交換レンズレビュー
ソニーのフルサイズミラーレス版“撒き餌レンズ”の実力は?
FE 50mm F1.8 テーブルフォトで柔らかなボケを楽しむ
2016年6月3日 07:00
ソニーの35mmフルサイズミラーレス向けEマウントに単焦点レンズFE 50mm F1.8が新たに加わった。これまで同社のFEレンズにはカールツァイスSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAという、一見今回紹介するFE 50mm F1.8とほぼ同じスペックのレンズが存在したが、FE 50mm F1.8とは立ち位置がやや異なる。
汎用単焦点レンズとして求めやすい価格と性能のバランスが特徴のFE 50mm F1.8について詳しく紹介していこう。
発売日 | 2016年4月28日 |
実勢価格 | 税込3万1,440円前後 |
マウント | FEマウント |
最短撮影距離 | 0.45m |
フィルター径 | 49mm |
外形寸法 | 68.6×59.5mm |
重量 | 186g |
デザインと操作性
レンズ構成は非球面レンズ1枚を含むシンプルな5群6枚で、このクラスでは一般的なダブルガウスタイプである。重量は前述のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA よりも約100g軽い186gで、全長59.5mm、フィルター径49mmと軽量、コンパクトな設計。α7シリーズとのバランスも良い。
Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZAと比べて約1/3という求めやすい価格も魅力だ。α6000などAPS-Cセンサーのボディに装着すれば75mm相当の中望遠レンズとしても使える。安価かつ本格的な単焦点のため、世間的に“撒き餌レンズ”と呼ばれるクラスのソニーFEレンズ版が登場したといって良いだろう。単焦点レンズ入門に最適なレンズだ。
フルサイズ向け交換レンズとしては安価な部類に入る本レンズだが、外装はしっかりしている。α7シリーズと相性の良いシンプルなスッキリしたデザインで塗装にも質感がある。マウント部も本格的な金属製だ。
外見から安物のレンズだと感じることは全くない。ピントリングは幅広のラバーでトルクもちょうど良くなめらかだ。開放F値がF1.8と明るくファインダー内でのピントの山も掴みやすいので本レンズでMFを始めてみるのもよいだろう。
AF駆動にはDCモーターが採用されており、超高速ではないものの動きは滑らかで静物が相手なら不足することはない。ただし、激しく動く動体相手にピントを合わせ続けるといった用途にはもう少し速度、レスポンスが欲しいと感じるところだ。
最短撮影距離は45cmでこのクラスとしては標準的だ。通常の撮影で不自由することはないが、テーブル上の小物を撮影するにはあともう少し寄りたいという場面は何度かあった。
絞り羽根は円形の7枚絞りで美しい玉ボケも期待できる。標準で丸形のレンズフードも付属する。フードを装着した際のバランスも良いため常に装着して撮影したい。
作品
開放F1.8で中央付近のボトルにピントを合わせた。前ボケ、後ボケともにクセのない柔らかなボケが繋がっていくことがわかる。
真俯瞰から開放F1.8で撮影。カップに入った植物と机との距離はわずか10cmほどだが、机面のカラービーズが柔らかくボケている。軽量なため真俯瞰といったイレギュラーなアングルでの撮影も行いやすい。
背景の本の様子がある程度分かるようにF2.8で撮影。開放F1.8から幅広いF値を選択できるため表現可能な幅がグッと広がる。まだ単焦点を使っていないユーザーにはおすすめな1本だ。
1円玉より少し小さな中央の1セントコインにピントを合わせ最短撮影距離で撮影した。このような小物を撮影する場合はもう少し寄りたいという場面は何度かあった。
一番奥のビー玉にピントを合わせて前ボケを作った。後ろボケ同様前ボケの質感もやわらかく、ボケの繋がりもよい。
器に入ったナッツに丁寧にピントを合わせて撮影。開放で撮影したため器の縁はすでにボケ始めている。やわらかなボケは食べ物などオーガニックな被写体と良くマッチする。明るい背景の中にあるボケの輪郭も自然だ。
開放F1.8では全体にやや甘さが残るが、中央部はF2.8程度に絞ると一気に解像感が上がる。周辺部に関してはF4程度までやや甘さが残るもののF5.6くらまで絞ればほぼピークとなり画面全体でシャープな画を楽しめる。
太陽を画面内に入れるというレンズにとっては過酷な条件で撮影。特定の角度でゴーストが出ることはあったが、基本的にこのようなコントラストの高い画が得られた。光条も美しく、逆光耐性の高さには驚いた。
開放F1.8で撮影。周辺部の口径食がやや目立つが円形絞りを採用しているため中央部の玉ボケは綺麗な円形だ。
まとめ
今回は室内のテーブルフォトの作例を中心に紹介したが、50mmという焦点距離はスナップや風景などどんな場面でも使いやすい焦点距離だ。他のレンズに比べればかなり安価にもかかわらず、レンズとしての性能は本格的なものでもあるので、入門用としてはもちろん普段使い単焦点として中~上級者ユーザーにもオススメできる。
単焦点ならではの浅い被写界深度や大きなボケを楽しめるだけでなく、明るいレンズの特性と高感度に強いα7R IIを組み合わせれば夜間、光のほとんど無い場所でも撮影可能だ。軽量、コンパクトなため、常にカメラバッグに入れておいても良い汎用性の高い1本だ。