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【インタビュー】ソニーのデジタル一眼レフ「α」への期待

〜デジタルイメージング事業部長 中川執行役に聞く

EVPデジタルイメージング事業本部長の中川裕執行役
 ソニーのデジタル一眼レフカメラ「αシリーズ」が近日発表される。コニカミノルタの開発資産を引き受け、ミノルタαマウントのレンズが使用可能なソニーブランドのデジタルカメラが、いよいよ市場に姿を現す。

 実際の製品スペックや周辺機器のラインナップに関しては発表を待ちたいが、その前にソニー執行役 EVP デジタルイメージング事業本部長の中川裕氏に、ソニーとしてカメラ事業にどのように取り組んでいくか。その意気込みを伺ってみることにした(聞き手:本田雅一)。


コニカミノルタ一眼レフ事業のほとんどを引き継ぐ

4月20日に公開されたソニーαブランドのロゴデザイン
 ご存知のように、ソニーはデジタル一眼レフカメラへの興味を隠さずにきたものの、実際に事業化するか否かについて、長い間、その結論を表には話してこなかった。“検討はしているが、社内での結論は出ていない”というのが、毎回の同じ答えだった。

 一眼レフカメラはレンズや周辺機器など、大規模なシステムとなる。モノを作る力があるから参入できる、というほど簡単なものではない。しかしソニーは昨年、コニカミノルタとの提携により一眼レフカメラ市場への参入を発表した。

――これまでもデジタル一眼レフカメラ市場への参入を検討していると繰り返していましたが、実際に参入を決断した最大の理由はどこにあるのでしょう?

 「スチルカメラ事業を始めたのは意外に古い時期で、FD(フロッピーディスク)にアナログで記録したマビカがあります。これはレンズ交換式の一眼レフシステムでした。我々は以前から、この業界に足を踏み入れていたのです」

 「その後、カシオのQV-10をきっかけにしたデジタルカメラ市場黎明期にも、比較的早いタイミングでデジタルカメラ市場に仕掛け、2004年にキヤノンに抜かれるまではワールドワイドでの出荷数ナンバーワンをキープしていました。スチルカメラ分野でしっかりビジネスをやっていく、ということに関しては、きちんと認めていただけるだけの実績を持っています。しかし我々はカメラ市場においてリーディングカンパニーと言われる存在になりたい。そのためには、上位機からローエンド機まで、幅広いラインナップを持っていなければなりません。デジタル一眼レフカメラ市場への取り組みは、ソニーがカメラメーカーとして存在感を持つようになるため、必要な要素です」

――ところが提携先のコニカミノルタが市場から撤退し、当初は共同開発だったものがカメラ部門を引き受け、単独で戦うことになった。こうした事態は昨年の段階で、ある程度予想していたのでしょうか?

 「あまり詳しくはいえませんが、当初は製品の共同開発でスタートしています。その後、コニカミノルタから撤退したいとの話があり、それならばと開発者を含め事業のほとんどを引き継いだのです」

――急激な変化によって、開発現場が混乱することはありませんでしたか?

 「コニカミノルタの撤退が決まる前から、会社の枠を超えたチーム作りを行なっていました。大阪にソニーの技術者が異動し、同じ場所でコニカミノルタの技術者とともに開発をしていたのです。堺にコニカミノルタのオフィスがあり、そこにソニーの堺分室を作りました。現在は新大阪にオフィスを開設し、そこに元コニカミノルタを含む開発メンバーが集結しています。元々が同じ場所で開発をしていましたから、ひじょうにスムースな移行ができました」


――αというブランド名は、日本と中国ではコニカミノルタ製カメラの象徴的な名前です。しかしこれをソニーのブランドとして採用するとは思いませんでした。なぜαという名称に決めたのでしょう。

 「議論は数多くありました。全く新しいブランド名にしようというアイデアもありましたが、日本ではミノルタが1985年に発売したα7000のイメージが強烈に残っています。また一から始めるという意味でも、ギリシャ文字の最初の1文字であるαに惹かれました」

 「一方、海外ではミノルタのシステムを引き継ぐことで、認知が進んでくれると期待しています。ミノルタブランドの海外での認知は、一眼レフカメラユーザーの中でとても高い。我々としてはブランドではなく、レンズマウントのスペックを譲り受けたと捉えています。累計出荷1,600万本のレンズが、現時点でどの程度、生き残って稼働しているのか? というと議論はありますが、いずれにしても多くのレンズ資産をたくさんのユーザーが所有している。これは大変におおきなものです」

 「そしてもうひとつ、日本の消費者は品質に対して世界でもっとも厳しい目を持っています。カメラは嗜好性の強い製品ですから、日本の消費者に対してきちんとコニカミノルタが築き上げてきたものを引き継ぐぞという決意を示したかった」


“α=ソニーの一眼”を定着させたい

――これからαはコニカミノルタではなくソニーのブランドになります。ではソニーはαをどのようなイメージを持つビジネスブランドにしたいと思いますか?

 「ソニー製デジタルカメラの柱として定着させたい。“α=ソニーの一眼”と、誰もが連想してもらえるよう、ブランドの構築をしたいですね。ミノルタα7000が大ヒットしたのも20年以上前の話で、その頃を知らない消費者も多い。これからはαといえばソニーと思われるように努力していきます。もちろん、コニカミノルタが育ててきたブランドと技術も素晴らしいものでしたから、そのイメージはすべて引き継げるよう製品として反映していきたいと思います」


――伝統的なミノルタ製カメラのユーザーと従来のソニーユーザー層は、指向性が若干異なるようにも感じます。従来の顧客への敬意を示しながら、どのようにしてソニーらしさを出していくのでしょう?

 「そこは大いなるチャレンジだと思っています。カメラの場合、操作感、あるいは手に持った時のしっくり感とか“モノとしての良さ”というのが重要なファクターになります。その一方で、デジタルスチルカメラとしては、エレクトロニクスの力が商品の質を決めるパートとして大きなファクターになっています」

 「例えば銀塩フィルムカメラの場合、昔のカメラでも現在のカメラでも、レンズとフィルムが同じなら、ほぼ同じ画像が得られます。銀塩の世界では、様々な切り口から進化を果たしていたとはいえ、最終的な画質はレンズとフィルムで決定されていました」

 「これがデジタルになったとたんに、画像処理という要素が加わってきます。たとえセンサーが同じでも、その後の処理によって大きく画質が変わってしまう。あくまでも可能性の話ですが、部分ごとに露光時間やゲインを変えてみたり、レンズディストレーション補正や色収差補正をカメラ内で行なったり、色作りに関してもいろいろなアプローチが可能です。その全てをやってしまうと実は具合がよくないかもしれませんし、どこまで、どのように画像処理で対応すればいいのか現時点では手探りです。しかし潜在的な可能性は大きく拡がっています」

 「CCDやCMOSといったセンサー、画像処理といった部分にはソニー独自の技術を持っていますから、他社に負けないだろうという自負はあります。そこにコニカミノルタのよいカメラを作るノウハウを組み合わせ、リーディングカメラメーカーとして市場で認知されるよう、少しづつ階段を上っていきたい。一度にトップ企業へとはなれません」


――イメージセンサーや画像処理といった部分にソニー独自の技術があるとのことですが、どのあたりに他社にはない付加価値があるのでしょう?

 「ご存知のようにイメージセンサーはソニーグループ内で開発・生産を行なっており、大変に強い分野です。また画像処理技術に関しては、積み重ねによるノウハウの蓄積が大きい。スチルカメラだけでなく、それ以前にビデオカメラなど多くの製品を開発してきた歴史がある。また小型化に関しては、どうしても必要ならば細かい部品ひとつひとつに新しいデバイスを開発・生産してまで小型化を行なうミニチュアライズの文化があります。さらにカムコーダでもおなじみのように、精密メカトロニクスの分野でソニーは大変大きな設計・生産のノウハウを持っています。これらをすべてソニーグループ内に持っていることが、大きな強みになっていると思います」

――アナログの信号処理品質と超精密メカトロというのは、ソニーがかつてビデオデッキやカムコーダなどで他社の前を走ることができたもっとも大きな理由でしょう。しかし、今や信号処理はアナログフロントエンドなど一部を除きデジタル化され、デジタルの処理能力で品質が決まる時代になってきています。そこでのノウハウはアルゴリズムであり、実装が似ていれば同じような品質になる。果たしてデジタルの世界で、ソニー独自の信号処理が競争力となるでしょうか?

 「やるしかない。そして、私はそれが“できる”と思っています。放送局のビデオ装置をデジタル化したのはソニーです。映像のデジタル化で先鞭を付けてきたのはソニーなんです。かつてディスクリートのチップで構築した業務用機材のノウハウを、今は独自のLSIとして集積している。ソニーはこうしたチップを外販していませんから、あまり外には知られていませんが、社内に非常に多くのデジタル信号処理の資産があり、それを製造できる拠点も持っているのです」

 「例えばIntelはCPUに特化した、ものすごく高速でスイッチングするトランジスタを生み出すプロセスを持っていますね。しかしソニーが強いのはカムコーダなど映像やオーディオに特化した半導体です。その中でもっともわかりやすいのが、外販しているイメージセンサーでしょう」


専用設計レンズは必ず出る!!

――ということは、最初に発表されるαから、かなり内製化比率を高めているのでしょうか? 経緯を考慮すれば、コニカミノルタの担当部分もあったのではと想像しています。

 「製品開発の初期段階から一緒に開発を行なってきて、現在は同じオフィスで開発をしています。ふたつの会社の融合体が生み出した製品だと思ってください。内製化比率は100%ではありませんが、組み立てはソニーですし、液晶パネル、イメージセンサー、バッテリーなど主要部品はすべて内製です。画像プロセッサはアナログフロントエンド、デジタル処理部分ともに、社内で設計した仕様を外部ベンダーに委託生産してもらいます」

――レンズに関してはいかがでしょう。こちらは旧コニカミノルタに依存する部分が大きいでしょうが、コニカミノルタ自身、近年は完全自社オリジナルのレンズはほとんど見かけませんでした。

 「確かに一部のレンズは外部に設計・生産を委託していたようですが、全部が外注というわけではありません。Gレンズなどはコニカミノルタ側で設計・生産が行われていたようです」

――レンズはコニカミノルタ製レンズの設計を引き継ぐ形になるのでしょうか? それともαシリーズ専用設計のレンズも投入する予定ですか?

 「専用設計レンズは“出る”と思ってください。さすがに一度にすべてを新設計とはいかず、既存の設計を活かしたものが中心にはなります。すべて新設計でフルラインを揃えられれば理想でしょうが、それは不可能です。しかし、きちんと継続的にレンズの拡充は進めていきます」



――数カ月、数年、10年といった各タイムフレームにおいて、α事業が成長していくことを思い描いていますか?

 「10年先は〜……と話し始めると嘘になるでしょう。5年先でも危うい。技術進歩の早い時代は先を読むのが難しい。しかし、これは事業を途中で投げ出すという意味ではありません。我々は将来にわたってカメラ事業を持ち続けます。ただ、具体的な事業計画としては2年先までしか持っていません。それまでは、どのタイミングで何をやろうと、具体的に“やるべきこと”が見えています」

 「市場に関しては、これだけのカメラメーカーが、一生懸命に新しい市場を開拓しようと製品とアプリケーションの開発に力を注いでいるのですから、当面は市場そものが拡大していく傾向になると考えています」

――つまり一眼レフ市場はまだまだ伸びしろがあると?

 「デジタル一眼レフカメラも、ニコンD1の230万画素が、今やキヤノンのEOS-1Ds Mark IIが1,680万画素を実現するに至り、画像処理も日々進歩しています。こうした品質・技術の成熟が市場に対してどう影響するのかを考える必要があります。果たしてこの先、買い換えてくれるのだろうかと。コンパクト機が継続的に売れているのは、製品が着実に前へと進むことで、数年ごとの買い換えサイクルがしっかりとできあがっていることがあります」

――しかし買い換え需要の喚起に視点が集まりすぎると、モデルサイクルが早くなり、どんどん不毛な競争が進んでいき、ユーザーに利益なくベンダーも利益を出せないなんてことになりかねません。

 「実際に製品を作っている立場からすると、モデルサイクルが短い製品を出したいとは全く思いません。モデルサイクルを切り詰め、とんでもなく安い値段で販売されるような状況では、我々だけでなく市場全体によい影響がない。しかし、社会構造や業界構造、動向などが現在の状況を生み出しており、一メーカーの努力だけではなかなか変えられません」


第1弾は価格よりも中身で勝負

公式ページに現れるシルエット
――最初の製品はどういったユーザー層を狙っていますか?

 「各社の製品をエントリークラス、中級機、ハイエンドと分割すると、エントリー機が市場全体の8割を占めていますから、やはりそこから始めていくのがオーソドックスな手法ではないでしょうか。“値段で勝負!”とはしたくないと思っていますから、同じエントリークラスでもハッキリとわかりやすいアドバンテージがある製品になります」

――イメージセンサーの開発・生産を行なっている部門とは、どの程度連携して製品開発を行なっているのでしょう?

 「ソニー全体としては、イメージセンサーを外販するデバイス事業を進めていますから、社内でも社外でも、彼らからすれば“同じ扱いのお客さん”です。ここで差は全くありません」

 「もうひとつのパターンとして、開発費の全額あるいは一部を負担して、カスタム仕様のセンサーを作ることも可能です。こちらも他社がすでに行なっていることですね。例えばDSC-R1に搭載したCMOSセンサは、我々の事業部が開発費用の負担と評価を行ないました。今後も同じように共同開発を行なっていくことになると思います」

――αシステムの完成を目指すのが第1期事業計画と位置づけるとすると、第1期はどれぐらいで完了するのでしょう?

 「なるべく早くシステムを完成させたいと考えていますが、2〜3年はかかるかなと考えています。一眼レフカメラ事業は、息長い事業として継続的に取り組まなければ意味がありません。“いつまで続けてくれるのでしょう?”といった話も耳にしますが、我々はこれから“やろう”と覚悟を決めて参入しています。やめることなんて、まったく頭の片隅にもありません。きちんとレンズシステムを作り、カメラボディのラインナップを拡充していくことしか考えていません」



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  α公式ページ
  http://www.sony.jp/products/di-world/alpha/

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ソニー、デジタル一眼レフブランド名を「α(アルファ)」に決定(2006/04/20)


( 本田雅一 )
2006/06/02 17:46
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