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ナナオ、報道向けに液晶モニターセミナーを実施

~「Adobe RGBカバー率」表記にこだわる理由

 ナナオは27日、報道機関向けの「EIZO液晶モニターセミナー」を開催した。会場は東京中央区の直営店「EIZOガレリア銀座」。フォトグラファー向けのシステムなどを解説した中、「Adobe RGB比」といった現状のスペック表記に対する同社の見解を示した。

 セミナーは第1部と第2部に分かれており、第1部は「液晶モニターの色域について」というもの。解説したのは、カスタマーリレーション推進部の商品技術課長、森脇浩史氏。


EIZOガレリア銀座の入口

デモで使用した「ColorEdge CG222W」(左、19日発売)と「FlexScan SX2461」


「Adobe RGB比」と「Adobe RGBカバー率」の違い

カスタマーリレーション推進部商品技術課の森脇浩史課長
 液晶モニターの色域としては、Adobe RGB、sRGB、NTSCなどが指標として存在するが、そのうちAdobe RGBは、アドビシステムズが1998年に提唱したもの。ディスプレイ類を含むPC周辺機器で標準的な色域であるsRGBよりも色域が広く、代表的なインクの色域を含むことから、印刷物などへの適合が高いとされる。sRGBと比べて特に緑の色域が広く、濃い表現が得られることでも知られる。

 一方デジタルカメラは、撮影画像の色を圧縮して記録するのが一般的。単純に圧縮するのではく、美しい写真となるよう圧縮するのが各カメラの個性となっている。Adobe RGBやsRGBは、圧縮の範囲として用いられ、色域外は表示対象とならない。従って森脇氏によると、現状のデジタルカメラは、Adobe RGBより広い色域への色圧縮は行なっていないそうだ。その結果、液晶ディスプレイがAdobe RGBを超える色域を持っていたとしても、表示されることはまずない。

 森脇氏は、液晶ディスプレイと印刷物における色域の違いにも触れ、カラーマネジメントについても解説した。ディスプレイと印刷物では色域が一致しないため、ディスプレイ上の写真がそのまま印刷物になるわけではない。そこで、Photoshopなど色変換に対応したソフトが、ディスプレイ上で印刷物の色をシミュレーションする。撮影画像がsRGBでもAdobe RGBでも、Photoshopが持つ作業用領域の範囲内で「なるべく合うよう」色変換が行なわれる。


Adobe RGBとsRGBの比較

実際の写真撮影との比較


 結果として、撮影時の色域やカラーマネジメントの作業用領域としてAdobe RGBが使われることが多く、ディスプレ側の理想はAdobe RGBに等しいか、多少超える程度が望ましいという。そこで「Adobe RGB比~%」などと広色域ぶり謳う液晶ディスプレイが各社から登場し、脚光を浴びているのが現状。しかし森脇氏は、「Adobe RGB比」という表記に引っかかりを覚えるという。

 というのも、現状の多くの広色域ディスプレイは、色域にAdobe RGBを越える部分と、Adobe RGBをカバーしきれていない部分を持つからだ。「Adobe RGB比」とは、液晶ディスプレイの色域とAdobe RGBの面積比を指す場合が多く、カバーしきれていない部分を越えた部分で補えば、面積比は100%になる。しかし、カバーしていない部分の色再現は正しくない。また、越えた部分はソースにないため、有効に使われていない。

 そこでナナオでは、Adobe RGBの色域をどの程度カバーしているかを表す「Adobe RGBカバー率」で製品の色域を表記している。例えば「ColorEdge CG301W」はAdobe RGBカバー率97%、「ColorEdge CG241W」は同96%。19日発売のエントリーモデル「ColorEdge CG222W」は92%という具合。ハイエンドの「ColorEdge CG221」は「Adobe RGB対応」となっている。

 なお、一般的な印刷物を表示する場合、Adobe RGBカバー率96%で「ほとんどの領域をカバーできている」とのこと。森脇氏は、プロ向けのColorEdgeシリーズではない「FlexScan SX2461W」でも96%の色域をカバーしていることを強調。デジタルカメラの画像表示において、「Adobe RGB をどの程度カバーできるかを知ることが重要なのでは」とまとめた。


「Adobe RGB比」では正しい再現率がわからない

Adobe RGBカバー率96%のFlexScan SX2461Wの色域


ハードウェアによる色空間切替機能も

マーケティング部販売促進課の梶川和之係長
 第2部の「用途別、おすすめの色域」を解説したのは、マーケティング部販売促進課の梶川和之係長。同氏によると、現在の液晶ディスプレイは色域でみた場合、3タイプに分類できるという。sRGB対応モデルの「Aタイプ」、Adobe RGB対応モデルの「Bタイプ」、Adobe RGBとsRGBの色空間変換機能を内蔵している「Cタイプ」に分けられるという。2006年ぐらいまではAタイプが一般的で、2007年からBタイプを謳う製品が増えてきた。Cタイプが出たのは最近とのことだ。

 なお、Cタイプの色空間変換機能は、液晶ディスプレイ内部のICによる画像制御で、表示色域を切り替えるもの。ナナオではColorEdgeシリーズやFlexScan SXシリーズに搭載しており、液晶ディスプレイ前面のボタンで切り替えられる。

 梶川氏によると、Adobe RGBで撮影するデジタルカメラユーザーには、Bタイプ、またはCタイプがおすすめだという。sRGBのAタイプでは、カラーマネジメントを介していても、色再現ができていない場合があるためだ。

 ただしsRGBで撮影するなら、Aタイプ、もしくはCタイプが有利。印刷物との色合わせが必要なら、Cタイプが特に有効とのこと。Adobe RGBのBタイプでは、sRGBを表示すると鮮やかすぎる場合があるという。ただし、カラーマネジメントソフトを使用すれば問題はないそうだ。


Adobe RGBで撮影するデジカメユーザー向けの液晶ディスプレイ

こちらはsRGBで撮影するユーザーのおすすめタイプ


 ちなみにsRGBを主に扱うCADユーザーは、Aタイプが有利とのこと。ただし意匠系CADなど、厳密な色再現が求められるケースがもあり、将来的にはAdobe RGBに移行する可能性もある。それを見越せばCタイプがおすすめとなる。DTPユーザーは、Adobe RGBカバー率が重要なので、BタイプとCタイプ。sRGBのAタイプでも、これまでの業務上の経験を活かせば使用は可能だ。sRGBでの閲覧が大多数を占めるWeb制作はAタイプ。

 梶川氏は「モニターにもっと気を使っていただければ、デジタルカメラをフル活用できるのでは」と強調。EIZOガレリア銀座とEIZOガレリア大阪で定期的に行なっている「EIZOカラーマッチングセミナー」には、多くのカメラファンが参加するという。実際のColorEdge製品を使いながら、プリントとのカラーマッチングを体験できる。

 参加は無料で定員は10名。予約受付は先着順となっている。申し込みはEIZOガレリア銀座(Tel.03-3547-7718)、EIZOガレリア大阪(Tel.06-4964-4033)まで。


  ナナオ
  http://www.nanao.co.jp/
  EIZOガレリア
  http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cGalleria/
  EIZOカラーマッチングセミナー
  http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cCGSMNR/
ナナオ、実売13万円台の22型広色域液晶モニター「ColorEdge CG222W」(2008/02/25)


( 木村 英夫 )
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