ミラーレスカメラ用メーカー純正レンズまとめ

ソニー編:ハイペースでラインナップ拡大中 単焦点は標準域が充実

「ミラーレスカメラ用純正メーカーレンズまとめ」、第1回のオリンパス編に続き、第2回はソニー編をお届けします。(編集部)

※「〜mm相当」の表記は、すべて35mm判換算での数値になります。
※実勢価格の表記はすべて税込での価格です。

ラインナップの概要

ソニーのミラーレスカメラは、APS-CサイズのNEX-5とNEX-3(2010年6月発売)の2機種でスタート。その後「NEX」から「α」に代わり、2013年11月にフルサイズのα7が登場。以来、フルサイズのシステム拡充に傾注している。

APS-Cサイズのシステムは大きな変化がない状態でもあるので、ここではフルサイズ対応のFEレンズ群についてのみ解説する。

原稿執筆時点では、2本のテレコンバーターを含めて25本をラインナップする。ちなみに、APS-Cサイズ専用レンズは16本あって、これを含めるとミラーレスカメラで最多となる。

レンズのクラスは、ソニーブランドに高級タイプのGシリーズ、さらに上のGM(Gマスター)シリーズ、無印のシリーズがあるほか、ツァイスブランドのレンズもある。

また、動画撮影に適したパワーズーム機能搭載モデルや、ハイエンドの動画ユーザー向けのモデルも用意されている。

そのほか、FE 28mm F2用に対応するフィッシュアイコンバーターとウルトラワイドコンバーターがある。

広角域:G、GMで異なるコンセプト

ズームレンズ

超広角好きのワタシ個人としては「FE 12-24mm F4 G」がいちばんの注目レンズだ。フルサイズ対応でこの画角域をカバーしながら565gという軽快さを実現しているのがなによりすごいし、このスペックで税別22万円ならかなりお買い得だと思う(買えるとは言わないが)。

また、APS-Cサイズ機に装着しても18-36mm相当の画角域となるため、2つのフォーマットの両方を使っている人にもいいかもしれない。

経済的に余裕があるなら「FE 16-35mm F2.8 GM」という、性能的に文句なしの選択肢があるが、開放F値を1段我慢して「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」にすれば約半分の予算ですむのが悩ましい。

Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS(SEL1635Z)

単焦点レンズ

広角系の単焦点レンズは「FE 28mm F2」、ツァイスの「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」と「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」の3本がある。焦点距離のバリエーションはまだ少なく、ズームをメインにしたほうがよさそうな印象。ほどほどの明るさでお手ごろ価格の28mmやコンパクトなSonnar 35mmで軽快にいくか、一点豪華主義的にDistagon 35mmというのもいい。

とはいえ、24mmよりも短い側が欠けているのは単焦点好きにはうれしくないところ。プロ、ハイアマチュアユーザーを取り込みたいなら、いずれは24mm、20mmぐらいは用意して欲しい。

標準域:高品位モデルだけでなく低価格な製品も

ズームレンズ

標準域をカバーするズームレンズは高倍率タイプや動画向けも含めて5本。「FE 24-70mm F2.8 GM」、「Vario-Tessar T*FE 24-70mm F4 ZA OSS」、「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」のほか、高倍率ズームレンズの「FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS」、動画向けの「FE PZ 28-135mm F4 G OSS」の5本がある。

画質にこだわるならFE 24-70mm F2.8 GMがベスト。ただし、価格も重さもすごいので、ほんとうにそれが必要かどうかをよく考えてからにして欲しい。なにしろ1段暗いだけのVario-Tessar T*FE 24-70mm F4 ZA OSSなら、価格も重さも半分以下ですんでしまうのだ(もちろん、実際のところはそんな単純に決められるものでもないが)。それにしても、ツァイスブランドのレンズを、「こっちのが安いよ」的に紹介することになるとは思ってもみなかった。

単焦点レンズ

ツァイスブランドの「Planar T*FE 50mm F1.4 ZA」と「Sonnar T*FE 55mm F1.8 ZA」のほか、低価格な「FE 50mm F1.8」がある。また、画角的には「FE 50mm F2.8 Macro」(後述)も選択肢に入れられる。

Planar T*FE 50mm F1.4 ZAは性能はいいのだろうが、単焦点標準レンズにこの値段はどうかと思ってしまう(それゆえにあこがれの対象となりうるレンズではある)。焦点距離もF値も近いSonnar 55mmも安くはないが、優秀なレンズで評判もいい。低予算派には伝統的なレンズ構成(もちろん、新規の設計だ)をとるFE 50mm F1.8の存在もうれしい。

望遠域:α9登場でいよいよ本領発揮か

ズームレンズ

望遠ズームレンズは、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」、「FE 70-200mm F4 G OSS」、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」、「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」、「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」がラインナップされている。いずれもGまたはGMシリーズとあって画質面では安心できる。そのぶん、お値段も立派なので手を出すには勇気がいるかもしれない。

予算的に問題がなければ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」がいい。1.4倍と2倍のテレコンバーターに対応しているので、400mm F5.6までカバーできるのも強み。風景にもスポーツにも汎用性が高い。が、三脚座別で1.5kgほどあるので相応の覚悟は必要となる。

軽快さを重視したいなら「FE 70-200mm F4 G OSS」があるが、残念なことにテレコンバーターには対応していないので、さらに長い焦点距離が欲しい人の選択肢からははずれる。

単焦点レンズ

望遠系の単焦点レンズは「FE 85mm F1.4 GM」、「FE 85mm F1.8」、「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」の3本のほか、「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」も選択肢に入る。

「FE 85mm F1.4 GM」や「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」といった垂涎のレンズが並ぶ。もちろん、お値段も張るので相当の覚悟も必要となる。

そんな中、今年に入って待望の庶民派中望遠レンズが登場。「FE 85mm F1.8」は予算はあまりないが、フルサイズの写りを楽しみたい人にぴったりの1本。絞り開放での周辺光量低下は気になるものの、描写性能は申し分がない。荷物を軽くしたいときにもいい。

ただ、ある程度充実してきているズームと違って、単焦点レンズにはまだまだ不足が目立つ。α9のAFと連写パフォーマンスがいかせる超望遠レンズの拡充も期待される。

マクロ:標準と中望遠の黄金コンピをラインナップ

マクロレンズは標準系の「FE 50mm F2.8 Macro」と中望遠系の「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」の2本がある。

「FE 50mm F2.8 Macro」は最近のマクロレンズとしてはめずらしく繰り出しのあるタイプ(至近側で鏡胴が伸びる構造)なのもあって、AFがやや遅いのは気になる点。一般撮影と兼用したい場合は、購入前にどの程度のスピード(あわせて作動音も)なのかを確認しておきたい。

一方の「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」は、インナーフォーカス方式でAFも速いし鏡胴が伸びることもない。等倍撮影時のワーキングディスタンスも長めなので使い勝手はいい。

まとめ:ハイペースで増え続けるFEレンズ系列

α7の登場から4年にも満たないことを考えると、FEレンズの拡充ぶりは目覚ましい。2016年だけで9本、今年に入ってからもすでに5本が発売されているのだからかなりのハイペースだ。

ズームレンズは超広角から超望遠までカバーできているので、あとは単焦点の超広角や望遠〜超望遠の穴を埋めていけば相当に満足度の高いシステムになってくれるだろう。個人的には、28mm F2や85mm F1.8のような、手の届きやすい価格のレンズが増えてくれると非常にうれしい。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。