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【インタビュー】ソニーα100開発陣インタビュー(後編)

〜αマウントは、時代に合わせて拡張・進化させていく

 ソニーブランド初の交換レンズ式デジタル一眼レフカメラ「α100」の開発陣に対するインタビューの後編をお届けする。引き続き、α100のハードウェア開発プロジェクトをとりまとめたソニー デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 開発部 グループマネージャの藤野明彦氏、画像処理および絵作りを担当したプロジェクトマネージャの中山春樹氏、商品企画を担当した佐渡真一氏、それにレンズ設計を担当したオプト技術部門 シニアオプティカルエンジニアの末吉正史氏に話を伺った。

前編はこちら


1号機として、誰にでもよくわかる特徴を

−−先日、御社の中川氏(EVPデジタルイメージング事業本部長)に話を伺ったところ“市場の8割はエントリークラス。従って最初はエントリークラスから参入する”と話していました。そして実際に製品が発表されたわけですが、エントリークラスのデジタル一眼レフカメラとして、α100が目指したものとは何だったのでしょうか。

 「どのランクのカメラなのかは、実際に手に取っていただければわかるでしょう。エントリークラスとは言いませんが、エントリーレベルのお客様から上級者まで幅広いユーザーに使っていただける製品を目指しました」。

 「またソニーαの1号機として、誰にでもよくわかる特徴を盛り込むことも意識しました。このクラス初の10Mピクセルセンサー、手ブレ補正、アンチダストといった要素です。こうした要素をエントリーレベルの価格に収めることが最大の目標でした」。

−−今回、ボディ内手ぶれ補正のメカニズムを使って、センサーのゴミを落とす機能が入りました。α-7 DIGITALが登場した当初から、半分ぐらいはジョークで“この機能を使ってゴミを落とせない?”とは話していましたが、まさか本当に入るとは思いませんでした。

 「センサーを動かしてゴミをふるい落とすという話は、実に多くの人から言われて、じゃあやってみようとコニカミノルタ時代から実験はしていたんです。ところが実際にやってみると、まったくゴミは落ちない。センサー面のコーティングでゴミを落としやすくしていないと、ゴミは落ちないんですよ」。


藤野氏(右)と中山氏 佐渡氏(左)と末吉氏

−−オリンパスの場合、ふるい落としたゴミは吸着材で留めておくようになっていますね。αの場合、ゴミはどこにいくんでしょう?

 「そのまま落ちるだけです。最終的にゴミはエアで吹き飛ばしてもらいたいのですが、最低限、センサー前のゴミだけはなんとかしたいという発想です」。

−−アンチダスト機能は電源オフ時に自動的に動きますが、そうした発想であれば電源オンの時に動く方が合理的ではありませんか?

 「その通りなのですが、電源オン時にアンチダストを動かすと、電源オンから実際に撮影できるまでの時間(起動時間)が長くなってしまいます。そこで電源オフと連動させることにしました。実際にはこれでほとんど問題ありませんが、開発メンバーでもオン/オフを一度繰り返してから使うという人もいますね」。


効果が高まった手ブレ補正

−−1,020万画素センサーに関しては、ニコンのD200が4チャンネルセンサーの同画素数センサーを採用しています。α100は2チャンネル読み出しということで仕様が異なりますが、これは同一センサーで出力回路部だけ仕様変更したものなのでしょうか?

 「いえ、新規開発品です。ニコンのセンサーを見ていませんが、おそらく素子のパッケージ外観から異なるはずです。我々としてはまず、10Mピクセルを超えるセンサーがどうしても欲しかった。その上で、手ブレ補正機能を駆動する関係で、機械的な負荷を減らすためにセンサー自身のコンパクト化と軽量化をリクエストしました。このため読み出し回路もコンパクトな2チャンネルになっています。軽量・コンパクト化することで、手ブレ補正機能の駆動精度が向上します」。

−−その手ブレ補正機能ですが、コニカミノルタ時代よりも効果が向上したとあります。実際に使用してみても、確かに実感としてかなり効果が高まっているように思います。どのような改善を行なったのでしょう?

 「基本的なメカニズムに変更はありません。変化したのは手ブレ検出のセンサーと、センサーからの情報を処理するアルゴリズムです。センサーはドリフト(使用環境などによる検出値のズレ)がより少ないものを使用しました。加えてドリフト量をフィードバックして自動補正する回路も入れています。こうした検出精度の向上に伴い、アルゴリズムが変更可能になり、全体として質が向上しています」。

−−オートフォーカスに関しては、特にα Sweet DIGITALからの変更はありませんか?

 「センサーそのものは同じモノです。ただし、センサーやその組み付け、また組み付け後の調整といった生産技術面での改良は施しているため、以前よりも測距精度は若干上がっているはずです」。


とにかく高速なBIONZ

BIONZのコンセプト
−−新しい映像エンジンとなる「BIONZ(ビオンズ)」の特徴について教えてください。

 「BIONZは、ビヨンドイメージ、すなわち超越した画像といった意味を込めて付けられたものです。目指したのは一目見て“あ、すごいな”というったような。たとえばネガで写真を撮っていた人が、初めてリバーサルフィルムの絵を見たときのような映像を。そんなイメージで開発を行っています」。

−−中山さんはコニカ時代から写真に取り組んで、コニカミノルタでデジタル一眼レフカメラの絵作りに取り組みました。ソニーブランドになって、α100は若干異なる絵になっているようにも感じますが、意識して違う絵を作っているのでしょうか?

 「基本的なコンセプトは変化していません。しかし、コニカミノルタ時代に開発した2機種は同じセンサーを用い、同じコンセプトで開発しましたが、今回はセンサーを含むプラットフォーム全体が変化しています。目指している絵作りは同じですが、結果的には異なる絵に見えるところもあるでしょう」。

−−ソニーとコニカミノルタで、絵作りの方向について異なるところはなかったのでしょうか?

 「実際に話をしてみると、理想としている絵作りの方向があまりに似ているので驚きました。“こういう絵にしよう”という目標は、ソニーも旧コニカミノルタも同じです。しかし製品への実装、現実的な落としどころに関しては、考え方がやや異なります。たとえば赤の色を基本に作っていくという基礎部分は全く同じですが、青の見せ方は違いました。白はやや青みを出した方が透明感が出ますが、しかし人の顔はやや赤みを帯びた方が好ましく感じられます。結果的にはα Sweet DIGITALと基本は同じながら、青に関しては少し派手になっているかもしれません。DSC-R1とも、α Sweet DIGITALとも異なる絵です」。

−−BIONZがエンジンとして特に優れているところはどこなのでしょう?

 「処理性能がとにかく速い。処理が高速化されたことで、今まで考えていた“やりたいこと”を実装できるようになったことです。たとえば今回導入したDレンジオプティマイザーもほとんどゼロ時間で画像分析可能で、連写に関してもJPEGならば秒3コマでメモリ容量いっぱいまで可能です」。

−−そのDレンジオプティマイザーですが、ノーマルとアドバンス、ふたつの設定があります。この違いは何でしょうか?

 「デフォルト設定のノーマルでは、ガンマ係数のみを最適化しています。これによりシャドウ部やハイライト部のディテールが見通せるよう、全体の絵を最適化します。これに対してアドバンスは処理のアプローチが全く異なります。輝度のレンジごと、部分的にゲインを変化させているのです」。


−−というと、たとえばシャドウ部の潰れに対してコントラストを立ててディテールを引き出し、それ以外の部分はリニアな階調特性に、といったトーンカーブの細かな調整を自動的に行なっているのでしょうか?

 「人間の目は同じ視野でも暗いところを見ようとすれば、そこが見えるように調整しますし、明るいところに注目を移すと今度は明るい部分のディテールが見通せます。それをシミュレートするように、被写体のディテールを引き出しています」。

−−その場合、ユーザーが期待する通りに被写体のディテールを引き出せればいいのですが、1枚のRGB画像で表現できる明暗差は限られています。絵全体のコントラストが思ったよりも低くなるなどの問題は出ないのでしょうか?

 「まずノーマルの処理ですが、コニカ時代から銀塩プリントにおいてガンマの期待値に関する蓄積データが膨大にあり、非常に高い精度で期待する動作になっていると思います。アドバンスに関しても、同様にさまざまなパターンでの最適な露出を研究してきた成果を引き出せました。もちろん、すべてのユーザーに対して、あらゆる撮影方法にマッチさせることはできませんが、エントリークラスのユーザーが何も考えずにシャッターを切った時、よりよい結果を出すという面では良いと考えています。逆光で被写体を捉え、シルエットを黒くつぶしたい時にどうなるのか? といった話もありますが、まずは撮影して、その結果を見てください」。

−−暗部のカラーノイズを目立たせないよう、シャドウ部の色を抜き気味にするといったチューニングが行なわれることがありますが、Dレンジオプティマイザーのような処理を行なうと、パターンによっては暗部のノイズが浮いてしまうこともあるでしょう。このあたり、どのようにバランスさせているのでしょう。

 「暗部でも色を抜かない方向で絵を作りました。そうした細工は確かに有効ですが、色を抜き気味に調整するぐらいならば、むしろノイズが浮く方が好ましいと考えています」。

−−1,020万画素のAPS-Cサイズセンサーということで、高感度時にはセンサーレベルでのノイズがかなり増えてくると思われます。加えてノイズを目立たせない絵作りもしないとなると、プリントレベルでは良くとも、画面上で観察するユーザーからは不評を買う可能性もあるでしょう。

 「もちろん、そうした結果も予想していますが、ノイズが多いという批判は甘んじて受けるつもりです。ノイズを消したり、目立たなくさせたりといったことよりも、無理にノイズ処理を行なうことで失うものの方が大きいと考えています」。


20年前の設計とは思えないαマウント

−−コニカミノルタ時代からαマウント対応製品を開発してきて、ソニーでも同じプラットフォームを使っていくことになります。たとえばαマウントは絞り駆動がメカですが、特に絞りに関しては設計上、絞り位置に制限が出るなどの問題もあるでしょう。αマウントのプラットフォームとしての将来性をどのように考えていますか?

 「それはソニーとコニカミノルタが提携した際、真っ先に議論したポイントです。たしかに現状、メカ絞りですが、将来的な拡張、発展性はいろいろなパターンで行なえると考えています。あくまで“上位互換”という形で、αマウントをさらに発展させていきたいと思います」。

 「1年前、実際にαマウントの仕様を見せてもらったとき、20年前の設計とは思えないほど賢くできていると感じました。短期間にこれと同等、あるいはそれ以上のマウントを設計するのは難しい。今後、αマウントを拡張していく方が良いと判断しました」。


多数の35mm判対応レンズがラインナップされたソニーレンズ
−−レンズのラインナップを見ると、APS-Cサイズセンサーに特化したDTレンズよりも、35mm判をカバーするレンズの方が多数ラインナップしています。レンズ設計の時間的な制約もあるのでしょうが、これは将来、異なるサイズのイメージセンサーを採用する可能性を示唆しているのでしょうか?

 「その機種ごとに適したサイズ、その製品を使うユーザーの目的に合致したサイズがあると思います。その時々、製品ごとに最適と考えるサイズのセンサーを使っていくことになるでしょう」。

−−つまりより大きなセンサーサイズもあり得るということでしょうか? ユーザーのDTレンズに投資すべきかどうかの判断にも関わってくる話ですよね。

 「APS-Cサイズセンサーのカメラは今後も継続していきます。しかし目指した機種のコンセプトが、より大きなセンサーサイズを求めるのであれば、そのときには大きなサイズのセンサーを採用するでしょう」。

−−個人的な興味はどうでしょう? 昨今はAPS-Cサイズセンサーに合わせて設計したレンズが豊富に登場したことで、被写界深度はともかく画角の面では不便を強いられることが少なくなってきました。その中でも35mmフルサイズセンサー搭載に、合理的な意味を見いだせるでしょうか?

 「個人的には作ってみたいですね。フィルムカメラを使ったことのある世代にとって、フルサイズセンサー機は、実際に使ってみて確かに便利なんです。でもフィルムカメラを知らない世代の人には、あまり関係ないかもしれません。商品として考え始めると別の判断が必要でしょうが、個人的な興味としてはあります」。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/di-world/alpha/
  レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ機種別記事リンク集(α100)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#alpha

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【インタビュー】ソニーのデジタル一眼レフ「α」への期待(2006/06/02)


( 本田雅一 )
2006/06/27 01:11
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