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【レポート】コニカミノルタの独自技術「CCDシフト方式手ブレ補正」

〜Anti-Shake開発者にインタビュー

 「ほぼすべてのαレンズで手ブレ補正が得られる」というユニークな機構をひっさげて登場した「α-7 DIGITAL」。発売を待っていたαレンズユーザーも多いのではないだろうか。

 今回はα-7 DIGITALのコア技術「Anti-Shake」について、カメラ事業部開発部第2開発グループリーダーの井上 義之氏と、同企画グループ担当課長の高野万滋氏に解説していただいた。


CCDシフト方式手ブレ補正の原理

カメラ事業部開発部企画グループ担当課長の高野氏(左)と、同第2開発グループリーダーの井上氏(右)
 旧ミノルタがCCDシフト方式手ブレ補正機構「Anti-Shake」の開発に着手したのは2000年。その後、2003年9月発売の光学7倍ズーム機「DiMAGE A1」に初めて搭載された。さらに2004年2月に「DiMAGE A2」、8月に「DiMAGE Z3」、そして最新の「α-7 DIGITAL」、「DiMAGE A200」と搭載機種を増やしているものの、CCDシフト方式という基本的な仕組みはA1の頃からほとんど変えていない。

 手ブレとは、カメラを保持した人間の腕の筋肉振動や、腕や体を支柱とした揺れのことと定義できる。もちろんレリーズ時に必要ないもので、手ブレはイコール失敗写真といえる。「写真の失敗はピンボケ、露出、手ブレの3つで、2割は手ブレと聞いている」(井上氏)というほど発生頻度は高い。

 手ブレによる揺れ(動き)の方向は、カメラの中心をして上下の平行移動(Y)、左右の平行移動(X)、前後の平行移動(Z)、XYを組み合わせた傾き(ロール)、上下方向の傾き(ピッチ)、左右方向の傾き(ヨー)が考えられ、その6種類が組み合わさったものといえる(Zはデフォーカスになる)。

 このうち、各社の手ブレ補正はピッチとヨーを補正の対象としている。Y、X、ロールによる「面ブレ」も手ブレのうちだが、それよりもピッチとヨー成分の方が影響力が大きいからだ。現在、手ブレ補正といえばレンズ内で行なう「レンズシフト方式」が多く見られ、いずれもピッチとヨーを補正するための光学系を搭載し、角速度センサーから得た情報を基に、光路をシフトさせてピッチとヨーをキャンセルする。角速度センサーとは毎秒あたりの傾きの大きさと方向を得るためのセンサーで、キヤノンのIS、ニコンのVR、シグマのOSといった交換レンズに組み込まれたものや、松下電器のLUMIXシリーズもレンズシフト方式になる。


CCDシフト式手ブレ補正の概念図。光路のズレに撮像面のシフトで対応する
 一方、Anti-Shakeは光路ではなく、撮像面をピッチとヨーに追随させる。この場合、レンズに補正光学系を組み込む必要がないため、鏡胴を小型化できる上、既存のレンズや新規のレンズを小変更するだけで対応させられる。

 実際、DiMAGE A1にCCDシフト方式を採用したのは、「DiMAGE 7」シリーズで使用した高品質なGTレンズ(35mm判換算28〜200mm、F2.8〜3.5)を使用したかったためもあるという。もちろん、Anti-Shakeの開発時から「デジタル一眼レフカメラに応用すれば、ほとんどの交換レンズで手ブレ補正効果が有効になることも意識していた」(高野氏)そうだ。


自社製アクチュエータが駆動の鍵に

Anti-Shakeユニット構成図
 Anti-Shakeユニットはレンズ方向から、「スライダー」、「CCDホルダー」、「ベース台板」で構成されている。ブレにあわせてCCDホルダーを動かす仕組みだが、実際の駆動を行うのが超音波リニアアクチュエーター「SIDM(Smooth Impact Drive Mechanism)」だ。圧電素子、駆動軸、錘(重り)で構成されたもので、α-7 DIGITALで採用する圧電素子は1秒間に約4万回、1μmほど伸縮する。

 具体的な動作原理は次の通り。普段、駆動軸はスライダーに設けられたV字溝にスプリングの力で押し付けられ、摩擦結合されている(固定はされていない)。その状態で圧電素子を伸縮させると駆動軸と、駆動軸に押し付けられているスライダーが移動するというもの。さらに、伸張と縮小に速度差をつけることで、スライダーを一方向に動かせるという。

 たとえば、圧電素子をゆっくり伸ばすと、スライダーも一緒に移動する。その位置で急速に圧電素子を縮めると駆動軸は逆方向に戻るが、スライダーは動摩擦ですべり、その位置にとどまっている。これを連続して行なうと、スライダーおよびスライダーに結合されたCCDホルダーは駆動軸に沿って移動することになる。


Anti-shakeユニット。上段左からDiMAGE Z3用、同A2用、下段がα-7 DIGITAL用 Anti-Shakeユニットに搭載される超音波リニアアクチュエーター。上がα-7 DIGITAL用、下がDiMAGE A2用 Anti-Shakeユニットと使用アクチュエーター。左からDiMAGE A2用、α-7 DIGITAL用

 これにはアクチュエーターの急峻な伸縮が必要で、そのためには圧電素子に鋸歯状の電圧を印加する必要がある。しかし開発中に、アクチュエータの形状に関係した特定周波数の矩形状電圧を印加すると、鋸歯状の電圧印加と同じ効果になることがわかった。矩形波状の電圧なら一般的な駆動回路で代用できるため、製品化に弾みがついたという。なお、速度や移動方向はデューティ(電圧における高低の長さの比率)で変化させている。

 また、摩擦を利用することもあり、スライダーの精度がことのほか重要になるという。確かに、CCDの移動がガタついたり、ズレたりしては補正どころではなくなる。そこで、A1では一体成型の特殊合金ダイキャストを使用。V字溝を同一部材上に構成し、V字溝の面精度を数μm以下レベルとすることで精度を確保したという。

 デモ用Anti-ShakeユニットのCCDホルダーを指先で動かしてみると、思ったより摩擦が強く固い。これで本当に動作するのか心配になるが、電源を入れるとものすごい速さでCCDホルダーが動く。そして瞬時に止まるのは、摩擦を利用したユニットならではの効果だという。井上氏は「超音波駆動と強い摩擦の組み合わせなら、モーターではできないすばやい動きが可能になる。カメラのメカニズムの歴史は、(スローガバナーなど)係止機構をなるべく排除してきた歴史でもある。圧電素子と摩擦の利用は理にかなったもの」と説明した。

 なお、摩擦結合ということで耐久性が気になるが、α-7 DIGITALでは「シャッターの耐久力を超える耐久性を与えている」(井上氏)という。α-7 DIGITALのシャッター耐久回数は明らかにされていないが、デジタルカメラということもあり、「(フィルムカメラの)α-7より耐久回数は伸ばしている」そうだ。また、耐久性については、基本的にレリーズごとの補正になるα-7 DIGITALよりも、CCDプレビューのできるDiMAGEシリーズの方が条件としては厳しい。DiMAGEシリーズで大きなトラブルが聞かれないこともあり、CCDの大きさは違うものの、原理的に耐久性の不安はないとしている。


レンズメーカー製品に「対応」を謳えないわけ

 DiMAGE A1/A2/Z3といったこれまでの採用機種に比べ、APC-CサイズのCCDを搭載するα-7 DIGITALでは、Anti-Shakeの動作が高速かつ大きな移動になる。実際には約4倍の移動距離と移動速度が求められたという。そのため従来よりSIDMを大型化し、スライダーも合金ダイキャストから一部にプラスチックを使用するなど軽量化を図った。ただし、基本的な動作は同じで、スライダーも駆動軸と接する部分は金属製のままだという。角速度センサーに追随して動作するデモ機を見せてもらったが、CCDホルダーの動きはかなり衝撃的で、「何もここまで」と思うほど激しく動く。ここまでしないと手ブレは補正できないのかと、手ブレの与える写真への影響に驚いた。なお角速度センサーは、圧電振動ジャイロをジャイロ素子に使用した一般的なものだという。

 また、α-7 DIGITALのボディ背面には、Anti-ShakeのON/OFFスイッチが設けられている。「Anti-Shakeの消費電力は微々たるものなので、Anti-Shake OFFの場合と撮影枚数はほとんど変わらない」という。ON/OFFスイッチの存在は、ユーザーの選択を重視した結果とし、三脚使用時など、必要ない場合にOFFにすることを想定しているという。


デモ用のAnti-Shakeユニット。レンズ側から見た常態で、左は角速度センサー部 こちらはCCD側から見た状態

 さらにレンズ一体型のDiMAGEシリーズと異なる点は、数多くのαレンズに対応しなければならないことだ。補正のためにはレンズ側の焦点距離情報が必要だが、αレンズにはそれらを記憶させたROM-ICを内蔵している。これをボディと通信させ、補正制御用のマイコンに送っているという。Aマウントへの切替に始まったαレンズの信号ピンだが、デジタル時代に思いも寄らない使い方で利用されるのは興味深い。α-7 DIGITALの完成の影には「ミノルタの技術開発の積み重ねがあった」(高野氏)という。

 しかし、さらに厳密なシフトのためには、焦点距離のもとになる主点位置が必要になるという。主点は、フォーカスなどレンズの繰り出し時にその位置が変化するため、全αレンズのすべてのズームポジションでカプラーと主点の関係を調べ直し、ボディに入力している。そこで初めて、「AFマクロズーム3X-1Xを除く、全αレンズでの手ブレ補正」が謳えるようになったという。また、今後発売するαレンズについては、レンズからボディに主点位置に関する情報を送る仕組みを考えているそうだ。現在、レンズメーカー製の交換レンズに対してコニカミノルタが「対応」を謳えないのは、主点の移動量を調べきれないため、厳密な補正を保証できないためだという。

 井上氏は「いままで撮れなかった環境でも撮影できるという意味で、Anti-Shakeは写真の表現を広げてくれる」と語り、「カメラの進化はAE(自動露出)、AF(自動焦点)と続き、次は手ブレ補正」と強調した。今後もコンパクト機などへの展開も含めて推進したいとしている。



URL
  コニカミノルタ
  http://konicaminolta.jp/

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( 本誌:折本幸治 )
2005/01/11 00:02
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