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クレードルに装着したVAIO type U
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いよいよ夏本番。デジタル一眼レフカメラを持って、長期間の撮影旅行に出かける人も多いだろう。となると、気にかかるのが撮影した写真の保存方法だ。たまの旅行となると、撮影に対する気合いの入り方が違う上、デジタル一眼レフカメラだと撮影枚数が膨大になりがち。さらにRAWファイルでのカットが大半を占めるとなると、データサイズの総計は、数枚の記録メディアではとても受け止めきれない大きさになる。
そこで、何らかのストレージを考える必要がある。現在考えられるのは、ノートPC、またはHDD内蔵型のフォトストレージではないだろうか。ノートPCはストレージ用途以外にも、汎用的にPCを使える環境を持ち出せることが強みだ。ストレージ用途に限らず、旅先でのちょっとした調べものから、移動中の動画・音楽再生、やろうと思えば画像処理やブログの更新まで、いつもと同じ環境で行なえる。ただし、一般的にノートPCは図体が大きくて重いのが難点だ。
対してフォトストレージは、ノートPCより軽くてかさばらず、写真保存に特化している分、操作も分かりやすく転送も速い。個人的には、ボディ、レンズ、三脚の次くらいに重要な撮影用品として認識している。
しかし私の場合、いろんな理由でノートPCを持ち歩なければならないのが現状だ。同じパターンの人も多いと思う。
どうせ持ち歩くことがが必須なら、小さい方が良い。そこで、ソニーのVAIO type Uをフォトストレージの観点から検証してみた。ストレージということで、HDDタイプの店頭モデルを使用している。
ご存知の通り、VAIO type Uはモバイルファンにとって夢のようなガジェットだ。PCとしてのレビューは各所にあるので、そちらを参照してほしい。OSにWindows XP Home Editionを採用し(オーナーメイドモデルはWindows XP Professionalを選択可能)、本体にスライド式キーボード、タッチパネル式の4.5型ワイド液晶ディスプレイ、USB 2.0端子を装備。さらに、IEEE 802.11a/b/gやBluetoothといった通信機能を内蔵し、約520gのボディに収めている。
店頭モデルのCPUはCore Solo U1300(1.06GHz)、メモリは512MB。PDAと異なり、慣れ親しんだWindows環境を小型ボディで連れ回せる上、電車での移動中など、立ったままでも利用できる。外部ディスプレイ出力×1、USB 2.0×2、Ethernet×1、AV出力×1、i.LINK×1を備えたポートリプリケーターも付属し、オフィスや自宅での作業にも対応する。
なお、オーナーメイドモデルでは、3タイプのCPU、2タイプのHDD、2タイプのOSなどをユーザーが選択できる。
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キーボードを引き出したところ。クリエPEG-UX50を思い出す
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キーボードを閉じるとスタイラスでの操作が主体に。スティックポインターも慣れると便利
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スタイラスは背面。取り出しにくいので、自動で画像を取り込むソフトが便利
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付属のバッテリ―(S)を取り外した状態。JEITA測定法で約3.5時間の駆動可能
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上面
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底面
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クレードル背面
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同梱のACアダプター。小型で持ち運びやすい
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■ 転送速度は遅め。専用機との差が大きいCFスロット
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フォトストレージとして完成度の高いP-4500
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VAIO type Uとの比較対象には、エプソンの「P-4500」を選んだ。フォトストレージとして重要になるのは、メモリカード類とのアクセス方法、液晶ディスプレイの品位、カメラバッグへの収まりの良さ、起動時間、といったところだろう。
まず、メモリカードへのアクセスについて。VAIO type Uは、CFスロット、メモリースティックデュオスロットを装備。さらにUSB 2.0端子もあるので、USBカードリーダーを一緒に持ち歩けば、様々なメディアに対応できるのが強みだ。
一方、P-4500は、CFスロットとSDメモリーカードスロットを装備。USB端子はPC接続用で、デジタルカメラやカードリーダーからの転送は行なえない。もっとも、CFスロットに挿入するアダプターを利用すれば、xDピクチャーカードだろうがメモリースティックデュオだろうが利用可能。ただし、アダプターはUSBカードリーダーに比べると高価で、メモリの種別ごとに用意する必要がある。
汎用性という意味ではVAIO type Uに軍配が上がるが、フォトストレージ用途として気になるのはスロットの転送速度だ。特にTrueIDEモードで作動するP-4500のCFスロットは高速で、VAIO type Uとの差が気になるところだ。1点あたりのファイル容量が大きいデジタル一眼レフカメラのストレージとして考えると、ある意味、最も重要なチェック項目といえる。
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VAIO type UのCFスロット。そのほか、本体にメモリースティックデュオスロット、USB 2.0端子を搭載
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P-4500はCFとSDメモリーカードのデュアルスロットを装備
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テストはD200のRAWデータ201ファイルを2GBのCFで撮影、それぞれのCFスロットから取り込み、終了までの所要時間を計測した。CFはサンディスクの「Extreme III」。それぞれフル充電からバッテリ―残量警告が出るまで転送を繰り返し、速度と同時に、フル充電からの転送回数も見てみる。
ただし、本テストは厳密な意味で公平とはいえない。特にフル充電からの転送回数については、VAIO type Uに不利なテストといえる。
というのもP-4500は、取り込みを実行すると自動的に液晶モニターのバックライトが消灯し、終了するとビープ音で知らせてくれる。ビープ音に合わせてストップウォッチを止めれば良いので計測は楽だ。その後、おもむろにサムネイルで取り込んだ画像を一覧表示する。
一方VAIO type Uの場合、どのソフトを使うかで結果が異なることが予想される。まず、CFからの自動取り込み機能のあるビューアソフトにするか、または取り込み専用ソフトにするかの選択があり、その上でP-4500と同様に、転送終了を音声で知らせるタイプが理想だ。
また、取り込んだ画像の処理方法によっても、ソフトごとの誤差が出るようだ。あるソフトは取り込んだ後にサムネイルを表示し始めるが、あるソフトは取り込みながらサムネイル表示を徐々に構築していくといった具合。取り込みながらキャッシュやデータベースを作成するタイプもあり、P-4500と同等のテスト環境を揃えるのは難しく感じた。
結局、「取り込み機能がある」、「D200のRAWデータに対応している」、「ニコンユーザーなら無料」という理由から、「Nikon View」を使うことにした。VAIO type Uと組み合わせるソフトによっては結果が異なるので、参考程度に見てほしい。
なお、Nikon Viewには取り込み終了のアラーム機能がない。VAIO type Uは取り込み開始と同時に液晶ディスプレイをOFFして、確認のため約10分おきに液晶ディスプレイをONにして、転送が終了したかを確認している。無線LANとBluetoothはOFF。バッテリ―駆動中のCPUパフォーマンス設定はフルパワーとした。
結果は次の通り。P-4500が平均4分50秒台、フル充電から計18回目で残量警告を表示、途中で終了。VAIO type Uは、平均43分10秒台、フル充電から5回で残量警告が出て、5回目終了で計測を中止した。
サイズの巨大なD200のRAWを使用したためもあるだろう。P-4500に比べてVAIO type Uの転送速度はかなり遅い。撮影スタイルによっては、5回という転送回数にも不安を覚えることだろう。VAIO type Uの場合、撮影地への移動中などに、転送以外の作業も行なう可能性があるため、もう少し低く見積もった方が現実的かもしれない。P-4500の場合も、撮影地まで動画再生や音声再生を行なう可能性はあるが、今回のテスト結果を見るに、安心感は高い。
また、今回はCFスロット同士を比べたが、担当者によるとVAIO type UのCFスロットは16bit接続であり、USB 2.0の方が速いとのことだ。メモリースティックデュオ系以外のメディアを出先で転送するなら、カードリーダーを持参することも視野に入れた方がいいかもしれない。
ちなみに、HDD容量はVAIO type Uが30GB、P-4500が80GB。VAIO type Uのオーナーメイドモデルなら、30GBに加えて20GBも選択できる。
■ 高品位な液晶ディスプレイ
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左がVAIO type U、右がP-4500。表示品質は互角。表示面積の大きなVAIO type Uは、スライドショーなどを閲覧していて楽しい
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次に、液晶ディスプレイの品質について。VAIO type Uの液晶ディスプレイは、4.5型ワイドで1,024×600ピクセルで、表面はグレア処理。P-4500は3.8型640×480ピクセルで、同じく表面はグレア処理となっている。
VAIO type Uの液晶ディスプレイは大変美しく、失敗写真であってもしばらく見とれてしまう程。表示ソフトによって品質も変わるが、定評あるP-4500の精細感に引けを取らない品質だ。
屋外でもそれほど見辛くない。さすがに直射日光の下だと何が写っているのか何とか判別できる程度となるが、それはP-4500でもデジタルカメラの背面液晶モニターでも同じことだろう。厳密なチェックは難しいが、ヒストグラムの確認程度はできそうな印象だ。
ただし、グレア処理は映り込みが気になるのが難点。個人的な印象では、映り込みに加えて、ハイライトのピークや黒の締まりが、実際より急峻に感じる。これはVAIO type Uだけでなく、同じくグレア処理のP-4500にもいえる。
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静止画色補正機能のダイアログ。背景に表示されているのがVAIOタッチランチャー
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バックライトの調節は、本体左のボタンで起動する「VAIOタッチランチャー」から行なうのが早い。主要なソフトやフォルダを計9つのアイコンに割り当てられるソフトで、アイコン以外では、外部ディスプレイ出力の選択、画面の縦横切り替え、ボリューム調整、バックライト調整などが行なえる。
面白いのは、「バイオの設定」というツールの中に、「静止画色補正」という項目があること。これを有効にすると、「静止画をより自然な色で表示できる」という。試してみると確かに、色味やトーンが普段使っているキャリブレーション済みディスプレイに近くなった。VAIO type Uの用途のひとつとして、ソニーが静止画ビューアとしての期待を寄せていることが分かる。
■ パソコンを持ち歩いているとは思えない軽さ
VAIO type Uの大きさは、150.2×95(最突起部100.5mm)×32.2~38.2mm(幅×奥行き×高さ、以下同)。PDAよりは大きいものの、PCとしては十分に小さい。P-4500は148.4×85.2×32.6mm。P-4500の方が若干小さく、また直方体に近いこともあって、カメラバッグの大きめのポケットや仕切り内部に入れやすい。角が丸いのもポイントだ。
ノートPC用のスペースを設けたカメラバッグはまだ少数派で、17インチや15インチディスプレイのノートPCを基準にした大型のものが多い。VAIO type UとP-4500は、一般的なノートPCより格段に小さく、多くのカメラバッグに対応できる強みもある。
重量はVAIO type Uが約520g、P-4500が約438g。ちょっとした交換レンズ並の重量だ。とはいえVAIO type Uの場合、ノートPCと考えると圧倒的に軽い。比較するノートPCにもよるが、VAIO type Uとの差を考えると「もう1本交換レンズを持っていってもいいかな」という気分になる。歩き派の人には大変重要なポイントだろう。
なお、VAIO type UをOSブートから起動すると、一般的なノートPCと同じく遅い。スタンバイからの復帰が基本となるだろう。その場合、スタンバイした状態にもよるが、約5秒で使用可能になる。
■ まとめ
以上、駆け足でフォトストレージ専用機のP-4500と比べてみた。もちろんVAIO type Uの真骨頂は、PCとして利用できる点にある。Windows XP対応のソフトなら、要求スペックがよほど高くない限り、転送や閲覧用のソフトも自由に選べるのが強みだ。また、新機種のRAWデータへの対応も早い。例えば、今回試したP-4500は、いまだD200のRAWデータを等倍で表示できない。
ソフトを色々試したところ、個人的には「フォトのつばさPro」が使いやすかった。VAIO type UでもD200のRAWを高速に等倍表示でき、その表示品質も十分。カードスロットからの取り込み機能もあるので、現場での確認や、宿に戻ってからのちょっとしたセレクトまで重宝しそうだ。ただし、2画面や4画面同時だと、表示が少々もたつく。もっと軽いソフトだとDPExがあるが、RAW表示はサムネイルのみとなる。
VAIO type Uの場合、本格的なセレクトや画像処理に使用するとなると、おそらく最大512MBのメモリ容量がネックになるかもしれない。そのせいか、Adobe BridgeやLightroom β3といった重量級のソフトだと、起動や表示処理にもたつきが生じるケースがある。比較的速いとされるCamera RAWの処理も遅い。
とはいえ、工夫次第で最強の撮影用環境もできそうだ。使用目的とマシンパワーにあったソフトを選び、カスタマイズを重ねる。自分だけのフォトストレージを構築するのも、VAIO type Uの醍醐味だろう。
【8月17日】採用OSを「Windows XP Professional」と記述していましたが、オーナーメイドモデルと店頭モデルでの違いを併記しました。また、オーナーメイドモデルについての記述を追加しました。
■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
製品情報(VAIO type U)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/UX1/
製品情報(P-4500)
http://www.i-love-epson.co.jp/products/colorio/photoviewer_digitalcamera/p4500/spec.htm
( 本誌:折本 幸治 )
2006/08/17 00:00
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