新製品レビュー

DJI OSMO MOBILE 3

スマホで滑らかな動画を 持ち運びやすくなった電動ジンバル

DJIの電動ジンバル(スタビライザー)攻勢が続いている。

2018年12月に超小型三軸電動ジンバルカメラ「OSMO Pocket」が発売、ポケットに入ってしまう程のサイズでありながらスムーズな4K動画撮影が可能とあってガジェット好きの間では大きな話題となった。

2019年7月にはレンズ交換式カメラ用のRONINシリーズから、ミラーレスカメラに最適な「RONIN-SC」が発売された。プロレベルの映像撮影が可能となる電動ジンバルが小型軽量化され、映像プロダクションだけでなくYouTuberなどでも導入しやすくなった。

その一方で、スマートフォンのカメラが高性能化してきたのであればそれを使わない手はない。2016年にスマートフォンをセットして使用する電動ジンバルOSMO MOBILEが発売され、それまではただ「ブレない」と言うだけだった印象のスマホ用ジンバルが専用アプリとの連携で一気に多機能になった。

そして新たに登場したのが「OSMO MOBILE 3」だ。名前からも分かる通りOSMO MOBILEシリーズの三代目となる製品であり、着実な進化を遂げている。まずはその特長から見ていこう。

特長・機能

最大の特長はアームが折り畳めてコンパクトに持ち運べる様になったこと。日常的に持ち歩くスマートフォンのカメラを使用するということで、ジンバル本体が持ち運びにくかったら活躍の場も限られてしまう。

OSMOシリーズとしては初の折り畳み型ではあるが、実は最近の電動ジンバルは各社コンパクトに持ち運べることを売りにしている製品が多い。そんな中でもOSMO MOBILE 3は単にコンパクトになるというだけでなく軽量かつ低価格であり、ライトユーザーも導入しやすくなった。公式オンラインストアでは単体が1万3,500円、ミニ三脚とケースが付属したコンボが1万5,660円(ともに税込/送料無料)。

さらに様々な機能を利用できる専用スマホアプリが、前機種OSMO MOBILE 2まで使用されていた「DJI GO」から、OSMO PocketやOSMO Actionで使用されている「DJI Mimo」に一本化された。このため機能や操作感はOSMO Pocketとほぼ同等である。

ユーザーからすると超小型なカメラ一体型のOSMO Pocketか、手軽にスマホカメラを利用するOSMO MOBILE 3かと言う選択ができるようになった。

購入してから実際に使用する前に専用スマホアプリ「DJI Mimo」からアクティベーション作業が必要となる。単に購入してきて電源を入れただけでは起動すらしない(正確に言うと電源は入るがジンバルが動作しない)。

アクティベーションが済んだらスマートフォンをOSMO MOBILE 3本体のホルダー部にセット。その際に厳密なバランス調整は必要ないが、ある程度左右のバランスが取れる位置に固定しないとジンバルへの負担が大きくなるので注意が必要だ。

アームを手動で展開して電源を入れたらポートレートモード(縦位置)で起動する。デフォルトがポートレートモードというのはSNS中心のライトユーザーを意識したものであろう。Mボタンを2度押すとランドスケープモードに切り替わるのだが、個人的には起動の度にこの作業をしなければならないのはとても面倒だ。

グリップは初代OSMOからあまり変わりなく非常に持ちやすい。長時間使用していても疲れにくいし、何より安定して撮影できる。手元のボタン類で殆どの操作ができてしまう操作性の良さもOSMOシリーズとして代を重ねてきたDJIならでは。

動画撮影には3つのモードがあり、メインで使用するのがパンフォローモードである。

基本的な移動撮影は概ね良好だが、若干上下動が気になる。このパンフォローモードはパン(横方向)だけでなく、チルト(縦方向)もフォローしてしまうので、上下動の吸収は他社製品よりも若干気を使う。チルトのみロックできるモードがあると、持ち手を工夫すれば上下動の吸収もしやすくなるのだ。

ズームも手元で操作できるが、対応しているのはデジタルズームのみである。4K撮影してフルHDで使用するのであれば使えなくもない。

OSMO PocketやRONIN-SCではトリガーボタンを3回引くとカメラがクルッと180度回転するが、OSMO MOBILE 3ではスマートフォンがアウトカメラからインカメラに切り替わる。スマートフォンはアウトカメラよりもインカメラの方が性能が低い機種が多いので、今回の作例でもかなり画質が変わってしまった。当然画質や画角などは使用するスマートフォンによって変わってくる訳で、よりカメラ性能の高い製品が欲しくなってしまう。

またあまり大きなものでなければ、クリップ型のワイコンやLEDライトなどの各種スマートフォン用アクセサリーも使用可能だ。

電動ジンバルは移動撮影に目が行きがちだが、三脚とビデオ雲台を使ったようなスムーズなパニングにも威力を発揮する。スポーツモードにすると素早いフォローが可能となり、動きの速い被写体を追いかける際などに有効。ロックモードを使用するとちょっとしたクレーンショットの様な表現もできる。

底面に三脚ネジがあり固定して使用することも可能。軽量なので自立型の一脚でも固定できた。このように周辺の装備もコンパクトにできるのは嬉しい。

狙った被写体を自動追従するActiveTrackも健在。ただし普通の顔を追従させてしまうと上部に変な空間ができてしまう。トラッキングマーカーを首(顎髭?)の辺りに持っていくとより自然なアングルになった。

タイムラプス撮影も、通常のアングル固定の撮影、設定した軌道を自動でパンするモーションラプス、滑らかに高速移動したようなハイパーラプスに対応。ActiveTrackと合わせて使用しても面白い。

この他にもFPVモードやスローモーション、パノラマ写真撮影。用意されたプリセットから指定された秒数の数カットを撮影するだけで自動的にエフェクト付きで編集してくれるStoryモードなど、多彩な映像表現が可能となる。

数日間使用してみたが、バッテリーの持ちは非常に良い。本体とスマートフォンをUSBケーブルで接続すれば外部バッテリーとしても使用でき、タイムラプスなどの長時間撮影時にも安心だ。またアーム形状が変わったことでスマートフォン底面に直接アクセスできるので、外部マイクの接続も容易になった。

まとめ

スマートフォン用の電動ジンバルとしての基本機能は十分。専用アプリも洗練されているので非常に使いやすい。何よりコンパクトに持ち運べるようになったことで使用する機会も多くなるだろう。

これでDJIの電動ジンバルは用途に合わせて選べるようになった。
携帯性を重視するならOSMO Pocket。とにかくポケットや鞄の隙間に入ってしまうので常に持ち歩ける。

画質を優先するならRONIN-SC。レンズ交換式カメラの高画質と安定性は抜群。しかしどちらも特定の目的があるユーザー向けであろう。

OSMO MOBILE 3は今や誰もが持ち歩いているスマートフォンをカメラとして利用することで、とにかく導入コストを抑えられるのが魅力。

スマートフォンのカメラ性能もどんどん向上し、SNSへの動画投稿サービスも多岐に渡っている。

電動ジンバルの利用範囲も増々拡大していくのではないだろうか。

わっき

デジタル・コンテンツ・デザイナー/パノラマ写真家。1999年にフリーランスとして独立。テレビ/映画/ゲームなど幅広い分野の映像制作を手がけ、現在はYouTuber、動画レポーターとしても活動中。