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【インタビュー】
スペック表に現れない、触れてみてわかる良さ

〜ニコン D80+DX 18-135mm開発陣に聞く

 ニコンD70シリーズは、発売当初、ニコンのデジタル一眼レフカメラでもっとも低価格な製品でありながら、中級ユーザーにカメラを使いこなす喜びを感じさせる“カメラ好きのための”カメラという印象が強いモデルだった。その後、ユーザーの裾野を広げるモデルとしてD50シリーズが登場することになるが、ライバルのキヤノン EOS Kiss Digitalとは異なる味付けが、セールス面でも良い結果をもたらした。

 当時と比較するとライバルメーカーも増え、ラインナップ構成や市場環境にも変化はあるが、D70シリーズの後継であるD80の位置付けは変化していないようだ。中級機としてD200のテイストをふんだんに盛り込みカメラ好きの購買層に向けて、より低価格を実現するためのいくつかの変更が行なわれている。

 D80およびセットレンズとして発売されるAF-S DX ズームニッコール ED 18-135mm F3.5-5.6 G(IF)の開発者の方々に、それぞれの担当製品について話をきいた。


写真趣味人のためのハイスペック一眼レフカメラ

若林勤氏
ニコン 映像カンパニー 第1設計部 第2設計課
メカ、仕様など設計部門のとりまとめ。フィルムではF80、デジタルではD100、D70、D70sを手がけた
−− D70は、当時はまだまだ高価だった中級デジタル一眼レフカメラに近いスペックやカメラとしてのテイストを盛り込みながら低価格を実現したことで、大変な人気を呼びました。現在とは市場の状況が異なりますが、D70、D70sの正当な後継者としてD80を開発したと解釈していいのでしょうか?

 「D70シリーズとD200の中間の位置付けとなる機種として開発を進めたものです。開発時に意識した対象の方は、アマチュア写真愛好家で、趣味として撮影をする人です。D70、D70sをお使いの方、コンパクトデジタルカメラからのステップアップ、それにフィルムカメラからの移行といったことを意識しました」。

−− コンパクト機からのステップアップという意味ではD50シリーズがあり、一方で銀塩ユーザー向けにはD200が受け皿として強い個性を持っていると思いますが、それらとオーバーラップするイメージでしょうか?

 「コンパクト機といっても、その中には撮影機能が豊富なものもあり、もっと撮影機能を使いこなしたい方にはD80の方が好ましいケースもあるでしょう。銀塩から移行された方に関しては露出や構図を自ら考えて撮影する実力はあるけれど、デジタル部分の使いこなしには自信がないという方が多いため、D80ではお客様がデジタルカメラを使いこなすための機能を充実させています」。

−− 具体的にはどのような対応を取っているのですか?

 「たとえば画質に関してはパソコンで処理することを前提としたセッティングではなく、仕上がり設定でターゲットとする写真の仕上がり具合をあらかじめカメラ内でセットしておくことが可能です。可能な限り銀塩カメラでの知識を活用できるよう意識しました。銀塩から移行したお客様は、デジタルイメージプログラムを選んで、シャッターを押すだけでは満足できないものです。そのようなお客様はマニュアルや各種AEモードとは独立して、仕上がり設定を行なっていただければいい。また、カメラの機能を説明するヘルプの内容も吟味しています」。

 「その上で、D70をお使いの方が買い替えたくなるようなハイスペックを実現することに注力しました。具体的には液晶パネルの画質とサイズを向上させ、ファインダーの見え味を改善しています」。


共通部分の多いD200、だけど性格は違う

マルチパワーバッテリーパック「MB-D80」
−− D70、D70sは大ヒット製品だっただけに、多くのユーザーからの意見が寄せられたでしょう。どのような意見が多かったのでしょう?

 「まず、D70シリーズをお使いの方からの声で、もっとも大きかった声はファインダー倍率です。次に縦位置グリップ。なぜD70シリーズには用意されていないのか? と」。

−− 縦位置グリップはD70登場当初のトレンドとして、ほぼすべてのデジタル一眼がオプションで用意していましたね。技術的な問題ではなく、単純に商品企画の話だと思いますが、なぜD70シリーズには縦位置グリップが用意されなかったのですか?

 「D70のお客様には不要だと思ったのです。軽量でコンパクトに設計しているのに、それを大きくしてしまう縦位置グリップは不要と考えました。緊急用に1次電池は必要だろうと考えてリチウム電池ホルダーは用意いたしましたが、縦位置グリップは見送りました。しかし、今回はご要望に応えしてD80用の縦位置グリップを開発しています」。


D80のファインダー像(格子線表示)
−− 高倍率の見え味が良いファインダーを作る難しさとは何でしょう?

 「ファインダーが小さかった理由は、ご存知のようにセンサーサイズが小さくなったためです。ファインダー倍率は、ファインダー部単体ではフィルムカメラ時と同等、たとえばF5の場合は0.7倍でしたから、デジタル一眼レフカメラになったから倍率が落ちたというわけではありません。ところがDXサイズセンサーと35mm判フィルムでは面積比で約半分になるため、同じファインダーを用いると小さく見えてしまいます」。

 「面積比で約2倍の違いがあるため、フィルム時代と同じサイズのファインダー像はかなり難しく、特に低価格を実現しなければならない製品向けに、高倍率ファインダーを開発することは困難を伴います。しかし、今回は先行してD200が、お客様の要望もあって高倍率ファインダーの開発に取り組んでいたため、D80にも搭載することができました」。

−− D200とファインダーは全く同じと考えていいのでしょうか?

 「ボディ設計が異なるため、部品の保持方法は変わっていますが、使われている光学部品は全く同じです。従来はペンタダハミラーでしたから、プリズムのコストが上がっていますし、高倍率を実現するためにガラスのファインダーレンズなどのコストも上昇します。しかしファインダーの見え味やサイズは、趣味で写真を撮影するお客様にとっても重要な部分ですから、あえてD200と同じものを採用しています」。

−− 液晶層を挟み込んだスクリーンも全く同じですか?

 「はい、機能的にはもちろん、素材なども全く同じです」。

−− 画素数がD200と同じですし、ファインダーも全く同じとなると、D200との違いが不明確になるように思いますが、D200とD80の位置付けの違いとは何でしょう?

 「ボディの性能やスペックは、確かにD200に近いと言えます。しかし連写速度、外装素材、最高シャッター速度、最高同調速度、シンクロターミナルの有無、それにリモート端子の違いなどがカメラとしての性格の違いを出しています」。

−− なるほど。以前のD70と同様の味付けということですね?

 「今回はデジタル部の機能にもいくつかの違いがあります。画像編集メニューやマイメニュー、テレビに接続して音楽に合わせ、トランジションエフェクトを使ったスライドショーを楽しめるようにするなど、カメラを用いて写真を楽しむ幅を広げるような機能を追加しています」。

−− 採用しているセンサーは、ソニー製1,000万画素CCDと画素数は同じですが、違いは読み出しチャンネル数の違いによる速度だけでしょうか? それともS/N特性なども変化していますか?

 「基本的には読み出しチャンネル数の違いだけで、カラーフィルタや開口率などの基本スペックは同じです。S/N比に関しては、実際にセンサーから出てくる信号のレベルでの違いはありません」。


寶珠山秀雄氏
ニコン 映像カンパニー 第1開発部 第1開発課
絵作り、画像処理、絵の設計を担当
−− しかし実際に出てくる絵は、大きくノイズ感が減っていますね。特に高ISO時のノイズの出方が違います。一方で輪郭描写は明確ながら、ディテールは浅く見える部分もあります。D200とは画像処理のアプローチが変化しているのでしょうか?

 「D200とD80ではユーザー層がハッキリと違うと考えています。そうしたユーザー層の違いを考慮した味付けの違いはあります」。

 「具体的には輪郭の処理、色味、階調の味付けなどはD50に近いチューニングを施していますから、輪郭描写が明確というのは、そうした味付けによるものでしょう」。

−− 素子の特性がほぼ同じで、画像処理を行なっているLSIも同じ。その上でノイズが少なくなっているというのは、ソフト的なノイズリダクションを強くかけているということでしょうか?

 「いえ、ノイズリダクションの処理は、D200とは厳密には異なりますが、ほとんど同じです。ソフト面では輪郭補正を強めにかけることで、輪郭以外の部分が滑らかになる効果があります。加えて撮像素子からのアナログ信号をアナログフロントエンドに導く際のノイズの影響、たとえばグラウンドの取り方などですが、それらは4チャンネルよりも2チャンネルの方が有利になるため、そこでのノイズが少なくなっていることが画像に影響しているのではないでしょうか」。


SDメモリーカードを採用

SDHC/SDメモリーカードを採用する
−− カメラ内で、撮影後の写真に画像処理を施す機能がD80では充実しました。D-ライティングをはじめ、かなり力が入っているように見受けられますが、どのような使い方を意図したものでしょう?

 「撮影したその場、撮影時の記憶が新鮮なうちに、撮影した写真に様々な加工が行なえれば楽しいのではないか? と考えて開発しました。自宅で画像をじっくり料理する際にはパソコンを使うのが良いでしょうが、その場で加工できれば、撮影場所でアイディアを練り直して撮り直すこともできます。液晶モニターの質やサイズが向上したことも、今回のような機能を盛り込んだ理由です」。

 「たとえばストロボを焚けない場所、あるいはストロボ光量が不足している状況などを撮影時に確認し、その場でD-ライティングを用いてみて、さらにストロボの設定を変更して撮影し直すなどの工夫ができます」。

−− 色味や絵作りに関連する処理を背面液晶ディスプレイで行なうとなると、ディスプレイ表示がどの程度の品質なのかという信頼度も必要になると思います。背面ディスプレイの表示品質などは、どの程度追い込んでいるのでしょう?

 「100%の信頼度は難しいのですが、十分に楽しんでいただけるよう、ある程度は意識して開発をしています。その場で処理可能という観点で見ると、許容できる範囲であると考えています。個体ごとの色温度の違いなどのばらつきを狭め、見た目に近くなるように追い込んだ設計は行なっています」。

−− 今回、D50に続いてメモリカードをSDメモリーカードに変更しました。この判断には賛否両論あると思いますが、従来機がCFだっただけに、ダブルスロットの方が良かったのでは?

 「今回は、現在市場においてもっとも入手しやすいメモリカードという観点からSDメモリーカードを選びました。今後はCFよりも安価になることが予想されていますし、書き込み速度や読み込み速度の向上が期待されて、カメラの性能を最大限に発揮できます。ニコンとしては、このクラスのカメラでは今後、SDメモリーカードを使って行く予定です。D80の企画では、ダブルスロット化の議論はありませんでした」。


赤木俊昭氏
ニコン 映像カンパニー 第1設計部 第1設計課
電気とソフトを担当
−− 一方、SDメモリーカードのシングルスロットにしたことによるメリットはありましたか?

 「D80は、本体幅がD50よりも1mm小さく、高さもD50と同等レベルになっています。D70よりはかなり低くなっており、D50同等のコンパクト性を実現できたのはSDメモリーカード採用も要因のひとつです」。

−− ニコンは防振対策をVRレンズで行なっていますが、ボディ内手ブレ補正機能を採用するカメラも少しずつ増えてきています。ニコンとしてボディ内手ブレ補正には取り組んでいますか?

 「弊社のデジタル一眼レフカメラの防振システムは、交換レンズ内部に防振機構を搭載する方式です。この方式は、カメラに装着した交換レンズに適した防振制御ができるため優れた補正効果があり、さらにファインダーでも像のゆれを低減できるため、一眼レフカメラにとって最適な防振システムと考えます。

 ボディ内手ブレ補正はフィルム時代には無かったアプローチのため、その有効性について検討をしましたが、交換レンズ内部に防振機構を搭載する方式のほうが補正の効果がはるかに高いことがわかりました」。

−− もうひとつのトレンドとして、センサーへのゴミ付着対策への動きが活発化していことが挙げられます。ニコンは電子的にゴミを除去する機能を組み込んでいますが、それ以外のゴミ対策についてはアナウンスされていません。何か対策は施しているのでしょうか?

 「特にカタログスペックとしてはうたっていませんが、実際にはいくつかの対策を盛り込んでいます。まず、付着した異物が映像に写り込みにくくなるよう、ローパスフィルタの表面とセンサー撮像面の距離を長く撮っています。これにより、ゴミが着いていてもハッキリとゴミが写らないようになっています。次にローパスフィルタに帯電防止の工夫を施し、ゴミが付着しにくいようにしています。さらに、シャッターやミラーなど可動部分から、メカニカルなダストが出にくい設計や製造手法を用いた上で、エージングをして初期のダストを排除した上でカメラを組み上げ、完成後にも慣らし動作をしてダストが出ない配慮をしています。最後にセンサー周囲にゴミ吸着部材を配置してセンサーへのゴミの付着が少なくなるように工夫しました。付着したとしてもブロワーなどで吹き飛ばせば、センサーに再付着することがありません」。

−− アクティブにセンサー面のダストを除去する機能は検討していませんか?

 「さまざまな方法を研究していますが、搭載するからには効果がお客様にハッキリ体感できるモノにしたいと考えています」。


デジタル時代の低価格な定番レンズとしての18-135mm

AF-S DX ズームニッコール ED 18-135mm F3.5-5.6 G(IF)
−− 一方、新レンズのAF-S DX ズームニッコール ED 18-135mm F3.5-5.6 G(IF)ですが、D70とセットで発売された18-70mmを以来、安価なメインストリーム向けの低価格レンズに、描写のいいお買い得レンズが集中している印象があります。今回も価格対パフォーマンスはたいへんに良さそうです。

 「基本的にはDXレンズになってから今まで、できの悪いレンズは無かったと思っています。DXという基準でレンズ設計することで、パソコンでピクセル等倍鑑賞にも耐えられるモノになっていると思います」。

−− よく「DXだから」という表現をニコンの方々は使いますが、DX基準とは具体的にどのようなものですか?

 「具体的に数値は公表していませんが、MTF本数の評価や倍率色収差などを従来のレンズよりも厳しい基準にしています」。


曽雌功氏
ニコン 映像カンパニー 第2設計部 第1設計課
F5のファインダーやAF-Sのレンズ鏡筒、AF-S DX ズームニッコール ED 18-70mm F3.5-4.5 G(IF)などを手がけた
−− 今回はVRは搭載されていませんが、どのようなコンセプトで設計したのでしょう。

 「低価格なデジタル一眼レフカメラに見合う低コストで写りをよくするため、外装などにコストをかけず、画質を高めることに注力しました。フィルムカメラであれば28-200mmの標準ズームに相当する画角ということで、デジタル時代の低価格な定番レンズを狙っています。VRを入れなかったのはコスト低減のためです。手ブレ補正機能が必要なユーザーには、別途、18-200mmがありますから、今回はリーズナブルに高画質を引き出すことにしたのです」。

−− D80と組み合わせたレンズキットの発売が延期されましたが、これはどのような原因なのでしょう?

 「当初の予想よりも多くのご注文をいただき、生産数が追いつかず十分な数を用意できなかったためです。レンズ単体での発売は12月予定になっています」。

−− 最後にD80、これだけは購入を検討している読者に知っておいてほしいというアピール点を聞かせてください。

 「D80は同時期の他製品に比べるとオーソドックスな作りで、ある面、地味に見えるかも知れません。数字や機能としてのアピールポイントは目立ちませんが、店頭で是非ともファインダーを覗き、グリップを手にしてシャッターボタンを押してみてください。持ちやすさ、扱いやすさ、レリーズの感触を体験してD80が持っている良さを体感して欲しいです。カタログでは見えない良さが、手にすることで見えてくると思います。是非、実機での比較をお願いいたします」(若林氏)。

 「カタログに大きな見出しで書くような機能はありませんが、細かい操作性にしても、画像編集機能にしても、長い間、お気に入りのカメラとして使ってもらえる、使っている間に楽しみをわかってもらえるカメラに仕上げました。D200に盛り込まれていた多彩なストロボ機能は、D80でも継続して採用しています。ストロボを買い足そうかな? と思えるような楽しさがあります。そして撮影後には、是非、Dライティングの効果を試してください。ストロボ+Dライティングで、シングルストロボでも多彩な撮影を楽しめます」(寶珠山氏)。

 「デジタル一眼レフを知らない方が、実際に触れてみて、そして撮影して違和感を感じさせないカメラです。数値的なものではありませんが、触れてみてわかる良さがそこにはあります。加えて初めてデジタル一眼レフカメラに触れる人でも使える操作性があり、スッとデジタルの世界に入ってこられる製品だと思います」(赤木氏)。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/slr/digital/d80/

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( 本田雅一 )
2006/10/16 16:51
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