特別企画

こばやしかをる&大門美奈「GR III」スナップの流儀

同じ日・同じ場所の撮影で、写真家の個性に迫る

弊社デジタルカメラマガジン編集部のムック「RICOH GR III PERFECT GUIDE」の発売を記念して、本書内でテクニック解説を担当しているこばやしかをるさんと大門美奈さんに"同じ日・同じエリア"でスナップを撮ってもらいました。

こばやしかをる:写真を撮る・教える 写真家。スマホ、写ルンです~一眼レフまで幅広く指導。フォトアドバイス、制作・企画、執筆、プロデュース・ディレクションまでをフィールドとするクリエイターでもある。日本カメラ社より「毎日が楽しくなる ご近所フォトのススメ」を共著にて発刊。エンジョイフォトルーム主宰。
https://kobayashikaworu.jimdo.com/
大門美奈:横浜市出身。公募展をきっかけに2011年より写真家として活動をはじめる。 主な写真展に「Portugal」(リコーフォトギャラリー RING CUBE:現リコーイメージングスクエア銀座)、「浜」(キヤノンギャラリー銀座他)写真集に「浜」(赤々舎) などがある。作家活動のほか、写真を使用した企業とのコラボレーションなども行っている。
http://www.minadaimon.com

撮影場所は、横浜の元町・中華街駅をスタートして、山下公園方面まで。カメラはもちろんGR III。ムックの掲載作品と同じく、こばやしかをるさんには「カラー」、大門美奈さんには「モノクロ」という縛りを設け、お気に入りの作品をプリントで見ながら当日を振り返っていただきました。

——当日の撮影枚数はどれぐらいでしたか?

こばやし:そんなに多くなかったです。私はあまり撮らないタイプの人みたいで。120〜130枚だと思います。

撮影:こばやしかをる

大門:私は108枚。少ない。煩悩の数でした。

撮影:大門美奈(35mm相当クロップ)

——今回はほぼ丸一日、たっぷり撮っていただきました。普段のスナップ撮影はどんな風に撮っていますか?

大門:私は海に近いところに住んでいるので、雨でなければ毎朝海へ撮りに行っています。海外だと、朝食前に撮って、食べて、撮りに行って、ビール飲んで、撮って、お昼を食べて、撮って、昼寝して、撮って、夕飯、撮って、お酒飲んで、また撮って、寝る。こんな調子で台湾では3万歩も歩きました。疲れて歩けなくなったらやめますけど、撮れるかぎり撮りたいです。

大門さんが当日歩いたルート。早足で、信号待ち以外はほぼ立ち止まらない。

こばやし:私はマイペースに、日常生活ぐらいのストレスがない状態で撮るのが好きです。気持ちがフラットな状態を保って見つける方がいいなと思っています。海外に行っても、暑ければ休むし、昼寝もします。

こばやしさんは、ゆっくり観察しながら歩くタイプ。被写体を見つけると、アングルやフレーミングを構築しながら撮っていく。

——スナップ撮影で、ノッてきた!と思うのはどんなタイミングですか?

大門:2〜3枚撮れたと思ってからです。

こばやし:「よし、これでいこう!」という、その日に撮るものの方向性が見えたときです。

大門:歩くのが早いので、血流の循環がよくなってくると、調子がいいですね。

——ご自身の基本にしている絵作りはありますか?

こばやし:プリセットを基本として、彩度とコントラスト、シャープネスを調整したユーザー設定に、ホワイトバランスで色の味付けをしています。

撮影:こばやしかをる(WB:曇天)
モノクロにしたくなるところを、青みの演出で渋く仕上げる。
撮影後に「RAW現像」機能で色味を追い込む。

大門:私はデフォルトのモノトーンをベースにコントラストを上げて、調色機能でグリーンを乗せます。この日は午前中曇りだったので「ハイコントラスト白黒」でコントラストを-2に下げた設定も使用しました。カラーの場合は「ポジフィルム調」をベースにすることが多いです。

撮影:大門美奈(ハイコントラスト白黒)
撮影:大門美奈(グリーン調色)

こばやし:私がモノクロを撮るときは、普通の「モノトーン」をローキーに設定しています。ハイコントラスト白黒でコントラストを下げるのと、普通のモノトーンでコントラストを上げるのでは、絵が全然違うんですよね。

——大門さんはクロップ機能をよく使いますね。

大門:Fnボタンにクロップを割り当てて、35mm相当と50mm相当の両方を使います。GRだとRAWもクロップされるので、思い切りがいります。

撮影:大門美奈(35mm相当クロップ)

こばやし:私はアスペクト比は変えますが、画角は変えません。GRを手にすると28mmの良さを活かしたいなあと思います。21mmから28mmぐらいが好きで、これでも広さが足りない時があるぐらいです。

撮影:こばやしかをる(クロップなし。28mm相当)
撮影:こばやしかをる(1:1)

大門:私、広角はあまり使わないんです。フィルムの時はペンタックスの43mmをずっと使ってました。それまではキットズームだけだったんですけど、初めて買ったレンズが43mmでした。

こばやし:一眼レフは35mmぐらいが好き! スナップの基準は「写ルンです」の画角が使いやすいです。

——撮影後にカメラ内RAW現像はしますか?

こばやし:被写体の印象ごとに、色味は積極的に後から変えます。メーカーが作った色で現像できるのも、カメラ内RAW現像のいいところですね。詳しくはムックを読んでください(笑)

大門:今回は撮影後に何も変えませんでした。モードダイヤルのUSERモードに設定した2種類のモノトーンをシーンによって使い分けていますが、GRは自分の好みの設定をワンアクションで切り替えられるので撮影に集中できます。

こばやし:GR IIIは色に深みが出たと思います。派手な色も出るようになったので、「スタンダード」の絵作りに彩度を足したりハイキーにしたり。私はPENTAX KPの絵がお気に入りなのですが、GR IIIはカラーの絵作りが少しペンタックスに寄った印象があります。

撮影:こばやしかをる

——この写真は、どこかフィルムのような質感がありますね。

撮影:こばやしかをる

こばやし:これも設定にワザがあります。白飛びしないようにダイナミックレンジ補正でハイライト補正をオンにして、ハイライトを寝かせています。

大門:勉強になります!

こばやし:GR IIIを持ったとき、表現をこちらに任された感がありました。今までより絵作りの設定を細かくできるようになっているんです。

——絵作りは、カメラ内で細かく設定できるほうがいいですか?

大門:はい、それが楽しいです。本当はもっといじりたいぐらい。調色のグリーンが少し強いから、調色なしとの中間ぐらいがあってもいいかなと思います。

こばやし:階調が豊かなので、シャドー補正が効きます。少しシャドーを持ち上げる感じです。最近のリコーイメージングの絵作りをしている人は、色に相当こだわってるらしいです。

大門:コントラストを上げてもちゃんと階調が出てくれるんですよね。

こばやし:そうそう。私もコントラスト上げてます。階調の出るカメラのほうが、コントラストは上げやすいですね。

撮影:大門美奈
撮影:大門美奈

——この場所はこばやしさんも撮影してましたね。時間帯が違ったので、光が違います。

撮影:こばやしかをる

大門:カメラの機種によって、絵作りの設定を触る・触らないがあります。GRだとよく触ります。最終的に後処理をするにしても、そのカメラ本来の絵作りによって気分が乗る・乗らないはありますね。GRはいいんですけど、キレイすぎる絵作りのカメラはあんまり好みじゃないです。

——今回は、同じ日・同じエリアで異なる写真家が撮影するという趣向でしたが、どうでしたか?

大門:楽しかったです。今回はバラバラに撮りましたけど、一緒に歩いても面白いですね。また別の場所でもやってみたいです。

こばやし:写真家同士で、こういう撮影はなかなかないので楽しかったです。振り返ってみて、スタンスが全く違うのが何より面白かった!

今回は2人に別行動で撮影してもらったが、同じエリアなので撮影中にすれ違うことも。お土産を買っていたのが偶然同じ店。

——せっかくですから、直近の告知がありましたらお願いします。

大門:代官山のGARDE COLLECTIVEでというブティックで、7月24日から作品の展示と販売をやります。私の写真をプリントした布地で作った、杉山さくらさんが手がける「サクラスリング」 ストラップも展開します。
Couleur Collective ー 光と色、三原色をテーマにしたコラボレーション ー

こばやし:リコーイメージングスクエア新宿で、8月28日から個展をやります。ベトナムのホーチミンをGR IIとGR IIIで撮りました。
こばやしかをる写真展「Ấn tượng Hồ Chí Minh」

Amazonで購入

協力:株式会社リコー/リコーイメージング株式会社

デジカメ Watch編集部