デジカメ Watch
最新ニュース
【 2016/01/26 】
【 2016/01/25 】
【 2016/01/22 】
【 2016/01/21 】
【 2016/01/20 】

塚原周成写真展「EAST & WEST」

写真展リアルタイムレポート

Trace Marshall/SURFER
※写真、記事、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は固くお断りします。





 学生時代、一緒にいるとなぜか面白いことが起きる友人っていなかっただろうか? 反対に、かなりの確率でトラブルを引き寄せる厄介な奴もいたけどね。

 塚原さんは、おしゃれな遊び方を知っている一人だ。生まれたときから六本木の空気を吸って育ち、スケボーに乗って街を遊び歩いていた。そんな遊び仲間の一人が俳優の村上淳さんだっていうんだから、どんな毎日だったか、なんとなく分かる。

 ここはそんな作者が憧れ、尊敬し、大好きな人たちが集まった空間だ。誰もが、かなりよい感じで楽しめると思う。

 写真展「EAST & WEST」はコダックフォトサロンで開催。会期は2009年2月16日(月)~27日(金)。土曜、日曜休館。入場無料。開館時間は10時~18時。所在地は東京都文京区本郷2-2-9 センチュリタワー1F。問合せはTel.03-3813-5313。


初個展となる塚原周成さん。今回の作品は、仕事で撮影しながら、いずれ作品として発表したいと考えて制作してきたという。そして自分の作品を作る重要性も、大事な師の教えの一つだ 物語はロス、ニューヨーク、そして東京へと結ばれ、一つのサークルを創り上げる

写真より服や車が好きだった

コラージュは、まずギャラリーの床で組んでみる。綿密にプランを立ててきても、設営現場ではちょっとしたアクシデントは付き物だ
 塚原さんの父親は広告写真家だったので、子どもの頃から写真は身近にあった。けれど彼自身は写真よりも、アメリカンカルチャーに惹かれ、車や洋服に興味があり、そのつながりで仲間は増えていった。

「高校を出て、ファッションの勉強をしましたが、やはり服を作るより、写真で関わっていく方が自分にあっていることに気づきました」

 自分の街にいる人や、友だちなどを撮り始め、父である塚原琢哉氏に師事することを決めた。「最初の2年以上はずっと暗室作業でした。丁稚のような生活でしたね」と笑う。

 現像、ベタ焼き、プリントを繰り返すことで、写真を見る眼が養われ、光と影、そしてそれを効果的に見せるコントラストが重要だと理解した。

「先生(塚原琢哉氏)が繰り返し教えてくれたのは『四角いものは四角く、丸いものは丸く撮れ』ということと、『正面から撮れ。斜めから撮るなら、なぜそう撮るかを考えろ』ということでした」


相手にとって最もふさわしい瞬間を切り取る

 今回が初個展であり、展示作品は2004年頃から行なってきた3つの仕事で撮った作品で構成した。

 最初の2つの壁面は、友人が立ち上げたファッションブランド「WTAPS(ダブルタップス)」のポスターために撮影した作品を展示している。ポスターのタイトルは「マーヴェルス」で、驚くべき人といった意味だ。ロケ地はロサンゼルス、ニューヨーク、東京の3つの都市で行なった。

「モデルになってくれたのは、僕がずっと憧れていた人たちと、付き合いのある友人たち。撮影の折衝は、ある友人がやってくれました」

 その彼はかつて世界を放浪して周り、その旅でこうした人々と出会い、交流を広げてきたそうだ。それはプロスケーターのジェイソン・ジェシーや、DJ・ハービー、俳優のノーマン・リーダスなどなど。それに日本では友人の村上淳、山本KID徳郁らが並ぶ。

「初めて会った人にしても、僕にとってはビデオや雑誌などで繰り返し見ていたので、イメージは持っていました。実際に話をして、思っていた雰囲気と違うこともありましたが、すべてが嬉しい発見でしたね」


A-Ron the Downtown/ANYTHING

 一人一人が自分の人生観を明確に持ち、それに沿って生きている人たちであり、この撮影では彼らにまつわる場所で、その人にふさわしい瞬間を切り取っていった。

「撮影では、こちらからは何も要求しません。カット数も多くて2本(645なので30カット)くらいでしたね」

 相手が友人でもセオリーは一緒だ。KIDの場合は、練習中に撮影させてもらった。筋肉が最も躍動していて、何より彼が流す汗が撮りたかったからと作者はいう。表情も闘争心がみなぎっていて、気心の知れた友人でなければ撮れない1枚だ。


Steve Olson/SKATEBORDER

映画のような1枚が撮りたくて

 次の壁面は、雑誌でブランド「テンダーロイン」の特集を組んだ時の作品だ。

「『都会を出て、山の中でも楽しめるか』というコンセプトで撮ったものです。西山君がキャプテンと呼ばれるブラック・イングラムさんを選び、あとはキャプテンが決めました」

 キャプテンはさまざまな仕事をこなしてきて、ゴア副大統領と番組制作も行なっている人だという。まさにCaptainとしか呼べない人なのだ。彼がピックアップしたのはプロサーファー兄弟のトレイシィ・マーシャルと、チャド。そしてミュージシャンのトラヴィス・グレイヴスだ。

「撮影はロスから北に車で約4時間ほどの場所にあるセコイヤ国立公園の山奥です。背景に鮮やかな緑とスカイブルーを入れたかった。マーヴェルスでの撮影もそうでしたが、アメリカでは市民権がないと機材がレンタルできないので、大型ライトからの大荷物を日本から用意し、毎日、ひいひい言いながら運んでいましたよ」

 大きく伸ばされたこの4点は、独特の色調が眼を惹く。

「この色のイメージは最初からあって、現像段階でちょっとした工夫をしました。それは見る人それぞれが物語を膨らませられる1枚が作りたかったからです。映画のような1枚ですね」


Chad Marshall/SURFER

作者のこれまでを凝縮した空間

この最後の5点はデジタルカメラで撮影。あとはすべてネガ。出力は統一感を重視して、ラムダで行なった
 最後の壁面は、コラージュが並び、6枚の顔のないポートレートで終わる。コラージュは、先の4人を撮った旅でのスナップをまとめたもので、左半分がカラー、右半分はモノクロで構成している。

「最初はもう一回り大きくなる点数を選んでいましたが、展示しきれないと思って絞りました。展示してみると、最初のままでやればよかったって少しだけ後悔しています」

 最後の5点は、西山さんが新たなブランドWTAPSを立ち上げるにあたり、5号限定で創刊したフリーペーパー「PHILOSOPHY(フィロソフィ)」の表紙を飾った写真だ。ここでは人そのものではなく、基本コンセプトに定めた『マイ・フィロソフィ』、人生哲学に沿ったメッセージを伝えるため、顔を消した。

「このフリーペーパーは、国内だけでなく、海外でも注目され、マーヴェルスの仕事で行った時も『あの雑誌のフォトグラファーか』って、随分スムーズにコミュニケーションが運びました」

 一人一人のポートレートは、彼ら自身のストーリーを語るが、それは決して彼ら固有の物語ではなく、共有できるエピソードがある。それに気づいた時、観る人の中で自分の物語が立ち上がってくるはずだ。



URL
  コダックフォトサロン
  http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/professional/photoSalon/
  塚原周成写真展「EAST & WEST」
  http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/professional/photoSalon/2009/p20090216.shtml
  写真展関連記事バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib_backnumber/



市井康延
(いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。灯台下暗しを実感する今日この頃。なぜって、新宿のブランドショップBEAMS JAPANをご存知ですよね。この6階にギャラリーがあり、コンスタントに写真展を開いているのです。それもオープンは8年前。ということで情報のチェックは大切です。写真展めぐりの前には東京フォト散歩( http://photosanpo.hp.infoseek.co.jp/ )をご覧ください。開催情報もお気軽にお寄せください。

2009/02/19 00:20
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.