20周年企画
デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第12回(2015年)
高機能化するミラーレスカメラと広がるフルサイズへの流れ
2024年9月18日 21:38
2024年9月27日(金)、「デジカメ Watch」はサイト開設から20周年を迎えることになりました。みなさまのご愛読とご支援に、厚く感謝申し上げます。
本小特集はデジカメ Watchの過去のニュース記事より、印象深いものを年ごとにピックアップしてお届けする企画です。
今回は2015年の記事を紹介します。
デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/
ラインアップ充実のミラーレスカメラ
2012年に登場したオリンパスの人気モデル「OM-D E-M5」が、この年ついにモデルチェンジしました。「OM-D E-M5 Mark II」は、センサーシフト式の手ブレ補正機構を応用した「40Mハイレゾショット」を搭載。その後他社へも波及した機能ですが、このときが初出でした。
同じくオリンパスの「OLYMPUS AIR A01」は、背面モニターを持たないマイクロフォーサーズカメラの一種。撮像素子、レンズマウント、microSDスロット、バッテリーなどで構成され、無線接続したスマートフォンからフレーミングなどの操作を行います。本機を制御するためのSDKも公開され、オリンパスでは自作アプリなどによる応用の余地・広がりに期待していたようです。
スマートフォンのカメラが予想以上に進化したこともあってか、ソニー「QX1にし」ても「OLYMPUS AIR 0」にしても、残念ながらそのコンセプトを継承する製品が続くことはありませんでした。ただし、ミラーレスカメラとスマートフォンをつなぐアプリは、その後も進化を続けていきます。
富士フイルムからは「FUJIFILM X-T10」がリリースされました。「X-T1」に続くセンターファインダースタイルの製品で、横幅をぎゅっと詰めたようなフォルムが特徴的です。小型ボディにこだわったという割に、ボディ上面の3連ダイヤルが残されている点がいかにも富士フイルム。ちなみに現在も「X-T50」として後継機が存続しています。
フルサイズミラーレスの流れを作ったソニーですが、この年は世界初の裏面照射型フルサイズCMOSセンサーを搭載した「α7R II」を発表。「α7 II」と同じく5軸ボディ内手ブレ補正も内蔵し、4K動画の本体記録が可能になるなど、大幅なスペックアップを果たしています。
矢継ぎ早に「α7S II」も発表されました。こちらも「α7 II」と同様のボディデザインとなり、5軸手ブレ補正機構や4K本体内記録も「α7R II」と同じく搭載しています。
「LUMIX DMC-GX7」から2年、パナソニックは後継モデルの「LUMIX DMC-GX8」を発表します。この製品は、レンズ内手ブレ補正とボディ内手ブレ補正の協調動作を初めて実現。すでにGX7でも両方の手ブレ補正が可能でしたが、同時に作動させられるようになったのは本機からです。この技術がその後、他社へ波及したのはご存じの通りです。
その頃のキヤノンのミラーレスカメラはというと、メインストリームの「EOS M3」を2月に発表、AFに手が加わり外付けEVFに対応するなど、「EOS M2」から順当な進化を果たしました。
そして10月には「EOS M10」を発表。EOS M1桁系に加え、初めて2ラインでの布陣となります。「EOS M2」を踏襲した抑えめのスペックではあったものの、ボディのみ4万円台前半という実勢価格に、キヤノンの本機を感じたものです。
前年の2014年、APS-Cセンサーを搭載する「ライカT」でミラーレスカメラに参入したライカですが、早くも翌年にフルサイズミラーレスを発表します。「ライカSL」です。
お家芸ともいえるアルミ削り出しのボディに設けられた「ライカLマウント」は、後にパナソニック・シグマとアライアンスを組み共通規格化する、「Lマウント」のルーツです。
5,000万画素超の「EOS 5Ds」が登場
キヤノンが同年に発表した「EOS 5Ds」「EOS 5Ds R」は、35mmフルサイズCMOSセンサーでの5,000万画素超えを達成。有効約5,060万画素での記録を可能としました。「EOS 5Ds R」はローパスフィルターレスモデルになります。
このほかシャープネスを意識したピクチャースタイルを新設したり、シャッターレリーズ時の機構ブレにも配慮するなど、高画素機としての考え方を表しました。
同じくキヤノンの「EOS 8000D」は、中級機の「EOS 70D」とエントリーモデル「EOS Kiss X8i」の間に位置するデジタル一眼レフカメラ。メインターゲットは「もっと写真を楽しみたい一眼レフ入門者」となっており、これまで入門機では省略されてきた上面液晶パネルやサブ電子ダイヤルを備えています。
個人的には入門機というより、「サブカメラなのでそこまで基本性能は必要ない、でもメインカメラと同じ操作性であって欲しい」……というニーズに刺さるカメラに感じました。ちなみにこの機種から、測光に色情報を利用するようになっています。
リコーイメージングからは3月、防じん防滴で最小最軽量のデジタル一眼レフカメラが「PENTAX K-S2」が発表されました。しかもペンタックス一眼レフカメラで初のバリアングル液晶モニターを装備……というより、どちらかというと見てほしいのは、スポーティなボディカラーのセンスです。オーダーカラー受注サービスで、さらに奇抜なカラーリングに仕立て上げることもできました。
大きく新製品の数を減らしたデジタル一眼レフカメラですが、この年の9月から12月にかけ、リコーイメージングが「PENTAXフルサイズ一が年レフカメラ」のティザー広告を複数回に分けて公開しています。
結局年内での発表はありませんでしたが、ファンの盛り上がりを維持したまま、翌2016年に期待をつなぎます。
尖った機能が特徴のコンパクトデジタルカメラ
Wi-Fiでスマートフォンに接続できる新製品が常態化する中、カシオがこの年発表した「EXILIM EX-ZR1600」は、Bluetooth LEの利用でカメラとスマートフォンの常時接続を実現。シャッターを切ると撮影画像が自動転送が始まるという、これまで生じていた画像転送時のストレスを軽減しました。
7月には早くも第2弾モデルの「EXILIM EX-ZR3000」を発表しています。
光学50〜60倍でズーム倍率が一段落したに見えた高倍率ズーム機でしたが、この年ニコンが「COOLPIX P900」を発表。光学ズーム比は一気に“83倍”を記録します。このモデルはヒットし、生産が追いつかない状況になるほどでした。
さすがに開放F値はF2.8-6.5となりますが、月を画面の半分以上に写せるなど、一眼レフカメラやミラーレスカメラではおいそれと体験できない、焦点距離2,000mm相当の世界が衝撃的を与えました。
「ライカQ」(Typ116)は、ソニー「RX1」シリーズに続くフルサイズセンサー搭載のレンズ一体型カメラ。ライカにはすでにAPS-Cセンサーを搭載する「ライカX」シリーズがありましたから、そのフルサイズ化は自然な流れといえるでしょう。
M型ライカに比べるとカジュアルな存在であり、既存のライカファンを超える広い支持を集めました。「ライカQ2」「ライカQ3」と現在までシリーズが続いています。
同じくソニーのレンズ一体型機のうち、フルサイズセンサーを搭載する「RX1」シリーズも新製品が発表されています。
一方のソニー「RX1」系にも新モデルが出ています。「RX1R II」は、同じ年に発表されたミラーレスカメラ「α7R II」と同等のイメージセンサーと画像処理エンジンを採用。このモデルから像面位相差AFが可能になり、ポップアップ式のEVFも実装されました。状況にあわせてローパスフィルターの効きを変えることができる「光学式可変ローパスフィルター」も世界で初めて搭載されています。
下位ラインのソニー「RX100」にもトピックがあります。同時発表の高倍率ズーム機「サイバーショットRX10 II」ともに、「サイバーショットRX100IV」は、デジタルカメラ初の積層型CMOSセンサーを搭載しました。ローリング歪みの低減、1/32,000秒の電子シャッター、最高約16コマ/秒の連写性能などをアピールしています。
早くもDJIジンバルカメラのルーツが
YouTuber御用達といった感じで現在ヒット中の「Osmo Pocket 3」。その先祖にあたるのが、2015年に発表された「Osmo」です。「世界初の3軸ジンバル映像安定化技術を採用」がうたい文句で、同社のドローンで採用したZenmuse X3カメラを搭載。今見るとかなり大型ですが、これはこれで使いやすそうですね。
“速写ストラップマウント”という選択肢
カメラの左右ではなく、ストラップを底面に取り付ける提案で有名になったのが、米Custom SLR社の「C-Loop」です。三脚ネジ穴を利用してカメラを斜め掛けのショルダーストラップに吊り下げるシステムで、日本では2012年にBLaKPIXELが発売。ストラップに取り付けるマウントが回転機構を備えていたなど、取り回しの良さから人気になりました。
それまでも撮影の現場で見かけることはありましたが、本格的に流行したのは2015年の「C-Loopミニ」からではないでしょうか。もともと斜め掛け自体が小型の機材に向いていたこともあり、ミラーレスカメラ時代を迎えたこの頃、利用者を増やしたようです。
なぜか発表が相次いだ「太鼓型ソフトボックス」
フィルム一眼レフカメラの頃から、クリップオンストロボの光を和らげる外付けのソフトボックスやディフューザーは存在しています。そして、たまに新しいアイデアが形になって世に出てくるのもこのジャンルです。
この年発表されたのが「太鼓型」の製品。直立させたクリップオンストロボのヘッドに取り付けるもので、上向きに放たれたストロボの光をボックス内部で反射させ、円形のディフューザーがそれを広く前方へと放つ仕組み。一般的なソフトボックス/ディフューザーより大型なのも特徴でしょう。天井がない場所における「疑似天井バウンス」の決定版になるか? という期待から、それなりに話題となりました。
家庭内デジタルアルバムへの挑戦
この年、富士フイルムとキヤノンが、写真を保存してスマートフォンやテレビで鑑賞する、「デジタルアルバム」とも呼べる製品を発表しています。いずれもリモコンでの手軽な操作を売りとし、富士フイルムはフォトブックの注文、キヤノンは自社オンラインフォトアルバムサービスへの送信といった、ネット周りの機能も備えていました。
スマートフォンの普及で家庭内の写真の撮影総数が増え、その管理や共有手段を意識した製品ジャンルといえますが、残念ながら普及にまでは至りませんでした。
結果、1人勝ちしたのがバッファローの「おもいでばこ」です。2011年に第1号機が登場した歴史あるシリーズで、少しずつ進化しながら現在もその命脈をつないでいます。
製品化が進む撮影用LEDライト
この頃から撮影用を謳うLEDライトがリリースされ始めます。スタンド設置を前提としたパネルタイプのものが多く、リモコンで操作できる製品もよく見られました。ただし出力はまだ低く、進化はこれからといった状況でした。
LEDといえば、こんな製品もニュースに登場しています。現在、NANLITEブランドなどで人気を博している、チューブ型ライトの祖先といってよいでしょう。