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【インタビュー】2008年の戦略を訊く[パナソニック編]

~年末までにはデジタル一眼新機種を発売

 PMA08、フォトイメージングエキスポ2008(PIE2008)では、各社から気合の入った新製品が発表された。秋にはPhotokinaも控える2008年だが、これを機に各社の戦略について本田雅一氏がインタビューした。シリーズでお届けする。

 ビデオカメラ開発のノウハウを生かした光学手ブレ補正を積極的に展開し、さらに最近は日本で特に要望が強い広角撮影対応を強化。着実にLUMIXブランドを定着させてきたパナソニックマーケティング本部商品企画Gチームリーダーの品田正弘氏に、今後の戦略と製品展開について話を伺った。


FXとTZの“ツートップ作戦”でシェア拡大

品田正弘氏
--LUMIXブランドをビジネスブランドとして定着させることを、ここ数年の目標として掲げていましたが、国内では一昨年に大きく伸び、そこで伸び悩むかと思いきや、昨年も引き続き高い存在感を示しました。実際の数値として、国内でのLUMIXブランド定着を示すデータは出ているのでしょうか?

 おっしゃるとおり、昨年は大きく飛躍した年になりました。2007年は2006年比、台数ベースで3割ぐらい売り上げが伸びています。

--その理由は何だと分析していますか?

 もともと、我々のFXシリーズは各商戦単位で見た時、ヒット商品リストの筆頭に位置していて、単機種では高いシェアを持っていたんです。

 LUMIXブランド全体での販売台数が大きく伸びた理由は、全体のラインナップの隙間を埋める商品を開発したからです。2007年は、社内で“ツートップ作戦”と呼んでいた販売戦略を実行しました。大きな柱になっているFXシリーズに加え、異なるテイストのTZシリーズ、いわゆる“きみまろズーム”を全面に出し、FXシリーズに並ぶLUMIXブランドの柱にしたのです。


LUMIX DMC-FX35
LUMIX DMC-TZ5

--TZシリーズは高倍率ズーム搭載で、中高年向けの旅行用カメラとして売り出しましたが、この戦略が当たったということでしょうか?

 TZシリーズはスペックそのものが非常に強力な製品でしたから、価格よりもスペックを重視する30代から40代にかけての男性には、間違いなく受け入れられる製品になるという印象を持っていました。そこで、敢えて(スペックだけでも売れる)30~40代男性をプロモーションのターゲットから外し、中高年に対して強く良さをアピールし、ユーザーの幅を広げることに成功しました。

 また、日本では最も重要なFXシリーズも、ユーザーニーズに合わせて複線化、つまり複数のラインナップで幅広いユーザーをカバーしました。もともとのFXシリーズはファミリー層と若年層をターゲットに企画した製品でしたが、さらに高級感や機能、画素数を求めるユーザー向けに昨年、FX100という機種を追加しています。これが30代から40代の男性に売れました。さらにエントリークラスにFSシリーズというラインを投入してユーザー層が拡大したこともLUMIX全体の伸びを支えました。


LUMIX DMC-FX100
LUMIX DMC-FS20

改善の積み重ねで“失敗のないカメラ”を実現

PIE2008でのおまかせiAのデモ
--そして今年、早々にヒットしたFX35へと繋がるわけですが、現在、FX35は市場全体の10%ぐらい売れ、単機種のシェアではトップを独走しているそうですね。FX35がここまでヒットした理由は何でしょう?

 従来からLUMIXで評価されていた要素に磨きをかけ、改善を積み重ねてきたことが主因だと思っています。我々は光学手ブレ補正機能を重視して、業界内での立ち位置を得た後、広角レンズをこの2年啓蒙しています。そして昨年は、買い換え需要へのシフトを意識して“失敗の少ないカメラ”とするために、おまかせiAを搭載しました。

 おまかせiAは、店頭でもデモしやすいですし、これまでにデジタルカメラで多数の失敗写真を撮影しているユーザーが直感的に欲しいと思える機能に仕上がっていると思います。我々の製品は同一スペックでは、ほかのメーカーのものよりも少し高いけれど、おまかせiAは短時間で良さをわかってもらえるため、価格が高くとも購入していただけました。

 FX35になって画角も35mm判換算で25mm、おまかせiAも従来より進化したということで、しっかりと各機能の改善を積み重ねていることが、消費者から受けているのだと捉えています。

--“おまかせiA”のような、利用シーンに合わせて自動的に機能の選択や露出制御、ホワイトバランス制御などが行なわれる手法は、本来なら写真ノウハウを多く保有している伝統的なカメラメーカーの方があるはずですよね。しかし先鞭を付けたのはパナソニックで、しかも進化を続けている。なぜ、このような発想がいままで無かったと思いますか?

 我々は現存する日本のデジタルカメラメーカーで最後発です。その分、市場のニーズに対して敏感ですし、素直なマーケティング戦略を心がけてきました。おまかせiAで行なっている制御も、ひとつひとつを取り上げると、それほどスゴイことをやっているわけではありません。顔認識をしたうえで露出やホワイトバランスを顔優先で行なう機能や、被写体に近く寄ると自動的にマクロモードに切り替わったりといった機能は、他社も含めて取り組んできたことです。

 しかし、そうした撮影時の便利な自動機能をひとつにまとめ、全部の制御を自動的に連動させる機能はありませんでした。そこで研究開発していた各種の自動化技術を持ち寄り、すべてを連動させてみたところ、なかなか良好な撮影結果を得ることができたんです。昨年のトレンドとして顔認識機能がありましたが、我々はこの機能で遅れを取ったこともあって、単に顔認識するだけでなく、さまざまな撮影状況において最適制御を従来よりも深くカメラ内部で考察しながら撮影できるところまでやらないと、他社に対抗できないという危機意識があったことも、積極的に全自動化を進められた原因でしょうね。

 キーワードとして、“失敗のないカメラ”が欲しいというニーズがあり、ほかのさまざまな機能にも増してユーザーに対する極めて強いメッセージなることは理解していたので、そこに注力し、それを顧客が目で見てわかる効果的な機能として搭載させました。


ユーザーに向いた高機能・高性能を

LUMIX DMC-FX500
--さて、今年ですが、すでに発売中のFX35が大ヒット商品となり、さらにフォトイメージングエキスポ2008ではFX500が発表されました。今年はどのような戦略でLUMIXを強化していくのでしょう。

 FX500は、我々の主力製品であるFXシリーズをふたつに枝分かれさせることで、より幅広いユーザーにアピールする製品です。3型のタッチパネル付き液晶パネル、25mm相当から始まるワイド5倍ズーム、マニュアル撮影機能の充実などで、従来のFXシリーズよりマニアックな製品になっています。従来のFXシリーズはカバーしていなかったユーザー層にも満足いただけると思います。

--タッチパネルはどのように活用しているのでしょう?

 まず、基本的なカメラの操作に関しては、従来通りのボタン操作で行なえます。すべてをタッチパネル操作にすると、通常、使い慣れた機能まで覚え直さなければなりませんから、カーソルキーなどは従来通り。そのうえでオートフォーカスやマニュアル露出などの操作をタッチパネルで行なえるようにしています。

 オートフォーカスへの活用では、自動認識しない顔以外の被写体でも画面でタッチすることで被写体の特徴を憶え、被写体が動いてもそのまま追尾する機能が追加されています。また、複数の顔を認識している際に、特定の人物だけにフォーカスしたかったり、ペットなど人間以外の被写体にも効果的に利用できますから、撮影の幅を大きく広げることができます。またマニュアルの露出制御は、タッチパネル上をドラッグすることで行なうことができます。機能的には従来のFXシリーズよりも高く、LXシリーズとFXシリーズの中間的な機能性を持っています。

 さらに再生時ですが、拡大表示の倍率を変更したり、拡大時の表示位置を変えるといった操作をタッチパネルで行なえたり、ちょっとしたPC用画像整理ソフトと同じように写真を閲覧する機能などを搭載しています。


FX500のタッチパネルを実演する品田氏。マニュアル露出を操作中
FX500の写真閲覧画面。編集機能もある

--LUMIXシリーズは、もともとカムコーダの開発で培っていた光学手ブレ補正付き高倍率ズームレンズの技術を応用することで、独自性を出していました。そこから徐々に拡がって現在は独自の地位を築いているわけですが、今後、ファインダー表示用にキャプチャしている動画データをリアルタイムに分析しながら、独自の機能へとつなげていくといったことを考えると、LSIの部分でもカムコーダ用UniPhier(※)の活用などが考えられると思います。具体的にコラボレーションのプランなどはあるのでしょうか?

※編集部注:UniPhier(ユニフィエ)。同社が提唱するデジタル家電用統合プラットフォーム。携帯電話やAV機器など、異なった製品間でハードウェアやソフトウェアを相互活用し、開発効率を向上させる。

 カムコーダを開発している部署とLUMIXを開発している部署は非常に近い位置にあり、さまざまなノウハウを現在でも共有しています。たとえば顔認識機能がカムコーダに導入されたり、カムコーダの暗部補正がカメラに入ったり、それぞれの製品開発で生まれたノウハウを共有し、相乗効果を引き出しています。UniPhierプロセッサに関しては、まだLUMIXには搭載していませんが、将来的な検討課題にはなると思います。ただ、どんなプロセッサを使っているかに関わらず、デジタル画像・映像を扱うことに関して、その根っこの部分は同じです。

 もっとも大切なことは、ユーザーの目線、ユーザーがどんな使い方をしたいと考えているのか? です。“どうだ、こんなスゴイ機能を付けたぞ”と、高機能・高性能を押しつけるだけでは消費者は振り向いてくれません。ターゲットとしているユーザーに、どのようにアプローチするかを慎重に検討しながら、長所を伸ばしていきたい。


新機種はL10とは異なった性格に

LUMIX DMC-L10
--一眼レフカメラに関してはいかがでしょう。昨年はDMC-L10を発表し、“コンパクトデジタルカメラの延長線上にある一眼レフデジタルカメラ”というコンセプトを打ち出しました。その成果は満足できるものでしたか?

 L10に関しては、少し背伸びをした出荷計画でスタートさせましたが、現状に関しては満足はしていません。しかし、ライブビューを重視した製品への反応や、お客さんがどのようなカメラをパナソニックに求めているのかについては、理解できたと思います。実際に市場に出して、その中でユーザーの意見や反応を伺いながらディスカッションを行なえるようになったことは大きな前進です。

 一眼レフデジタルカメラ市場はニコン、キヤノンで85%のシェアがあり、“ほかはいらない”といった雰囲気の中でビジネスを進めなければなりません。したがって、ニコン、キヤノンと同じ土俵では戦えないと考えています。我々は別の独自性を打ち出していきます。


キットレンズのLeica D Vario-Elmar 14-50mm F3.8-5.6を装着したDMC-L10
--エントリークラス向けとしては、L10はややサイズが大きい。さらにキットレンズも高性能で、実際に操作した際の質感も同クラスとしては非常に優秀なのですが、その分、サイズも大きく単体購入時の価格も高い。もうすこし手軽に使えるモデルの方が、L10のようなコンセプトを活かすうえでは重要ではないでしょうか?

 L10のコンセプトと価格のバランスが悪いというのは、自分たちでも理解できています。しかし、Leicaレンズを名乗る以上、高性能にしなければならなりませんし、きちんとレンズ性能を訴求していきたいとも考えています。コスト優先で画質も操作性も犠牲にしたレンズでは、ライカの名称を付けることはできませんから。

 将来、そうした低価格レンズを出すとすると、ライカブランドではなくLUMIXブランドでの発売になると思いますが、それ以前にパナソニックのレンズは高性能・高画質であり、きちんとした設計と品質を確保しているということを広く知って欲しいという気持ちもあり、キットレンズであっても手抜きは一切していません。

--今後のLUMIXですが、どのように今後のラインナップを整備していく予定でしょう?

 まずはFX500をしっかりと訴求すること。FX500には、その延長線上にL10などを見据えてステップアップしてもらうための要素を盛り込んでいます。一眼レフデジタルカメラのライブビューを磨き込めば、もっと多くのコンパクトデジタルカメラユーザーを一眼にも取り込めると思っています。少しづつ、自分たちの手持ちの技術、ノウハウを積み重ねながら、ユーザーがステップアップできる製品を作っていきます。

 もちろん、一眼レフデジタルカメラに関しても、年末までには新機種を発売します。秋に独ケルンで開催されるPhotokinaには、何らかの形で顔見せできるでしょう。

--一眼レフカメラの新機種はL10の後継機種になるのでしょうか? それとも全く別の機種でしょうか?

 位置付けに関して詳しくはお話しできませんが、L10とは異なった性格の製品にはなるでしょう。ただ、いずれにしても他社が発売している一眼レフと正面からぶつかる製品ではなく、パナソニックならではの独自性を活かした製品になります。



URL
  パナソニック
  http://panasonic.jp/
  パナソニックLUMIX DMC-L10関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/26/7096.html


( 本田 雅一 )
2008/03/27 01:34
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