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【インタビュー】大幅に進化したアドビ「Photoshop CS3」

~Adobeバイスプレジデントのデボラ・ウィットマン氏に聞く

 2006年12月のβ版公開から約4カ月、満を持して発表された日本語版「Photoshop CS3」。従来の流れを引き継いだ「Photoshop CS3」は、インターフェイスを変更し、起動時間を大幅に高速化。Photoshop CS以来のフルバージョンアップを本当の意味で果たしたという。さらに、新しい分野にコミットする「Photoshop CS3 Extended」がラインナップに加わるなど、Photoshopを取り巻く状況に新たな戦略が見られる。

 来日したデジタルイメージング&Webオーサリング部門プロダクトマネジメント担当のバイスプレジデント、デボラ・ウィットマン氏に話を聞いた。


左からPhotoshop CS3、Photoshop CS3 Extended デジタルイメージング&Webオーサリング部門プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント、デボラ ウィットマン氏

Extendedは特殊な画像処理プロユーザー向け

――まず「Photoshop CS3 Extended」の企画意図は?

 いまやPhotoshopは、写真編集以外の現場でも使われています。そうしたユーザーから要望をお聞きする機会を持ったところ、新しいエリアにPhotoshopを広げてほしいとの声が多くありました。動画編集、医療、科学技術ど特別な分野に向けた機能を追加したのが、Extendedエディションになります。

 もちろん、Extendedのみの機能は特殊な内容なので、全ユーザーにとって重要だとは思えませんでした。そこで、別のバージョンで提供する方が良いと判断したのです。

――Extenedが狙う動画編集、医療、科学技術分野に特化した、それぞれのバージョンを投入することは考えなかったのですか?

 例えば「Photoshop for ビデオユーザー」といった、Photoshopをバーチカルに特化させるバージョンの開発を考えたことがあります。しかし調べた結果、驚くべきことに、同一のプロユーザーがこれらの複数の分野にまたがって仕事をしていることがわかったのです。

――現在Extendedがフォローしている分野はもちろんですが、他分野も視野に入れて、機能を追加していくことは考えられていますか?

 確実に機能は追加して行くつもりです。その場合、プラグインというよりは、新バージョンといった形になると思います。プラグインについては、サードパーティの参加を期待しています。

――Extended限定の機能で、写真に利用できそうなものは?

 ありますよ。例えば同じ場所で人の写っている写真とそうでない写真を複数枚用意し、「ファイル」→「スクリプト」→「統計」→「スタックを選択」→「中央値」と選びます。すると、自動的に人(移動を伴う物体)だけが消えます。こうした処理はこれまででも手動できましたが、Extendedの統計的手法により、自動的な処理が可能になりました。もっとも、これは写真向けに用意した機能ではなく、β版の公開中、試用中のユーザーが編み出したテクニックなんですけど(笑)。


JPEGの読み込みと編集に対応したCameraRAW

――Photoshop CS3に合わせて新しくなったBridgeですが、複数の画像を並べての比較や、スタックを組めるようになるなど、かなり写真のセレクトを意識した作りになっていると感じました。Lightroomとの統合の可能性はあるのでしょうか。また、写真家のワークフローにおけるBridgeの位置付けは?

 Bridgeは、CS(Creative Suite)製品のブラウザとして提供するものです。CSをお使いになるさまざまなユーザーの多様な要件を満たすものとなっています。その中には写真家も含まれますが、写真家以外のクリエイターも対象になります。一方Lightroomは、その中でも写真家のワークフローに特化した製品になります。(コンセプトの異なる製品なので)BridgeとLightroomの統合はしません。

 また、Lightroomは写真を見るためにはライブラリを作る必要がありますが、Bridgeは従来通り、ライブラリ化を必要とせずに写真を見ることができます。Bridgeはブラウザ、Lightroomはデータベースと、お互いを補完し合う関係といっていいでしょう。


Camera RAW 4.0。JPEGを読み込めるようになった
Bridge CS3もリニューアル。複数画像の同時拡大や等倍表示が可能に

――CameraRAWも4.0にバージョンアップしました。主な新機能は?

 今回のバージョンから、RAWだけでなくJPEGもCameraRAWで扱えるようになりました。JPEGにもRAWと同じような処理が施せるので、大きな進化といえるでしょう。インターフェイスも使いやすくなり、プロだけでなく、アマチュア写真家や、これからRAW現像にチャレンジしたいという方にも、使い勝手が良くなったと自負しています。

――Photoshop CS2など、以前のPhotoshopでCaremra RAW 4.0は利用できるのでしょうか。また、CameraRAW 4.0以降に対応する新しいデジタルカメラのRAWデータを、現行のCameraRAW 3.7でサポートする予定は?

 CameraRAW 4.0には新機能を多く追加しており、従来のCameraRAWとはかなり異なります。そのため、Photoshop CS2でCameraRAW 4.0を動作させることは不可能です。新しいカメラのサポートもPhotoshop CS2までの3.7では行ないません。


新機能でユーザーからの要望に応えることができた

――さてPhotoshop CSですが、起動がかなり高速化しています。どうやって実現したのでしょうか。

 魔法を使ったの(笑)。それはともかくとして、まずMacintosh版はIntel Macをネイティブでサポートしました。これでかなりのスピードを実現しました。また、スタートアップタイムにおけるロードの方法を見直しました。必要なものをローンチしてから、起動処理を行なうようにしました。また、GPUの活用に対応したのもポイントです。ほとんどのGPUや標準的なGPUをサポートしています。

 今回、エンジニアに「起動の高速化にチャレンジしてみなさい」という課題を出しました。「あなたの魔法を使ってね」とね(笑)。熱心に挑んでましたよ。ここまでの高速化が実現したのは、私たちにとっても驚くべきことでした。

――Photoshop CS3で実装された新機能のうち、要望が多かったのはどの機能でしょう。

 歴史が長く、ユーザー数が多いPhotoshopなので、たくさんのユーザーからの要望が寄せられています。その中でも一番多かったのが、フィルターを調整レイヤーとして使えないかというものです。これを実現したのが新機能の「スマートフィルタ」です。

 フィルタを選び、「スマートフィルタ用に変換」を行なうと、レイヤーパレットにフィルタが現れます。レイヤーのように上下の入れ替えや、一時的な表示/非表示などが可能です。これは、長きにわたって要望の多かった項目です。以前から開発は行なっており、プロセスとしては実現していました。


レイヤーパレットにスマートフィルタが加わった
なぞるだけで範囲選択ができるクイック選択ツール

――新しい選択方法として、ブラシ感覚でなぞるだけで範囲選択ができる「クイック選択ツール」が加わっています。これまでの「マグネット選択ツール」は残されているのでしょうか。

 すでにある機能を外す判断は難しいものです。いくら新機能が秀逸でも、Photoshopは多くのユーザーが日常的に使っているソフトなので、タイミングを間違うと大変な非難を受けかねません。ですので、私どももクイックセレクションには大変期待していますが、マグネット選択を今回のバージョンで外すのは良くないと思いました。

 同じことは「明るさ・コントラスト」にもいえます。Photoshop CS3からは「トーンカーブ」内で、「コントラスト-強く」、「コントラスト-中」、「明るく」、「暗く」といったプリセットを選べるようになりました。しかし、従来からの「明るさ・コントラスト」も残してあります。

 機能ではないですが、Intel Macへの対応も要望の多かったもののひとつです。これについては、我々もかなりの労力を費やしました。

――新しいWeb用の書き出し形式「zoomify」とは、どんなものでしょう。

 Webブラウザに表示した高精細写真をスムーズに拡大するWebletテクノロジーです。最初は低解像度で開き、バックグラウンドで解像度を上げる処理を行なっています。タイルに分割した画像を、分割して読み込むことで実現しています。一般的なブラウザで利用できます。

――アップグレードのライセンスポリシーが変わりました。これについてはどういった理由があるのでしょうか。

 アドビとライセンスポリシーが異なるMacromediaとの統合により、結果としてライセンスポリシーをMacromediaと統一することにしました。



URL
  アドビ
  http://www.adobe.com/jp/
  ニュースリリース
  http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/200705/20070508photoshop.html

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アドビ、「Photoshop CS3」日本語版を正式発表(2007/05/08)


( 本誌:折本 幸治 )
2007/05/09 01:11
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