タカラトミーは、プリンター内蔵型デジタルカメラ「xiao(シャオ) TIP-521」を11月28日に発売する。価格は3万4,800円。カラーバリエーションとして、ブラック、マゼンタ、マリーンの3色を展開する。
1/2.5型有効500万画素CMOSセンサー、39mm相当F3の固定焦点レンズ、2.48型液晶モニターなどを備えたデジタルカメラ。本体にSDHC/SDメモリーカードスロットを装備。また、16MBの内蔵メモリーも備える。バッテリーはリチウムポリマー電池。
■ 米ZINKの「ZeroInk」を採用
最大の特徴は本体にプリンターを内蔵し、撮影後45秒~1分ほどでプリントが得られること。
プリントには米国のジンクイメージング(ZINK Imaging)社が開発したZINK Paperを使用。ペーパーに塗布された染料水晶が熱せられることで水晶が活性化、色が生じるという技術を利用するもので、ZINKでは「ZeroInk(ゼロ・インク)」技術と称している。
米国と欧州ではすでに、ポラロイドが同技術をモバイルプリンターに採用している。国内での採用はタカラトミーが初めて。
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左からマゼンタ、ブラック、マリーン
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本体、ペーパー、撮影後の写真
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ペーパーボックスを開いたところ
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側面には赤外線ポートや焦点切替レバーを備える
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底面。ここからペーパーが排紙される
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ペーパーが出てきたところ。ペーパーには光沢感がある
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電源はリチウムポリマー電池
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TIP-521で使用するペーパーは、サイズが3×2インチ(76×49.6mm)の「xiao ZINKフォトペーパー」で、価格は10枚セットで880円。これをTIP-521のプリンター給紙部(ペーパーボックスと呼称)に装着し、再生モードでプリントを指定すると、TIP-521の底面から1枚ずつ排紙される。裏面はシール。ほかの用紙は使用できない。
256階調でのプリントが可能。プリント解像度は313×313dpi、最大2,592×1,944ピクセル。なお、用紙パッケージには画像調整用の「Smart Sheet」が1枚含まれており、10枚プリントするごとに、Smart Sheetでの調整が必要になる。
画像の保存性は、「測定上では約10年」(タカラトミー デジタル事業本部 デジタルエンタテイメント企画グループ IP事業チームの土肥雅浩チームリーダー)としている。
プリントは1画像1枚の「ノーマル」に加え、写真を分割配置する「マルチ」などを指定可能。さらに、12個の正方画像をランダムに配置する「シャッフル1」や、大・中・小の3サイズの写真をランダムに表示し、好きな組み合わせになったらプリントする「シャッフル2」が選べる。
なお撮影モードには、「マルチ」でのプリントを意識した「照準撮影」機能がある。液晶モニターにマルチ表示時のフレームが現れ、仕上がりをイメージしながら撮影が可能だ。
また、撮影した画像にエフェクトをかけることも可能。「白黒」、「セピア」、「ネガ」、「カットアウト」、「モザイク」、「スタンプ」の6種類で、適用した写真の保存やプリントが行なえる。そのほか、プリントにはフレームや白フチなどを付与できる。
縦位置での撮影・メニュー表示が基本スタイル。露出モードはプログラムAEのみ。1/3EVステップでの露出補正も行なえる。ホワイトバランスはオートのほか、「晴れ」、「曇り」、「電球」、「蛍光灯」を選択可能。10秒、または2秒のセルフタイマー撮影にも対応している。三脚ネジ穴は非搭載。レンズ左上にはストロボも装備する。
記録形式はJPEG。また、本体側面には赤外線ポートを搭載し、対応携帯電話との画像の送信が行なえる。
本体サイズは149.5×25(レンズ突起+6mm)×74.5mm。重量は約294g(バッテリー含む)。CIPA準拠の撮影可能枚数は約250枚。連続プリント枚数は約20枚。
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撮影メニュー
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上下ボタンで露出補正も行なえる
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プリント・編集メニュー
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インデックスプリントの「マルチ」
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ランダムに写真が並ぶ「シャッフル1」
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3サイズの写真が並ぶ「シャッフル2」
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フレームプリントも可能
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■ 「画素数競争の中、まったく違う選ぶ基準を提示したい」
製品発表会には、タカラトミーの富山幹太郎社長や、ジンク社副社長のPaul Baker氏らが出席した。
富山社長は、1996年にポラロイドと共同開発したインスタントカメラの初代「xiao」を振り返り、「インスタントカメラブームの先駆けになった」と回顧。初代xiaoは国内350万台、全世界1,000万台を出荷したという。
また、2000年に発売したデジタルカメラ「Mexia」(ミーシャ)については「10万台を出荷し、トイデジカメの市場を作った」と総括し、その後の遊び心あふれるカメラ製品への展開にも触れた。
TIP-521誕生のきっかけは、ジンク社から2005年頃に受けた提案に始まる。「インクを使わないプリンターと聞いて、最初は眉唾物に感じた。しかし、画素数などのスペックではなく、遊びごころが詰まったカメラを作りたかったこともあり、開発に着手した。時間はかかったが、シャオ(中国語の音で小さい、笑うなどの意がある)の通り、自然に笑顔が生まれる小さなカメラができた」(富山社長)。
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TIP-512を手に持つタカラトミーの富山幹太郎社長
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ジンク副社長のPaul Baker氏
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3万4,800円という価格に質問が及ぶと、富山社長は「値段的には高いと思っているが、最初に市場に出すのに絞りに絞った回答がこれ。これからの普及度合いでコストは下がると考えられる。どのくらいのインパクトが得られるか、楽しみにしている」と説明。また、「(開発・販売の)現場では30~50億円の事業にしたいと盛り上がっているが、たずなを引く私としては、小さく大事に育てていこうか(笑)と思っている」と、本事業に対する想いを披露した。
価格については土肥氏からもコメントがあった。「市場ではフォトプリンターが1万円~1万4,000円前後、デジタルカメラが2~3万円、あるいは4万円台前半。両者を兼ね備え、その場でプリントできるという付加価値を合わせた値段としては妥当」としている。
一方、Zeroinkを技術供与したBaker副社長は、「ZINKとはZero Inkの意で、インクを使わない印刷を意味する。持ち運びに便利、お手入れも簡単、環境にも優しいのがZeroInk。100以上の特許を保有している」と独自技術を誇った。
タカラトミーについては「開拓者精神が豊かで、最高のパートナー。パートナーであることを誇りに思う。創造性と笑顔をもたらす製品を生み出せたと信じている」とコメントした。
■ 海外でも展開、CESで販売代理を発表
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タカラトミー取締役専務執行役員の高橋勇海外事業統括本部長
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海外での販売も計画されている。ただし、ディストリビューターが決まっておらず、米国では2009年1月8日に開幕するInternational CES 2009においてパートナーを発表するという。欧州では4~5月に正式発表、発売の見込み。出荷台数は、国内10万台、米国で30万台、欧州はその6割程度を予測する。
ちなみに、国内モデルでは携帯電話向けの赤外線ポートを備えているが、海外ではBluetoothの搭載も検討するという。
タカラトミーの取締役専務執行役員、海外事業統括本部長の高橋勇氏は、TIP-521の開発までの苦労を語った。
曰く「社内からはおもちゃ会社がカメラを、しかも世界発信とは無謀だとの意見もあった。しかし、新しいマーケティングや開発で、自分たちにもできるのではと」、「海外では耐久消費財を販売したことがない。さらにカメラ業界は特殊な商習慣なので、専門の販売会社の力を借りる必要を感じた。マーケティング、保証、返品、IPなど、仮説を持って検証する期間が必要だった」など。
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「今のデジカメはオーバースペック」など、率直なメッセージを強調していた
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発売前後にはテレビCMも放映する
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また、TP-521ではメインターゲットを「親になったプリクラ世代」に据えているが、次機種ではタカラトミーが強みを持つ「こどもやハイティーンの世代に向け、面白さを前面に出した新しい遊びとコミュニケーションを提案できるものを開発したい」という。
会場には、芸術家武山まどか氏がTIP-521を使用して作成した作品が展示された。大量の撮影画像をコラージュした作品で、「遠くから見ると極彩色、近くで見ると日常的な写真が見える。人生を俯瞰するような視点」という。
TIP-521に懸けるタカラトミーのメッセージは、「数年前までは写真をプリントして、みんなで見ることがとても楽しかったことを思い出してください。いまのデジタルカメラは、プリントアウトするにはオーバースペックなのでは」(土肥氏)というもの。「画素数競争の中、まったく違う選ぶ基準を提示したい」としている。
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TIP-521で作成した武山まどか氏の作品を展示した
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武山まどか氏。「制作には3週間かかった」という
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TP-521のデコレーションモデルも。社員の手作りで、あくまでも参考出品
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会場にはトミー時代のなつかしいカメラも並んだ。写真は「xiao」(シャオ)
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大手企業のトイデジカメ参入として話題になった「Mexia」(ミーシャ)
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■ URL
タカラトミー
http://www.takaratomy.co.jp/
製品情報
http://www.takaratomy.co.jp/products/xiao/
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・ 【2008 CES】米Polaroid、インクなしでプリントできる小型プリンタを出品(2008/01/09)
( 本誌:折本 幸治 )
2008/11/06 20:53
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