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、米ソニーエレクトロニクス・パーソナルイメージングディビジョン デジタルイメージングマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャの高橋洋氏
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コンパクトな手ぶれ補正12倍ズームレンズ搭載機「DSC-H1」やローエンドモデルの「DSC-S90/S60」などを発表したソニー。同社はデジタルカメラとハンディカムなどカムコーダを扱う事業部を統合し、デジタルイメージング技術に関連した商品を動画/静止画にかかわらず開発していく体制変更を昨年のうちに果たしているが、DSC-H1が搭載したソニーブランドの手ぶれ補正レンズは、その成果と言えるかもしれない。高倍率の手ぶれ補正付きズームは、カムコーダでは必須の技術だからだ。
とはいえ、ソニーが得意とするコンパクトデジタルカメラの市場は縮小こそしていないものの、成長は急減速し、今年は出荷台数ベースで横ばいと言われている。特に北米での強いブランド力を発揮しているソニー製デジタルカメラは、今後どのような方向に向かうのか。
米オーランドで開催されたPMA 2005で、米ソニーエレクトロニクス・パーソナルイメージングディビジョンでデジタルイメージングマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャを務める高橋洋氏に話を伺った。
■ 「like.no.other」の基本戦略をデジタルカメラでも
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PMA 2005で発表されたDSC-H1
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ソニーは米国において、昨年から「like.no.other」つまり「他に似たものはない」を基本戦略としたマーケティング戦略を展開している。これは単に営業戦略的なものだけではなく、製品の企画や開発を行なう上での基本コンセプトでもあるという。like.no.other戦略はソニーの基本方針として、今年ワールドワイドでも展開する見込みだ。
--やや失礼な言い方かもしれませんが、家電製品におけるソニーの良さは“ちょっと高いけれど、物欲を刺激するエッセンスが入っている”ことだったと思いますが、最近はデジタルカメラにおける単価下落も激しいのが現状です。“ソニーらしさ”を引き出すために、どのようにしていくべきと考えていますか?
高橋 米国の場合、流通の寡占が日本よりもさらに進んでいるという事情があります。彼ら大手量販店は、商品の回転なんですよ。いくら質や性能、機能が良くても、回転の悪い製品はどんどん常設展示品目から落としていきます。その結果、回転の良い低価格なエントリーユーザー向け製品ばかりが残ってしまいます。このことは、アメリカにおけるマーチャンダイジングの基本になっているため、なかなかその常識を崩すことはできません。
--つまり「少し高いけど……」というエクスキューズが付いた時点で、米大手量販店では主流の製品にはならないということでしょうか?
高橋 基本はそうなります。そのため、別の流通手段を開発しようと、ソニー直営のアンテナショップやオンライン販売などにも力を入れていますが、今現在のビジネスを考えるとベストバイやサーキットシティでの売り上げも考慮する必要があります。
--たとえば今回発表のDSC-H1は、操作レスポンスや質感、コンパクトさなどにソニーらしさは見えます。製品としてはなかなか良いまとまりです。しかし、EVFが非常に小さく見えました。H1の販売価格は500ドルとの事ですが、もう少しだけ単価を引き上げることができれば、EVFの見え味も大きく改善されたでしょう。そうした部分まで含めた満足度を得る製品を作れる市場環境を作るにはどうすればいいのでしょうか?
高橋 H1の500ドルという価格は、米国のコンパクトデジタルカメラ市場では高額な部類となります。日本ではまた話が変わってきますが、米国の量販店でのビジネスを前提にすると、これ以上はこのクラスでは難しい。ソニーらしい付加価値を継続的に提供していくためにも、流通の問題には優先的に取り組んでいます。
■ ソニー製コンパクトデジタルカメラが向かう方向
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PMA 2005におけるソニーブース
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--ソニーが展開しているコンパクトデジタルカメラ市場は成長の鈍化がより明確になってきました。今年、日本ではゼロ成長、北米でも伸びは落ち着いてくるでしょう。その中で収益を上げ、次世代への投資と繋げるには、どうするべきでしょう?
高橋 北米においても、来年は市場の伸張も収まり、そのままの市場規模を維持する状態になるでしょう。こうした時期には、低価格化を誘導するのではなく、商品の付加価値を高めて収益性を確保する事が大切だと考えています。
--商品としての付加価値を維持する、具体的な案はありますか?
高橋 成長の鈍化は以前から十分に予測できた事ですから、社内でも議論は重ねてきました。しかし、現時点での成熟した結論はありません。それはデジタルカメラに内在する価値には、ある程度限界があるためです。
たとえば黎明期には画素数に対する強いニーズがありましたが、ある程度まで画素数が増えてくると、その必要度も徐々に下がって来ます。手ブレ補正に関しても、すべての製品が内蔵するようになれば、+αの付加価値にはなりません。ユーザーが満足する製品ができあがると、それ以上の付加価値をカメラ自身に求めていくことは難しくなります。
従って、ソニーとしてはカメラという商品形態に内在する価値だけを高めるのではなく、他の要素を組み合わせる事で商品全体の価値、ユーザーの利点を求めていきたいと考えています。ただし、現時点でどのような案があるかは言える段階ではありません。
--言えないというのは、つまり具体案は決まっていないとううことでしょうか?
高橋 いえ、暖めてあるアイデアはソニー内にきちんと存在しますよ。それがいつになるかは言えませんし、ハードルも高いのですが、そのうちお目に掛けることができるでしょう。
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DSC-M1
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--カメラ自身の内在する付加価値以外を組み合わせるとなると、複合型製品の方向に向かうということでしょうか。しかし過去には、複合型製品で成功した例は非常に限られています。
高橋 たとえばDSC-M1は、カメラの枠を飛び越したカメラとして提案しています。これは一種のトライアルであると捉えています。これまでカムコーダとカメラの融合製品はいくつか登場していますが、大成功を収めた製品はありません。M1も成功した製品とは言えないでしょうが、顧客に対してソニーなりの独自の切り口が受け入れられるのか、そのフィードバックを注視しているところです。他社にはないユニークな機能を盛り込み、お客様がそれをどのように使いこなすのか、反響があるのか。北米では特にハンディカムのセールスが好調ですから、それとデジタルカメラを結びつける方法について模索しています。
--ハンディカムがかなり好調との噂を私自身も耳にしていますが、元々、デジタルカメラとカムコーダの開発は別々の部署が行なっていました。それが組織として統合されたわけですが、開発現場にもそうしたカメラとカムコーダの開発、それぞれが持つノウハウと技術を融合していこうという意識はあるのでしょうか?
高橋 我々自身、大成功している分野において、成功しているが故に方向転換の時期を見誤った経験もありました。そうした経験を生かして、ハンディカムでの成功に溺れてはいけないという意識が強くなっています。船が沈む前に、新しい船を造ろうということです。
■ ソニーがデジタル一眼景気に飛びつくことはない
--減速が明らかなコンパクトデジタルカメラに対して、デジタル一眼レフカメラは好景気に沸いています。ソニーはこの分野に参入しないのでしょうか? 松下電器はフォーサーズ向けに一眼レフカメラの開発を表明しています。
高橋 一眼レフカメラに関しては、社内での議論は今も続いています。しかし、将来的にやるか、やらないかの結論は出ていません。しかし、現時点でということになると、“やらない”という結論が出ています。
--DSC-H1が500ドルです。小さな撮像素子の採用を前提にしたものとはいえ、このクラスの販売スタート時の価格がここまで落ちて来ると、なかなか高付加価値戦略を継続するのは難しいのでは。個人的には家電ベンダーはフォーサーズ規格に対応していくのではないか? と予測していました。
高橋 500ドル以上の価値を出せる商品を、何らかの形でやっていかなければならない、という事はもちろん考えています。現状、数量シェアは落とさずに来ていますが、金額シェアの低下を防ぐことは難しくなってきました。500ドル以上の高付加価値製品がないという、ラインナップ構造上の不足を補わなければなりません。ではソニーとして、どのようにして500ドル以上の付加価値を出せるのか?
確かに現在、高付加価値デジタルカメラとして市場で証明されているのは、デジタル一眼レフカメラだけです。しかしそこにはフィルムカメラでの経験やブランド力を持つベンダーが数多く存在しています。ソニーとしては、AVの経験とITの経験、その両方を持っている強みを活かした、銀塩カメラ出身の技術者が発想しないような斬新な製品を提供できれば、デジタル一眼レフカメラ市場に敢えて参入する必要はない、という結論なのです。年内にはそうした、新しい高付加価値製品の市場開拓に着手できるでしょう。
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( 本田 雅一 )
2005/02/28 15:39
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