セイコーエプソン株式会社は、2004年度連結業績を発表するとともに、2004年度から実施している中期経営計画「Action07」の進捗状況などについて説明した。Action07は、同社の中長期基本構想「SE07」の具体的なアクションプランと位置づけられる。
■ 2004年度通期は増収増益
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セイコーエプソンの木村登志男代表取締役副社長
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2004年度の連結業績は、売上高が4.7%増の1兆4,797億円、営業利益が17.5%増の909億円、経常利益が15.8%増の853億円、当期純利益が46.4%増の556億円。最終利益は過去最高となった。
3月23日時点の予想に対しても、売上高で67億円上乗せになったほか、営業利益、経常利益、当期純利益でもこれを上回っている。
「主力となる情報関連機器事業において、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ、液晶プロジェクターが増収となり、2.8%増の9,460億円の売上高を計上。さらに、電子デバイスでは、携帯電話向けの液晶や、半導体が価格競争の激化により苦戦したものの、新たに販売を開始したアモルファスシリコンTFT液晶ディスプレイと低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイが貢献し、9.4%増の4,826億円となった」(セイコーエプソン・木村登志男代表取締役副社長)という。
情報関連機器事業のうち、プリンタ、スキャナーなどの情報画像事業の売上高は前年比11.9%増の8,203億円、液晶プロジェクター、プロジェクションテレビなどの映像機器事業が3.9%増の907億円となっている。また電子デバイス事業では、高温ポリシリコンTFT液晶パネルなどのディスプレイ事業の売上高は9.4%増の3,168億円、CMOS LSIなどの半導体事業は4.7%減の1,394億円、水晶振動子などの水晶デバイス事業は15.2%増の498億円となっている。
一方、ウォッチや光学機器などを取り扱う精密機器事業は前年並みの811億円、サービスなどを含むその他事業は17.2%増の345億円となった。
■ 第4四半期は苦戦も、通期予想は強気
だが、第4四半期だけを取り上げれば、厳しい決算内容となっている。
売上高は前年同期比2.6%増の3,666億円となったものの、営業利益はマイナス58億円、経常利益はマイナス62億円、当期純利益はマイナス42億円と赤字決算。携帯電話向け液晶ディスプレイとカラーLCDドライバの価格低下、液晶プロジェクターの在庫調整による高温ポリシリコンTFT液晶パネルの出荷数量減。さらにはシングルファンクションプリンタの出荷数量の減少などが影響しているという。同社では、価格変動だけでマイナス295億円の赤字が計上されたと分析している。
【お詫びと訂正】記事初出時、利益の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
第4四半期は厳しい内容となった同社だが、2005年度通期の連結業績予想については強気の姿勢を崩さない。
同社が発表した2005年度連結業績予想では、売上高は9.7%増の1兆6,230億円、営業利益は1.1%増の920億円、経常利益は3.1%増の880億円、当期純利益は3.0%減の540億円とした。
■ 3つのイメージングで再成長を
同社では「2004年度第4四半期を底に、再成長に向けた具体的施策を2005年上期に実行し、下期から着実に成果につなげる」(木村副社長)として、3つのイメージング分野に力を注ぐ方針を示した。
これは、2006年度を最終年度とした中期経営計画である「Action07」で掲げた売上高1兆7,700億円、営業利益率9%以上に向けた、いわば3段飛びの「ステップ」に当たる施策だといっていい。下期には営業利益率8%を目指す意欲的な計画でもある。
ひとつめのイメージングである「i1(Imaging on paper)」では、「EPSON=Photo」の加速を掲げ、PV(Print Volume&Print Value)値を高めるほか、「AtoF戦略」によるホームフォトの浸透を図る。AtoFとは、A(Affordable=お手頃感)、B(Beautiful=高画質)、C(Convenient=便利さ)、D(Durable=保存性)、E(Easy=簡単さ)、F(Fun=楽しさ)を指し、これによって、従来のプリンタメーカーとの競争から、新たにミニラボとの競争を舞台としたホームフォト普及戦略を打ち出し、新たな成長戦略を描いていくことになるという。また、さらなるコストダウンへの取り組み、オンリーワンフォト技術の追求などを図るという。
2つめの「i2(Imaging on screen)」では、3LCDによる高精細、輝度効率、信頼性を追求したプロジェクション技術を前面に打ち出し、これらのデバイスと、完成品であるプロジェクションテレビとの両輪によって、数量の拡大を見込む。すでに北海道・千歳の生産拠点の稼働によって、デバイスシェア拡大に向けた布石は打ってあるという。
3つめの「i3(Imaging on glass)」では、三洋電機との合弁である三洋エプソンイメージングデバイス事業の利益体質の強化のほか、アモルファスシリコンTFT液晶事業を、電子デバイス事業拡大の中核と位置づけ、小型化とアプリケーションの拡大に取り組むこと、さらにはオンリーワンディスプレイ技術の追求、LCDドライバの復権や独自の強みを生かした商品への商品構造転換の推進による半導体事業の採算改善、水晶デバイス新会社のスムーズな立ち上げなどを掲げている。
さらに、同社では、Action07における設備投資計画を見直し、2004年度からの3か年累計で4,200億円を投資すると新計画を発表。2005年度は、エプソントヨコム設立に伴う資産取得、広丘事業所内に情報関連機器研究開発拠点を新築、アモルファスシリコンTFT液晶の小型化や、低温ポリシリコン向けの高精細化投資、千歳工場での高温ポリシリコンの生産能力の増強および実装ラインの構築に乗り出す。
第4四半期の低迷から、今年度上期から下期にかけて、一転した成長戦略が推進されることになる。2005年度は、Action07の達成に向けて正念場となりそうだ。
■ URL
セイコーエプソン
http://www.epson.co.jp/
決算資料
http://www.epson.co.jp/IR/settlement/index.html
( 大河原 克行 )
2005/04/27 00:25
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