20周年企画
デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第11回(2014年)
充実のミラーレスと一眼レフ 高級コンパクトも多様化の時代へ
2024年9月17日 21:41
当サイト「デジカメ Watch」は本年9月27日(金)に、開設から20周年を迎えます。ご愛読・ご支援をいただきました読者様に、感謝申し上げます。
この小特集ではデジカメ Watchの過去の記事から、その年のニュースをピックアップして紹介しています。
今回は2014年の記事になります。
デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/
進化するミラーレスカメラ
これまでフラットボディを採用していた富士フイルムのXシリーズ。この年1月に追加された「FUJIFILM X-T1」は、シリーズで初めてのセンターファインダースタイルを採用しました。
また、シリーズ初の防じん防滴ボディとなり、これまでの都市スナップから自然風景撮影での活躍を予感させるものでした。さらに他社に先んじて、UHS-II対応のSDXCメモリーカードを採用。オプションにバッテリーグリップの用意があるなど、一躍ラインアップの中核に躍り出たのです。
オリンパスは2月、OM-Dシリーズにエントリークラスの「OM-D E-M10」を追加します。それまでフラットタイプのE-PL系列が受け持っていたエントリーモデルを、センターファインダーのOM-Dでもリリース。同社のミラーレスカメラの主軸が、徐々にOM-Dへと移行しつつあった時期なのでしょう。
同じく2月、ソニーにも動きがありました。APS-Cサイズセンサーの「α6000」は、「NEX-7」「NEX-6」を統合したという位置づけの製品。1月に発表した「α5000」の上位モデルとなり、ここに「NEX」の名称が消えたことになります。
パナソニックは4月、最上位モデルの「LUMIX DMC-GH4」を発表しました。新たに「空間認識技術」を搭載してAFを高速化。一方で4K30pの動画記録にも対応しました。GH系はその後も動画ユースへの対応を強め、独自の路線を歩みます。
前年にレンズ交換式の防水デジカメ「Nikn 1 AW1」をリリースしたニコン。2014年には上位モデルの「Nikon 1 V3」を発表しました。一眼レフカメラのようなルックスの「Nikon 1 V2」から一転、フラットタイプのボディへと様変わりしています。前モデルでアクセントになっていたEVFやグリップは、外付けのオプションとして用意されました。
約20コマ/秒の連写性能も大きな売りで、同時発表の下位モデル「Nikon 1 J4」にもその能力は分け与えられています。
前年に「α7R」「α7」をリリースして気を吐くソニーですが、この年5月、今度は「α7S」を発表します。有効画素数を抑えて1画素あたりの受光面積を確保し、これまでにない超高感度を実現したフルサイズミラーレスカメラ。拡張感度は最高ISO 409600という現実感のない値でした。
このときから4K動画の記録も可能になっています。ただし記録先はまだ外部レコーダーのみでした。
なおソニーはこの年、自前でプロサポートの「ソニー・イメージング・プロ・サポート」を始めています。準備自体はAマウント機の頃からしていたのでしょうか、期せずしてフルサイズミラーレスカメラ「α7R」「α7」の発売後からのスタートとなりました。
ライカからもレンズ交換式のミラーレスカメラが登場します。APS-Cサイズ相当のイメージセンサーを採用する「ライカT」(Typ 701)がそれです。主要な操作をタッチパネルで行うという、レンズ交換式カメラとしては先進的な設計。アルミ削り出しのボディの品位にも、他のメーカーにはない思想を感じたものです。
富士フイルムはこの年、フィルムシミュレーションに「クラシッククローム」を追加します。正式には明言されてはいないものの、その色調は見るからにコダムロームを再現したものでした。すでに生産中止されて久しいこともあり、コダクロームファンの歓喜はかなりのもの。富士フイルムのフィルム以外にフィルムシミュレーションが進出した、その1歩だったのかと思います。
2014年のミラーレスカメラの最後を飾ったのがソニー「α7 II」でした。特徴的な薄型デザインで登場した「α7R」「α7」に対し、幅や厚みが増したボディ&突き出たグリップといった具合に、いくぶんデジタル一眼レフカメラに寄せたデザインとなりました。さらにAPS-CのEマウント機と異なり、ボディ内手ブレ補正を搭載。レンズとボディの協調動作はまだ不可能でしたが、現在のαに近づいてきました。
それぞれ個性あるデジタル一眼レフカメラ
ここ数年、若干トーンダウンをみせていたデジタル一眼レフカメラの新製品ですが、この年は個性的かつ魅力的なモデルが並びます。
リコーイメージングは4月、有効約5,140万画素の中判デジタル一眼レフカメラ「PENTAX 645Z」を発表。80万円という意外に廉価な価格で発売しました。レンズシフト式の手ブレ補正、フルHD60iの動画記録などを実現。画像処理エンジンやユーザーインターフェースは「K-3」と共通です。
5月、キヤノンは前年に発売した「EOS Kiss X7(ホワイト)ダブルレンズキット」をアレンジ。付属の標準ズームレンズの鏡筒色を、ボディと同色のホワイトに揃えました。
同じく付属の「EF 40mm F2.8 STM」はホワイトだったのに、そのとき同梱されていた標準ズームレンズの「EF-S 18-55mm IS STM」は、単体販売の製品と同じくブラックだったのです。「EOS Kiss X7(ホワイト)」の当時の人気ぶりがうかがえるエピソードといえるでしょう。現在、現行の「EOS R50」のホワイトボディに、その系譜を見ることができます。
この年ニコンは、フルサイズ中級機「D800」「D800E」の後継機種として「D810」を発表。新開発の有効3,635万画素CMOSセンサーに、フラッグシップの「D4S」(2014年発表)と同じ画像処理エンジン「EXPEED 4」を組み合わせました。
駆動機構やミラーバランサーを新設計とするなど、メカシャッターによる機構ブレへの対策に力を入れているのも特徴。ミラーレスカメラの存在を意識していたのでしょうか。
「PENTAX K-S1」は、有効約2,012万画素のAPS-CサイズCMOSセンサー、視野率100%のファインダー、約5.4コマ/秒の連写性能を有するデジタル一眼レフカメラ。同社の「K-30」「K-50」などを思わせる手堅い造りのライトモデルですが、驚くべき装備があります。それが、電源レバー、モードダイヤル、OKボタン、グリップ部が状況に応じて光る「ボディライトインターフェース」です。例えば電源レバーのライトは、静止画時=緑、動画時=赤に点灯。「顔検出アシスト」使用時、検出した顔の数をグリップのライトで表示……といった具合です。
この光って知らせる機能自体は以前のペンタックスのフィルム一眼レフカメラにも搭載されていました。後に発表された「PENTAX KF」まで、その思想が受け継がれていきます。
「D810」をリリースしたニコンはその後、矢継ぎ早に「D750」を発表します。「D810」と「D610」の間というポジションの製品でしたが、ニコンのフルサイズ機として初めてチルト式モニターを装備したり、「D5300」で採用したモノコック構造のボディを取り入れるなど、これまでのFXフォーマット機とは違うテイストの製品として、この後も長く人気の製品となりました。キャッチコピーは「攻めよ、表現者」です。
一方のキヤノンは、APS-Cフラッグシップの「EOS 7D Mark II」を発表しています。動体に特化したともいえるコンセプトの製品で、連写速度は最高約10コマ/秒、AF測距点は65。「EOS 70D」に続き、像面位相差AFの「デュアルピクセルCMOS AF」も採用しています。フリッカー検知もこの製品からと、気合いの入ったニューモデルでした。
デジタル一眼レフカメラにおいてフルサイズセンサー搭載モデルが主流になる中、望遠域に強いAPS-Cセンサーの特徴を生かしたこの製品は、動きものを撮るフォトグラファーを中心にヒットしました。
高級コンパクトデジタルカメラの進化が進む
富士フイルムが1月に発表した防水デジタルカメラ「FinePix XP70」には、「アクションカメラレンズ」と呼ばれるオプションが用意されていました。本体を「アクションカメラモード」にして取り付けると、18mm相当での撮影が可能になるというもの。GoProで撮影したような超広角の画像が得られるのです。
長らくアウトドアシーンで人々の頼りにされてきた防水デジカメでしたが、その領域をアクションカメラが侵食しつつある状況がうかがい知れます。
FOVEON X3センサー搭載の「DP」シリーズを展開していたシグマ。そのシグマが2014年2月、「DP」シリーズの後を受ける新シリーズを開発発表しました。焦点距離45mm相当のレンズを採用する「SIGMA dp2 Quattro」と19mm相当の「同dp1 Quattro」がそれです。
デジタルカメラの既成概念を覆す強烈な見た目もさることながら、新たな「dp Quattro」センサーに期待を寄せるファンに支持されたデビューとなりました。
オリンパスが2月に発表した「SP-100EE」は、高倍率ズームレンズ一体型のデジタルカメラに、ドットサイト式の照準器を標準装備した製品です。
この頃の高倍率ズーム機は、光学50倍ズームで望遠端1,000mm相当クラスというのが当たり前となっていました。こうした画角が狭い超望遠域でのフレーミングをドットサイトでアシストするという考え方に思わず手を打ったものです。この発想はミラーレスカメラ用のアクセサリー「EE-1」(2015年)に受け継がれます。
キヤノンの「PowerShot N100」は、前年にその斬新な発想で話題を呼んだ「PowerShot N」の系譜になぞらえられる製品。今回はメインのイメージセンサー&レンズとは別に、ボディ背面にもカメラを搭載するという離れ業をやってのけました。
前面のレンズで撮影すると同時に、背面のカメラで撮影者の姿も押さえておく。それをピクチャーインピクチャーで組み合わせ静止画や動画を生成する……というアイデアを具現化したものです。スマートフォンの自分撮り文化を発展させたような製品でした。
この年もソニーはRX100シリーズの新モデルをリリースします。「サイバーショットDSC-RX100M3」は、これまで外付けのオプション扱いだったEVFを本体に内蔵。使いたいときだけポップアップさせる方式をとりました。当時、このギミックに惹かれた方も多いのではないでしょうか。ちなみに、旧モデルも含めて現行品とするソニーの流通方式は、この頃からありました。
レンズ交換式カメラへの参入を拒み、他社の流れとは別を行くのがカシオ。そのカシオが8月に発表したのが「EXILIM EX-FR10」でした。Bluetoothで無線接続されたカメラ部とコンローラー部からなる製品で、カメラ部を離して使うことで、さまざまなアングルでの撮影が可能になるというものです。帽子や衣服にカメラ部を取り付けるアタッチメントもリリースされるなど、いまでいう「アクションカメラ+スマートフォン」のような使い勝手を考えていたようです。
キヤノンが発表した「PowerShot G7X」は、これまで展開していた1/1.7型センサーモデルの「PowerShot S」シリーズと、より大きなイメージセンサーを搭載する「PowerShot G」シリーズの特徴を合わせたような製品。1型センサーを小型ボディに搭載することで、ソニーRX100シリーズのようなポケッタブルな高級機を実現しました。現行モデル「PowerShot G7 X Mark II」の先代でもあります。
1型センサーが高級コンパクトデジタルカメラの主流になりつつある中、パナソニックが発表した「LUMIX LX100」は、さらに大きな4/3型MOSセンサーを採用。同社のミラーレスカメラと同じセンサーサイズということで話題を呼びました。現在、パナソニックからはこの製品系列は失われたものの、本機と同年に発表された「ライカD-LUX」を経て、今年発売の「ライカD-LUX8」へとその遺伝子が受け継がれています。
そのとき世界が驚いた 1型センサー搭載のAndroidデジカメ
この年行われたフォトキナ2014で最も話題を集めたのが、パナソニックのLUMIX CM1」でしょう。遠目には大型のスマートフォンのようですが、1型イメージセンサーと28mm相当のライカレンズを搭載。それでいて各種Android OSアプリが使えてさらにモバイル通信も可能という、カメラとスマートフォンのいいとこ取りといった製品でした。
スマートフォンによる写真撮影が、デジタルカメラ市場をあからさまに侵食していたこの時代。その回答ともいえる製品の登場に業界が沸いたものです。シボ革をまとった高品位な金属外装も、これぞカメラライクといったものでした。
レンズスタイルカメラのレンズが交換可能に
前年に「レンズスタイルカメラ」を投入したソニーからは、Eマウントを搭載した「QX1」が発表されました。交換レンズとしてEマウントのレンズ群を使用できるとあって、これまで以上に注目されることに。しかもどういうわけか、ポップアップストロボも内蔵していました。
背面モニターを廃した「ライカM Edition 60」の大胆さ
フォトキナ2014で発表された「ライカM Edition 60」は、「ライカM-P」の派生モデルといった存在。デジタルカメラなのに背面にモニターを備えていないのが特徴です。つまり「フィルムのM型ライカのように使う」というコンセプトの製品であり、ライカらしい斬新かつ大胆な発想のプロダクトでした。最近発表された「ライカM11-D」の先祖といったところでしょう。
USB-II対応SDXCメモリーカードがお目見え
「FUJIFILM X-T1」をはじめ、UHS-II対応のSDXCメモリーカードをサポートしたカメラボディが現れだしたのがこの年。メモリーカードブランドからもUHS-II対応品が発表されます。ただしカメラ側の対応が遅かったこともあり、しばらくは普及の歩みがゆっくりとしていた印象。とはいえSDメモリーカードはこの後も、デジタルカメラの主流のメモリーカードとして高い採用率のまま推移します。
なおこの頃から、UHSスピードクラス3対応を謳うSDXCメモリーカードが登場しています。「LUMIX DMC-GH4」の登場を受けたものでしょう。いまでこそ当たり前になった4K動画が、いよいよアマチュアの手の届くものになってきました。
いまをときめくストラップの源流
模造品対策のため販売停止措置までとられたほど高い人気を誇る、Peak Designの「アンカーリンクス」。その「アンカーリンクス」を最初に使ったとみられるストラップの記事がこちらです。当時は「マイクロアンカー」と呼んでいたようですね。ストラップの製品名「リーシュ」「カフ」ともに、その名は今も続いています。
LEDがクリップオンスロボに
瞬間光を発するクリップオンストロボに、定常光のLEDライトを搭載。その走りともいえる製品がこの年ニュースになっています。
これまでもキセノン管によるサブ発光部や、AF補助光のためのライトを備えた製品はありました。そこに定常光のLEDを搭載した製品で、「LUMIX DMC-GH4」との同時発表。動画撮影時に使用することを想定していました。
自立式一脚のご先祖様
いまではよく見かける自立式一脚。一脚に簡易的なスタンド機能を付加した製品で、軽い機材などを立てておくのに重宝します。
その出始めの頃の製品と思われるのが、こちらの「スタンドポッド」です。既存のスリック製製品であるミニ三脚と一脚を組み合わせて商品化したものです。ニーズはあったようで、各社からこの手の製品が雨後の竹の子のように登場します。
何でもiPadでやる風潮に
数年前からのiPadの普及を受け、この年にはカメラ業界でもiPad OSに対応したアプリやコンテンツがいくつか公開されています。
そのうち、「Lighroom」をiPadで使えるようにした「Lightroom mobile」は、PC側の「Lightroom CC」とクラウド経由で連携。ライブラリの管理や編集作業を出先で手軽にできて重宝しました。スライダーをタップで操作するのも新鮮でした。その後、スマートフォン版も登場します。
またカメラメーカーからは、カタログを電子化したようなコンテンツも登場。タブレットのある生活がもてはやされていた、当時の雰囲気が思い起こされます。