私はこれを買いました!

撮影者の気持ちに寄り添ってくれるカメラ

LUMIX S1R(本誌:宮澤孝周)

年末の恒例企画「私はこれを買いました!」。今年は14名の写真家・ライターの方々にご協力いただきました。カメラ・レンズにとどまらず、PC関連の製品などバリエーション様々な製品を紹介してくれています。最後に編集部からのご紹介で今年分の締めとしたいと思います。

スペックだけでは見えてこない魅力がある

大きい・重い・値段が高い。本機に関して記述されている記事で必ずといっていいほど見かける評価です。

確かにボディは35mm判フルサイズセンサーを搭載するミラーレスカメラ中でも随一といえる大きさですし、重さもトップクラスにあることもまた事実。数値だけの比較ならば、そうした評価は、確かにそのとおりだといえます。ただ、それらが数値だけの評価になってはいないか、ということだけは留意すべき事柄だと思います。

前置きが長くなりましたが、筆者が本機を購入した理由は、上記した事実以上の魅力を感じたからでした。その第一は画質でした。

その画づくりの思想について、パナソニックは「生命力・生命美」という表現を用いて説明しています。ひじょうに感覚的な言葉ですが、本機の描き出す画を見ると、その立体感のある描写や奥行感のある色再現からは、被写体そのものを目の前にしているかのような感覚を覚えます。撮影した画像を目の前にした時の視覚的に訴えかけてくるリアリティを伴う体験は、被写体のもつ魅力や力強さそのものを見る者に投げかけてくるかのよう。そうした意味で、「生命力・生命美」という表現は、実に的を得たメッセージだと実感されました。

理由の二つ目は手にしっくりとくるカメラだったから。仕事うんぬんを抜きにして、写真が好きですし、もちろんカメラも好きです。今年もたくさんのカメラに触れる機会がありましたが、本機は筆者の手にひじょうになじむものでした。言い換えると、それはすごく自然に扱えたということでもあります。

自然に扱えているので、重さも大きさも関係なくなるんですね。当然、なじみもいいので、一日中撮影していても疲れづらいんです。同時に発売された50mm F1.4を装着していると、およそ2kgほどの重量となりますが、そうした持ち重り感はありませんでした。操作部の扱いやすさやGUIのつくりの良さもポイントです。操作部は不自然に手を動かすことなく、グリップしながら操作できる範囲に配されていますし、シャッターフィールの軽さも力むことなく使えることにつながっているのだと思います。

冒頭の大きい・重い・高い、が定冠詞のようになっていますが、ほとんど数値上の話になっている、というのが素直な感想です。唯一、値段の高さだけはネックですね。筆者もだいぶ無理をして購入しました。

でも、それでも、実際に使ってみると撮影者の気持ちにここまで寄り添ってくれるカメラはないのではないか、と思えるほどの結果をもたらしてくれる、そうした魅力を備えているカメラだと思います。何よりも、使っていて開発陣はきっと写真を撮ることが好きなんだろうな、と感じられるカメラであることが、個人的に本機の大きな魅力だと感じました。

初夏の江ノ電・極楽寺駅周辺にて。だいぶ光の強い日でしたが、かえって木漏れ日が面白い陰影をつくっていました。
Panasonic LUMIX S1R / LUMIX S PRO 50mm F1.4 / 絞り優先AE(F1.4・1/400秒・±0EV) / ISO 100

近況報告

当編集部にきておよそ1年半がたちました。今年は本当にたくさんの写真家の方、写真好きな方々に巡り会うことができました。2020年は、そんな皆様とともに写真の面白さや魅力を伝えていければと思っています。製品や技術への理解を深めるだけでなく、当誌を通じて写真の楽しさにあらためて気づくことができたと言っていただけるよう、盛り上げていきますので、どうぞ引き続きのご愛読の程、よろしくお願いいたします。

本誌:宮澤孝周