新製品レビュー

DJI RONIN-SC

ミラーレス向けに小型軽量化した本格派3軸ジンバル

ミラーレスカメラ向けの片手3軸ジンバル「RONIN-SC」。メーカー希望小売価格は、標準版が5万1,300円、周辺機器などが付属するProコンボが6万2,100円(ともに税込)。

DJIと言えばドローンで有名であるが、その空撮用の技術を用いて地上でもブレの目立たない撮影をできるようにしたものが電動ジンバル(スタビライザー)のRONINシリーズである。

以前同社の小型ジンバルカメラ「OSMO Pocket」を紹介したが、RONINシリーズはレンズ交換式カメラを積載でき、プロレベルの映像撮影が可能となる。

そんなRONINシリーズの中でも片手で持てる手軽さで好評を得たのが、前機種の「RONIN-S」だ。ただし、確かに片手で扱えることは扱えるが、数時間使用していると流石に重い……。

今回紹介する新製品「RONIN-SC」の「C」はCompactの意味で、本体重量は1.1kgとRONIN-Sから41%の軽量化を実現している。この違いはかなり大きい。

本体が軽量になった分だけ積載できるカメラの重量も少なくなっている。とは言え最大2kg(RONIN-Sは3.6kg)まで積載可能なので、ミラーレスカメラであれば十分対応範囲内に収まるだろう。

また価格もRONIN-SC単体が5万1,300円、フォーカス操作も可能なRONIN-SCコンボが6万2,100円(ともに税別)と安くなっている。

簡単・確実になったセットアップ

電動ジンバルを使用する際にまず行わなければならないのが、カメラバランスの調整である。

今回使用するカメラはソニーα7 IIIで、レンズはFE 24-105mm F4 G OSSという組み合わせ。重量はあわせて約1.3kgだ。

使用するカメラやレンズの組み合わせが変わればバランスも毎回違うし、電動とは言え大きくバランスが崩れた状態ではジンバルへの負荷が大きくなってしまう。

そのため、まずは電源を入れずにジンバルを自由に動く状態にして、ヤジロベーの様にバランスを取る調整が必要となる。従来はアームがグラグラと動いてしまい、このバランス調整がやりづらく面倒な作業であった……。

RONIN-SCではこれが大幅に改善された。パン、チルト、ロール軸それぞれにロック機構を組み込んでおり、1軸ごとにロックを解除して順を追ってバランス調整できるので設定が非常に簡単だし分かりやすい。

またRONIN-Sは電源を切るとアームはグラグラと自由に動く状態になってしまうため、持ち運ぶ際にはアームをゴムバンドで停めるなどの工夫をしている方も多いようだ。

その点RONIN-SCはすべてのアームをロックできるので、撮影の合間に持ち歩くのも楽である。

さらにポジションロックシステムが新設され、ジンバルからカメラを取り外して使用しても、再度取り付ける際にはバランスを取り直す必要がないのも嬉しい。

多彩な撮影機能

小型軽量化してしかも安くなったRONIN-SCではあるが、RONIN-Sと同じように様々な撮影機能が搭載されている。

まずは基本機能として手ブレを抑えた移動撮影を試してみた。

軽量化されたとは言えしっかりとした重みがあるので、同社の小型電動ジンバルカメラ「OSMO Pocket」とは映像の安定感も違う。

RONIN-Sと同様に手元のジョイスティックやMode(M)ボタン、トリガーボタンを使用してさまざまな撮影に対応できる。

RONIN-SCを三脚などに取り付け、バーチャルジョイスティックを使ってジンバルの動きを制御することも可能。

トリガーボタンを素早く3回引くとクルッと180度回転して自撮りモードになる。安定していてスムーズに撮影できるが、さすがにミラーレスカメラで長時間自撮りをするとなると、なかなかの筋力を必要とする。

また、激しく走ってもスムーズな映像を撮影できた。撮り方によるのだろうが、むしろ歩き撮影よりも上下動が目立たないのではないだろうか。

電動ジンバルは移動撮影時の手ブレ補正に目が行きがちであるが、安定したパニングにもとても有効だ。手持ちであるにも関わらず三脚とビデオ雲台を使用したようにスムーズだ。

動きの速い被写体を追いかけたい場合などは、Mode(M)ボタンを押しながら撮影するスポーツモードでジンバルがキビキビと反応してくれる。

その他RONIN-Sから継承された機能としては、無制限に回転できるRoll 360、タイムラプス/モーションラプスやモーションコントロール、パノラマ撮影などがある。

時間をギュッと縮めた、それにジンバルを利用してカメラに動きをつけたものがモーションラプスだ。NDフィルターを用意しておけばスローシャッターで絹の流れるような幻想的な映像を撮影できたのだが……設定によっては星空のようにゆっくりと移動する被写体を追いかけることもできる。

モーションラプスではジンバルが非常にゆっくりと動くが、これを通常の動画撮影時のパニング程度に動かすのがモーションコントロールだ。

一度設定すれば何度も同じカメラの動きを再現できるので、それぞれ別撮りして合成するような使い方もできる。

作例は少々雑な合成になってしまったが、同じ動きを4度撮影してひとつのシーンとして合成してみた。セルフタイマーのように開始ボタンを押したあと数秒後に録画開始もできるので、離れた場所へ移動して映り込むこともできる(作例4画面の左下)。

さらに従来のRONINシリーズにはなかった「Force Mobile」「ActiveTrack 3.0」という新機能が追加されている。

「Force Mobile」はスマホアプリと連動して使用する。スマホを傾けた方向にジンバルも同期するので、カメラ映像を別途モニターすれば、離れた場所からでもより直感的な操作が可能になる。またジンバルを持って被写体とともに移動する役と、カメラアングルを制御する役で分業するような使い方もできるだろう。

もうひとつの新機能「ActiveTrack 3.0」もスマホアプリを利用する機能だ。アプリの画面上で追従したい被写体を緑の枠で囲ってあげると、画像処理でその被写体を中央にとらえ続けてくれる。

例えばジンバルを持ってレポーターとともに移動撮影する場合、カメラアングルをそれほど気にしなくても被写体をフレームから外す心配も少なくなり、足場の悪い場所でも移動することに集中できるだろう。

また三脚などに固定してひとりレポートする様なシーンでも重宝するだろう。

まとめ

RONIN-SCと今回使用したカメラを合わせて約2.4kg。RONIN-Sのユーザーからすると相当な軽量化を実感できるだろう。

しかし最近OSMO Pocketで取材することが多かった筆者からすると、この重量での長時間の撮影はなかなかキツイ。3時間程使用していただけで翌日腕が筋肉痛になってしまった。今回はズームレンズを使用したのだが、ジンバル装着中はバランスもズレてしまうのでズーム機能は使えない。となると最初から広角単焦点レンズとの組み合わせた方が小型軽量化にも繋がって使いやすいだろう。

最大バッテリー駆動時間は11時間とのことだが、普通に使っていたらその半分程度と思ったほうが良いかも知れない。長時間撮影する場合は予備バッテリーを用意したほうが間違いない。

ラインナップのひとつRONIN-SC Proコンボでは、フォーカス制御も可能なので、安定した映像だけでなく表現の幅もさらに広がる。

価格も手頃になったので、小規模映像プロダクションだけでなく、画づくりにこだわるYouTuberなどにも向いているのではないだろうか。

わっき

デジタル・コンテンツ・デザイナー/パノラマ写真家。1999年にフリーランスとして独立。テレビ/映画/ゲームなど幅広い分野の映像制作を手がけ、現在はYouTuber、動画レポーターとしても活動中。