具体的に5つのプランを策定し、そのなかで回復を目指す。

 改革プラン1は、電子デバイス事業の固定費構造改革で、今後2年間で420億円プラスαの固定費構造改革を行ない、電子デバイスの早期黒字化と収益力強化を図る。

 今年度は388億円および決算報告で示された100億円の構造改革費用の引き当てを予定。さらに2006年度は30億円を投入し、生産拠点および生産ラインの再編を行なう。

 改革プラン2では、中期事業・商品ポートフォリオの明確化と強化を掲げる。中期計画であるSE07の基本的な考え方は踏襲しながらも、i0という名称で呼ぶ半導体事業領域に対する構造改革を推し進め、「強靱な体質へと転換する必要がある」とした。

 また、次の商品開発につながるコア技術を磨き上げ、これらの技術を生かした現有商品の強化と、将来製品の幅を広げるといった取り組みにも投資する。

 投資回収についても、原則3年間という目安を設けて投資をすすめる考えだ。


収益力回復プランの概要
改革プラン1
改革プラン2

改革プラン3
改革プラン4、5

 改革プラン3は、コスト作り込み力、短期投資回収力の強化である。設計段階でのコスト作り込みの強化やプラットフォームや部品の共通化に乗り出す考えで、インクジェットプリンタのインクカートリッジの共通化などにも取り組んでいく考えを示した。

 また、現在28,000人の従業員のうち、外部人材が9,000人を占めるが、このなかから3,000人規模の人員削減を図る予定。また、正規従業員に関しても、戦略領域への配置転換を図るという。

 改革プラン4は、グループ拠点展開の効率化とし、国内生産、スタッフ拠点の集約、統合による効率化を図る。半導体生産の千歳事業所への集約なども図る考えだ。

 改革プラン5は、企業風土、マインドの改革で、「中期計画をやり遂げることができるマインドを社内に醸成したい」(花岡社長)とした。

 中期経営計画では、2006年度には増益を見込み、情報関連機器では増益、電子デバイスでは黒字化を目指すという。また、2008年度には経常利益で1,000億円以上、情報関連機器および電子デバイスで早期にROS10%以上達成を目指す。

 なお、プリンタ事業については、「ホームフォト市場は順調に拡大しており、フォト用紙の出荷面積も、順調に拡大している。当社がとってきた基本戦略に間違いはない」と前置きしながらも、「クリスマス商戦では、日米欧とも本体数量、カートリッジ数量は前年を上回ったものの、計画には届かなかった。本体の採算改善の遅れ、インクカートリッジ伸張率の鈍化が損益に影響している。本体、カートリッジのトータルで利益をとれるビジネスモデルへの転換を図る」と花岡社長は語った。

 プリンタ事業におけるエプソンの強みとして、フォト技術、顔料インク技術、高速化技術を掲げ、また収益性の高い商品セグメントとしてフォト、ビジネス、ラージフォーマットの3点に力を注ぐ姿勢を示した。

 インクカートリッジの純正率の向上としては、互換カートリッジメーカーへの法的措置などのほか、買いやすさ、画質の高さなどを前面に打ち出し、「顧客志向で正面から取り組む」とした。


インクジェットプリンタ事業の現状
インクジェットプリンタ事業の中期戦略
中期経営計画の目標


URL
  エプソン
  http://www.epson.co.jp/
  ニュースリリース(決算概要)
  http://www.epson.co.jp/osirase/2006/060127.htm
  ニュースリリース(収益力強化改革プランおよび通期業績予想の修正について)
  http://www.epson.co.jp/osirase/2006/060127_2.htm


( 大河原 克行 )
2006/01/27 20:03
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