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シグマ、フルサイズミラーレス用レンズ3本を実機公開

EF-Mレンズやビンテージルックの「Classic Art Prime」も発表

「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」をLマウント機のLUMIX S1Rに装着。

シグマは7月11日、東京都内で新製品発表会を開催した。そこでサプライズとして開発発表されたカメラ「SIGMA fp」については先にお伝えした通りだが、ここでは正式発表のあった交換レンズを中心にお届けする。

フルサイズミラーレス用DG DNシリーズ

これまで予告されていたLマウントレンズ(およびフルサイズ対応のEマウントレンズ)は既存の一眼レフカメラ用レンズの設計をベースとしたものだったが、今回の"DG DN"シリーズは、開発当初からミラーレスカメラ用にショートフランジバックで設計された点がポイント。第一弾として3本が発表された。

いずれもLマウント用とソニーEマウント用をラインナップ。有償のマウント交換サービスにも対応し、EマウントからLマウント、またはその逆へのメーカー改造が受けられる。

Lマウント用のレンズキャップが初お目見え。

35mm F1.2 DG DN | Art

最先端技術をふんだんに用いて、高い光学性能を実現したという1本。Artラインのレンズに共通する描写性能を有するとしている。7月26日に発売。希望小売価格は税別19万円。

鏡筒側面には、カメラ側で任意機能を割り当てられるAFLボタンを搭載。また、動画用途を想定した絞りリングのデクリック機構も用意している。

ロック機構つきのレンズフードは、同社独自の設計でガタが少ないとアピール。実際に触ってみると、トルクが一定のまま回転し、規定位置で吸い付くように止まる。止まったあとの左右ガタがないところに品位へのこだわりを感じた。今回のシグマは、後述の45mm F2.8レンズなども含め「品位」という言葉を多く使っていた。

こだわりのフードロック機構。

14-24mm F2.8 DG DN | Art

「星景写真の撮影に使ってほしい」とのコンセプトから、レンズ後部のフィルターホルダーを標準装備とした超広角ズームレンズ。ミラーレス専用設計の効果もあり、同スペックの一眼レフ用レンズから小型軽量化している。発売は8月下旬。希望小売価格は税別19万円。

レンズ後部のフィルターホルダー。脱落防止のロック機構も備わる。

新採用の「ナノポーラスコーティング」は、コーティング表面に小さな穴をたくさん構成し、入射光が急峻に屈折しないようになるというもの。これでガラス面からのゴースト、フレアを抑える。

一般的な多層膜コーティング(左)と、ナノポーラスコーティング(右)の模式図。「なぜこの小さな穴で反射を減らせるのかはよくわからないが、とにかくゴーストとフレアが減る」(シグマ社長 山木和人氏)。

また、コーティングを施す前提として、レンズの設計シミュレーションを行う段階から設計者が"面間ゴースト"(レンズエレメントによって生じるもの)や内部機構の反射による"メカゴースト"を徹底的にシミュレーションして潰していくという。それでも残った場合に施されるのがナノポーラスコーティングのような特殊コーティングで、今後の製品でも必要な時に用いるという。

山木社長はこのレンズのMTF曲線でメリジオナルとサジタルが美しく揃っている様子がお気に入りだそうで、「このMTFだけでビールが3杯飲めます」と壇上で話していた。

45mm F2.8 DG DN | Contemporary

「コンパクトながら高品位な高級レンズ」を掲げる単焦点レンズ。発売は7月26日。希望小売価格は税別7万5,000円。

小さくて軽くて安価なレンズが市場に増える中で、小さくても品位ある高級レンズを目指したという1本。外装含め金属素材を多く採用し、品位と堅牢性を持たせたほか、フォーカスリングの操作感や絞りリングのクリック音、フード装着の感触にもこだわったという。

素材本来の質感が見えるモックアップ。金属外装は化粧用の薄板でなくしっかり肉厚を持たせており、絞りリングを強く握っても感触が変化しないという。

山木社長はこのレンズを小型の高級車に例えて、「交換レンズ界のバンデン プラ プリンセスと呼んでいただければ本望です」と話していた。

参考:バンデン プラ プリンセス。写真:Car Watch編集部

開放F2.8のため大きなボケには頼れないものの、残すべき収差と現代的シャープさのベストバランスを追求したことで、被写体が背景から浮かび上がるような効果を実現したという。

背景ボケの作例。シグマの光学設計者が導き出したベストバランスだという。

シグマ初のEOS M用レンズ

キヤノンのAPS-Cミラーレス「EOS M」シリーズ用のEF-Mマウントレンズが、シグマから初めて登場する。ソニーEマウントとマイクロフォーサーズ用に出ているContemporaryラインのレンズで、16mm F1.4、30mm F1.4、56mm F1.4の3本を揃える。現在開発中で、今秋発売予定。

EF-Mマウント用として予定されている3本。

予告していたLマウントレンズについて

Lマウントアライアンスの発表以来、シグマはAPS-Cレンズ3本とフルサイズ対応の11本を合わせた14本のLマウントレンズを発売すると予告していた。

現在もエンジニアが開発中で、最初の3本となる35mm F1.4、50mm F1.4、85mm F1.4は8月末から出荷できそうだという。そのほかも順次来年にかけ開発・発売予定。

一眼レフ用をベースとしたLマウントレンズのロードマップ。CP+2019で公開したものから更に更新されている。

ビンテージルック シネレンズ「Classic Art Prime」の予告

世界中のシネマトグラファーが1950〜1970年代頃の中古レンズを探し、最新のデジタルシネマカメラに取り付けて独特の映像表現をするのが最近のトレンドだという。

そこにシグマは、最新のシネマレンズで1970年代以前のビンテージルックを得られるシネマレンズ「Classic Art Prime」を投入する。現在10本ある同社のシネマプライムレンズをベースにしたものを発売予定。9月の映像機器展「IBC2019」で正式発表予定だそうだ。

10本の現行ラインナップをClassic Art Primeにも展開。

現行レンズをベースとした最新技術で、かつての色やゴースト・フレアを再現するという試みが興味深い。描写の特徴としては、温かみのある絵の中に大きなゴーストやフレアが発生しつつも、シャープさはそのまま。暖色系色調を再現するコーティング設計だとしており、構成レンズの多くはノンコートで、施したとしてもシングルコートだそうだ。このコーティングの違いにより透過率が落ちるのでレンズのT値は変わるが、F値はそのままなのでボケの大きさは変わらない。

鏡筒には刻印でClassicと加えられている。この黄文字の色入れは、会津の伝統技法である会津塗の職人に、蒔絵の技法で色を入れてもらう予定だという。

中古市場で求めるテイストのレンズを広角から望遠まで揃えるのは難しいが、シグマのClassic Art Primeであれば14mmから135mmまでのコンプリートセットを一気に揃えられ、全レンズでルックが揃ってカラーグレーディングをしやすいというのもアピールポイント。また、全てのレンズが35mmフルサイズ(シネマでいうラージフォーマット)に対応しているのも、スーパー35までしかカバーしないことが多いというオールドレンズに比べて利点がある。山木氏は「これを写真で撮りたいと思う人もいるかもしれないと妄想している」と結んだ。

本誌:鈴木誠