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【インタビュー】ソニーα100開発陣インタビュー(前編)
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~驚くほどスムースに“ひとつのチーム”になれた
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ご存じのように6月6日にソニーブランド初の交換レンズ式デジタル一眼レフカメラ「α100(DSLR-A100)」が発表された。実際に製品を手にしての最初の印象(つまり撮影結果ではなく、製品としての質感や使い勝手だが)は、コニカミノルタ製のα Sweet DIGITALと非常によく似たものだった。
昨年、ソニーとコニカミノルタによる提携を発表し、その後はコニカミノルタの撤退、一眼レフカメラ事業の譲渡と、短期の間に“α”開発を取り巻く環境が激しく動いた。少なくとも、外からはそう見えた。
では実際にはどうだったのだろうか?
α100のハードウェア開発プロジェクトをとりまとめたソニー デジタルイメージング事業本部 AMC事業部 開発部グループマネージャの藤野明彦氏、画像処理および絵作りを担当したプロジェクトマネージャの中山春樹氏、商品企画を担当したAMC事業部 商品企画部の佐渡真一氏、それにレンズ設計を担当したデジタルイメージング事業本部 オプト技術部門シニアオプティカルエンジニアの末吉正史氏に話を伺った。
ちなみに藤野氏は旧ミノルタ、中山氏は旧コニカ出身。両者ともα DIGITALの開発に継続的に関わってきた人物である。
当たり前のことだが、ひとつの製品を生み出すプロジェクト。技術的な優劣だけでなく、開発チーム全体が同じ考えを共有し、同じ目標に向かって努力しなければ良い製品は生まれないものだ。製品開発は感情を持つ“人”が行っているのだから当然である。
東京のソニーと大阪のコニカミノルタ。エレキ屋と光学屋。傍目にも企業文化が違いそうなふたつの企業で働いていたメンバーが、ひとつになった時に気持ちよく働けているのだろうか?
以前から顔見知っていたほとんどのコニカミノルタ関係者は、そのままソニーに残っていることを考えれば、おそらくは辞めるほどのことではないのだろうと思っていたが、あえて“気持ちよく仕事ができていますか?”と質問してみた。
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ソニー デジタルイメージング事業本部AMC事業部開発部グループマネージャの藤野明彦氏
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「う~ん、そうですね。あらたまって訊かれると、いまひとつピンとこないところもあります。異なる会社で開発を行なっているという意識はあまりありません。そうした意味では、気持ちよく仕事ができていますよ。これまで、つまりコニカミノルタ時代のαを開発していた頃と何も変わっていません。事業資産譲渡と言われてもピンとこないほど自然にやれています(藤野氏)」。
--昨年、ソニーとコニカミノルタが提携した際には、共同で開発を行ないながら、最終製品としては別々のものを発売する、といったコメントが目立っていました。しかし結果的にはソニーブランドの製品だけが登場することになりました。実際の舞台裏はどうだったのでしょう?
「結果的には事業資産譲渡でソニーに統一されたため、最初から資産譲渡を前提に開発を進めていたのではないか? と邪推する声も耳に入ってきました。しかし、最初は本当に両方で別々の商品を売るつもりで共同開発を進めていました。ところが1月には資産譲渡が決まり、製品は1モデルに絞られた。結果的にはですが、スケジュール上、製品開発への影響はほとんどありませんでした(藤野氏)」。
--現在は同じ会社とはいえ、異なる文化の会社が一緒に同じ製品を開発する。互いに遠慮するようなところはありませんでしたか?
「共同開発を始めた当初は、若干ぎこちなさはありましたね。しかしソニーは当初から大阪・堺にあった我々のオフィスに人を送り、本気で一緒にモノを作っていこうという姿勢を示していました。異なる企業といっても技術者同士であることは同じで、実際に一緒に開発を進めていくうち、互いの得手・不得手、両方の要素が見えてきたのです。言い換えれば、自分たちにはなかった長所を知り、互いの活かし方がわかるようになると、あとは自然にひとつのチームになっていました。その後は、異なる会社、あるいは異なる会社だったといったことは、全く意識しなくなりましたね(藤野氏)」。
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デジタルイメージング事業本部AMC事業部開発部プロジェクトマネージャの中山春樹氏
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「私は共同開発を経てから事業資産譲渡という流れが、うまくチームがまとまることができた原因だと考えています。相互理解を深めてから、同じ会社になるという、非常にソフトな着地が行なえましたから。その前はというと、いきなり寝耳に水で“明日から合併!”となって、いったいどうやって今後の仕事を進めればいいのか、手探りの状態から前へを進む必要がありました。あの時に比べると、すごく自然な形でひとつにまとまった。また事業資産譲渡前の共同開発を行なっていた時期も、一般的な共同開発とは違いました。通常は定期会議を持ちながら、別々の場所で開発をするのが普通です。ところがソニーとコニカミノルタの共同開発では、最初から同じフロアの中に両社がいて、同じ会社のように開発を進めていた。こんな不思議な共同開発はほかに聞いたことがありません。しかし、だからこそ短期間にチーム全員が同じ考えを共有できるようになったのだと思います(中山氏)」。
--今や同じ会社なので、ソニー側、コニカミノルタ側といった区別は意味がないかもしれませんが、旧コニカミノルタの開発者から見て、デジタルカメラ分野におけるソニーの強みは何だと思いますか?
「やはり電気関係で各種デバイスを自社開発、あるいはカスタムLSIの手配などを行なえることですね。エレキの分野はやはりソニーが専門ですし、そもそもイメージセンサーからして、自グループ内で調達できます。コニカミノルタ時代は“今回も6Mピクセルセンサー使うしかないか”と、他社がより進んだセンサーを採用する中、後発で汎用品センサーを採用せざるを得ず、開発者としては歯がゆい想いをしていました。しかしα100では必要なスペックをセンサー開発の事業部に提出し、要求スペックに合ったセンサーを作ってもらえる。そこの部分は本当にありがたい。良かったと思いますね」。
--ソニー側から見た旧コニカミノルタ開発陣の長所とは何でしたか?
「一眼レフカメラのメカ制御に関しては、ソニーにキーとなる知識がありませんでしたから、一緒に開発する中ですべてが新鮮でした。レンズに関しても、業務用・民生用とビデオ用レンズの開発なども通してソニーなりのポリシーがありましたが、コニカミノルタには異なる切り口、視点でのポリシーがあった。また交換レンズとなると、画質だけではなく感触も大切になってきます。たとえばズームリングやフォーカスリングの感触に関するこだわり。そのあたりを、どのように製品へと活かしていくのかのノウハウや考え方は大いに参考になりました」。
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AMC事業部 商品企画部の佐渡真一氏
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オプト技術部門シニアオプティカルエンジニアの末吉正史氏
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--共同開発時のプレスリリースでは、ソニーの高密度実装技術や小型化ノウハウを生かすといった内容も盛り込まれていました。このあたりも、実際の製品に活かすことができたのでしょうか?
「電子基板まわりに関しては、ソニーの方が実力は高かったですね。基板への実装技術もそうですし、小型化のシミュレーションを行うためのCADアプリケーションや使いこなしノウハウには違いがありました。また両社は出自が全く異なることもあり、コニカミノルタはメカ中心に設計が行なわれるのに対して、ソニーではエレキ設計が中心にあってメカ側を工夫するといったアプローチの違いもあります」。
--ソニーの実装技術というと、フレキシブル基板を多用して、アクロバティックな部品配置を行なうことでデザイン自由度を上げるといった設計を以前は多用していました。コニカミノルタのメカ設計と、ソニーの実装技術を合わせると、もっと詰め込めるようにも思えます。
「いや、すでに銀塩αの時代から、相当にアクロバティックな実装は行なっていましたよ。今回の製品開発で“互いにどこまでやっても大丈夫か”が、ある程度見えてきましたから、今後はエレキ、メカ両方の設計が、もっとわがままに(製品の中の)場所取りをするようになり、洗練度も上がっていくと思います」。
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左がα100、右がαSweet DIGITAL。バッテリの配置が異なる
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--実装面では今回の製品でも、従来と同じサイズのバッテリをグリップの根本に配置した点がユニークです。これによってメイン基板は圧迫されるでしょうが、グリップのデザインは自由度が上がります。実際、αSweet DIGITALよりもグリップ部はスマートになりました。ところで、このグリップの中身は空っぽなんでしょうか?
「いや、ちゃんと詰まっていますよ。何が入っているかは内緒です。グリップに関してはかなりこだわった部分で、バッテリサイズに影響されずに自由に形状を決めることができました。これは以前にαデジタルを開発している時から暖めていたアイディアですが、エレキ部分の基板縮小や実装技術があってこそ実現できたものです。そうした意味では、ソニーとコニカミノルタが一緒になったことで変化することができた部分のひとつ、と言えるかもしれないですね」。
ソニーとコニカミノルタという、外から見ると共通項が少ないように見える会社で開発を行なってきたチームが、事業資産譲渡という形でひとつのチームになる。インタビュー中、“邪推する声も耳に入った”というように、互いの力をきちんと発揮できる環境ができているのだろうか? との懸念の声は小さくなかった。
しかし、インタビューを通して、旧コニカミノルタで開発を行なってきた藤野氏と中山氏は、実に明快に、そして無理なく“今までと変わらない。気持ちよくやりたいことができている”と話した。その言葉に偽りはまったく感じられない。
加えてもうひとつ感じられたのが、事業資産を受け入れたソニー側の技術者が、コニカミノルタの技術やノウハウを素直に評価し、謙虚に受け入れていることである。
第1号の製品として生まれたα100は、正直な感想を言えば「αSweet DIGITAL II」という名称がふさわしい、コニカミノルタの文化から生まれた製品に見える。しかし、これだけチームがひとつにまとまっていれば、新しい“ソニーの一眼レフ”と名実共に言える製品が、遠からず登場しそうな予感を感じさせた。
※後編は27日に掲載します。
■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
製品情報
http://www.sony.jp/products/di-world/alpha/
レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ機種別記事リンク集(α100)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#alpha
■ 関連記事
・ 【インタビュー】ソニーのデジタル一眼レフ「α」への期待(2006/06/02)
( 本田雅一 )
2006/06/26 17:26
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