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【インタビュー】DXへのスタンスは変化していない

~ニコンマーケティング統括部第一マーケティング部 風見一之ゼネラルマネジャー

会期:2月26日~3月1日
会場:米国フロリダ州オーランド Orange Country Convention Center


映像カンパニーマーケティング統括部第一マーケティング部ゼネラルマネジャーの風見一之氏
 昨年末にD200を発表、現在も品薄が続くヒットにつながっているニコンは、今回のPMAではコンパクトデジタルカメラの新機種を直前に発表するにとどまった。今年は秋に世界最大のカメラトレードショーでもあるPhotokinaを控えており、今回のPMAは小休止といった感もある。

 しかし、ハードウェアではないが、ニコンの一眼レフカメラユーザーには興味深い発表も直前に行われている。メーカー製RAW現像ソフトとしては圧倒的に評価が高いNikon Captureが、新しいネーミングでリニューアルされたのである。

 この話題をきっかけに、ニコン製デジタルカメラの方向性について、ニコン映像カンパニーマーケティング統括部第一マーケティング部ゼネラルマネジャーの風見一之氏に話を伺った。


画像解析技術の進化が「Capture NX」に結実した

Capture NX
――このPMAに合わせて、2つの画像ソフトが発表されました。これらの位置付けについて押しえてください。

「新ソフトウェアはCapture NXとNikon View Proの2つです。Capture NXはNikon Captureを置き換える製品で、画期的とも言える機能を備え、Nikon Captureの価値を再定義する全く新しい世代のツールとなります。一方のNikon View Proは、Nikon View復活の声に対して追加機能を加えた上で発売するものです」

「価格はオープンプライスですが、Capture NXがおよそ1万5,000円程度、Nikon View Proが6,500円前後になるでしょう。ただしNikon CaptureからCapture NXへのアップグレードパスは用意されていません」

――Nikon Captureからの名称変更が行われたのはなぜでしょう?

「後継ソフトではなく、同じ役割を担える全く新しい次世代のソフトウェアであることを主張したかったのです。今までにない画期的な作業環境をCapture NXは実現します」

――どういった点が画期的なのでしょうか?

「作業したい領域をクリックすると、指し示した対象物全体を自動的に選択できるツールが追加されました。これは階調や輪郭を抽出するといった単純な処理ではなく、画像の内容を認識しています。空全体を選択したり、あるいは顔をクリックすると顔全体が選択される。非常にインテリジェントな動作で、デモを一目見るだけで驚くことでしょう。複数の場所をクリックしていくと、選択領域を追加していくこともできます。通常の選択ツールとは全く異なる次元の処理です」

――もともとNikon Captureは、単純なRAW現像ツールというよりも画像のレタッチや印刷出力を見据えた総合ツールに発展していましたが、Capture NXはそうした画像を扱うための道具という位置付けがより強くなったということでしょうか。

「位置付けそのものは変化していません。しかし機能的には圧倒的に進んでいます。選択ツールは最も特徴的な部分ですが、カラーマネージメントの対応が強化されたり、ノイズリダクション機能が強化されたり、ユーザーインターフェイスやディストーションの自動補正機能なども進化しています。ディストーション補正は、面白いようにすっとディストーションが消えてくれます。最近は画像解析技術が進んでいるため、取り込んでからPC上で修正するのはそれほど難しいことではありません。Capture NXは、画像解析技術の進化をデジタルカメラユーザーに感じてもらえる、自信をもって推薦できる製品になっています」

――ニコンはソフトウェア開発にかなり熱心な印象があります。

「デジタル時代になって、写真はただ撮るだけのものではなくなりました。撮影したあとの作業や楽しみがたくさんありますから、そこに注目して製品を開発しています。プロのお客さんがワークフローの中で、どういったことがしたいのか。コンシューマーユーザーが、どんな楽しみを求めているのか。そうしたことをカメラを提供するとともにサポートしていく必要があると考えています。現状にとどまらず、これからもソフトウェア開発への取り組みは継続的に行なっていきます」


LBCASTは継続して開発

――2006年になって、35mmフィルムと同サイズのセンサーに対するスタンスは変化していませんか?

「現時点でも変化していません」

――フルサイズセンサーを搭載したカメラを発売する上で、もっとも大きな障害となっているのは何でしょうか?

「フルサイズセンサーカメラを作る上での障害といったものはありません。そもそも、DXフォーマットで十分に満足できる絵が撮影できている現状で、本当にそれほど大きなセンサーを搭載する意味があるのか? もちろん、価格的な問題もあります。性能がよいからといって、とんでもない値段では出せないでしょう」

――しかしキヤノンはEOS 5Dの商品化に成功しました。

「確かに5Dという製品はあります。しかし、カメラはセンサーだけではなく、さまざまな要素の組み合わせで成り立っている製品です。いろいろなコンポーネントのコストバランスを考えると、現時点ではフルサイズセンサー搭載機を発売する必要性がないという判断です。もちろん、DXフォーマットでカバーできないエリアをフルサイズで、という考え方はあるでしょう。それは否定しませんが、しかしDXでカバーできないところをフルサイズにすればOKという、単純な話ではありません」

――これまでソニーと共同でイメージセンサーを開発することが多かったのですが、今後もソニーとの協業が中心になっていくのでしょうか。

「この点は従来から変化しておらず、柔軟に考えています。常にその時に選べる最適なセンサーを採択していますし、今後もそれは変わりません。協業の相手にこだわることはありません」

――LBCASTの開発は継続しているのでしょうか?

「継続しています。研究開発は継続していますが、現状、ベストなセンサーを選ぶと別のものになっているというだけです。ずっとソニー製センサーのほうが良いかどうかはわかりません、フレキシブルに良い選択をしていこうと考えています」

――今回は一眼レフカメラの発表がありませんでしたが、今後のラインナップの追加・見直しはどのあたりのクラスで行われるのでしょう。


D200
「低価格帯の選択肢を広げるというのはD70のころから取り組み、その後にD50を発表しました。400万台市場の中で一眼レフカメラが今以上に伸びていくためには、(一般論として)エントリーモデルを充実させる必要はあると思います。

――D2の開発で得られた技術をD200に盛り込んだわけですが、今後はエントリー機にも、こうした上位機の“エッセンス”を加えていく方向なのでしょうか?

「ケースバイケースですね。普及価格帯のユーザーに、D200の機能や性能が受け入れられるかと言えばそうではないと考えています。エントリー機には、使いやすさや価格、小型・軽量化など、上位機とは異なるさまざまな要素が求められます。エントリー機には上位モデルとは異なるアプローチが必要になるでしょう」

――エントリー機はユーザー数が多い分、ニーズの幅も広い。“入り口”は1カ所でなく、複数でも良いとは考えませんか?

「入り口を増やすというアプローチもあれば、多様化するニーズをじっくりと分析し、適切な機能や性能を提供することで、幅広いお客様にフィットする製品を作れると考えています」


コンパクトカメラのニーズは二極化する

――家電メーカー参入後、トラディショナルなカメラメーカーには、どんな要素が求められるでしょう。

「ニコンには長くカメラメーカーとして事業を営み、その中から蓄積してきたノウハウがあります。それはニッコールレンズの出荷3,600万本という数字にも代表されるように、大きな資産となっているわけです。カメラの中での自動露出やホワイトバランスなど、蓄積の中で改善されてきました。そして“写真とはなにか”をよく知っています。キャプチャツールとしてのカメラに求められる積み重ねは、そう簡単にまねできるものではありません。時代がデジタルに変わっても、写真の本質は変わりません」

――ニコンのコンパクト機は昨年、事業の面でかなり好調でしたが、今年の市場動向はどのように見ていますか?

「日本では飽和してきていますし、北米での伸びも近く飽和するでしょう。しかし、ワールドワイドではまだ少しづつ伸びています。悲観する意見とは裏腹に、まだまだ先はあるという印象です。ただ、市場全体を見たときに買い増し、買い替え需要へと移り変わってきていますから、今後、コンパクトカメラに求められる要素は二極化してくると思います」

「コンパクトカメラのネーミングを数字からアルファベットに変えたのは、こうした市場変化を反映したものです。価格や画素数で切り分けるのではなく、顧客のタイプごとに製品をラインナップしようという意図です。Pはパフォーマンス、Lはライフスタイル。Sはスタイルを意味し、画素数でのカテゴライズをやめました」


COOLPIX P3 COOLPIX S6(限定マットブラック)

COOLPIX L3

――収益性に関してはいかがでしょうか? 今年はかなり低価格化が進むとの予想があります。

「昨年、ニコン製カメラの出荷数量はかなり増え、今期700万台、来期は5%プラスの見通しで、好調であると言えます。しかし、今回のPMAでは昨年に比べ一段と値段が下がっています。より価格低下が鮮明になってきており、さらに価格競争力を強化していく必要があります」

――今回展示のPシリーズ、Sシリーズ、いずれにも無線LAN内蔵モデルが用意されました。単純にUSBケーブルが不要になるというメリットはありますが、しかしこれだけ積極的に無線LANを導入していく意図はどこにあるのでしょう?

「無線にするだけでは意味がなく、その上にどんなアプリケーションを乗せていくかで、利便性が決まっていくと考えています。いろいろなアイデアが社内にはあります」

――無線LAN内蔵機が威力を発揮するのは、WiFiを用いてネットサービスを利用したり、あるいはPC上でミドルウェアを動作させてカメラ単体では実現できないような機能を提供するといった場面ではないかと推測しています。では、どんな応用分野があると思いますか?

「現時点では申し上げられません」

――これだけ積極的に無線LANをカメラに埋め込んでいるのですから、今後開始されるネットサービスや新しく提供するミドルウェアに接続できる“仕掛け”は、すでにカメラ内に仕込まれているのでしょうか?

「それに関しても現在は答えられません。しかしこれだけは言えるでしょう。技術は“こうありたい”と考えていれば、たいていの場合、現実になるものです」



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  PMA 2006
  http://www.pmai.org/xpma2006/default.asp
  PMA 2006関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/pma2006.htm


( 本田 雅一 )
2006/03/02 00:37
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