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【PMA07】ソニーが抱く米デジカメ市場戦略
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米ソニー高橋洋副社長に聞く
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会場:米国ラスベガスコンベンションセンター
会期:2007年3月8~11日(現地時間)
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米ソニーエレクトロニクスのマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャ高橋洋氏
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ソニーのコンパクトデジタルカメラ販売が好調だという。一昨年に発売したDSC-T9が日本でもヒットしたが、その理由は高感度対応や光学式手ブレ補正機能などをいち早く投入し、さらに小型化、消費電力低減、高品質な液晶ディスプレイの採用といった面でも、先陣を切っていたからだった。
北米では、T9以降にも改良が重ねられたプラットフォームを共有する、オーソドックスなWシリーズが人気という。
αの販売ルート開拓といった話題を含め、北米でソニーのコンシューマ製品を販売する米ソニーエレクトロニクスのマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャ高橋洋氏に、PMA 2007の会場で話を聞いた。
-- 北米での販売が好調と聞きました、日本でも昨年は予想を上回る市場の伸びがありましたが、北米での状況を教えていただけますか?
「去年は年初から予想を上回る出荷台数の伸びがありました。当初は市場の成熟もあって、せいぜい7%程度の伸びだろうと考えていたのですが、最終的には13%ぐらい数量ベースでの市場が広がっています。市場全体がこうして伸びる中、シェアも上積みできたのが好調の原因です」。
-- デジタルカメラ市場の飽和は以前から叫ばれていたことですが、なぜ昨年、引き続き市場が伸びたのでしょう?
「市場飽和の懸念は世帯保有率が高まったことが理由でした。ところが世帯保有率が上がってくると、パーソナル化によって個人がそれぞれカメラを持つようになり、ひとつの家庭の中に複数のカメラが普及するようになった
のです」。
-- なるほど、数年前の日本と同じ状況というわけですね。
「ずっと北米市場を追っているので、日本市場の動きはわかりませんが、日本で先行してパーソナル化が進んでいるということであれば、北米での状況と似ていると思います」。
-- パーソナル化が進んだ原因は何だと分析していますか?
「撮影後のアクティビティ(楽しみ方)が増え、デジタルカメラがより便利になってきたのが原因でしょう。撮影した写真をプリントする以外に、さまざまなオンラインサービスを通じ、世界中の人たちとコミュニケーションしながら画像をシェアしあうといった使い方が当たり前になってきています。写真は印刷して人にあげるだけでなく、手軽にメールしたり、Web上で共有したり、またWeb上にアップロードした写真を簡単に印刷サービスでプリントしてもらったりと、アプリケーションの幅が広がっています。ここにきて、デジタル化されたことによる、使い方の変化が多様になってきました」。
-- 今のお話はソニーというよりも、市場全体が伸びた理由だと思いますが、サイバーショットシリーズがその中で高シェアを維持、さらに伸ばした原因は何だと分析していますか?
「全体に成長基調があったことに加えて、ソニーのデジタルカメラ商品の競争力が高まったためです。スタイリッシュになり、より大きく明るく高精細な液晶ディスプレイを搭載し、さらにスタミナという点もユーザーに認められています。それに併せて、ダブルの手ブレ補正、北米では“ダブルアンチブラー”と言ってますが、このキャンペーンが功を奏してヒット商品につながりました」。
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手ブレ補正機構を搭載するDSC-W90
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-- 手ブレ対応という意味では、日本では先行して各社が取り組んでいたのですが、北米では一昨年まであまり注目されていませんでした。その認知が一気に広がる昨年、上手に訴求できたということでしょうか?
「その通り、北米ではまだ手ブレ対策があまり注目されていなかったため、各社とも横一線で手ブレ対策のマーケティングがスタートしました。その中で、ソニーが市民権を得たということだと思います。昨年の春ぐらいは、商品出荷が間に合わないほど売れた時期もあったほどです。北米ではWシリーズが販売の中心ですが、その中でも249ドルのW50が一番売れたモデルになります」。
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PMA07に出品されたDSC-S700。国内未発表のエントリーモデル
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-- 昨年のPMAでは、ソニーが意図的に価格を下げているとの批判の声も聞きました。品質感からすると、20ドルは仕切りが安いとの声もありましたが、どの点はいかがでしょう?
「我々から率先して低価格化するメリットはありません。我々の価格も業界全体のトレンドに合わせて下がってはいますが、自ら低価格化を推進することはやっていません。299ドルの高級機であるW70も予想以上に売れましたし、北米ではプレミアムクラスになるT10も好調でした」。
-- 高橋さんの目から見て、日本市場と北米市場のもっとも異なる点はどこでしょう?
「一番違うのは機種のバリエーションでしょう。日本はヒットモデルの市場です。ひとつのヒット商品が大きなシェアを占める。しかし、北米はもっと多様で、低価格な製品から高級機まで、また違ったテイストの製品が幅広く売れます。このため、機種数で言うと日本よりも北米の方が多い。北米市場で成功するには、そうした幅広いユーザーニーズに対応できるラインナップの強化が必要です」
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PMA07のソニーブースでは、ソニーαとレンズの互換性をもつ、ミノルタ製フィルムカメラも展示されていた
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-- 高橋さんはα製品の北米市場への導入も担当しましたが、αブランドの北米への浸透度、販売店への認知度などについて、どこまで進んだと自己評価していますか?
「正直言って、北米におけるαブランドの浸透は道半ばだと感じています。大手のディーラーに並べてもらうまでは、すぐに達成することができました。これはソニーがデジタル一眼レフカメラを発売するというニュース性の高さや元々のソニーのブランド力もあると思います。スタートは順調で、北米でも確固たるポジションは固めることができました」。
「しかし、浸透という意味ではまだまだです“デジタル一眼レフカメラと言えばソニーの製品があるね”と言ってもらえるところまでは、正直行き着いていません。デジタル一眼レフカメラの購入は、やはり一般の家庭にとっては一大事で、顧客から見ると“投資”です。家族会議もやっているでしょうし、お店にも通って比較するでしょうし、Webでも情報を集めるでしょう」。
「こうした商品は通常の広告を行っても、なかなか浸透しないものです。より詳しい商品情報をWebで提供し、店頭でも機能や特徴がわかりやすいよう工夫したり、店員に対してα製品の良さを理解してもらうトレーニングをやるなど、さまざまな工夫を行なっているところです」。
「加えて北米で重要になるのが、一般の大手流通以外のところ。フォトスペシャリティという、地元に密接に根付いた写真専門店とのコミュニケーションです。実はフォトスペシャリティが、一眼レフカメラを数多く売っています。少しづつですが、地道に全米各地でのディーラー数を増やす努力を続けています」。
-- 今回のPMAでは無線LANと高解像度液晶内蔵でDLNAにも対応したDSC-G1を発表。また、フルHDでの映像出力機能をアピールしています。これらは、従来の使い方を広げることで市場を拡大する取り組みだと思いますが、特にG1についての企画意図を教えてください
「G1に関しては完全に提案商品です。市場からの声を聞いていても、G1のような製品を発売して欲しい、そういう機能が欲しいという意見は聞いたことがありません。ただ、ユーザーからのヒアリング結果を注意深く分析してみると、いくつかのニーズが浮かび上がってきました」。
「まずあったのが、PCに写真のマスターを置くのではなく、手持ちの写真をすべて持ち歩きたいというニーズです。これに対しては写真管理のソフトを添付し、2GBのメモリを内蔵させること。それに3.5型の大型かつ高解像度な液晶パネルを搭載するという提案を行なっています」(編集部註:G1とフォト管理ソフトを使うと、写真を縮小してG1の内蔵メモリに転送しておくことができるため、手持ちの写真の多くを内蔵メモリにライブラリ化できる。さらに別途、メモリスティックデュオスロットもあるため、内蔵メモリを大量に使っていても撮影時に困らない)。
「また、ワイヤレスで画像をPCに転送したり、TVなどで楽しみたいというニーズもあります。写真をみんなで見るという楽しみ方は、以前なら紙に印刷していたのですが、デジタルになったことでアルバムごと持ち歩き、その場で楽しんだり、あるいはリビングのTVで楽しもうというスタイルに変化してきているのです」。
「もちろん、G1はメインストリームの商品ではありませんし、大ヒットするモデルではありません。しかし、こうした提案を喜んでくれる人は確実にいる。こういった提案を行うことで新しい市場を産みだし、さらに次の提案につなげていくのが目的です」。
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DSC-G1の開発コンセプトには、ユーザーからのヒヤリングが反映されている
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DSC-G1の外見上の特徴は、写真閲覧に最適な3.5型液晶モニター
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-- フルHDのテレビで写真を表示させようというのも、その延長線上にあるわけですね。
「ソニーとしては、カメラの本質的な部分、カメラとしていい絵が簡単に撮れるようにするための改良も行なっていますが、映像をキャプチャしたあとに、どれだけ多くの楽しみを提供できるかといったコンセプトの開発やマーケティングも重視して企画を行なっています」。
「おっしゃるとおり、今年はHD Viewingというソリューション提案をしており、DSC-W80以上のモデルには、すべてコンポーネント映像出力からフルHD映像を出力可能になっています。これはデジタルカメラとしては初めての機能で、まだソニー製品だけにしか搭載されていません」。
「また、今年の製品には顔検出機能も搭載しています。他社も先行して顔検出機能を搭載していますが、いったん捕捉すると横を向いても追尾するなど、我々の方が進んでいるところがあります」。
「まだまだ、デジタルカメラに組み込める“仕掛け”は数多く残っています。もっともっと進化すでしょう。より失敗を減らし、もっともっと楽しくなる使い方を提案できる。顔認識やG1のようなソリューションもそのひとつですが、技術的にまだ可能ではない要素もあります。技術的に可能になり次第、さまざまな形で商品に組み込んでいきたいと思いますので、楽しみにしておいていただきたいと思います」。
■ URL
PMA07
http://www.pmai.org/index.cfm/ci_id/27922/la_id/1.htm
PMA07関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2007/03/10/5787.html
■ 関連記事
・ ソニー、内蔵メモリ2GBの「サイバーショットDSC-G1」(2007/03/09)
・ 【PMA07】ソニー、内蔵メモリ2GBの「サイバーショットDSC-G1」を初公開(2007/03/11)
( 本田 雅一 )
2007/03/14 17:39
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