私はこれを買いました!

スナップだけには勿体ない充実度

RICOH GR III(本誌:鈴木誠)

RICOH GR III+ユリシーズ クラシコ・セルペンテ

良ければ、買わねば。

2009年の入社当時、カメラというものを何も知らない状態で「カッコいい!」と思って買った初めてのカメラがGR DIGITAL IIIだった。28mm相当の画角はとても広く、GRを使いたいがために被写体へ一歩踏み込む勇気を知ったような部分がある。

ちょうど10年後の今年は、GR IIIの開発者インタビューをはじめ、お隣のデジタルカメラマガジン編集部から「RICOH GR III PERFECT GUIDE」が発売されたり、こばやしかをるさん&大門美奈さんの横浜スナップに同行したり、神保町の大先輩こと市川泰憲さんを聞き手にGRシリーズ誕生の背景をお届けしたりと、GRシリーズにとても縁がある1年だった。

上記取材時に何度かGR IIIの広報機材を試すうちに、私の用途には手ブレ補正がとても有用であること、50mm画角にクロップしても誌面に十分な画質であること、スマホ時代に即したUSB Type-C端子を備えていること、加えて高速起動を含む操作の快適性に感心した。

取材に使わないのであれば既存の「GR Limited Edition」(APS-C初代の限定色)で満足していたけれど、要所で使えば取材記事の見映えもよくなりそうだし、そもそも「自分好みの良いカメラとわかっていながら買わないのはどうか」と考え、遅ればせながらGR IIIを購入した。

以来は昨年購入した1型コンパクトカメラ「パナソニックLUMIX TX2」を状況撮影のメインに、トビラカットやブツカットをGR IIIで追加撮影するようなスタイルを模索している。本格カメラらしからぬ身軽さのため、GR IIIは通勤バッグにも常に放り込まれているような状態だ。

撮影例:塗りの厚さや表面の揺らぎまで伝えられるのが、APS-Cセンサーの描写力。
GR IIIで取材中の筆者。

GRシリーズは、その名前のブランドと"スナップカメラ"という長年のイメージが、ある種の先入観にもなっていると思う。GR IIIは、仮にGRという名前がついていなくてもコンパクトカメラとして素晴らしい仕上がりなので、ブランドイメージで敬遠していたという人は一度フラットな視点で触ってみてほしい。

ちなみに、単焦点コンパクトカメラ(スマホ含む)で小物を撮影しようという場合には、被写体の形を観察しながらカメラを遠ざけていって、歪みが感じられなくなったところでデジタルズーム(クロップ)して被写体を画面いっぱいにすると、パッと見の違和感が少ない写真に仕上がる。

形状がワイドレンズで誇張されるのを避けるため、カメラを離したうえでクロップしている。

最近はデジタルカメラのクロップ機能も「ズームレンズにしてカメラが大きくなるぐらいならクロップでいいよね。画素数も十分だし」と受け入れられるようになってきた。最終出力サイズから必要な画質を考えるあたりは、フィルム時代に中判と35mmが使い分けられてきたような感覚に近いと思う。GR IIIなら28mm相当のフル画角で2,400万画素あるので、35mm画角(約1,500万画素)で常用したり、28/35/50mmクロップを3焦点レンズのように切り替えながら楽しむのもいいだろう。

近況報告

インドア趣味で旅行はほとんどしないのに、ヨーロッパ出張に休暇を継ぎ足してフィレンツェに行きました。イタリアのものが好き。先日は日本カメラ2019年12月号の座談会にお呼ばれして今年を振り返りましたが、ふと「紙に残る」と思うと微妙に言葉のチョイスが変わってくるあたり、自分のヌルさを反省しました。

今年買った中古品:ペンタックスOptio I-10、ミノックスEC、オリンパス・ペンEM、PRSカスタム24、ラディック スピードキング。

本誌:鈴木誠