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【インタビュー】ニコンD200開発陣に聞く

〜3年ぶりの中級機の“下克上ポイント"は?

 3年半ぶり、待望の中上位機として投入され、すでに多くのバックオーダーを抱える人気商品となっているニコンのD200。その背景については、ニコン執行役員で映像カンパニーの開発統括部統括部長としてデジタルカメラ全般の開発を統括する後藤哲朗氏のインタビューとして掲載した。

 今回は、引き続き製品の企画と開発を担当したメンバーへのインタビューをお届けしたい。話を伺ったのはD200の商品企画・仕様決定などを担当し、メカ設計や操作メニュー、機能の絞り込みやヘルプ機能を担当した映像カンパニー開発統括部第一設計部第二設計課主幹の原正治氏、電気設計のとりまとめとファームウェア開発を担当した今藤和晴氏、画像設計(出力画像の絵作り)を担当した服部祐子氏の3名。

 加えてD200と共に人気が集まり、すでに深刻な入手難となっている新手ブレ補正機能VR2を搭載したレンズ「AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18〜200mm F3.5〜5.6G(IF)」のメカ設計と開発のとりまとめを行った山崎聡氏にも、新レンズについて話を聞いた。

 なお、インタビューはD200発売前に行なっている。


中級機に求められるニーズとは何かを見つめ直した製品

原正治氏
−− D200は実に3年半ぶりの新製品になりますが、開発はいつ頃スタートしていたのでしょう?

「初の中級機としてD100を発売してから、市場動向を見たり、さまざまな調査を行ないながら、中級機にユーザーが求める製品としての価値が何かを見極めてきました。1年近く、実際のユーザーのフィードバックや社内の意見を交え、激論を繰り返し、方向が定まって開発を続けた形です。このため、メカ周りや製品としてのパッケージング全体の開発期間としては2年ぐらいをかけています」。

−− 2年という長期になると、デジタルカメラのトレンドを読むのは難しいのでは?

「2年をかけたのは全体のパッケージングですから、センサー周りはもっと違った話になってきます。今回搭載するセンサーの選定には、製品開発開始よりも前から取り組んでいたもので、新しいセンサーが出てきたから、すぐに採用したといったものではありません」。


D200の撮像素子
−− つまり、将来的なセンサーのトレンド変化に合わせて企画を練り上げてきたということでしょうか?

「D200を提供できるターゲットの時期に、どんなセンサーが実用化できるのかを見据えながら、技術進歩を推し量り先回りで企画を立てています。ソニーと長期にわたって共同開発を進めており、センサー開発のロードマップも共有しています。そのロードマップに対して、ニコン側も要求を出しながら最終製品へとつなげています」。

−− もうお約束の質問なので伺いますが、DXフォーマットよりも大きなサイズのセンサーはロードマップに含まれているのでしょうか?

「135フォーマットと同じサイズのセンサーは検討しています。しかし、同時に現時点において中級機に対して今回のセンサーを選んだという選択は間違っていないと確信しています。他社製カメラの周辺画質や、画素数増加による画質の向上の様子を見る限り、コストと画質、レンズシステムとのマッチングなどでベストな選択ができたと考えています。ただ1点だけ。被写界深度やボケ味の問題だけは、センサーサイズに依存してしまいます」。

−− 画質とコストのバランスを考えれば、必ずしも〜というのは理解できます。もう少しブレークダウンして、具体的にどのような議論があったのでしょう?

「毎秒5枚の高速連写によるスピード感と1,000万画素の解像度の両立というのは、最初から目標としてありました。それを実現できるセンサーとデジタル処理部というのがひとつの目標としてありましたね。フルサイズ化に関しては、本当にそうあるべきなのかどうか、実に多くの議論をD200の企画段階で行なっています。単純にコストの問題だけではなく、そもそもフルサイズである事の重要性はさほど高くないのでは? という意見もあります。出力される絵が同じようなものなら、撮影する上での切れの良さの方が重要ではないかという話もあります」。

−− 実際、銀塩時代に一時流行した、トップエンドのプロモデルをアマチュア機に移植した操作感、切れ味がD200にはありますね。ただ、冷静に思い起こしてみると、当時の中上位機よりも今のデジタルカメラの方が速い気がします。メカ部分のフィーリングはデジタルになって後退した部分だと思っていましたが、D200はそうではない。

「D100を発表以来、あるいはD1の頃からもですが、F100のデジタル版が欲しいという意見がよく聞かれました。しかしD200はD100よりも、ずっとレスポンスが早くなっているんです。デジタルだから、ある程度は不自由も我慢しよう、なんて事は考える必要がありません。そのままの心地よさをデジタル一眼でも感じることができます」。


−− D2シリーズを使ってみると、高いボディ剛性もあって固い殻の中でシャッターがシャープに動く感触があります。この感じがD200にもあるのに驚きました。

「さすがにこの価格クラスでは、感性の領域まで踏み込んだ開発は行なえません。しかしカメラとしての建てつけの良さ、メカとしての完成度を高める努力は可能な限り行なっています。その建てつけの良さが、D2に近いフィーリングを出しているのだと思います。実際、かなりの部分でD2シリーズの部品を利用しています」。

−− 具体的には、どのような部分でD2シリーズのパーツを使っているのでしょう?

「ミラーアップのメカ、シャッター、モーター駆動部などは、D2系とほぼ同じものです。大半は同じものだと考えて頂いて結構です。今回は良い意味で期待を裏切り、最上位モデルに近いフィーリングを中級機に持ち込めました。また、部品をプロ向けと共通化することで、フィーリングだけでなく高信頼性、高耐久性を実現できた事も大きいですね」。

−− メカ周りでは防塵防滴をうたうのも、プロ向け以外でははじめてですね。

「防塵防滴処理はどのカメラでも施しているのですが、カタログの中でうたうのは初めてですね。カタログに載せないのであれば、設計側の工夫をあらかじめしておくだけでいいのですが、正式にカタログに掲載して案内するとなると、きちんとコストをかけてテストを行ない、製造ラインの中でも特に入念な組み付けが必要になります。F100と同程度の防塵防滴性能を実現しましたが、D200の方が内蔵フラッシュ(ストロボ)があるぶんだけハードルは高かった」。

−− その内蔵ストロボですが、当然ある方が便利なのですが、高いファインダー倍率と内蔵ストロボを両立している割には、軍艦部がコンパクトな印象を持ちました。

「その部分に技術的なブレークスルーはありませんが、ただ絶対に内蔵ストロボは必要だから付けるという強い気持ちだけはありましたね」。


シャッターユニット ミラーボックス(前面) ミラーボックス(背面)

−− 内蔵ストロボには、最新の外部スピードライト(ストロボ)にも匹敵する多機能が搭載されました。

「D2Hより導入した、プリ発光で外部ストロボをワイヤレスで制御する、アドバンストワイヤレスライティングに内蔵ストロボで対応しています。これまでもD70でコマンダーとして内蔵ストロボを利用できましたが、D200は内蔵ストロボで本発光できますし、2グループまで制御可能です。対応する外部ストロボが1本あれば、内蔵ストロボと組み合わせた多灯ライティングシステムの入り口に立って、様々な撮影を楽しめます。このほか、リピーティング発光やモデリング発光にも対応しました。入れられる機能は、惜しみなく全部入れてしまおうという考え方で内蔵ストロボ周りは作っています」。

−− ニコンは他社に比べると、ストロボへの新機能導入も積極的で、ストロボのモデルチェンジも多い代わりに多彩な撮影を簡単に楽しめ、調光精度も高い。確かにストロボ撮影は凝り始めるととても奥深いものですが、なぜここまで凝った機能を内蔵ストロボに実装したのでしょう。

「ストロボ撮影が楽しい、撮影の幅を広げる要素だとみんなに知って欲しいという気持ちがまずあります。アマチュアカメラマンの方々の大部分は、まだストロボによる表現の面白さを知りません。そこで内蔵ストロボを活用することで、従来よりも手軽に写真を楽しむ道具としてストロボを活用していただきたいと考えました。なによりストロボの有効活用は、写真を楽しむ上でとても重要だと考えている事もあります」。


D2Xからの下克上ポイントは?

今藤和晴氏
−− 今年のPMAでのインタビューで、後藤哲朗氏がD2Xを下克上することになると話していましたが、どのような点で“下克上”を狙ったのでしょう。

「まず、ファインダーが大きくなりました。液晶挟み込みのファインダースクリーンを用いることで、測距点を7点と11点で可変できたり、対角位置の測距点をやや内側に寄せて使いやすくしています。判りやすく画角内に警告を出すことも可能になりました。また、内蔵ストロボがあることで、プロ機とはまた違ったシステム性の提案もしています。背面の広視野角液晶パネルやAFセンサーをワイド化してセンサー感度を改善し、精度も向上させています。また、カメラ部だけでなく、デジタル画像を作り出す部分でもD2X比で改善しているところがあります」。

−− 電気設計部はどのような部分で改善したのでしょうか?

「もっとも苦労したのは起動速度の向上ですね。すでに業界内では0.2秒という起動速度が一般化していますが、この数値は順番にシステムを起動していくと、無駄なく時間を詰めてもギリギリの数値なんです。そのギリギリのところから、どうやって起動を高速化できるか。わずか0.05秒の違いですが、最適化を進めてナンバーワンの起動速度を実現できました」。

−− 現像処理、絵作りの点でも新しい技術を用いているのでしょうか?

「画質面ではローパスフィルタの高品質・高性能化を行なっています。縦方向と横方向に独立した複屈折層を用い、その間に赤外線吸収ガラスを挟み込み、紫外線と赤外線をカットするコーティングを行なっています。複屈折層を2層持つ事でモアレが軽減され、UVカットを行なうことで周辺画質の低下を抑えることができます」。

−− 複屈折層を2層にし、縦横にそれぞれ光を散らすと、解像感が落ちませんか?

「厳密に光学レベルでは落ちますが、デジタル側の処理との掛け合わせで、高解像感を実現しています」。


服部佑子氏
−− 絵作りに関してはD2Xからの変更点はありますか? アマチュア向けではD50がやや異なった見映え重視のJPEGを出力します。

「基本的にはD2Xを継承しています。D2Xのサブ機として使っていただきたいという気持ちがありますから、持ち替えて撮影した時にも同傾向の写真が得られるようにするためです。しかし、日々進化する部分もあるため、若干の違いはあります。たとえば、以前よりも白飛びを押さえるような処理が施されています」。

−− それはデジタル処理で白とびを抑え込むという意味でしょうか? それとも、ハイライトの階調特性を変えて階調が粘る、残るようなセッティングに変更したという意味でしょうか?

「その両方ですね。以前よりも白とびを抑制する処理が施されていますが、白側の階調特性を少し変えて、唐突に階調が失われないよう工夫しています」。

−− 高感度時ノイズの処理に関して、D2Xからの変化はありますか?

「基本的にはD2Xと同じです」。

−− ニコンは以前からあまりノイズリダクションを強くかけず、細部のディテール感を残す方向でチューンされていました。そのさじ加減も同程度でしょうか。

「このあたりはバランス感覚で一概に言葉では言いにくい部分です、しかし、解像感を犠牲にしすぎるのは良くないと考えています。ディテールを失い過ぎないように注意しながら最終的な絵を決めています。ノイズリダクションに関しては、その強度を3段階から選択できますから、好みで選んでいただければと思います」。

−− 絵作りに関して、たとえば銀塩の雰囲気を活かす、あるいは正確な色をキャプチャするなど、何かリファレンスやポリシーは設定しているのでしょうか?

「何か特定のフィルムをリファレンスにするといったことはありません。世界にいるお客様がどのような色再現を期待されているのか研究や調査を継続的に行なっています。それらの調査結果をフィードバックし、絵作りや機能に活用しています」。

−− 具体的にはどのような形で製品に反映されているのでしょう?

「空や肌の色に関しては、好ましい方向でのチューニングを行ないました。D2Xの絵が基本ですから、違和感がない程度のわずかなものです。D70で投入した“仕上がり設定”も、そうした取り組みの結果です(D200にも実装されている)。また、今回は新たに彩度設定としてオートを追加しました。カメラ内部でシーンを自動判別し、彩度を適切に調整します。また初めてモノクロモードを搭載しました」。


−− 1,000万画素を秒5コマで処理するとなると、処理する側のエンジン側にも相当な性能が必要だと思いますが、そのあたりでの工夫は何か行っているのでしょうか?

「D200に採用した画像処理エンジンは、もともと秒5コマで1,000万画素を処理できる能力を備えていました。またメカの方はD2Hからの流れで8コマまで耐えられる設計です。連写性能を実現するための一番のブレークスルーは、センサーと電源設計ですね。センサーは4チャンネル同時読み出しで対応しましたが、電源周りは非常に苦労しています」。

「秒5コマでばんばんメカを駆動するには、ある程度、高い電圧が欲しいのですが、バッテリの制限もあってそれはできません。特にモーターの起動電流と制動時の電流が厳しい。そこでモーターの動きだしの瞬間、ややアクセルをゆるめのところから踏み込むようなチューニングを行なっています」。

−− カメラ本体に話を戻したいのですが、液晶挟み込み式のフォーカシングスクリーンは、F80で採用されて以来、常に議論の的になってきました。D2のファインダーを見ると、やはり液晶挟み込みによるデメリットを感じるのですが、この点での議論はありましたか?

「まず、現在の液晶表示機能付きスクリーンは、以前に比べて見え味の点で大きく進化しています。ピントの見やすさと便利さのトレードオフにりますが、格子線表示やAFフレームの切り替え、インフォメーション表示など、液晶表示ならではの利便性を考えると、こちらの方が良いという考えています」。


4段分の補正効果のあるメカニカル手ブレ補正レンズ

山崎聡氏
−− 次にレンズについて、基本コンセプトを教えてください。

「大本の発想は、DXフォーマットにおける“28−300mmズーム”を作りたいというところです。そしてこの焦点域ならば、VRを搭載するのはあたりまえで、しかも普段から気軽に使えるようコンパクトにする必要があります。また利用頻度の高い広角時の性能で、“やっぱり広角はこんなもんだね”と言われないようにしました」。

−− すでに同焦点域のレンズはレンズメーカーから発売されていたわけですが、それらの製品は意識しましたか?

「はい、すでに市場に存在していましたから、すでに発売されているレンズの描写を超えることは大前提。さらに、そこにVRを搭載することがひとつの目標でした」。

−− VR2の搭載が大きな差別化の要因になっていますが、4段分補正と言われても今ひとつピンと来ない人も多いでしょう。たとえば0.5秒のスローシャッターでも35mm相当以下の画角なら手ブレしにくい事になりますが、0.5秒でブレないと言われても実感が沸きません。

「我々がアナウンスしているのは、焦点距離ではなく、ユーザーの手ブレ限界からおよそ4段分というものです」。


AF-S DX VR ズームニッコール ED 18-200mm F3.5-5.6G (IF)
−− なぜ4段分の補正が可能になったのでしょう?

「ジャイロセンサーが改良され、細かなブレに対する感度が向上しています。それに合わせてメカの制御速度を上げ、全体の手ブレ補正のアルゴリズムを改良しました。たとえば補正レンズはシャッターを切る瞬間、中央に近い位置にあるほど効果的に働きます。シャッターを半押しにした状態でフレーミングする際、ユーザーに違和感がない程度に補正レンズを中央近くに保つよう制御を行なっています」。

−− 設計者として描写性には満足していますか?

「レンズ性能は、設計値では決まらないものです。実際にモノとして出来上がったとき、きちんとレンズがその性能を発揮してくれるかどうかが鍵です。それを踏まえた上で、鏡筒は軽量化のためにプラスティック化するけれど、レンズのコアとなる部分は金属部品にして、このスペックらしい性能を実現しました」。

「また、高倍率ズームということで、レンズ群や鏡筒の伸縮を行なうカム設計には時間をかけています。ズームリング、フォーカシング、AFスイッチなど、手に触れる部分での質感で品質感を評価する方も多いため、メカ部分の操作感で妥協しないよう取り組みました」。

−− 最終的な満足感は?

「最短撮影距離を全域で50cmにすることができたのもセールスポイントです。広角だけ寄れる……では使い勝手が悪いですから、50cmまで全域で寄れないぐらいなら、広角側の18mmを諦めてもいいぐらいの気持ちで、最短撮影距離の短縮には気合いを入れたのです。これらの要素と小型・軽量化、VR2搭載などを同時に実現できた事には満足してます」。


銀塩からの移行にも配慮

−− 最後に、カメラボディとしてのD200。ここにこだわったという部分があれば、開発者から一言お願いします。

「D200はとても細かな部分にも配慮して開発した製品です。たとえばメニューデザイン。項目をわかりやすくというのは当然として、フォントデザインを変更したり、アイコンを判りやすくするためにデザインを工夫していたりしています。また背面の液晶パネルも、実は色味をある程度、個々の機体ごとに調整して出荷しています」。

「またフィルムカメラからの移行を望むユーザーにも大いに配慮しました。たとえば、今回はプロ機以外ではじめてAiニッコールに対応しています。古いレンズでも使えるというのは、マウントを変えていない効用のひとつですから、この部分は大切にしたい。モノクロモード、多重露光、仕上がり設定、さらに各機能ごとにヘルプ機能で説明が表示されるなど、銀塩からデジタルへのスムースな移行を目指しました。カメラ部分の性能だけでなく、そうした銀塩からの移行への配慮も感じ取って頂ければと思います」。


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( 本田雅一 )
2005/12/27 14:20
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