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2つのフォーサーズを両輪に新しい世界を開拓

~パナソニックDMC-G1開発担当者に訊く

会期:2008年9月23日~9月28日
会場:ドイツ・ケルンメッセ



左からコーポレートコミュニケーショングループグループマネージャー 立花隆良氏、商品企画・一眼事業担当 総括 房忍氏、企画グループ 開発企画チーム 参事 井上義之氏

 マイクロフォーサーズ規格の発表から、わずか1カ月あまりで対応製品を発表したパナソニックは、フォトキナのブースにおいてLUMIX DMC-G1を大々的に展開している。144万画素相当(フィールドシーケンシャル方式48万画素)の電子ビューファインダー(EVF)に加え、高速読み出しが可能なLiveMOSセンサーと高速プロセッサを組み合わせたDMC-G1は、従来のEVFが持つネガティブなイメージを大きく変える見え味で来場者を驚かせている。

 日本でも、まだ店頭には並んでおらず、パナソニックセンターなどでしか触れることのできないDMC-G1だが、写真で見るよりもサイズはずっと小さく、(光学ファインダーに比べ期待値が低いというのもあるが)高精細で見え味も良いEVFが手伝い、初めて使ってみると一眼レフシステムとは別の切り口ですばらしさを感じるモデルに仕上がっている。

 賛否両論あるカラー展開も、実際の色はかなり渋めで、特に青に関してはほとんど違和感を感じさせない。スペックや写真に比べ、実物の方がずっと良く感じるG1が店頭に並び始めると、なるほど“これもアリ”と思う人も増えてくるだろう。

 さて、そのDMC-G1とパナソニックの交換レンズ式カメラの今後について、パナソニックに話を伺った。[インタビュー:本田雅一]


「あえて一眼の形を採用。だからこそEVFにはこだわった」

――マイクロフォーサーズ規格の発表からDMC-G1の発表まで、驚くほどの短期間でした。いつ頃から、対応機の開発をしていたのでしょう?

「それはもう、発表前から準備を進めて、すぐに発表しようと待っていましたよ。いつから開発をというと、どこからが開発なのか? という話になるのですが、規格の話を進めながら、必要となる様々な技術に関して検討を進めていました」


DMC-G1(コンフォートレッド) DMC-G1(コンフォートブルー)

――マイクロフォーサーズは、どちらかというとパナソニック主導で議論が始まったのではないか? と考えていますが、実際にはどのような経緯で生まれてきたのでしょう。

「フォーサーズ規格をベースに、今後、このフォーマットをどう進化させていくべきか? といった議論を、オリンパスとパナソニックの間で継続的に行なっていました。その中で、我々がマイクロフォーサーズのようなアイディアを話し始めましたが、だからといってオリンパスが受け身だったわけではありません」

「フォーサーズ規格の拡張を議論する中で、必要となる技術などの各種要素ごとに分科会を作り、その場で互いに意見を出し合ってひとつの規格へと共同でまとめていきました。おおよそ2年ぐらいの間、互いに問題点を提起しながら、その解決策を互いに提案し合うといった形で議論を進めた結果として、マイクロフォーサーズが生まれています」

――ミラーレス構造にもかかわらず、EVFを付けて一眼レフと同じスタイルにした理由は何でしょう? パナソニックというと、レンジファインダースタイルのトラディショナルなデザインを踏襲するというイメージがあったのですが……

「我々は一眼レフカメラの世界に入ってくる前、ずっと長い間、高倍率ズームカメラを販売してきました。デザインは一眼レフのスタイルです。その後、DMC-L1でペンタを取り外しましたが、またDMC-L10で戻しています。実際に購入していただいたお客様の意見を伺っていると、ファインダーは真ん中にあって欲しいという方が多かったんです。マイクロフォーサーズ規格はレフレックス構造がないため、デザインはコンセプト次第で様々な形とすることができます。しかし、あえてレンズ部の軸と揃え、上部にEVFを置くデザインにしました」

「加えて、こうした一眼レフ風のシルエットが“高画質カメラの形”として認識されていることもあります。カメラに詳しい方は別にしても、一般に写りの良いカメラというと一眼レフタイプを想像します。コンパクト機からレンズ交換式にステップアップしてもらう上で、この形の方が顧客が安心してくれるんです」


144万画素相当のEVFを搭載
――マイクロフォーサーズが登場した際、ライカMやコンタックスGを想起させるデザインのカメラが登場しそうだと感じた人も多かったと思いますが、いっそのことEVFなしで背面液晶のライブビューだけという選択肢もあったのでは?

「もちろん、EVFを付けない方が設計は楽ですよ。高性能なEVFを搭載するために、相当に苦労をしていますから。しかし、ファインダーなしのキワモノに見られたくなかったという気持ちもありました。オモチャのカメラっぽく見えるのだけは避けようと」

――“EVFなのに、あえて一眼の形”というのも、仕組みが分かっていると、キワモノのように思えなくもありませんが……

「だからこそEVFの品質や性能にはこだわっています。光学ファインダーでは得られない情報を、EVFを通じてユーザーに伝えよう。そうした気持ちもあり、144万画素相当のフィールドシーケンシャル型液晶EVFを採用し、撮影後のシミュレーションを見せるなどの工夫をしています。このEVFはパナソニックの業務用ハイビジョンカメラ向けに使われているものを搭載しており、今のところEVFとしては世界最高のものだと自負しています」


これまでのLUMIXの機能は全部入れる

――では今後ラインナップを増やしていくとするなら、パナソニックが過去に得意としていたレトロモダンなデザインも期待していいのでしょうか?

「レトロモダンか? というと、それはどうなるか議論もあるでしょうが、しかし、形状に関しては自由度が高いので、市場が広がればいろいろな製品を出せると思いますよ」

――EVFはともかくとして、バリアングルを採用しなければ、もっと薄型・軽量方向に振れたのでは?

「まず、1号機ではこれまでのLUMIXシリーズに入っている機能は全部入れたいと考えました。この機能がないから、ここが不足しているからダメという声は、可能な限り排除したかった。ライブビューを積極的に活用した機種として、昨年のDMC-L10がありましたが、DMC-L10で指摘をされたことには全部回答した上で、DMC-L10の好評だった部分には対応したいと思ったのです。DMC-L10から取り除いているのは、背面のダイヤルぐらいです。これは前側ダイヤルをプッシュで機能がトグル切り替えになるものにして、兼用化しました。それ以外、DMC-L10でできることは全部入っています。加えて、コンパクト機に入っている機能もそのまま継承し、コンパクト機から移行した時にも簡単に使えるように配慮しています。おまかせiAも進化させたバージョンを入れましたし、顔認識や被写体追従機能もあります」


マイクロフォーサーズでは、マウントの電子接点を2つ追加している
――コントラストAFの速度は予想を超えて速くなっていますが、これはマイクロフォーサーズで通信端子に2ピンが追加されたためですか?

「2ピン追加したことで、レンズとボディの通信速度が向上しています。リアルタイムでレンズ側の情報を取れるようになりましたし、ボディ側からレンズへの指示も素早くなります。主に双方向通信の高速化ですね。コントラストAFの高速化も実現していますが、動画撮影時のAF追従といっったことも意識して機能を拡張しています。実際にレンズが登場するかどうかは別として、マイクロフォーサーズで本格的なムービーを作るならば、パワーズームを実装することも可能です。あとはレンズ側の対応次第。動画カメラと静止画カメラではAFのやり方にも違いがあります。そのあたりも含め、様々な可能性に対応できるように規格化してあります」


――フォーサーズとマイクロフォーサーズ、二つの規格に対して均等に力を入れるでしょうか? それとも、今後はマイクロに軸足を置くのでしょうか?

「これまで取り組んできたDMC-L1、DMC-L10といった一眼レフの製品ラインは、今後とも継続的にやっていきます。やっていきますが、ユーザー層としてはハイアマチュア向けと位置づけています。実際に購入いただけた方々も、やはりハイアマチュアの方がほとんどでした。一方、Gシリーズはコンパクト機からのエントリー一眼で、向いている方向が違います。フォーサーズへと直接来るかたが、どちらかというと銀塩カメラから移行したという方が多かったのですが、Gシリーズはデジタルカメラ世代のユーザー向けです」

「従って両方に対して取り組むつもりで、一時的にマイクロフォーサーズ対応製品が多かったり、その逆ということもあり得るとは思いますが、どちらを軸足ということは考えていません。それに、マイクロフォーサーズはまだ始まったばかりで、この規格に軸足を置くことができるのかどうかも含め、まだこれから市場の判断を仰がなくてはならないタイミングですから」


DMC-L1 DMC-L10

“ちょい撮り本格映像”を作れるというスタンス

HD動画対応モデルのモックアップ
――来年、動画撮影機能付きマイクロフォーサーズ機を発売するとアナウンスしていますが、なぜ今回の製品には間に合わなかったのでしょう?

「元々、動画あり版となし版を両方並行で開発していましたが、動画撮影に関しては中途半端な状態では出せないと考えたこともあり、対応レンズとともに来春の発売になります。発表会や今回のフォトキナで動画モデルを展示(ストロボユニット上部にステレオマイクを装備)したのは、“おまえら最初から作ってたのに、黙って発売しやがって”といわれないように、来年には出ますよということをあらかじめ知らせておきたかったからです」

――具体的に“動画あり版”を実現するために、どんな追加の開発要素が必要なのでしょう? レンズも“HD”の表記があるものが動画対応ということですよね。

「動画撮影中のAF動作や露出変化などをスムースに見せる必要がありますし、動画撮影中にズーム操作をする必要もあると考えていますので、そうした動画撮影時の安定性を高めるための技術を盛り込んでいます。そうした機能を盛り込んだレンズに“HD”が表記されますが、それ以外のレンズもお使いいただけます。レンズ側の振る舞いが動画と静止画では異なりますから、“HD”以外のレンズでは多少の言い訳が出てきます。このあたり、今は詳しくいえないのですが、動画あり版の発売前になればきちんとアナウンスさせていただきます」

――外部マイク接続端子やアクセサリシューに取り付けるマイクなどがあると良さそうですが……

「まぁ、動画関係に関してはもう少し待ってくださいよ。マイク接続端子は取り付けますので、外付けのアクセサリでマイクという考え方はあると思います」


モックアップでは、ペンタ部にマイクを備える 動画撮影対応を予定しているズームレンズ(モックアップ)

――EVFでコントラストAF前提。動画撮影機能付きとなると、動画撮影の材料は揃っていますが、あとはスチルカメラという形態を崩さず、どこまで動画撮影機能を突き詰めるか? という話になります。このあたり、パナソニックのスタンスを教えていただけますか?

「レンズの描写力と静止画向けの高性能センサーが生み出す画像を動画にできるという面では、確かに潜在力としては大きいと思いますが、本格的に映画っぽい映像を制作する道具となるとすごく難しい。本気でやるなら静止画カメラとしての使いやすさや機能を捨てないと実現できません。それは業務用システムカメラ、パナソニックでいえばバリカムやP2などの世界になってきます。そこまでやるならば、パナソニック社内で言うとLUMIXの部隊よりもカムコーダの部隊の方が近い位置にいると思います」

「ではLUMIX一眼に動画機能を組み込むというのはどういうことなのか? ここ数年、コンパクト機の動画機能は使用頻度が上がってきてまして、中にはHD動画が撮影できるものも登場しています。YouTubeの統計を見ても、カムコーダではなくコンパクトデジタルカメラで撮影した動画の方が多い。動画の“ちょい撮り”は、コンパクトのデジタルカメラで十分という認識が広がっています。そうしたコンセンサスの中で、一般ユーザーだけでなく、プロのフォトグラファーでも撮影中に動画をちょい撮りしたいとおうニーズが出てきました。あくまで静止画が中心で、それを補完するための動画撮影という位置づけです。そうした使い方ならば、十分に高い機能と性能をもって応えることができます。いろいろな画角、いろいろなレンズ効果を使いこなしながら、“ちょい撮り本格映像”を作れるというのが我々のスタンスです。動画と静止画、両方の機能をてんこ盛りでは良い製品になりません」

「ただ、両方の使い方に有効な機能を因数分解することはできてきているつもりなので、ユーザーが新しい世界を一眼の動画撮影機能から発見し、そのフィードバックを反映させることで、新しい世界を作ることはできるのかもしれません。いずれにしろ、メーカーがどう使って欲しいと考えるよりも、これからユーザーとメーカーが一体になって育てていく領域だと思います」


「2つのフォーサーズで新しい写真の世界を追いかけたい」

――フォトキナが開幕し、それに先だって各社の新製品も出そろいました。業界の中でのパナソニックの立ち位置、パナソニックなりのユニークさといったものを、どのように表現できそうだと感じているでしょうか?

「全世界には1億人のコンパクトデジタルカメラユーザーがいます。その中には、コンパクト機で写真を撮ることが好きになり、もっといい写真を撮りたいと考えてレンズ交換式カメラの世界に入る方もいるでしょう。そうした方々に、軽くて小さくて使いやすい、そして優しい一眼システムを提供する。ライカ版カメラは、そうした手軽さから普及が始まったのではないでしょうか。フォーサーズとマイクロフォーサーズ、ふたつの規格を得て、デジタルの世界における、新しい写真の世界を追いかけたいですね」

「特に今のカメラ業界は、かつて1960年代以降に展開したフィルムカメラ業界のように、多数のバリエーションモデルが展開されています。その中で、センサー、LSI、レンズのすべてを内製で作れるパナソニックの良さを活かしていけると考えています」



URL
  フォトキナ2008
  http://www.photokina-cologne.com/
  パナソニック
  http://panasonic.jp/

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( 本田雅一 )
2008/09/25 20:13
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