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エプソンのギャラリー「エプサイト」がリニューアルオープン

~より写真が楽しくなる参加型ギャラリーに

一見したところリニューアルした感じはしないが、中身は大きく進化した
 東京・新宿のエプソンイメージングギャラリー エプサイト(epSITE)が4日にリニューアルオープンした。新しいコンセプトは「遊ぶ・知る・学ぶ・創る」だ。ギャラリーに最新デジタル機器を完備したクリエイティブ・ルーム「プライベートラボ」を併設し、大判インクジェットプリンタのMAXART PX-9500を使って、本格的なプリント出力も行なえる。

 リニューアル第1弾の写真展として、野町和嘉写真展「アンデス」を開く。会期は11月12日まで。開館時間は従来通り10時30分~18時。会期中無休。入場無料。10月15日15時~17時は会場で野町和嘉氏を招き、トークショーを行なう。予約受付は10月7日開館から開始。会場または電話(Tel.03-3345-9881)で行なう。定員は70名(先着順)。詳細は後日エプサイトホームページか、会場で発表する。


4月から組織を変更し準備は進行

 リニューアルオープンだが、一見したところあまり変わったところはない。ギャラリーの奥に、デジタル機器を揃えた「プライベートラボ」スペースが加わったぐらいだ。もともとエプサイトは写真展ごとに会場レイアウトを大幅に変えているので、よけいそう思うのかもしれないが。

 表面的な変更はなくても、中身(体制)は大きく変わった。4月の組織変更で、エプサイトは従来のセイコーエプソンの管轄から、エプソン販売に新設したPI(フォトイメージング)企画推進部に移った。そしてエプサイトをオープンから指揮してきた鵜沢淑人氏がその部長に就いている。

 「メーカーや営業部門は製品セグメントで動かざるを得ない。ユーザーと接している現場はそれでは対応できないのはわかっていたことで、それを組織的により対応しやすい形にした」と鵜沢氏は説明する。上期である4月から9月まで、その準備を行ない、下期の10月から器であるエプサイトをリニューアルしたということだ。


ギャラリー部分は従来通り。ゆっくりと作品が鑑賞できる 野町和嘉写真展「アンデス」が11月12日まで開催中

新しい写真の楽しさを発見するために

 エプサイトがオープンしたのはおよそ8年前の1998年4月。当初は写真愛好家を中心に、インクジェットプリントの存在とクオリティ、そしてエプソンの認知を高めることを主眼に展開してきた。写真を中心に、絵画やCGアートも取り混ぜながら運営してきたが、「やや先走りすぎたかという反省もある」と鵜沢氏。

 いまや写真表現のひとつとしてインクジェットプリントは定着し、ユーザーに利用されている。今後は、その活用の仕方、楽しみ方の提案、創造が求められているのは自明のことだろう。

 「たとえばヤマハさんはエレクトーンを製造販売しながら、ヤマハ音楽教室という仕組みを作り、ひとり立ちさせ、文化を創っている。プリンタでもそれと同じことができないかということです」

 インクジェットプリンタを使って、自分でプリントを楽しむ写真ファン、プロ写真家が増え、専門誌では毎号、その使い方を誌面で採り上げ、解説書も多く出版されている。が、多くの人がプリンタを上手に使いこなしているかというと疑問符がつくようだ。


プライベートラボを担当する岩本担当課長。プリンターの開発者であり、写真への知識と愛着はかなり深い
 「自信を持って使われている方でも、意外な部分を間違っていたり、知らずにいることが多いんですよね。一例をあげるとPhotoshopでICCプロファイルを設定していて、さらにプリンターでも「鮮やか」な設定を選び、『色が違う。ちゃんと出ない』とおっしゃる方などですね」と、プライベートラボを担当する岩本康平課長は指摘する(ちなみに正解はプリンタ側で「設定しない」です)。さらに、それはアマチュアだけでのことではないという。

 デジタルカメラの販売台数はトータルでは頭打ちになっている中で、デジタル一眼レフが伸びている。ショット数は増えているが、プリント枚数は横ばいで、その中身を見るとソースはデジタルが増えてきているにしろ、写真愛好家の中では最終的なプリントは銀塩プリントが依然として7割を占めていると同社では見ている。「銀塩プリントの色を好んでいるユーザーニーズはまだまだ強い」という受け止め方だ。

 「銀塩写真は私も好きだし、必ず残ると思う。その中で、インクジェットが銀塩写真に追いつけ追い越せという方向に進んでいったら、写真をつまらなくする。エプサイトに来ていただけるお客さんを見ると、プリント比率は逆転して、7割がインクジェットプリントを楽しまれている。そういうお客さんと一緒に、これからの写真の楽しさを考えていきたいということなんです」と鵜沢さんは新たな方向性を示す。


プライベートラボは年内トライアル期間で運営

これがプライベートラボだ。シェードで四方を仕切ることができ、落ち着いて作業ができる
 これまでの話で、新生エプサイトにおいて「プライベートラボ」がいかに重要な役割を果たすかはお分かりになるだろう。ラボスペースは、四方にシェードを下ろすことでクローズドな空間になる。当然、照明にも配慮し、ギャラリーが3,000K程度なのに対し、プライベートラボ内はおよそ5,000Kの照明で自然な色味が判断できる。

 機材はプリンタにMAXART PX-9500とPX-5500、スキャナはGT-X900、ライトボックスを置く。パソコンは、Mac ProとWindows PC(エプソンダイレクト製Endeavor)も導入した。モニターはカラー管理されたEIZOのCE210W。

 「ここでプリントをしたいとの要望は寄せられていましたが、実際、どう活用できるかはスタートしてみないとわからない部分が多い。そこで年内は特別トライアル期間として運営していくことにしました」

 トライアル期間中は、エプサイトの窓口か電話で予約を受け、利用時間、利用方法を聞いたうえで、利用時間を設定する。そこで利用実態を把握しながら、来年からの本格サービスの形を作り上げていく。利用はエプサイト会員に入会(入会金、会費無料)になることが条件だが、利用料は基本的に実費負担のみ(利用時間によって利用料金が発生する場合もある)。来年1月からは会員制度を変更し、無料のエプサイト会員に加えて、有料のエプサイトアドバンストメンバーズを設け、プライベートラボの利用はアドバンストメンバーのみとなる。

 プライベートラボの利用は、利用者が自由に各種機器を使うケースから、同社のプロ向epSITEデジタルクリエーターが指導、アドバイスしながら利用するケースまで、さまざまな形態を想定している。利用者もビギナーから、作品展用の作品をプリントするプロ写真家、アドバンストアマチュアまで幅広く考えている。

 「技術者を要望されたときは、別途料金をいただくことになります。また使用料といっても、一般のラボさんに迷惑をかけない範囲で、リーズナブルな設定をと考えています」


今後は公募展の実施も開始

入口も従来通り正面と左右の3カ所
 ギャラリーの運営に関しても、従来よりジャンルを幅広く運営していく。従来から要望の高かった公募による企画も行なう計画だ。

 「エプサイトで開く写真展は限定されすぎているとずいぶん批判をいただいてきましたからね」と鵜沢さんは苦笑いしつつ、「これまでも限定していたわけではなく、まずはプリント表現に対して意欲の高い方を条件の一つに考えてお願いしてきました。その方針は今後も変わりませんが、少しずつジャンルを広げていきます」と語る。

 これまでもエプソンカラーイメージングコンテストの受賞者などの展示を行なってきたが、今後は実力のあるアマチュア写真家にも発表の舞台を提供していくということだ。ただそれはエプサイトの判断基準をクリアした作品であることは当然であり、これはどこのメーカーサロンでも同様に基準を設けて行なっていることだ。

 もうひとつ大きな違いは、写真家自らがプリントした作品の展示も行なっていくことだ。これまではエプソンのラボで出力を行なってきたが、ここにきて、企画展を依頼した作家からも「自分でプリントした作品を展示したい」という要望が寄せられていた。事実、リニューアル前の回顧展では、何人かの作家が自らプリントした作品を展示している。

 野町氏の「アンデス」は、作家の要望でオリジナルのポジフィルムとはちがう表現をプリントに再現し、野町ワールドを創造している。異質の歴史や思想を懐深く受容しながら、古来の文明を守り続けているアンデスの人々、風景がダイナミックに切り取られている。

 今後は会員向けの会報誌の創刊や、お試しプリントサービス、さらにはワークショップ、セミナーといった活動も従来以上に行っていく計画だ。エプサイトがどう変わったのか。自身の眼で確かめてほしい。



URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  エプサイト
  http://www.epson.jp/epsite/


( 市井 康延 )
2006/10/04 19:18
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