交換レンズレビュー
ソニー渾身のポートレートレンズをチェック
FE 85mm F1.4 GM 気になるボケ味は?
2016年7月6日 09:03
近年、多くの35mmフルサイズ対応のレンズを投入しているソニーから、ポートレートを撮影するユーザーにとって待ちに待ったFE 85mm F1.4 GMが発売された。本レンズは、TIPA Aword 2016で「Best CSC Prime Lens」を受賞していることもあり注目度は高い。
FE 85mm F1.4 GMは「Gマスター」シリーズのレンズだ。ソニーの持つ最先端の技術や設計思想を最高レベルで実現しているという。結果、高い解像力ととろけるような美しいボケ感の両立を可能としている。現在、FE 85mm F1.4 GMに加え、FE 24-70mm F2.8 GMがGマスターシリーズのレンズとして発売されている。
今回は約4,240万画素の圧倒的な画素数を誇るα7R IIに装着してポートレートでの使い勝手、描写、ボケ感を中心に紹介させていただこう。
発売日 | 2016年4月28日 |
実勢価格 | 税込22万1,000円前後 |
マウント | FEマウント |
最短撮影距離 | 0.85m(AF)、0.8m(MF) |
フィルター径 | 77mm |
外形寸法 | 89.5×107.5mm |
重量 | 約820g |
デザインと操作性
まずは外観から見てみよう。本レンズは、全長107.5mm、質量は約820gとなっている。α7シリーズに付けると多少大きく感じるが、実際に使ってみるとバランスがよく使い勝手は非常によい。
デザインは洗練されており、α7にとても合っている。欲を言えば20万円越えのレンズなので、もう少し高級感が欲しい所ではある。
主な操作系はフォーカスリングと絞りリング。ボタンやスイッチなどは、AF/MFの切り替えレバーや絞りリングクリック切り替えスイッチ、フォーカスホールドボタンの3つ。とてもシンプルなデザインで好印象だ。さらに、防塵防滴機構を採用。レンズマウントにもゴムリングを採用しているので、安心して使用できるだろう。
レンズにある操作系はフォーカスホールドボタン、フォーカスモードスイッチ、絞りリング、絞りリングスイッチなども備えている。いずれのボタンは操作し易い場所に備わっている。
操作感に関しては、フォーカスリングは適度なトルクがあり操作しやすくMFで撮影する場合でも快適だ。AF駆動にはSSM(超音波モーター)を採用し、スムーズで静音性に優れたAFを実現。ポートレートを撮る上ではストレスにはならないスピード感だ。
AF精度は非常に高く、シビアなα7R IIの高画素でもピント精度の高さを実感した。今回、フォーカスホールドボタンは使用しなかったが左手の親指がくる所にあるため、使用する方にはとても使い易いはずだ。
また、絞りリングはクリックのON/OFFが可能。静止画ユーザーはクリックONで1/3EVずつ絞りを変更でき、クリックのOFFにすると無段階調整が可能になる。α7シリーズはムービーで使うユーザーも多いので絞りが無段階調整になるメリットは大きいだろう。
レンズ構成は8群11枚で3枚のEDレンズを採用し軸上色収差をしっかりと補正。さらに新開発の超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズを採用し諸収差を徹底的に除去しているという。超高度非球面XAは新開発で非球面レンズの表面を0.01μmの世界で研磨しておりボケ感に加え解像感を極めたボケと高い解像感を実現できるキーポイントとなるレンズだ。
それにより、輪線ボケなども低減し、自然でとろけるような綺麗なボケを実現している。さらにレンズにはナノARコーティングが施されているため、逆光での撮影が多いポートレート撮影においても適度なコントラストを得られ、フレアやゴースト対策も万全だ。
絞りは11枚羽根の円形絞りを採用。開放から1~2段ほど絞った時の丸ボケなどはとても美しい。最短撮影距離はAF時が85cmと、他の85mmレンズとほぼ同じだ。
フードは中望遠用ということもあり深め。ロックボタンがあるので不意に外れることもないだろう。
作品
85mmの画角は、人間が一点に注視した時の視野角に近いと言われている。背景を整理しやすく、主被写体である人物を際立たせることができる。また、被写体との距離感や中望遠というレンズの特性上パースも少なく、ボケを得られやすい点が魅力だ。それ故、ポートレートの王道レンズとも言われている。
(モデル:片岡ミカ)
絞り開放でウエストアップで撮影。被写体から少し距離があっても十分な解像感を得られることがわかる。
絞り開放では大きくとろけるようなボケを得られる。絞り開放にも関わらず、ピントはシャープ。
カラフルな花を手前に配置して前ボケを作った。前ボケのエッジもとろけるようなグラデーションでとても美しい。
F4まで絞って解像感を確認した。髪の毛の質感や木の幹までしっかりと表現できている。また、背景の丸ボケも真円に近い。
F5.6まで絞って撮影。髪の毛の1本1本までしっかりと解像している。
開放時の丸ボケは口径食の影響を受け、周辺の丸ボケはレモン型になってしまう。
最短撮影距離はAFで85cm、MFで80cmと、一般的な85mmレンズと同様。ポートレートで使うとバストアップより少し寄れる印象。最短撮影距離での画質も申し分ない。
通路を背景に撮影。適度なボケ感でとても印象がよい。柱などボケが硬くなりそうな背景も綺麗にボケている。
ストロボを使って解像感重視の作例を撮影した。絞り開放よりもさらに解像感がアップしていることがわかるだろう。
まとめ
実写画像を見てもわかるように、絞り開放からピント位置はキリッとシャープ。モデルのコンタクトレンズのディテールまでしっかりとわかるほど解像している。しかし、ボケは非常に滑らかだ。ボケと解像感がしっかりと両立できていることが、作例からもわかる。とろけるようなボケ感に加え、丸ボケのエッジ部分の輪線はほとんどなく綺麗にボケている。
ただし、大口径レンズということもあり、絞り開放では画像周辺に口径食が確認できる。気になるシーンでは、開放から2段ほど絞るとよい。
絞り開放から2~3段ほど絞ると解像感がグッと上がる。実写画像では木の幹やモデルの髪の毛のディテールまでしっかり解像しているのがわかるだろう。特にポートレート撮影では、絞り開放付近での描写が気になる方も多いと思うが、安心して使えるレンズと言えるだろう。