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オリンパス、E-500体験イベントを開催
~Pen、OMシリーズの米谷氏、デジタル時代のカメラ業界を語る
オリンパスは8日と9日、11月11日に発売されるデジタル一眼レフカメラの新製品「E-500」の体験イベントを都内で開催した。
事前に応募した各回30名の参加者が各自1台ずつのE-500を貸し出され、実際に会場内で撮影を行なうもの。両日とも6回づつ開催された。
参加者はE-500の概要と操作方法を説明するセミナーを受けてから、会場に用意されたセットでモデルやF1マシンを撮影した。参加者からはE-500が小さく、軽いことに「意外」との声が聞かれた。また、メニュー内では詳細な設定項目が設けられている一方で、ホワイトバランスや感度などのよく設定する項目には液晶モニターに表示される設定確認画面から直接入っていけるなど、改善されたインターフェイスが好評だった。
なお、同イベントは引き続き名古屋、大阪、札幌などでも開催される。名古屋の申し込みはすでに締め切られている。詳細な日程などは「E-500体感講座」のサイトを参照されたい。
セットが設けられ、モデル撮影も
エプソン MAXART PX-5500などのプリンタで、撮影した画像を出力することもできた
Eシステムのレンズも、未発売製品を含めて展示
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0
ZUIKO DIGITAL ED 90-250mm F2.8
ZUIKO DIGITAL ED 18-180mm F3.5-6.3
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欲しいのは「カメラのないカメラ」
米谷美久氏
同会場では、同社の銀塩コンパクトカメラ「Pen」、「XA」シリーズや、銀塩一眼レフ「OM」シリーズの開発者として知られる同社顧問の米谷美久氏とユーザーが交流する座談会が併催された。参加できたのは事前に申し込んだ各回10名で、両日とも3回ずつ開催された。
取材したのは8日の10時から開始された第1回目。米谷氏が講演などでユーザーに語りかける機会はこれまでもあったものの、座談会形式でユーザーと語りあうのはこれが初めて。貴重な機会とあって、PenシリーズやOMシリーズの熱心なユーザーが愛機を携え、早朝から多数訪れた。
米谷氏は「カメラが欲しかったのではなく、写真が撮りたかった。たまたまカメラマンにならず、設計者になった。大事なのは、撮れた写真が希望通りかどうか。だから、“カメラのないカメラ”が理想」と、あくまで写真を撮るためのツールとして、カメラを作ってきたことを強調。
OM1~4とOM2000ではシャッターのフィーリングが違うことを質問されたときは、「OMシステムは宇宙からバクテリアまで撮れ、南極、北極から赤道直下まで使えることを狙った。高温から低温まで動作させるには通常の油ではだめで、固形潤滑剤のモリブデンを採用した。固形だからしっとりした感じが出ないが、写真を撮りたいのだから、動かなければ困る。だからフィーリングを捨てて動くことをとった」と述べた。
米谷氏が設計した製品と、著作も用意された
参加者が持ち込んだOMシリーズやPenにサインする米谷氏。E-300にサインしてもらった人も
極限下での使用例として、OMシリーズを愛用した登山家の加藤保男氏について、「大規模な登山隊ならグリスなどを抜いた特注のカメラを持っていくこともできたが、個人でそのようなものは用意できないから、市販のカメラを持っていくしかない。OMシリーズはマイナス20度までの動作を保障していたが、実験ではマイナス40度くらいまで動作させていた。(自分は)自分の経験の中から欲しいものを作ったが、エベレストに登ったことはない。だから加藤さんと直にお話できたのは幸せだった」と語った。
一方、米谷氏の設計になるカメラが優美なデザインを施されていることを指摘されて「デザインの勉強は一度もしていない。Penは最初、デザイナーがデザインしてくれたが、値段の安いカメラにすばらしいデザインを施してもちゃちに見えて、それが気に入らず、自分のデザインを通した。写真を撮るときには構図や光のことを考え、それらがいつのまにか身についている」と、写真を通してデザインのセンスが養われたとした。
また、現在のデジタルカメラ、特に同社のEシステムへの意見を求められた氏は「私の場合は写真を撮ることが目的。その途中経過が銀塩だろうがデジタルだろうが同じ。その時代の技術レベルに応じたカメラがあればよい。E-500は今の時代のひとつの答えといえるだろう」とし、「各社は一眼レフを持っていたから、デジタルでもそのレンズを生かそうとしたが、オリンパスは比較的フリーに、過去に影響されずにCCD専用のレンズを作ることができた」と述べた。なお、米谷氏はEシステムの企画開発には関わっていない。
さらに「OMシステムは1機能1ユニットで、シャッターなどのユニットを好きなように組み合わせられるカメラを目指した。メカニカルカメラではメカニズムの連携が難しい。電子制御なら接点さえあればなんでもできるから、OMシステムの基本思想の実現は今のほうが楽だろう。私がデジタルカメラの設計をしていたら、CCDバックを作っていただろう」とした。
また、OMシリーズからの撤退したときのことについて「OMのカバーだけで17工程くらいかかるので、何億円も投資してトランスファーマシンを作った。最初は毎日動かしていたが、生産台数が減ってくると、1週間に1日、1カ月に1日、1日に何時間、半年に何時間しか動かさないようになる。メンテナンスに金と時間がかかるし場所もとるから、工場では邪魔者扱いされる。仕方なく廃棄処分にし、OMシリーズから撤退することにした。攻めるより撤退するほうが難しい。つらかった」と述べた。
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写真文化の基本はデジタルでも変わらない
座談会後、弊誌の取材に応じていただいたので、ここに再構成して掲載する。
--現在はどのようにオリンパスに関わっておられるのでしょう。
米谷
週に1度は出社しますが、なにもしないようにしています。現場にはなるべく口を出さないように。
オリンパスでの最後の仕事は、デジタルカメラの開発組織を作ることでした。八王子の宇津木にいた銀塩カメラの開発メンバーを半分にしました。当時は、デジタルカメラの開発をやらされるのは“島流し”のように思う人が多かったので、デジタルの開発は同じ八王子でも石川にすることにしました。まずは場所を変えようと。
それから、デジタルのチームには「これからはデジタルの時代だ。銀塩カメラなど潰してしまえ」と、銀塩のチームには「デジタルに潰されてたまるか。デジタルを潰してやれ」とはっぱをかけました(笑)
--デジタルカメラの時代になり、家電メーカーなどが参入してきました。その中で御社のような光学機器メーカーはどのように振る舞うべきとお考えでしょうか。
米谷
デジタルカメラの事業を始めるにあたって、まずは家電メーカーにパーツを供給することからアプローチしました。オリンパスはムービーもやっていたので、家電メーカーとも親しくさせていただいていました。最も成功したのは三洋電機さんとの事業で、レンズを供給して、OEM供給を受けるという関係になりました。
デジタル以前の競争相手は、同じ体質の人たちでした。しかし、家電メーカーは体質がまったく違います。その最たるものは製品のライフサイクルでしょう。
カメラの開発期間は短くて2年、OMなら5年かかりました。開発に5年かかると、先行するというのが重要なテーマになり、Pen、OM、XAのすべてで4~5年は創業者利得でゆうゆうと商売できました。
しかし、電機の世界は3カ月で開発してしまいます。投資して先行したつもりでも3カ月で追いつかれますし、裏を返すと3カ月で追いつくこともできます。デジタルの時代は、3カ月でやらざるをえない。精密機械の時代の創業者利得を得にくくなりましたが、追いつくのもやりやすくなったということが、カメラメーカーにとっての大きな課題でしょう。
--コンパクトデジカメは製品と市場が成熟し、各社デジタル一眼レフに活路を求めています。が、デジタル一眼レフも成熟する日が来ると思われます。ライフサイクルの短縮は成熟への期間が短くなったことも意味しますが、こうした中でブレークスルーのアイデアを得るにはどうすればよいのでしょう。
米谷
ハードという意味では成熟します。VTRはデジカメと近い存在で、同じような流れがデジカメにも及ぶでしょう。
大切なのは、ハードばかりにこだわることでなくて、ソフトでしょう。文化活動ですから、ソフトの成熟には時間がかかります。新しい写真文化を今後も伸ばしていかなければならない。その中から新しいハードも生まれてくるでしょう。
--銀塩とデジタルの映像文化には、どのような違いがあるのでしょう。
米谷
自分の目で見たものを記録に残したいという、写真文化の基本的な狙いは変わっていません。が、写真といえば入学、誕生、結婚など、写真屋さんで記念写真を撮るのがわたしたちの頃の文化でしたが、今はそういうことはほとんどなくなりました。
デジタルになってくると、たとえば携帯電話で写真を撮れます。カメラを持っているという意識がなくても、写真を撮れる時代になりましたから、これが新しい文化といえるかもしれません。
しかし、デジタルで映像文化が変わったように言われますが、本質的にはそれはまちがいでしょう。インプットとアウトプットは変わっていません。その過程に、その時代に適したテクノロジーを使うだけです。
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URL
オリンパス
http://www.olympus.co.jp/
E-500体感講座
http://olympus-esystem.jp/products/e500/special/event/lecture/
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( 本誌:田中真一郎 )
2005/10/11 00:59
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