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スリック・タイ工場見学記

~スリックの主力三脚工場を訪ねて

スリック タイ工場
 スリックは、2006年にスリックエレベーター三脚株式会社になってから50周年を迎えたことを記念して小型デジタル一眼レフカメラ用三脚「グッドマン・デジタル」を発売するが、これに合わせてグッドマン・デジタルが製造される同社タイ工場をデジカメWatchに公開した。ここではその模様をレポートする。なおグッドマン・デジタルの詳細は関連記事を参照されたい。


スリックの90%の品種を製造する主力工場

タイ工場の早川慎二マネージング・ディレクター(左)と加藤博正パーチェイシング・ディレクター。間にあるのはスリック50周年記念モデルの「グッドマン・デジタル」
 スリックのタイ工場はタイの首都バンコクから車で1時間ほどのナワナコン工業団地に、1988年に設立された。2006年の現在も同じ場所で、建物面積を拡張しつつ操業している。

 現在の敷地面積は10,303平方m、工場建物面積は5,763平方m。月産台数は、三脚だけなら約3万セット、一脚やアクセサリーを含めれば約3万5千セットとなる。

 ここでは日本向けだけでなく、北米、南米、欧州、中近東、アフリカ、オセアニアの55カ国向けに、三脚だけで約200種、雲台やアクセサリーなどそのほかの製品を含めれば約300種もの製品を製造している。

 この工場の役割をもうすこし詳しく見てみよう。日本向けの三脚では、具体的には次のような製品を製造している。


  • カーボンマスター 813 PRO II/814 PRO II/713 PRO/714 PRO
  • クイックカーボン 853/854 LE
  • カーボンスプリント 613/614 PRO
  • プロ 700/500 DX III
  • エイブル 400 DX-LE/300 GA/300 EX
  • ビデオグランデ II
  • スプリント PRO(3WAY)/トラベルスプリント/スプリント/スプリント EX
  • プロ 333 DX/250 DX/200 DX
  • U 9800/8000/7700/6600/5500/2400/2300
  • コンパクト/ミニ/プロミニ III
  • ダイワ VT-523/VT-551


 このほかデジスコ用雲台「デジタルテレバランス」やグリップ雲台「AF1100」、自由雲台の「SBH-120/100/60」、「ボールヘッド800」や、3ウェイ雲台「SH-705/704E」、「エイブル 300 DX/300 ST」、「ビデオグランデII 雲台」、一脚の「プロポッド 600」、「ライティポッド III」、「モノポッド 350 EX/350」といった製品も製造している。

 つまり、ローエンドからアッパーミドルの製品、いわゆる「売れ筋」製品のほとんどがタイ工場で生産されているのだ。ちなみに日本で生産されているのは一部のハイエンド製品だけだ。スリックが扱う製品の、実に90%以上の品種を生産しており、生産金額で言えば90%を越すことになるという。

 「国外製」と聞くと品質に疑問を抱く向きもあるかもしれないが、多くのデジタル一眼レフがタイやマレーシアといったアジア諸国で製造されていることを見ても、国外製=低品質という図式はもはや当てはまらない。

 なによりタイ工場がスリック製品の中でももっともユーザー数が多いセグメントを受け持っていて、品質に定評を得ているということが、タイ工場の優秀さの左証ではないだろうか。

 タイ工場はまさに、名実ともにスリックの主力工場なのだ。


工場の門に掲げられた、国王の誕生日を祝うメッセージ。国王への信頼が篤いタイならでは 昼休みの社員食堂。タイの企業らしく、出家を望む従業員に有給休暇を与える「出家休暇」も用意されている

金属パーツの製造

 それではタイ工場の三脚製造工程を見ていこう。大まかな流れは、工場内の加工機でプラスチックや金属のパーツを作り、それらを塗装し、アルミやカーボンのパイプと組み合わせて三脚にし、梱包して出荷、ということになる。

 まずはアルミパーツの工程を見てみよう。工場内にダイキャストマシンと切削機を備え、自前でパーツを製造し、塗装している。切削機のある部門はエアコンで快適な室温が保たれているが、タイの工場でこのような設備は珍しいという。


工場内に積まれたアルミインゴット。金属パーツの原料となる 金属パーツの金型が多数積まれている

ダイキャストマシンで鋳造されたアルミパーツ 鋳造されたパーツのバリなどを取り、仕上げるのは手作業

取材時には脚の開度を調整するパーツが製造されていた
金属パーツを塗装する

塗装したパーツを焼き付ける
こちらは切削機。ひとりのオペレータが、画面左と奥の2台の切削機を操作する

金属パーツに穴を開ける
タイ工場で製造される金属パーツ

プラスチックパーツの製造

 プラスチックパーツも、射出成型機を備え、工場内で製造している。


プラスチックパーツの原料となるペレットの袋
袋から取り出したペレット。90%はタイ製とのこと

射出成型機
取材時に製造していたのはエレベータストッパー。金属パーツが付いた状態で射出成型される

プラスチックの不要部分はプラスチック原料にリサイクルされる
タイ工場で製造される射出成型部品

組み立て

 各パーツを組み立て、三脚の脚となるパイプと組み合わせ、説明書などと梱包される。パイプはカーボンとアルミがあるが、どちらもパイプの状態で工場に納入される。


アルミ三脚用のアルミパイプ
こちらはカーボン三脚用のカーボンパイプ

パイプにパーツを組み付ける

雲台の最終調整は、限られた熟練工によって行なわれる
梱包して出荷する

 三脚はカメラボディやレンズよりも構造が単純だが、製造には多くの人手が必要とされていた。ちなみにタイ工場の従業員数は160名にのぼる。また、雲台の最終調整のように、熟練工による調整のような高度な作業まで行なわれていたのも意外だった。

 現在は製品の開発や試作は日本で行なわれているが、将来はこうした作業もタイ工場で行なうことを視野に入れているそうだ。



URL
  スリック
  http://www.slik.com/homej.html


( 本誌:田中 真一郎 )
2006/11/07 01:18
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