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レビュー:8K 360°カメラ3モデルを比較する

DJI Osmo 360、Insta360 X5、Kandao Qoocam 3 Ultraを撮り比べ

左からDJI Osmo 360、Insta360 X5、Qoocam 3 Ultra

DJIが360°カメラ市場に乗り込んできたことで、既存製品との違いが気になるところだ。

人気のInsta360 X5との比較は多く見かけるが、もう1つ忘れてはいけないのがKandaoのQoocam 3 Ultra。

本記事ではこの3機種の8K360°カメラで撮り比べを行い、どのような違いがあるのか検証していく。

発表の時系列

まずは発売時期から。

コンシューマー向け360°カメラとして最初に8K動画に対応したのは、2019年11月発売のKandaoのQoocam 8K。その後コロナ禍で数年足踏み状態だった中、2024年4月に8K対応のInsta360 X4が、7月にQoocam 3 Ultraが登場している。

Insta360 X4から約1年後の2025年4月、Insta360 X5が発表。続いて7月にOsmo 360が発表されている。

3機種の概要

後発となる機種の方がより高スペックになっていくのは当然だが、実際に比較してみるとそれぞれの強みというものが見えてくる。

DJI Osmo 360は、360°アクションカメラ初の1インチ正方形センサーを搭載している。1インチセンサー搭載の360°カメラといえば「RICOH THETA Z1」もあるのだが、動画の手ブレ補正に難があるほか、現時点では解像度もだいぶ劣ってしまうので今回の比較からは除外した。

3機種ともタッチパネル液晶を搭載しており、撮影モードや解像度の切り替え、露出の設定、コントロールパネル、撮影データの再生などの操作方法もほぼ同じ。

Insta360 X5だけが縦画面なので、最終アウトプットがSNSのショート動画用という方には使いやすいだろう。逆にYouTubeやVR映像などでの利用がメインになるなら、横画面のOsmo 360とQoocam 3 Ultraの方が画角を確認しやすい。

フレームレート・ブレ補正

Osmo 360はコンシューマー向けの360°カメラで初めて8K 50fps 10-bit HDRに対応。他の2機種は8Kのフレームレートは30fpsまで。

やはりアクションカメラとして使う場合はフレームレートが高い方が断然見やすくなるし、VRヘッドセットなどで視聴する際にもちらつきが少なく快適だ。VR酔いも軽減されるだろう。

手ブレ補正は3機種とも非常に安定している。手持ちで足場の悪い場所を歩いたり、小走りで撮影してもとてもスムーズだ。

【8K 360°カメラ比較:フレームレートとブレ補正】

HDR

Osmo 360では特に設定することなく、8Kでも常にHDR撮影できるのは大きい。

Insta360 X5にも「アクティブHDR」が搭載されているが、対応している最大解像度は5.7Kまでで8-bit記録となっている。

Qoocam 3 Ultraは「Dynamic Range Boost」モードで10-bit記録が可能なので、カラーグレーディング時に調整の幅が広がる。

【8K 360°カメラ比較:HDR】

実際に撮り比べてみると、色味はOsmo 360とInsta360 X5がビビッド寄りで、Qoocam 3 Ultraは後から調整しやすい玄人好みの印象だ。

常にHDR撮影してくれるOsmo 360はフルオートで撮影してもきれいだし、10-bit記録にも対応しているので調整の幅も広い。

暗所性能

夜の暗い公園でも比較してみた。

Osmo 360はSuperNightモード、Insta360 X5はPureVideoモード、Qoocam 3 Ultraには低照度撮影モードは用意されていないがF値1.6と3機種の中では1番明るい。

1番きれいに撮れたのは、やはり1インチセンサー搭載のOsmo 360。時点がPureVideoモードのInsta360 X5。F1.6のQoocam 3 Ultraにも期待してしいたのだが、ノイズが多くて厳しい結果となった。

さすがにここまで暗い場所で使用することは少ないと思うが、低照度撮影を多く使う方にはOsmo 360かInsta360 X5をおすすめする。

静止画

動画は3機種とも8K解像度で撮影できるが、静止画の解像度はそれぞれ異なる。高い順にOsmo 360(120MP:15,520 × 7,760)、Qoocam 3 Ultra(96MP:13,888 × 6,944)、Insta360 X5(72MP:11,904×5,952)となっている。

3機種の静止画解像度

それぞれマニュアル露出で凝った設定が可能だが、今回はパッと簡単にオート設定で撮り比べてみた。

※スティッチングにずれが生じていますが、これは3台を横に並べて撮影したことから隣接するカメラが超近景となり、遠景のスティッチングに影響が出たためです。カメラ単独で静止画を撮った場合、こうしたずれは生じません。

Osmo 360は解像感も1番高く、細部の描写も良い。ただしJPEGでしか保存できないので今回のような明暗差の激しいシーンでは空が大きく白飛びしてしまっている。

Insta360 X5はHDR写真でRAWで記録できるので、オートで撮影しても凝った現像処理ができる。

Qoocam 3 Ultraには解像感をアップさせるDNG8や、露出ブラケット撮影ができるAEBモードが搭載されている。今回は明暗差の激しいシーンなのでAEBモードで撮影し、RAW現像してみた。滝の流れを見せつつ、空も白飛びせずに階調が表現できている。

3機種の解像度の違いを等倍比較してみたのが次の写真だ。解像度の違いがそのままディテールの違いに直結してくる。

編集アプリ

3機種ともスマートフォン用とパソコン用の無料編集アプリが用意されている。

写真や動画のスティッチング処理のほか、一部分を切り抜いて通常動画として保存するリフレーム機能や投影変換、キーフレームアニメーションやオブジェクトトラッキング機能も搭載されている。

使い勝手の面ではInsta360が一番優秀。AI機能や用途に応じたプリセットが充実していて、簡単に360°カメラならではの面白い表現が可能となる。

また簡単な動画編集機能も搭載されているので、360°のまま編集してVR動画としても書き出せる。

補足と分析

3機種ともIP68相当の防じん・防水性能ではあるが、水中撮影に使いたい場合は注意が必要だ。Osmo 360は基本的に水中使用は非推奨となっている。対してInsta360 X5はカメラ単体でも15m防水をうたう。

バッテリー容量もそれぞれ違う。また、Qoocam 3 Ultraはバッテリー消費が激しく1番最初に切れてしまった。Osmo 360は同社のアクションカメラ、Osmo Actionシリーズと同じバッテリーが使用可能だ。マグネット式のクイックリリースアダプターもOsmo Actionと共用できる。

Insta360 X5は長時間の動画撮影でも単一のファイルとして記録される。これは熱暴走などの不具合が生じたときにファイルすべてを失う危険性もある。

Osmo 360とQoocam 3 Ultraはセグメントに区切ってファイルを分割して保存してくれるので、記録を失うリスクをかなり軽減できる。

仕事の現場で使うとなれば、QooCam 3 Ultraを外部電源で動作させ、外部SSDに直接録画するのが1番安心だ。

Osmo 360とQoocam 3 Ultraはストレージを内蔵しているので、別途microSDメモリーカードを用意しなくてもすぐに撮影できる。万一カードを忘れてしまったり、撮影中に容量が足りなくなってしまっても安心だ。8K動画を記録するにはハイスピードで大容量のストレージが必要になるので、内蔵ストレージに記録できるのはランニングコスト的にも嬉しい。

Insta360 X5だけは唯一レンズ交換が可能。修理キットが用意されていて、万一傷つけてしまっても自分で交換できる。アクションカメラとしての利用を考えると、安価に修理できるとなれば色々な撮影にチャレンジしたくなる。この安心感は大きい。

まとめ

DJI Osmo 360

  • 強み:大型1インチセンサーによる優れた低照度性能とダイナミックレンジ、8K 50fpsの高いビデオ解像度、10-bit D-Log Mでのプロ向け撮影、105GBの内蔵ストレージ。
  • 弱み:写真はJPEG記録のみ。防水性能はIP68だが水中使用は推奨されず。
  • おすすめユーザー:プロの映像クリエイターや高画質を求めるユーザー。

Insta360 X5

  • 強み:交換可能なレンズ、優れたソフトウェアエコシステム、軽量でコンパクト、防水性能が高く水中撮影に適している。
  • 弱み:8-bit I-Logに限定。
  • おすすめユーザー:Vloggerやカジュアルなコンテンツクリエイター、使いやすさとアクセサリー重視のユーザー。

Kandao Qoocam 3 Ultra

  • 強み:10-bit HEVCビデオ、96MPの高解像度写真、DNG8/AEB撮影、内蔵GPS、128GB内蔵ストレージ。
  • 弱み:近距離でのスティッチング精度、アプリの自由度が低い、バッテリー持続時間が悪い、やや高価。
  • おすすめユーザー:DNG8/AEB撮影による高解像度写真や10-bitビデオを重視するユーザー、ストリートビュー撮影などGPS機能を必要とするユーザー。

こうして比較してみるとそれぞれの特徴がよく見えてきたが、最後に機種選びの重要な要素になってくるのは価格だ。

Osmo 360はストレージも内蔵していて軽量コンパクトなのに、他の2機種に比べてかなり求めやすい。

後発なのでハードウェアスペックも優位なのは間違いないが、まだ初代モデルということもあり未成熟な部分もある。

カジュアルユーザーならオールマイティに活躍してくれるInsta360 X5が使い勝手が良いだろうし、画質にこだわるプロにはQoocam 3 Ultraが使っていて安心感がある。

どのような機能を重視するのか? 本記事が用途に合わせた機種選びの参考になれば幸いだ。

【8K 360°カメラ比較:リトルプラネット】
【8K 360°カメラ比較:ハイパーラプス】
わっき

デジタル・コンテンツ・デザイナー/パノラマ写真家。1999年にフリーランスとして独立。テレビ/映画/ゲームなど幅広い分野の映像制作を手がけ、現在はYouTuber、動画レポーターとしても活動中。