私はこれを買いました!

現在最高のポケッタブル記者カメラ

Panasonic LUMIX TX2(鈴木誠)

本誌記者のニュース取材は基本的に1人で撮影・執筆・編集(記事ページ制作)をこなすため、「より小型で必要十分に撮れるカメラ」の存在が助けになる。つまり小さいだけではなく、画質だけでもなく、撮り逃さないレスポンスなども含めた総合力が大事。そして5月に購入したのが「LUMIX TX2」(DC-TX2)だ。

これまで私は2年ほどソニーのRX100 III(24-70mm相当)を使用しており、望遠が必要そうな記者会見などには70-200mm相当のレンズを取り付けたマイクロフォーサーズ機か、トリミングを前提に50mmレンズを取り付けたフルサイズ機も併用していた。1型センサーには、望遠効果を狙ったトリミングに耐えるほどの画質的余裕はないからだ。

しかしTX2の購入後は、このポケッタブルなカメラを1台(場合によってはRX100 IIIを予備に)持っていくだけで大半の取材に対応できている。話を聞きながらでも撮れるコンパクトカメラのほうがチャンスに強いので、仮にバッグの中に大きいカメラが入っていたとしても、実際はTX2で撮っていることのほうが多い。

フォトキナ2018に展示されたLUMIX S1Rの試作機。基本的なことだが、ちょっと望遠側にズームして撮れば被写体の形は崩れない。以下の写真は既報記事からの転載で、いずれもJPEG撮影に最低限のトリミングやレベル補正を施したもの。
6月にドイツ・ウェッツラーで披露された「ライカ Watch」(※弊社媒体の名前ではない)の背面。左手に腕時計、右手にカメラという忙しい撮り方でもここまで写る。

最新の1型センサーによる画質的余裕はISOオート上限6400で不都合がないレベルだし、実用画質のズームレンズは24-360mm相当までカバーする。通常AFだと手元のアイテムに合焦しないためマクロAFモードに常時設定しているが、そのまま遠くも撮れるため不都合は感じない。

AFのレスポンスと合焦サインも信用できる。合焦マークはスパッと点灯するけど狙った被写体からは大ハズレで、パソコンの画面で写真を開いて青ざめる、といったミスがない。新機種を買った嬉しさというより、こうした使い心地と信頼感に愛着が湧いている。最初は10万円という価格に「少々高いかもしれない」と購入を迷っていたのがウソのようだ。

そうそう、他人と違ったものが好みなら、こちらは少々高いがライカデザインのC-LUXもいいだろう。同様の使い心地を持ちながら、おしゃれな革ケースも選び放題だ。TX2もレンズの先っぽにはLEICAと書いてあるので、ドイツのライカ社員は「Almost Leica!」と笑って見逃してくれた。

フォトキナ2018にて「Lマウントアライアンス」発表時のフォトセッション。カメラが小さいと、混雑の中をくぐって前に出るのも容易だ。内蔵ファインダーに接眼すれば、小さいカメラでも「撮っている感」が出る。
グループインタビュー中に撮影。手元でメモを取りつつ、背面モニターを頼りに片手で扱えるためチャンスに強い。動きのある手元を撮ったが、ピント位置も狙ったとおり。シャッタースピードさえ決めておけば安心だ。

余談になるが、最新のデジタルカメラは細かな設定項目が増えたわりにメニュー画面のつくりはそのままで、視力検査と神経衰弱を一緒にやらされているような気持ちになる時がある。その中でLUMIXは早くからボタン&タッチ操作を融合していたおかげか、メニュー画面のページを開くと自然に「そういえばタッチ操作ができるはず」と思い出してサクサク操作できるのが嬉しい。

他社のカメラでも同じようなことはできなくないけれど、画面の見せ方で「ここはタッチ操作ができる」と初見で直感させるのは秀逸だと思う。こうした具合に使い手の心理を想像・先読みして、さりげなく便利で心地よいほうへ誘導していくのがデザインという仕事の究極なのだと思い知らされる。

せっかくの高画質や多機能も、果てしないページ数のメニュー画面に埋もれて、メーカー説明員すら迷子になっているようではあまりに残念。これからのカメラ開発はデザインの専門家であるデザイナーに大きな考えと目標を学びつつ、ちゃんと機能を使ってもらえる載せ方、外観や画面内の引き算的な美しさにまで意識が向いていくと、スマホに満足している人々まで買いたくなるような素敵なアイテムになっていくと思う。

プロフィール&近況報告

本誌デスク。業界ではまだまだ若手と呼ばれますが、編集部在籍&社会人10年目となりました。カメラ量販店で全てのカタログをもらってきて読むところから始めたのが懐かしいです。知ったかぶりをするような知識さえなかったのは、いま振り返ればむしろ幸運なスタートでした。と、近況報告だけは低姿勢にて失礼します。

本誌:鈴木誠