リコーは30日、コンパクトデジタルカメラGR DIGITAL IIの発表会を、横浜美術館で開催した。同社パーソナルマルチメディアカンパニーの湯浅一弘プレジデントが新製品の概要を説明したほか、写真家の望月宏信氏と現代美術家の奈良美智氏によるトークショウや、GR DIGITALとCaplio GX100を使うアーティスト100人による作品の展示などが行われた。
なお同美術館では11月3日、4日に、GR DIGITAL発売2周年記念イベント「photoGRaph100」が開催される。アーティスト100人の作品展示のほか、ワークショップなどが行なわれる。詳細は関連記事を参照のこと。
■ GR DIGITAL IIは正統進化
湯浅プレジデントは、まずGRシリーズのこれまでを総括。2005年に発売されたGR DIGITALは銀塩GRをルーツとし、「A3以上の印刷原稿に耐えられる高画質」、「堅牢性と携帯性」、「信頼性と確実性」、「レスポンスと確実な操作性」を目標として開発された。また、長く使ってもらえるように、ブログを介した顧客とのコミュニケーション、ファームウェアアップデートによる機能拡張、カスタマイズサービスによる細かいサポートといった施策を打ち出した。GR DIGITALのこれまでを湯浅氏は「お客様の声に耳を傾けた2年間」と表現した。
その結果、さまざまな賞を受賞し、顧客満足度調査でも700万画素以上のコンパクトデジタルカメラでNo.1となったほか、モデルサイクルの短いデジカメにおいて、2年もの間コンスタントに販売を続けることができた。湯浅氏はGRを「お客様に育てていただいた結果、お客様に愛された幸せなカメラになった」とした。
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会場となった横浜美術館
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湯浅一弘プレジデント
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銀塩カメラのGRシリーズをルーツとする
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GR DIGITALの開発目標
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GR DIGITAL IIについては、「正統進化させた。いわばハードウェアのバージョンアップ。コンセプトを変えず、基本性能を底上げした、GRらしい進化」とした。
また、GR発売2周年イベント「photoGRaph100」を行なうほか、写真集「GR SNAPS」を発売するなど、GR DIGITALで打ち出した「キャンディッドフォト文化の支援」は継続するとした。
質疑応答では「より大きなセンサーを採用する計画は?」という質問に、「センサーはそのつど最適なものを選定している。GRシリーズは携帯性、高画質、使いやすさを守らなければならない。このスタイル、デザインから逸脱するものをGR DIGITALとは呼びたくない。サイズの大きなセンサーは、違った形では検討する可能性が十分あるが、今のGR DIGITALには搭載しない」と述べた。
またGR DIGITAL発表時に、基板などのハードウェアアップデートサービスを検討中としていたことについては、「検討したが、技術的に不可能ではないものの、コストがかかるためかえってお客様にご迷惑をかけてしまう。なので、モデルチェンジという形にした」と答えた。
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「正統進化」がGR DIGITAL IIの開発思想
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コンセプトも変わらない
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GRらしい進化
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外観もほとんどGR DIGITALと同じ
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GR DIGITAL II。外観はGR DIGITALとほとんど一緒。パッシブAFセンサーが廃止された
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ADJ.ダイヤルがレバーになったほか、左十字キーがFnになった。また、液晶モニターは2.7型に
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GR DIGITAL IIとオプション。右から3番目が新たに追加された28mm対応の外部ミニファインダー。左端はミニファインダーに対応したカメラケース。40mmテレコンは会場にはなかった
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左はミニファインダーを付けたGR DIGITAL II。右は従来からある外付けファインダーとワイドコンバータを装着
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新設された情報表示モード。外部ファインダー使用時にカメラの設定値だけを液晶モニターに表示する。このモードではモニターは普段はブラックアウトしているが、ADJ.スイッチなどを操作すると情報だけが表示される。シャッター半押しでは表示されないが、これは撮影時にモニターがONになると眩しいと感じる場合があるため
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底面の銘板以外にGR DIGITAL IIの文字はなく、そのほかの部分にはGR DIGITALとのみ書かれている
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モードダイヤルにはユーザーが設定可能なマイセッティングモードポジションが2つ新設された。電源ボタンはインジケータが光るように
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内蔵ストロボは手動でポップアップできるようになった。左側面にポップアップスイッチが設けられた
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液晶モニター中央のバーが、新機能の電子水準器
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縦位置にすると水準器も縦位置に。この写真のように、水平が取れるとインジケータが緑になる
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■ 新画像処理エンジンでノイズと書き込み速度を改善
GR DIGITAL IIの改良点については、北郷隆設計室長が解説。GRシリーズがターゲットとするプロやハイアマ層は画質にこだわるため、高画質の追求から開発を始めたとした。
そのために、CCDを800万画素から1,000万画素に高画素化し、画像処理エンジンに新開発の「GR ENGINE II」を採用した。レンズは引き続きGRレンズを搭載するがこれは「正統進化の中で検討した結果、自信をもって送り出せるレンズ」と判断したため。
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北郷隆設計室長
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GR DIGITAL IIの進化ポイント
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GR ENGINE IIの開発目標は「レンズの性能を引き出すこと」、「耐ノイズ性向上」と「RAW連続撮影と書き込みの高速化」、「低消費電力化」。
ノイズに関してはGRユーザーからの要望が多かったもの。GR DIGITAL IIでは、ISO400でGR DIGITALのISO100と同等のノイズレベルを達成したとした。また、ノイズ低減のために犠牲になりがちな空間周波数特性も劣化させず、解像感とS/N比のバランスをとったとしている。
RAW連続撮影と書き込みの高速化には、画像処理チップの性能向上、撮影シーケンスの並列処理のほか、バッファメモリへのDDR-SDRAMの採用が貢献した。これにより書き込み時間を最短約3.8秒に短縮し、RAW撮影中も2枚までの連続書き込みができるようになった。会場で用意された実機でためしたところ、2枚連続で撮影すると「書き込み中」のメッセージが表示されるものの、これもすぐ消え、撮影を継続することができた。
低消費電力化については、撮像素子の高画素化や液晶モニターの大型化など、消費電力増加の要因が増えたにも関わらず、細かい制御を行なうことで、省電力と高速化を両立した。
なお、絵作りの方向性はGR DIGITALから変えておらず、自然な仕上がりを目指したという。
また、GR DIGITAL IIに新たに搭載された1:1画像をRAWで撮影するモードだが、GR DIGITALに1:1画像の撮影機能を搭載したり、Caplio GX100の1:1撮影機能をRAW対応にすることは、画像処理エンジンの制約でできないとした。
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新画像処理エンジンにより耐ノイズ性を向上
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空間周波数特性を犠牲にせずにノイズを低減
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GR DIGITAL(左)とGR DIGITAL IIのISO400の画像を比較
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RAWの書き込みも高速に
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■ ポケットに入るブローニーカメラ
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望月宏信氏
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写真家の望月宏信氏は、GR DIGITAL IIのカタログの作例写真を撮影した縁で、発表会に登壇した。「いろいろなメーカーに作例を提供しているが、いい製品、自分で使いたいと思った製品しかほめていない。コンパクトデジカメでこのように話すのは初めて」と述べてから、「キャンディッドフォトが製品のコンセプトなので、すべてJPEGで撮影した。基本的に(後処理なしの)撮りっぱなしのデータ。カタログの撮影は準備万端整えて行くことが多いが、GR DIGITAL IIの場合はカメラを渡されて撮影に出かけただけ」と、カタログ撮影の裏話も披露した。
さらに、今年1月に撮影中にヘリコプターで海に墜落した経験を語った。墜落する数秒間で「これまで生きてきて、死んだあと残せるものがあったか」と考えたときに「写真がある」と考えたら安心して冷静になれ、海中のヘリコプターから無事脱出できたという。
「写真に救われた。今生きていられるのは写真のおかげ。写真は人生の足跡を残していける重要なもの」、「写真は日々の暮らしにメリハリをつけ、リフレッシュできる。カメラは生活と切り離せないもの。GR DIGITALはそのためにいいカメラ」とし、「GRほどしっかり写してくれるカメラはないんじゃないか。28mmでもディストーションが少なく、色ズレや倍率色収差も少ない。ポケットに入るブローニーカメラだと思っている」と述べた。
また、GR1やLomo、Tiaraなどのカメラで、旅などの記録写真を趣味で撮ってきたという美術家の奈良美智氏は、「写真は絵日記のような感じ。わかりあえる人たちの間でのコミュニケーションのツールであればいい」とし、銀塩カメラで撮った写真や、GR DIGITALで昨日撮ったばかりの新作制作風景などを披露。「GR DIGITALはGR1のような感じで撮れた」と感想を述べた。
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奈良美智氏
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奈良氏が過去にGR1で撮った写真。氏の作品のモチーフである犬や少女の写真も多数披露された
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こちらは昨日、GR DIGITALで撮影されたばかりの、製作中の新作
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会場にはGR DIGITALユーザーのミュージシャン、坂崎幸之助氏も
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■ URL
リコー
http://www.ricoh.co.jp/
ニュースリリース(GR DIGITAL II)
http://www.ricoh.co.jp/release/by_field/digital_camera/2007/1030.html
ニュースリリース(photoGRaph100)
http://www.ricoh.co.jp/release/by_field/digital_camera/2007/1022.html
製品情報
http://www.ricoh.co.jp/dc/gr/digital2/
■ 関連記事
・ リコー、高級コンパクト機「GR DIGITAL II」(2007/10/30)
・ リコー、「GR DIGITAL」2周年イベント「photoGRaph100」(2007/10/22)
( 本誌:田中 真一郎 )
2007/10/30 20:37
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