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【インタビュー】IXY DIGITALとPowerShotはどう変わったのか


 3月にキヤノンは、実に久々にコンパクトデジタルカメラの製品発表会を催した。

 前回のコンパクトデジタルカメラ単独の発表会となると、実に2000年に初代のIXY DIGITAL発表時にさかのぼる。今回の製品にそれだけ力を入れているとも言えるのかもしれない。実際の新製品ラインナップを見ると、新たに手ブレ補正機能付きの4倍ズームレンズや、キヤノン初となる3型液晶パネルをIXY DIGITALシリーズに投入するなど、とかく保守的な印象が強い同社の新製品ラインとしては、比較的大きな舵取りを行ったとも見受けられる。

 新しいIXY DIGITALとPowerShotについて、コンパクトデジタルカメラの開発総指揮を執るDCP第一開発センター所長の新堀謙一氏と、同センター部長の春日博之氏に話を聞いた。


新堀謙一氏
春日博之氏

IXYとPowerShotの強化ポイント

発表会で展示された歴代IXY DIGITAL
−− 久々に新製品発表会を開きました。これは何か意図があってのことでしょうか?

 「今年春は、PowerShot系、IXY DIGITAL系、両方について多くの新製品が同時に投入されました。国内で発表していない製品も含めると、全部で9機種にも上ります。また、国内ではやや存在感が薄いPowerShotシリーズですが、ワールドワイドで見ると北米と欧州でナンバーワンの製品を擁する強力なシリーズです。このPowerShotを、人気のIXY DIGITALシリーズと同時に発表し、発表会を開催することで国内でもPowerShotの認知を高めたいという考えもありました」。


6倍ズームレンズを搭載したPowerShot A700
−− なるほど、PowerShotの国内での認知とのことですが、一連の製品について大きくコンセプトや技術の面で変化したところはどこでしょうか?

 「PowerShotに関しては、同じクラスの製品と比較した時、ズーム倍率での競争力を高める方向で開発を行ないました。特にPowerShot A700はマニュアル機能も充実しており、撮影者の作画自由度は、IXY DIGITALとは異なる特性をもっています。本格的な撮影にも耐える機能をより引き出せるよう、ズーム倍率を向上させたのです」。


PowerShot A540 PowerShot A530 PowerShot A430

 「IXY DIGITAL系は3製品ありますが、とにかく特徴ある製品作りを心がけました。IXY DIGITAL 800 ISでは、4倍のズーム比を持ちつつ、手ブレ補正も組み込んだレンズユニットを、初めてスタイリッシュコンパクトのクラスに持ちこみました。また最近のトレンドでもある3型液晶ディスプレイを採用したIXY DIGITAL 80を用意しています」。

 「特に3型の液晶パネルを積んだIXY DIGITAL 80に関しては、これだけコンパクトなサイズに収めた上で、機能や操作性、デザインを犠牲にしていないのはこの製品だけではないかという自負を持っています」。


IXY DIGITAL 800 IS
IXY DIGITAL 80
IXY DIGITAL 70

高感度対応の手法

−− 発表されたモデルは1機種を除き、すべて高ISO感度対応になりました。これはハードウェアプラットフォームに変化があっての結果なのでしょうか?

 「DIGIC IIを映像処理エンジンとして利用している点は、従来機と同じです。しかし、DIGIC II内部での映像処理アルゴリズムを改善しています。これにより高ISO感度での撮影時にも、ノイズが目立ちにくくなりました」。

−− DIGIC II自身は同じですが、機種ごとそれぞれにCCDからの信号をデジタルに変換するアナログフロントエンド(AFE)が変わっていますね。AFEの性能改善も、ISO感度向上に貢献しているのではないでしょうか? 他社製品では、今年の春から新AFEで画質向上した例がいくつか見られます。

 「新しいAFEによる変化もありますが、ISO感度向上に関しての貢献という意味では、デジタル領域での処理アルゴリズム改善の方が大きな変化をもたらしています」。

−− ゲインアップ時のノイズ処理は、ディテールを犠牲にしてエッジ以外の部分を平均化していけば、かなり減らすことが可能です。しかし、IXY DIGITAL 800 ISの絵を見ていると、塗りつぶすような処理はしていないようです。

 「あくまでもノイズが出にくい処理を行なっているのであり、ノイズを消しているのではありません。解像度と細かいディテールを犠牲にしてノイズをキャンセルする手法が一般的に使われることもあり、実際にそういった処理を行なっている製品も他社には見受けられます。しかし、我々は高ISO感度撮影時にも解像感は必要だと考えていますから、ディテールが損なわれる処理は、可能な限り避けています。」。

−− キヤノンのコンパクトデジタルカメラは、ある時点から解像度指向が強くなり、ノイズがやや残っても解像度を落とさないような絵作りになってきたように思います。具体的には、どのような考え方で小型CCDセンサーのノイズ対策に取り組んでいるのでしょうか?

 「特にノイズリダクションにこだわっているわけではありません。ユーザーの撮影領域を拡大する、つまり良い画質で撮れるシーンを増やすことを基本的な考え方として、レンズ性能や画像処理などカメラトータルの性能を上げた結果と思ってください」。

−− 高感度撮影への対応は、手ブレ補正機能とともに最近のトレンドですが、暗くどうしようもない場所では、色乗りを悪くしてもISO感度を上げて手ブレや被写体ブレを抑えたいと考えるときもあります。そうした緊急用の高ISOモードの実装は考えませんでしたか?

 「撮影シーンによっては、そのような場合があると思いますが、今回搭載したISO800でほぼ実用レベルでご満足いただける画質になっていると思っています」。


−− 新製品を使ってみると、輝度のレンジでノイズの出方が大きく違いました。明るい色は高感度時でもクリアですが、暗い色は「やはり1/2.5型センサーか」とも思います。もちろん、これはどの製品も同じ傾向なのですが、低輝度部分と高輝度部分のノイズの目立ち方の差が、以前の製品よりもはるかに大きい。これは新アルゴリズムの特徴なのでしょうか?

 「新アルゴリズムの影響ではありません。今年の製品でISO800に上げた結果、そのように見えるのだと思います。実は今回の一連の製品に関しては、事業部長から“飲み屋で手ブレせずに、ちゃんときれいな画質で撮れるカメラを作れ”と言われていました。被写体の人物が高感度ISO時にもノイズまみれにならないよう、工夫した結果だと思います」。


IXY初の手ブレ補正レンズ

−− 一方、IXY DIGITAL 800 ISに搭載された手ブレ補正レンズですが、今までキヤノンはコンパクト機に手ブレ補正レンズを採用してきませんでした。自社内にはその技術があるはずなのに搭載して来なかったのはなぜでしょう?

 「これまでも高倍率ズーム機にはISを搭載してきましたが、スタイリッシュコンパクト機では3倍ズーム機が主流で、こちらは他社がすでに手ブレ補正を搭載していました。技術的にキヤノンの独自性を出すためにも、4倍ズームをスタイリッシュコンパクト機に搭載した上で、ISを搭載したいと考えていたのです。コンパクトなサイズに4倍の高倍率と手ブレ補正機能を盛り込んだのは画期的なことです。サイズとズーム倍率を勘案しての手ブレ補正機能という点に注目していただければと思います」。

−− 同じ4倍ならば、国内のユーザーは広角側28mmスタートを望んだのではないでしょうか?

 「手ブレ補正機能を生かすためにも、まずは望遠側を伸ばすことを考えました。焦点距離のニーズには地域性があり、日本やそのほかアジア地区では広角側に拡がって欲しいという声が大きい。しかし、それ以外の地域はほとんどが望遠側のニーズです。ワールドワイドで販売する製品としては、望遠側を伸ばす方がいいという判断になりました」。


高画素化の行方

−− IXY DIGITAL 800 ISは、このシリーズの3桁番号モデルとしては、始めて1/1.8型ではなく1/2.5型センサーを採用しました。これはすでに1/1.8型センサーと同等の画質を実現できたという自負なのでしょうか?

 「まずは伝統である“スタイリッシュコンパクト”のフォームファクタに収めることを重視しました。もちろん、センサーサイズは大きい方が画質面では有利ですが、このフォームファクタを守る限り、技術的な面でレンズサイズの大きさには制限があります。1/1.8型センサーを採用した場合は、デザインもサイズも、IXY DIGITALとは言えない製品になるでしょう。3桁シリーズは1/1.8型センサーといったことは、一切考えていませんでした」。

−− 1/2.5型で600万画素。これ以上の画素数は必要だと考えていますか? さすがに300万では少ないでしょうが、600万画素ぐらいあれば十分でしょう。

 「あくまで個人的な見解ですが、コンパクト機の画素数は500万もあれば十分でしょう。しかし、高画素化によりピッチが細かくなることで解像度向上や偽色などが無くなるというメリットがあります。一方、純粋に一般消費者のデジタル写真の使い方、Lサイズなどプリントするサイズなどを考えると、一概に画素数を増やしても画質は上がらないこともあります」。

 「しかしながら、現実問題としてズーム倍率の高さと画素数が、そのカメラの性能を示すと思われている部分があります。特に北米の場合、相変わらず画素数が重要視されています。価格帯が画素数ごとにきれいに分かれていますから、なかなか画素数の呪縛から逃れることは難しいかもしれませんね」。


−− 画素数を増やしても画質が向上しないならば、必要なストレージ容量が増え、S/N比も下がり、コストも上がる。高画素化しても、ユーザーは何らメリットを享受できないという話にはなりませんか?

 「画素数を増やしても画質が向上しないとしたならば、確かにその通りです。しかし、センサーも技術革新により性能の向上が図られており、またレンズ性能や信号処理アルゴリズムの改善により、トータル画質が向上するように頑張っています。ユーザーに満足いただけるものをご提供することが私達の使命と考えています」。

−− しかし、それも600万画素オーバーとなってくれば、そろそろやめてもいいのでは? と思いませんか?

 「はい、個人的にはそう思います。前述したように、画素数で価格が決まってしまうというビジネス状況と、さらにユーザーニーズとして今後も高画素化が続くとするならば、センサー、レンズ、信号処理などの技術革新に伴う性能向上が続く限り、私達は常に取り組んでいかなければならないテーマだと考えています」。


デジカメの未来はワイヤレスにあり

−− カメラ本体のデザインに目を向けると、今回も中央に近い位置にテレスコピックのレンズを配置し、光学ファインダー、レンズから斜め方向に可能な限り遠く離したストロボなど、基本的なカメラらしい配置にこだわっています。今後も、こうした基本設計を踏襲していくのでしょうか?

 「光学ファインダーは、IXY DIGITAL 80とIXY DIGITAL Lシリーズを除いて、全製品に付けています。実際、お客様の中には光学ファインダーを使う人が意外にも多いのです。そうした声を反映しながら、さらにコンパクト化というニーズに応じるのが我々の仕事だと思っています。光学メーカーとして、物理的に装備することが可能ならば今後も光学ファインダーを採用し続けます」。

−− 今後、どのようなカメラを作っていきたいと考えていますか?

 「将来に目を向けると、ホットスポットから無線LANでインターネットとつながることにより、革新的な使い方が生まれていくのではと考えています。インターネットサービスとどのように連携し、プリンタやストレージとどのように連動するのか。プリンタからの印刷はもちろん、保存やテレビでの写真の鑑賞など、考えるべきことは少なくありません」。

 「先日、IXY DIGITAL Wirelessにカメラ同士がP2Pでつながる機能をファームアップで公開すると発表しました。これはワイヤレスでの画像交換を意識したものです。そうしたみんなで写真を楽しむフィールドを広げるような方向で、新しい価値をユーザーに提案していきたいですね」。


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( 本田 雅一 )
2006/04/18 01:38
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