交換レンズレビュー

ソニーのフルサイズミラーレス版“撒き餌レンズ”の実力は?

FE 50mm F1.8 テーブルフォトで柔らかなボケを楽しむ

発売は4月。実勢価格は税込3万1,440円前後

ソニーの35mmフルサイズミラーレス向けEマウントに単焦点レンズFE 50mm F1.8が新たに加わった。これまで同社のFEレンズにはカールツァイスSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAという、一見今回紹介するFE 50mm F1.8とほぼ同じスペックのレンズが存在したが、FE 50mm F1.8とは立ち位置がやや異なる。

汎用単焦点レンズとして求めやすい価格と性能のバランスが特徴のFE 50mm F1.8について詳しく紹介していこう。

FE 50mm F1.8
発売日2016年4月28日
実勢価格税込3万1,440円前後
マウントFEマウント
最短撮影距離0.45m
フィルター径49mm
外形寸法68.6×59.5mm
重量186g

デザインと操作性

レンズ構成は非球面レンズ1枚を含むシンプルな5群6枚で、このクラスでは一般的なダブルガウスタイプである。重量は前述のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA よりも約100g軽い186gで、全長59.5mm、フィルター径49mmと軽量、コンパクトな設計。α7シリーズとのバランスも良い。

スッキリシンプルな飽きの来ないデザインで塗装の光沢も品がある。ピントリングは太めでしっかりホールドしながらMF撮影可能だ

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZAと比べて約1/3という求めやすい価格も魅力だ。α6000などAPS-Cセンサーのボディに装着すれば75mm相当の中望遠レンズとしても使える。安価かつ本格的な単焦点のため、世間的に“撒き餌レンズ”と呼ばれるクラスのソニーFEレンズ版が登場したといって良いだろう。単焦点レンズ入門に最適なレンズだ。

α7R IIに装着して試用した。コンパクトなボディとのバランスのとれたちょうど良いサイズ感だ

フルサイズ向け交換レンズとしては安価な部類に入る本レンズだが、外装はしっかりしている。α7シリーズと相性の良いシンプルなスッキリしたデザインで塗装にも質感がある。マウント部も本格的な金属製だ。

外見から安物のレンズだと感じることは全くない。ピントリングは幅広のラバーでトルクもちょうど良くなめらかだ。開放F値がF1.8と明るくファインダー内でのピントの山も掴みやすいので本レンズでMFを始めてみるのもよいだろう。

AF駆動にはDCモーターが採用されており、超高速ではないものの動きは滑らかで静物が相手なら不足することはない。ただし、激しく動く動体相手にピントを合わせ続けるといった用途にはもう少し速度、レスポンスが欲しいと感じるところだ。

フィルター径は49mm。絞りは7枚
軽量で安価なレンズだが、マウントは本格的な金属製だ。堅牢性があるだけでなくモノとしての質感も高い

最短撮影距離は45cmでこのクラスとしては標準的だ。通常の撮影で不自由することはないが、テーブル上の小物を撮影するにはあともう少し寄りたいという場面は何度かあった。

絞り羽根は円形の7枚絞りで美しい玉ボケも期待できる。標準で丸形のレンズフードも付属する。フードを装着した際のバランスも良いため常に装着して撮影したい。

付属するフードは丸形バヨネット式のものだ。レンズ本体が小さいため大きく見えるがバランスが悪くなることはない

作品

開放F1.8で中央付近のボトルにピントを合わせた。前ボケ、後ボケともにクセのない柔らかなボケが繋がっていくことがわかる。

α7R II / 1/25秒 / F1.8 / +2.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

真俯瞰から開放F1.8で撮影。カップに入った植物と机との距離はわずか10cmほどだが、机面のカラービーズが柔らかくボケている。軽量なため真俯瞰といったイレギュラーなアングルでの撮影も行いやすい。

α7R II / 1/10秒 / F1.8 / +1.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

背景の本の様子がある程度分かるようにF2.8で撮影。開放F1.8から幅広いF値を選択できるため表現可能な幅がグッと広がる。まだ単焦点を使っていないユーザーにはおすすめな1本だ。

α7R II / 1/8秒 / F2.8 / +2EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

1円玉より少し小さな中央の1セントコインにピントを合わせ最短撮影距離で撮影した。このような小物を撮影する場合はもう少し寄りたいという場面は何度かあった。

α7R II / 1/2秒 / F5.6 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

一番奥のビー玉にピントを合わせて前ボケを作った。後ろボケ同様前ボケの質感もやわらかく、ボケの繋がりもよい。

α7R II / 1/25秒 / F2.8 / +2.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

器に入ったナッツに丁寧にピントを合わせて撮影。開放で撮影したため器の縁はすでにボケ始めている。やわらかなボケは食べ物などオーガニックな被写体と良くマッチする。明るい背景の中にあるボケの輪郭も自然だ。

α7R II / 1/15秒 / F1.8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

開放F1.8では全体にやや甘さが残るが、中央部はF2.8程度に絞ると一気に解像感が上がる。周辺部に関してはF4程度までやや甘さが残るもののF5.6くらまで絞ればほぼピークとなり画面全体でシャープな画を楽しめる。

α7R II / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

太陽を画面内に入れるというレンズにとっては過酷な条件で撮影。特定の角度でゴーストが出ることはあったが、基本的にこのようなコントラストの高い画が得られた。光条も美しく、逆光耐性の高さには驚いた。

α7R II / 1/1,600秒 / F11 / -1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

開放F1.8で撮影。周辺部の口径食がやや目立つが円形絞りを採用しているため中央部の玉ボケは綺麗な円形だ。

α7R II / 1/125秒 / F1.8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

まとめ

今回は室内のテーブルフォトの作例を中心に紹介したが、50mmという焦点距離はスナップや風景などどんな場面でも使いやすい焦点距離だ。他のレンズに比べればかなり安価にもかかわらず、レンズとしての性能は本格的なものでもあるので、入門用としてはもちろん普段使い単焦点として中~上級者ユーザーにもオススメできる。

単焦点ならではの浅い被写界深度や大きなボケを楽しめるだけでなく、明るいレンズの特性と高感度に強いα7R IIを組み合わせれば夜間、光のほとんど無い場所でも撮影可能だ。軽量、コンパクトなため、常にカメラバッグに入れておいても良い汎用性の高い1本だ。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催