新製品レビュー
4,000万画素 & ISO102400…トリプルレンズ搭載スマホ「HUAWEI P20 Pro」を実写
2018年4月5日 07:00
ライカと協業したカメラを搭載するファーウェイのスマートフォン「HUAWEI P20 Pro」が発表された。3つのレンズを搭載した点、そして手持ちでも夜景で手ブレせずに撮影できる新機能が特徴だ。
ここでは、フランス・パリでの発表会で配布されたサンプル機を元に、新機能を中心にご紹介したい。
なお、今回はサンプル機ということで、日本国内で電波を使用するための、いわゆる技適が取得されていない。そのため本体の撮影はパリで行っており、一部日本での作例は無線機能をオフにしている。
3つのカメラを組み合わせたトリプルカメラシステム
HUAWEI P20 Proは、3月27日にパリで開催されたプレスイベントで発表された新製品だ。2016年に初めてライカと協業した「HUAWEI P9」が発売されており、Pシリーズとしてはそこから3世代目にあたる。
ディスプレイは6.1インチOLEDを搭載。縦長ディスプレイを採用する。
今回発表されたのはHUAWEI P20、P20 Pro、HUAWEI Mate RSの3モデルで、そのうちP20は従来通りのデュアルカメラ、P20 ProとMate RSが3つのレンズのトリプルカメラを搭載している。Mate RSはPorsche Designがデザインを担当したコラボレーションモデルだ。
さて、肝心のP20 Proである。トリプルカメラは、35mm判換算27mmの広角レンズ、同80mmの中望遠レンズという2つのRGBカラーセンサー搭載カメラ、そしてモノクロセンサー搭載のカメラが1つという3カメラを組み合わせたカメラシステム。
このようにレンズは3つ。右上からテレ、ワイド、モノクロの3種類。
もともとHUAWEI P9以降は、カラーセンサーとモノクロセンサーを組み合わせて、解像感が高くダイナミックレンジが広いモノクロセンサーの画像に、カラーセンサーの情報を組み合わせて画像を生成する仕組みを搭載。ライカの画質評価を経た高画質の撮影を実現していた。
今回はこれに中望遠レンズを追加し、他社スマートフォンの多くが採用する疑似的な「光学ズーム」を可能にした。ワイド、テレのいずれもモノクロセンサーと組み合わせることで、高画質と利便性を両立させた。
レンズは「VARIO-SUMMILUX-H 1:1.6-2.4/27-80 ASPH.」。もともとP9以降はライカのレンズブランドのファーウェイ版(H)が採用されていたが、とうとうズームレンズの名称である「VARIO」がつけられた。
スマートフォンのデュアルカメラの仕組みは、あくまで焦点切り替えで光学ズームではないはずだが、このレンズ名を見る限り、ライカが「ズームレンズ」として認めたということだろう。
いずれにしても、他社がワイド側に対して焦点距離2倍のレンズを搭載することが多い中、P20 Proは約3倍の焦点距離になっており、個人的にはより使いやすくなった。2倍ぐらいだとちょっと近寄ればいいが、3倍だと、どうしても近寄れない時にも使いやすい。
「ハイブリッドズーム」として焦点距離を5倍にすることもできるが、これは中央切り抜きのクロップのようだ。単純なデジタルズームよりは画質が向上するが、画質の劣化自体はあるようだ。ただ、画面のズームボタンをタッチすれば1倍、3倍、5倍と切り替わるので、より簡単に使える。
ワイド側のメインカメラは4,000万画素、テレ側は800万画素の1/1.7インチセンサーを搭載。モノクロは2,000万画素のセンサーだ。
設定で選べる解像度は40MP、10MP、7MP(1:1)、7MP(18:9)の4種類で、テレ側のレンズは10MP以下の解像度でないと使えない。40MPを使えるのはメインカメラのみで、テレ側が800万画素しかないからだ。
ただ、その割にデフォルトの解像度は10MP、つまり1,000万画素。これはモノクロカメラとの組み合わせによる解像度だろう。40MPの場合はモノクロカメラとの組み合わせをしていない印象がある。
画質面で比較しても、40MPの方が劣っているからだ。晴天下で画面内に細かい模様が多い被写体を撮影する場合には有効だろうが、普段は10MPで撮影するのが最もよさそうだ。
シャッタースピード6秒を手持ちで撮影
今回の発表会で大きくアピールされたのがISO感度で、最高ISO102400まで対応。キヤノンEOS 5D Mark IVの拡張ISO感度が最高ISO102400なので、発表会では「プロ向けの一眼レフ並み」という表現が使われていた。
もちろん、実際の画質を見なければ判断できないが、これは後からアップデートで提供されるとしており、現時点では確認できていない。
発表会では「1ルクスの明るさでも被写体を撮影できる」、「暗所のポートレートで有利」などといったアピールがされていたが、このあたりは実際のアップデートで提供されてから確認する必要があるだろう。
確認した限り、現状では「プロ」モードなら手動でISO3200まで設定でき、オートモードでは少なくともISO10000までは上がるようだ。単純なISO感度の上昇だけでなく、連写合成などでノイズを減らすような工夫は盛り込まれるかもしれない。
従来通り2つのレンズを使って背景をぼかすワイドアパーチャ機能も搭載。これはポートレートモードで撮影したもの。
このあたりを予想させるのが新たに搭載された「夜間」モードだ。発表会では「最長6秒までのシャッタースピードで手持ちでの夜景撮影ができる」とされていたが、ここに使われているのが連写合成機能だ。
手ブレしづらいシャッタースピードで明るさを変えて撮影した画像を合成することで、ノイズを削減しつつ、長秒時撮影のような明るい写真を撮影できる。
これが「6秒でも手ブレしない手持ち夜景撮影」の正体だ。恐らく、複数枚の画像の連写と合成の処理時間を含めて6秒かかっており、この6秒間で露光した場合に近い露出の写真を作る、という仕組みなのだろう。実際のところ、6秒間の露光よりも明るさは抑えられており、露出オーバーにならないように調整されているようだ。
なお、夜間モードではシャッタースピードとISO感度だけは手動で変更できる。シャッタースピードオートだとだいたい4~5秒ぐらいの設定になるようだが、手動だと1/4秒から32秒まで設定できる。
手持ち撮影したもの。1/20秒でISO640になった。
夜間モードで撮影。Exif上は4秒、ISO640だが、ノイズ感は減っているほか、夜空まで明るくなった。ただ、試している限りは色が転びがち。
このあたり連写合成による手持ち夜景撮影は、すでにソニーがデジタルカメラで用意している機能だが、カメラメーカーでもない新興のファーウェイが実現している点がポイントだろう。ところどころ合成の位置合わせに失敗するシーンもあるが、おおむね正確に合成される。
自動車の描写は被写体ブレというより連写合成によるものだろう。奥の道行く人はブレていない。建物上部の合成が失敗しているのは、4秒間の間にカメラをわざと大きく動かしたためだろう
通常撮影に対して色が変化してしまう問題が発生することもあるが、きちんと構えづらく夜景を撮影しづらいスマートフォンカメラで、雑に撮影しても手ブレせずに、しかもノイズを抑えた夜景が撮影できるのは、ちょっとビックリしてしまう。
しかも、被写体の動きを検知して、動いた部分を記録に使わないという、これまたソニーのデジカメにあったような機能も盛り込んでいるようだ。
夜景撮影時に写り込んだ被写体の動きが連続して記録されない現象があったことから推測しているが、人が歩くぐらいのスピードだと対応できるが、車ぐらいのスピードだと対応できず、不自然な写真になるようだ。
いくつか疑問点はあるが、とにかく夜景をブレずに、明るく、高画質に、しかも手持ちで気軽に撮れるというのは大きなメリット。
ちなみに、オートモードではこのシーン認識によって自動的に夜間モードに切り替わる。ただ、あまり積極的に夜間モードの認識はしないようで、手動で変えた方がいいだろう。
まとめ
19カテゴリ500以上という豊富なシーン認識機能もあり、これ自体は数が多いものの、デジカメでも一般的な機能ではある。このシーン認識にAIを使っている点は特徴だが、重要なのはAIを使うことでカメラ経験の少ないファーウェイでも、比較的正確なシーン認識ができること。
莫大な過去の画像を学習してAIを活用した画像処理の仕組みは、今後のスマートフォンカメラではさらに一般的になり、レンズやセンサーの不利を補って写真画質の向上に寄与してくれるだろう。
今後の高感度対応のアップデートを含めて、HUAWEI P20 Proは、スマートフォンカメラが苦手だった暗所撮影を常用レベルに引き上げたスマートフォンとして注目の製品だ。