新製品レビュー
Canon EOS Kiss M(実写編)
高画質と使いやすさが両立した入門ミラーレス
2018年4月6日 07:00
キヤノンが初めて“EOS Kiss”のブランドを冠したミラーレスカメラがEOS Kiss Mだ。エントリー向けカメラだが、最新の画像処理エンジンを搭載するなど意欲作となっている。前回の外観・機能編に続き、風景写真家の今浦友喜さんが本機で実写した。
解像力
大きく花を咲かせるモクレン。EOS Kiss Mのベース感度であるISO100は滑らかなトーンで花びらを描き出した。日常での使用がメインとなるKissシリーズとしては2,410万画素センサーは十分すぎるほどの高画素だ。
階調
草むらにひっそりと花を咲かせるハナダイコン。光の印象を強めるため、手前にツバキの葉を前ボケとして配置した。光の当たる草むらからシルエットまで階調豊かに描かれている。
ミラーレスカメラはこうした露出の難しいシーンでもEVFで仕上がりを確認しながらカメラ設定ができるので失敗することがない。
バリアングル液晶モニター
幹に直接咲いた桜の花。幹にカメラをくっつけるようにして真上にレンズを向けて撮影した。本機に搭載されたバリアングル式の可動背面モニターは撮影アングルの自由度が高いのでさまざまなカメラアングルに挑戦できる。
連写
シダレザクラの先で宇都宮線と京浜東北線がすれ違う瞬間を撮影した。AF固定連写で約10コマ/秒の高速連写が可能なので瞬間の撮影も十分対応が可能。だが、連続撮影枚数がRAWで約10コマ、JPEGで約33コマと少ないので無闇矢鱈と連写するのではなく、ここぞというときに連写しよう。
高感度
LEDタイプの街灯に照らされた桜を月と共に撮影した。本機の常用感度はISO100~25600。こうした夜の撮影でノイズ感の少ない滑らかなトーンで描こうと思うとISO1600あたり留めたいところだが、日常の記録的な使用であればISO12800でも十分に使えるだろう。
AF
シダレザクラを下からあおり、ワイドマクロ的に撮影した。背景の空は夕方の逆光で輝度差の大きい場面だが、高輝度側・階調優先機能を設定することで白とびを抑えられた。
また、花が風に揺られてAFが難しいシーンだったが、デュアルピクセルCMOS AFの高速なAFのおかげでなんなく撮影できた。
夜の公園をスローシャッターで捉えた。街灯があるとはいえ暗いシーンだったが、AFで全カット問題なくピント合わせができた。デュアルピクセルCMOS AFとDIGIC 8により、最低測距輝度はマイナス2EVに向上している。
C-RAW
大きなツバキの花がオオイヌノフグリの中に落花していた。RAWの記録モードを通常の「RAW」と、画素数を変えずデータ量を少なくできる「C-RAW」で撮り比べ、そのRAWデータからカメラ内RAW現像でJPEGを書き出してみたが、筆者には画質の差を認識できなかった。
動画
エントリークラスのEOSとして初めて搭載された4Kムービー。4Kならではの立体感のある映像が楽しめる。24p/25pで撮影できるので一般的な鑑賞では十分だ。
画角はセンサー中央のクロップになるため、4Kに切り替える際はズームレンズをワイド側にするか自分の立ち位置を下げる必要がある。
HD120p/100pのハイフレームレート撮影も搭載。4倍のスロー動画が手軽に撮影できる。撮影時の4倍の再生時間になるので、撮影は短めにすると後での編集もかんたんだ。
まとめ
総じて良くできたカメラという印象だ。EOS Kissとして必要なこと、EOS Mとして求められていることが詰め込まれている。
たとえばスペックに現れないメニュー項目のわかりやすさなどはEOS Kissそのものだ。カメラ内RAW現像などの使い勝手も非常にわかりやすくなっていて、PCを使わなくてもカメラを楽しめる。
カメラやレンズのサイズ、EVFによる撮影失敗の少なさなどEOS Mの良いところも随所に感じられる。
本格的な撮影をする人にとっては、ボタンやダイヤルの少なさによる操作のもたつき感や、プラスチックボディによる耐久性への心配など物足りなさを感じ部分もあるだろが、あくまでも本機はEOS Kiss。そうした点は目をつぶるとしても、良いカメラだといえる。
EOS Kiss Mの登場によって、ミラーレス化へと向かうキヤノンのハイエンドミラーレスカメラへの期待もおのずと大きくなってしまうというものだ。